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二次元、三次元弾性境界要素法の高精度化と実用化に関する研究

氏名 李 銀生
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第59号
学位授与の日付 平成4年3月25日
学位論文の題目 二次元、三次元弾性境界要素法の高精度化と実用化に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 矢田 敏夫
 副査 教授 林 正
 副査 教授 長井 正嗣
 副査 助教授 佐久田博司
 副査 助教授 古口 日出男

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第1章 緒論 p.1
 1.1 研究の背景 p.1
 1.2 従来の研究 p.3
 1.3 本論文の目的と構成 p.5
 第1章の文献 p.8

第2章 弾性境界要素法の基礎理論 p.11
 2.1 緒言 p.11
 2.2 静弾性論基礎式 p.11
 2.3 境界要素法の基礎式 p.13
 2.3.1 基礎となる積分方程式 p.13
 2.3.2 内点の応力 p.16
 2.3.3 基本解 p.17
 2.4 境界積分方程式の数値計算法 p.18
 2.4.1 境界要素および内挿関数 p.19
 2.4.2 離散化方程式 p.23
 2.4.3 マトリックスの組立 p.25
 2.4.4 数値積分および誤差評価 p.28
 2.4.5 表面力の不連続に関する処理 p.31
 2.5 対称性を利用した離散化法 p.33
 2.6 領域結合解法 p.37
 2.7 境界要素法による逆問題解析 p.39
 2.8 結言 p.40
 第2章の文献 p.41

第3章 数値計算上の高精度化と高効率化に関する考察 p.43
 3.1 緒言 p.43
 3.2 特異積分およびその処理 p.44
 3.2.1 特異積分 p.44
 3.2.2 二次元問題の特異積分法 p.48
 3.2.3 三次元問題の特異積分法 p.57
 3.3 境界要素法による複雑な問題への応用に関する検討 p.68
 3.4 プリプロセッサの作成 p.71
 3.5 結言 p.75
 第3章の文献 p.76

第4章 高精度の境界要素積分式の定式化に関する検討 p.78
 4.1 緒言 p.78
 4.2 特異性の低い境界積分式の定式化 p.79
 4.2.1 変位相対量による変位境界積分式の定式化 p.80
 4.2.2 変位相対量による変位勾配の境界積分式の定式化 p.83
 4.2.3 変位相対量による応力の境界積分式の定式化 p.84
 4.2.4 変位相対量による弾塑性境界積分式の定式化 p.86
 4.2.5 変位相対量による境界積分式定式化の特異性 p.87
 4.3 変位相対量による境界積分定式化の数値検証 p.87
 4.3.1 二次元問題の数値解析 p.88
 4.3.2 三次元問題の数値解析 p.96
 4.4 境界上の応力に関する考察 p.101
 4.5 効率的で高精度な境界要素解析システム p.103
 4.6 結言 p.105
 第4章の文献 p.106

第5章 境界要素法による異材接合体の応力解析 p.107
 5.1 緒言 p.107
 5.2 異材接合の理論 p.109
 5.3二次元接合体に関する考察 p.112
 5.3.1 接合体の応力分布に関する解析 p.112
 5.3.2 接合端部の幾何学的形状効果に関する考察 p.115
 5.4 三次元接合体に関する考察 p.117
 5.4.1 三次元接合面の応力分布に関する考察 p.118
 5.4.2 三次元応力集中緩和法 p.123
 5.5 結言 p.125
 第5章の文献 p.126

第6章 境界要素法による欠陥推定の逆解析 p.128
 6.1 緒言 p.128
 6.2 欠陥探査の逆解析方法 p.129
 6.2.1 従来の推定法 p.129
 6.2.2 コンプレックス法 p.131
 6.2.3 コンプレックス法による欠陥推定法 p.134
 6.3 欠陥推定 p.135
 6.3.1 欠陥の寸法に関する推定 p.135
 6.3.2 欠陥の位置に関する推定 p.138
 6.3.3 位置と寸法に関する推定 p.140
 6.3.4 位置、寸法および形状に関する推定 p.141
 6.3.5 より一般的な欠陥推定法 p.143
 6.3.6 より一般的な欠陥推定例 p.146
 6.4 欠陥推定法に関する実験検証 p.152
 6.5 結言 p.156
 第6章の文献 p.156

