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Improvement of Positive Temperature Coefficient Resistivity Properties by Grain Boundary Oxidation of BaTiO3

(粒界酸化によるBaTiO3のPTCR特性の向上)

氏名 ヒューブレヒツ ベン ジョセフ
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第68号
学位授与の日付 平成4年9月30日
学位論文の題目 Improvement of Positive Temperature Coefficient Resistivity Properties by Grain Boundary Oxidationof BaTiO3(粒界酸化によるBaTiO3のPTCR特性の向上)
論文審査委員
 主査 教授 石崎 幸三
 副査 教授 高田 雅介
 副査 教授 植松 敬三
 副査 教授 鎌田 喜一郎
 副査 助教授 小松 高行

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Contents
Acknowledgements p.3
Japanese abstract p.9
Scope and aim of the thesis p.11
Chapter I : Positive temperature coefficient of resistivity : a review p.13
1.1 Introduction p.14
1.2 The Heywang model p.15
1.2.1 Theory p.15
1.2.2 Discussion p.20
1.3 The Jonker model p.24
1.4 The Daniels and Wernicke model p.25
1.5 Discussion p.29
1.5.1 What is exact nature of the acceptor-states ? p.29
1.5.1.1 Adsorbed gases as acceptors p.29
1.5.1.2 3d-elements as acceptors p.32
1.5.1.3 Concluding comments p.33
1.5.2 Why is the PTCR-effect so much influenced by the cooling rate andannealing ? p.34
1.5.3 What is the origin of the anomaly of conductivity and grain size ? p.35
1.6 Conclusions p.38
Chapter II : Experimental prove forthe low temperature acceptor state compensation in positive temperaturecoefficient resistivity type BaTiO3. p.41
2.1 Introduction p.42
2.2 Experimental p.42
2.3 Results and discussion p.45
2.4 Conclusions p.50
Chapter III : Grain boundary oxidation of non acceptor doped semicon-ductive BaTiO3. p.53
3.1 Introduction p.54
3.2 Experimental p.55
3.3 Results p.56
3.4 Discussion p.58
3.5 Conclusions p.59
Chapter IV : Grain boundary oxidation of acceptor doped semiconductive barium strontium titanate. p.61
4.1 Introduction p.62
4.2 Experimental p.62
4.3 Results p.63
4.3.1 Microstructure p.63
4.3.2 Resistivity characteristics p.63
4.4 Discussion p.66
4.4.1 Microstructure p.66
4.4.2 Resistivity characteristics p.69
4.5 Conclusions p.75
Chapter V : A phenomelogical PTCR-model related to the grain boundary oxidation of acceptor donor codoped BaTiO3 p.77
5.1 Introduction p.78
5.2 A phenomelogical PTCR-chart p.79
5.3 Computer calculations p.81
5.4 Recommendations p.84
Chapter VI : General conclusions and recommendations p.87
Glossary of symbols p.91
References p.93

