本文ここから

セラミックプロセッシング工学の基礎的研究

氏名 金 鎭映
学位の種類 工学博士
学位記番号 博甲第36号
学位授与の日付 平成3年3月25日
学位論文の題目 セラミックプロセッシング工学の基礎的研究
論文審査委員
 主査 助教授 植松 敬三
 副査 教授 田中 紘一
 副査 助教授 石崎 幸三
 副査 助教授 高田 雅介
 副査 助教授 小松 高行

平成2(1990)年度博士論文題名一覧] [博士論文題名一覧]に戻る.

目次
第1章 序論
1-1 製造工程、微構造、微細欠陥と特性との相関関係
1-1-1 概要 p.1
1-1-2 成形体の微構造が焼結体の微構造や強度特性に及ぼす影響 p.2
1-1-3 焼結体の微構造と強度特性との関係 p.4
1-1-4 成形体及び焼結体の内部構造の評価方法 p.7
(1)走査型電子顕微鏡(SEM)観察法 p.8
(2)水銀圧入法 p.8
(3)非破壊試験法 p.8
1-2 熱間等方圧焼結法(HIP)
1-2-1 概要 p.10
1-2-2 HIP法のセラミックスへの応用 p.10
1-2-3 AshbyのHIP焼結理論
(1)概要 p.11
(2)粒子幾何学のモデル p.12
(3)緻密化速度式 p.14
(4)HIP Mapの作成 p.17
(5)HIP Mapの問題点 p.18
1-3 Y-TZPセラミックス
1-3-1 概要 p.19
1-3-2 ジルコニア相変態を利用した強靱化機構 p.20
1-3-3 製造工程と機械的特性 p.22
1-4 本研究の目的及び内容 p.25
参考文献 p.26
第2章 顆粒粉末及び成形体の内部欠陥の評価
2-1 緒言 p.45
2-2 実験方法
2-2-1 原料粉末の特性 p.45
2-2-2 粉末成形体の作製 p.46
2-2-3 浸液の作製 p.46
2-2-4 内部構造の評価 p.46
2-2-5 SEM観察 p.47
2-2-6 水銀圧入法による気孔分布の測定 p.47
2-3 結果
2-3-1 Y-TZP
(1)浸液透光の確認 p.48
(2)顆粒粉末の内部構造の評価 p.48
(3)粉末成形体の内部構造の評価 p.49
2-3-2 アルミナ
(1)顆粒粉末の内部構造の評価 p.50
(2)粉末成形体の内部構造の評価 p.51
2-4 考察
2-4-1 浸液透光法の原理及び特徴 p.52
2-4-2 顆粒の内部構造の評価 p.52
2-4-3 粉末成形体の内部構造の評価 p.55
2-5 結論 p.56
参考文献 p.58
第3章 Y-TZP粉末成形体のHIP焼結による微構造の設計
3-1 緒言 p.77
3-2 実験方法
3-2-1 粉末成形体の作製 p.77
3-2-2 HIP焼結体の作製 p.78
3-2-3 試料の密度及び微構造の評価 p.78
3-3 結果 p.79
3-4 考察
3-4-1 緻密化と粒成長との関係 p.80
3-4-2 HIP緻密化プロセスの解析 p.81
3-4-3 粒界拡散係数の決定 p.82
3-4-4 実験結果と理論との比較 p.83
3-5 結論 p.85
参考文献 p.85
第4章 Y-TZP予備焼結体のHIP焼結による微構造の設計
4-1 緒言 p.96
4-2 実験方法
4-2-1 予備焼結体の作製 p.96
4-2-2 HIP焼結体の作製 p.97
4-2-3 試料の密度及び微構造の評価 p.97
4-3 結果 p.97
4-4 考察 p.98
4-4-1 緻密化と粒成長との関係 p.99
4-4-2 HIP緻密化プロセスの解析 p.99
4-4-3 実験結果と理論との比較 p.100
4-5 結論 p.101
参考文献 p.102
第5章 セラミックスの材料特性の制御
5-1 緒言 p.108
5-2 実験方法
5-2-1 試料の作製 p.108
5-2-2 試料の密度及び微構造の評価 p.109
5-2-3 内部欠陥の評価 p.109
5-2-4 破壊靱性の測定 p.109
5-2-5 曲げ強度の測定 p.110
5-2-6 破壊源の調査 p.110
5-3 結果
5-3-1 HIP焼結体の内部欠陥と強度特性に及ぼす成形圧力の影響
(1)Y-TZP p.111
(2)アルミナ p.112
5-3-2 Y-TZPの微構造と機械的特性に及ぼすHIP条件の影響 p.112
5-3-3 Y-TZPの内部欠陥の評価とその欠陥が強度特性に及ぼす影響 p.114
5-4 考察
5-4-1 HIP焼結体の内部欠陥と強度特性に及ぼす成形圧力の影響
(1)Y-TZP p.115
(2)アルミナ p.116
5-4-2 Y-TZPの微構造と機械的特性に及ぼすHIP条件の影響 p.117
5-4-3 Y-TZPの内部欠陥の評価とその欠陥が強度特性に及ぼす影響
(1)欠陥サイズ分布及び強度特性の評価 p.118
(2)欠陥サイズ分布と強度分布の関係 p.120
5-5 結論 p.122
参考文献 p.123
第6章 総括 p.145
謝辞 p.151

