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電子線ホログラフィとその応用技術の開発に関する研究

氏名 遠藤 潤二
学位の種類 工学博士
学位記番号 博甲第1号
学位授与の日付 昭和62年3月25日
学位論文の題目 電子線ホログラフィとその応用技術の開発に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 長倉 繁麿
 副査 教授 小口 武彦
 副査 教授 菅野 昌義
 副査 教授 上野 學
 副査 教授 今井 清和
 副査 助教授 弘津 禎彦

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第1章 緒論 p.1
1-1 本研究の背景
1-2 本研究の目的
第2章 電子線ホログラフィ p.8
2-1 ホログラフィの原理
2-2 電子線ホログラフィ
第3章 電子線干渉顕微法 p.49
3-1 干渉顕微鏡
3-2 位相差増幅干渉法
第4章 電子線ホログラフィ技術の開発 p.67
4-1 電界放射型電子銃
4-2 電子線バイプリズム
4-3 電子光学系の検討
4-4 ホログラム処理法の検討
第5章 厚さ分布の計測 p.105
5-1 厚さ分布計測の原理
5-2 酸化マグネシウム粒子の厚さ分布の観察
5-3 ベリリウム微粒子の厚さ分布の観察
5-4 二硫化モリブデン薄膜の原子ステップ観察
5-5 フェリチンの観察
5-6 結果の検討
第6章 磁場分布の計測 p.124
6-1 磁場分布計測の原理
6-2 記録磁化分布の観察
6-3 コバルト微粒子の磁化分布の観察
6-4 結果の検討
第7章 総括と今後の展望 p.138
7-1 総括
7-2 今後の展望
謝辞 p.142

本論文は、「電子線ホログラフィとその応用技術の開発に関する研究」と題し、7章より構成されている。
 第1章「緒論」では、まず電子顕微鏡の発展の途次で、電子線ホログラフィが考案され、発展してきた経緯を述べ、さらに、この技術によって可能となった各種の研究について述べた。そして、電子線ホログラフィを用いた干渉顕微法が、試料の厚さ分布や磁場分布の定量的な計測を可能にすることから、干渉顕微法による観察・計測の手法を確立することが本研究の目的であることを述べた。
 第2章「電子線ホログラフィ」では、ホログラフィの理論について概説するとともに、その理論を電子線ホログラフィの電子光学系に拡張して、ホログラムの撮影倍率および再生用照明波の波長の違いの結像に及ぼす影響を定式化した。
 第3章「電子線干渉顕微法」では、まず干渉顕微法の原理を述べ、ついで光学分野で用いられている位相差増幅干渉法のうち、高次回折波干渉法とホログラムの繰り返し作製による方法とについて、それらの原理と実験方法を説明した。
 第4章「電子線ホログラフィ技術の開発」では、電界放射型電子銃、電子線バイプリズム、電子光学系およびホログラムの写真処理法について記述した。電界放射型電子銃に関しては、電子銃の構造および動作原理について述べ、電子線バイプリズムに関しては、その構造、動作原理および作製方法について述べた。電子光学系については、電子線の干渉性を阻害する要因のうち、電子銃内に形成される電子レンズとコンデンサ・レンズ系に関して、検討を行った。その内容は、電子銃内の電位分布の計算、電子軌道の計算、収差計算および各レンズによって形成される電子線スポット径の計算で、計算方法も詳述した。計算の結果、第一に静電レンズの球面収差が大きいため干渉性が低下しやすいこと、第二に通常の電子顕微鏡に用いられているダブルコンデンサ方式は、球面収差が大きいため適当ではないことを明らかにした。ホログラムの写真処理法については、使用した感光材料と、その使用目的に応じた処理法について述べた。
 第5章「厚さ分布の計測」では、厚さ計測の原理を述べるとともに、いくつかの試料を用いた観察・計測例を示した。そして、ホログラムに記録された電子線の位相を32倍まで増幅しても、試料の厚さ分布の情報が失われないこと、へき開によって生じた高さ0.6nmの二硫化モリブデン結晶のステップが観察できたこと、試料の厚さが知られている場合にはその物質の平均内部ポテンシャルが測定できること、および、従来は染色処理を施さないと観察が困難であった生体試料について、厚さ変化を高感度で検出することにより、その観察が可能になることなどを示した。また、高感度位相検出の際の誤差要因についても検討を行った。
 第6章「磁場分布の計測」では、磁場計測の原理を説明するとともに、いくつかの試料について観察・計測の例を示した。そして、この方法によれば、従来の観察法では得られなかった磁場分布に関する新しい情報が得られることを示した。その第一は、試料内部の磁化の強さと方向の直接観察、第二は空間中に分布する磁場の観察による情報である。さらに、2.6×10の-16乗Wbの磁束感度で磁場分布を観察することに成功し、また磁場分布の観察から、従来考えられていたような磁壁あるいは磁区という概念は、磁性体内部の磁化の様子を記述するには、必ずしも十分ではないことを示した。
 第7章「総括と今後の展望」では、本論文の内容を総括するとともに、今後の展望について述べた。この中で、まず第一に、生体試料の無染色状態での観察が今後生物・医学分野できわめて有効な観察・計測技術として発展していく可能性があること。第二に、電子レンズの球面収差を、光学像再生の段階で光学レンズを用いて補正することができるため、0.1nm以下の超高分解能が実現される可能性があること、第三に、電場、ひずみ場あるいは応力場などの観察・計測も可能性があることなどを述べた。

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