 1955年に、キュリー点以上の狭い温度領域において、BaTiO3半導体の比抵抗が急激に上昇することが見つけ出された。この現象は比抵抗正温度依存性(PTCR: Positive Temperature Coefficient Resistivity)と呼ばれており、ヒーターやセンサー、消磁装置、安全回路等として多くの重要な製品に応用されている。これらの応用には、大きな比抵抗変化と低い室温比抵抗(ρmin)が望まれている。
 本研究の目的は、室温比抵抗への影響なしに最大比抵抗値を上昇させる方法を求め、その原理を明らかにすることである。
 まず最初に、この現象に与える因子についての100以上の最近の文献調査を行い、Heywangモデルにより定性的に説明できることがわかった。このモデルは、粒界にそって2次元のアクセプター準位の層が形成されることを前提としている。これらのアクセプター準位は、吸着ガスやバリウム空孔、3d元素により形成され、粒内から電子を捕獲しポテンシャル障壁を生成する。このポテンシャル障壁は温度に依存しており、これがPTCR効果の原因となっている。
 アクセプター準位は2つの因子によりPTCR現象を支配している。1つはアクセプター準位密度(NS)、もう1つはアクセプター準位の伝導帯下からの差をとったエネルギーギャップ(ES)である。NSおよびESの上昇が最大比抵抗(ρmax)を上昇させることはHeywangモデルより明らかである。しかしながら本研究で、アクセプター準位密度には臨界値(NScr)が存在することが解り、しかもNScrには、NScr, 1とNScr, IIが存在することが初めてみつけられた。NScr, I以下の領域ではNSはρminに影響を与えないことがわかった。NScr, I以上では、ρminは最初NSの上昇について比較的少ない上昇を示す。これはNSが部分的に補償されることによるものである。NScr, II以上の高いNSに対しては、もはや余分のアクセプター準位の補償はできず、ρminはNSの増加に対して急激に増加する。
 本研究により、初めて実験的にNScrを求めることができ、その値は部分的に補償が起き始める値NScr, Iとして4.2×1017m-2となり、またそれ以上では補償が完全に起こらなくなる臨界の値NScr, IIは5.2×1017m-2となった。JonkerはBaTiO3の自発分極(Ps)よりNScrを6×1017m-2と概算した。これは本研究の実験値のNScr, I、NScr, IIによく一致しており、Jonkerモデルのある程度の正当性を初めて実験的に示すものである。
 ドナーのみを添加し酸素雰囲気熱間等方加圧装置(O2-HIP)による高酸素雰囲気中での熱処理によりNSを増加させ、PTCR特性の向上を計ったが、NSがNScr, I以上となりρminを低く下げたままにしておくことが不可能であったため、他のPTCR特性の向上方法を研究した。NS一定下において、高いESは高いρmaxを示す。この場合、ρminへの影響なしにPTCR変化を増加させることができる。少量の3d元素の添加により、より深く電子が捕獲されPTCR特性が向上することはよく知られている。これは、Ueokaにより以下のように説明されている。アクセプター(M)は、Ti4+原子を置換し、焼結中にはM2+として存在する。Ti4+とM2+間の電荷の違いは、2価にイオン化された酸素空越孔(Vo++)により補われる。焼結後の冷却においてVo++は充され、M2+はM3+やM4+へと酸化される。M3+、M4+はアクセプターとして振る舞う。
 通常の冷却速度によりM3+となるかM4+となるかは明らかでない。しかしながら極端な酸化によりM4+となり、M3+より深いESを有しPTCR特性を向上させることができる。
 アクセプター(Mn)およびドナー(Sb)を添加したBaTiO3においてO2-HIPにより高い酸素分圧(P02)雰囲気での熱処理によりNSと同様にESが増加することを解明した。O2-HIP処理による比較的低温での高速酸化は、粒界のみを酸化し粒内を酸化しない。酸化機構は以下のように説明できる。Mn+2は焼結中にVo++により補償されているが、酸化によりMn3+となる。すべてのMn2+がMn3+に酸化された後にMn3+はMn4+に酸化される。酸化が進むにつれて、酸化速度は徐々に遅くなる。これは酸素空孔が減少し、見かけの酸素空孔の流量が減少することに起因する。すなわち酸化が進につれ、酸化速度が遅くなってくるため、すべてのMnを大気中での熱処理により4+準位にするには長い時間を必要とする。しかしながら、酸化は、高いP02でより速く起きることから、O2-HIP処理は大きなPTCR変化と低い室温比抵抗値を有する高性能PTCR材料を得るために有効な手段であることが判明した。
 PTCR特性は、原料粉末の違いや、炉の違いによる冷却速度の違いなどの細かな実験条件により非常に影響を受けやすいため、実験の再現性が難しく、これまで様々な報告がされてきた。そこですべての報告を説明するため、今回の研究に基づき、粒界モデルと粒界酸化チャートを提唱した。この粒界坂チャートより、PTCR特性と酸化についての関係が明瞭に説明でき今までの多くの報告も説明可能となった。また粒界酸化チャートの使用により、比較的少量のアクセプターの添加および高酸素分圧下での酸化を行うことを推奨する。この方法で、アクセプターは高いESを有する高い酸化準位を持ち、その結果、より優れたPTCR材料を得ることができる。また粒界酸化チャートにより、酸化時間、アクセプター添加、及び熱処理中のP02がともに関係を持ちながら最適化されるべきであることも初めて明らかにされた。
 この酸化チャートより、PTCR研究における試行錯誤段階が終わりを告げることを信じている。またそれにより粒界拡散そしてBaTio3の粒界全体への容易でかつ深い理解が得られることを望むものである。

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