第7章 結論 p.158

本論文に関する発表論文 p.162

謝辞 p.165

 境界要素法は新しい数値解析手段として開発されて以来、多くの注目を集めている。一般に、境界要素法は線形問題に関する解析において、解析対象物体の内部領域を要素分割する必要がなく、物体の境界表面のみを離散化すればよく、問題の解析次元数を一次元低減させることができる。その結果、入力データの作成はより簡単になり、計算に必要な記憶容量と計算時間を大幅に削減することができる。そして、領域内の知りたい位置の応力、ひずみなどの物理量が直接に求められ、解析精度も高い。また、境界型解法である境界要素法は基本的には境界値だけで方程式を構成できることから、境界要素法は工学上の様々な逆解析に適していると考えられる。
 しかし、境界要素法の応用において、なお検討すべき多くの問題が存在し、これらの問題は境界要素法の実現化に対して大きな障害となっている。
 まず、境界要素法の境界近傍における解析精度の低下が大きな問題点である。解析する対象物体の境界近傍を除いた部分の内点に対しては、境界要素法の解析精度は極めて良好である。しかし、内点が境界の近傍に近づくと、解析結果は急速に発散して、解析の信頼性を失ってしまう。実際の問題において、境界近傍の解析結果を特に重要とする問題はかなり多い。このような問題に対して、境界近傍の解析精度の低下は境界要素法の実用化に対する大きな問題点となっている。
 さらに、境界要素解析は、複雑な問題、特に三次元問題へ適用する場合、効率の向上についてはなお特別な配慮を必要とする。
 また、境界型解法という独特な特性を持つために、境界要素法の逆解析への応用に関する期待が大きい。しかし、境界要素法による逆解析に関する研究はまだ初歩的な段階であり、効率的で収束性の良い高精度な逆解析アルゴリズムはまだ確立されておらず、一般的問題に対する実用的な逆解析手法はまだ発表されていないのが現状である。
 本研究は主に弾性問題に着目して、前述した従来の境界要素法の問題点を改良し、二次元、三次元境界要素法の順解析、逆解析の高精度化、高効率化および実用化を目的として検討を行う。
 本論文は7章から構成している。第1章「緒論」では、弾性境界要素法の歴史、現状を展望して、本研究の背景および目的について論ずる。第2章「弾性境界要素法の基礎理論」では本論文に関して必要とする基礎理論、手法をまとめ、問題点を明確にする。第3章「数値計算上の高精度化と高効率化に関する考察」では特異積分法の観点から境界要素法の解析精度を改善する方法を述べる。二次元においてはこれまで提案された多くの特異積分法について精度と効率が共に良い特異積分法を選定し、応用上の基準を与える。三次元においては新たに精度の良い特異分析法を提案する。これらの改良により境界要素法の効率を保ちながら、精度の向上を図ることができる。また、境界要素法を複雑な問題へ応用する場合を考慮して、境界要素解析の特徴を活用した解析効率の向上を試みる。第4章「高精度の境界要素積分定式化に関する検討」では、特異性の低い境界積分式を定式化することにより二次元、三次元境界積分式の特異性を低減する。この新たな定式化は第3章で検討した特異積分法と併用することによって、物体のすべての内点および境界に対して高精度の解析結果が求められる。そして、この章の考察と第3章の検討を総合して、効率的で高精度の二次元、三次元弾性境界要素法の順解析システムを確立する。第5章「境界要素法による異材接合体の応力解析」では、第4章で確立した効率的で高精度の境界要素法を複雑な問題への一応用例として、異種材料の接合体における接合界面、特に接合端部の応力分布について二次元、三次元的な解析を行い、応力特異性のオーダについて考察する。その結果と理論解を比較することによって、本研究で確立した境界要素解析システムの有効性を示す。特に、接合端部の応力分布と応力特異性に関する考察を基にして、三次元的解析を必要とする場合の異材接合体に対する簡便で実用性のある応力緩和法を提案する。そして、三次元数値解析を行なってその有用性を確認する。第6章「境界要素法による欠陥推定の逆解析」では、第3章と第4章の考察から確立した境界要素順解析手法に非線形計画法のコンプレックス法を導入することによって、欠陥の推定を自動的に行うことができ、かつ収束性のよい逆解析方法について検討する。そして、実験によりこの方法の有効性、実用性を検証する。第7章「結論」では、本研究の成果および主な結論を総括して記述する。

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