 本研究はセラミックプロセシング工学的諸因とセラミックスの微構造及び欠陥との間の因果関係を明らかにし、その情報をもとに、材料特性制御法の基礎を確立することを目的として行ったものである。研究対象材料には、高靱性セラミックスのY-TZPを取り上げた。まず、新たに開発した成形体及び焼結体の内部構造評価法により、材料中の内部欠陥を詳しく評価する方法を確立した。次に、HIP焼結における緻密化挙動を解析することにより、HIP緻密化プロセス及びHIP焼結体の微構造制御法を確立した。最後に、成形体の特性-HIP処理条件-焼結体の特性の相関関係を明らかにすることにより、材料特性の制御法を確立した。以下に本研究で得られた知見ならびに成果について記す。
 "第1章 序論"では、(1)製造工程、微構造、微細欠陥と特性との相対関係、(2)熱間等方圧(HIP)焼結法のセラミックスへの応用及びHIP焼結理論、(3)高靱性高強度Y-TZPセラミックスの強靱化機構及び製造工程と機械的特性との関係について既往の研究をまとめ、記述した。さらに、各章における目的とその達成のための手段について述べた。
 "第2章 顆粒粉末及び成形体の内部欠陥の評価"では、浸液透光法を新たに開発し、顆粒粉末及び成形体の内部構造を評価した。浸液として黄リン-硫黄-ヨウ化メチレン(重量比8:1:1)を用いることにより、Y-TZP顆粒粉末及び成形体の内部構造が直接観察でき、その内部構造の詳細な評価が可能となった。
 "第3章 粉末成形体のHIP焼結による微構造の設計"では、粉末成形体のHIP焼結について、焼結の全ての段階における緻密化プロセスの基本データを求め、出発試料の特性及びHIP処理パラメータが緻密化に及ぼす影響を調べた。さらに、その緻密化挙動を厳密に解析することにより、粉末成形体のHIP緻密化プロセスならびにHIP焼結体微構造を制御することの可能性について検討した。その結果、HIP緻密化に伴い粒成長が起こり、HIP後の試料の粒径の対数と気孔率の対数の間には直線関係があり、その傾きは材料、プロセスによらずほぼ一定であることを実験的に指摘した。また、緻密化に伴う粒成長を考慮したHIPmapを用いて実験結果の解析を行い、理論と実験結果とを比較することにより、Y-TZPの粒界拡散係数をはじめて提案した。さらに、本研究で求めた気孔率と粒径との関係を用いて、AshbyのHIP焼結理論を拡張することにより、粉末成形体のHIP緻密化プロセス及び微構造の制御が可能となった。
 "第4章 予備焼結体のHIP焼結による微構造の設計"では、予備焼結体のHIP緻密化プロセスの制御及びHIP焼結体微構造の制御を試みた。実験において、予備焼結体中の粒子はHIP緻密化とともに成長し、HIP後の試料の粒径の対数と気孔率の対数の間には直線関係があること、またその傾きは材料、プロセスによらずほぼ一定であることがわかった。本研究で求めた気孔率の粒径との関係を用いて、AshbyのHIP焼結理論を拡張することにより、予備焼結体のHIP緻密化プロセス及び微構造の制御が可能となった。
 "第5章 セラミックスの材料特性の制御"では、セラミックス焼結体の内部欠陥を評価する新しい方法を用いて、焼結体中の1ミクロン以上の寸法を持つすべての内部欠陥の頻度分布を求め、その結果をもとに、焼結体内の欠陥分布と強度特性との関係について調べた。併せて、成形圧やHIP条件等のプロセスパラメータがHIP焼結体の微構造及び機械的特性に及ぼす影響について検討を行った。HIP焼結体の破壊強度は粒径に殆ど関係無く、HIP温度が高くなるに従い若干増加する傾向が得られた。また、HIP焼結体の強度特性と粉末成形体の微構造との間には相関関係が見出された。さらに、焼結体の内部欠陥からHIP処理により大きさと数が減少することがわかった。また、この傾向は処理温度の増加とともに著しくなるが、HIP焼結体中に数十ミクロンの欠陥が多数残されていることがわかった。大きな欠陥の存在確率が大きくなるに従い、破壊を支配する欠陥が表面傷から内部欠陥に変わり、予備焼結体では、材料中の欠陥サイズ分布から求めた予測強度と測定強度は基本的に一致することがわかった。これらの結果から、成形体特性の相関関係が明らかになり、セラミックス材料特性の制御が可能となった。
 "第6章 総括"では、本論文を総括した。本研究では、セラミックスプロセシング科学を進歩させる上での重要な成果であり、価値あるものと考えられる。

非公開論文

お気に入り

マイメニューの機能は、JavaScriptが無効なため使用できません。ご利用になるには、JavaScriptを有効にしてください。

ページの先頭へ戻る