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油圧ピストン機構の潤滑特性に関する研究

氏名 方 義
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第82号
学位授与の日付 平成5年3月25日
学位論文の題目 油圧ピストン機構の潤滑特性に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 白樫 正高
 副査 教授 吉谷 豊
 副査 教授 久曽神 煌
 副査 助教授 金子 覚
 副査 横浜国立大学教授 山口 惇

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目次
目次 p.i
主要記号 p.iv
第1章 序論 p.1
1.1 研究の背景 p.2
1.2 従来の研究 p.4
1.3 本研究の目的および概要 p.6
第2章 ピストン機構の潤滑状態の観測および評価方法 p.9
2.1 緒言 p.10
2.2 従来の研究 p.11
2.3 分離電圧の検出および出力信号処理システム p.16
2.3.1 電気的観測方法 p.16
2.3.2 分離電圧測定回路および特性 p.18
2.3.3 観測システムの構成 p.21
2.4 実験装置および条件 p.23
2.4.1 実験装置 p.23
2.4.2 ピストンおよびシリンダの仕様 p.23
2.4.3 実験条件 p.27
2.5 潤滑状態の観測および評価方法 p.29
2.5.1 潤滑状態の観測方法 p.29
2.5.2 潤滑状態の評価方法 p.29
2.6 第2章の総括 p.34
第3章 ピストンの軸方向往復運動の潤滑特性(軸回転を拘束した場合) p.35
3.1 緒言 p.36
3.2 実験装置および方法 p.37
3.2.1 実験装置 p.37
3.2.2 供試ピストン p.37
3.3 実験結果および考察 p.40
3.3.1 作動条件の影響 p.40
3.3.2 表面粗さおよび半径隙間の影響 p.49
3.3.3 テーパおよび強制潤滑の効果 p.56
3.4 第3章の総括 p.65
第4章 ピストンの軸回転を伴う場合の潤滑特性 p.66
4.1 緒言 p.67
4.2 実験装置および方法 p.68
4.3 実験結果および考察 p.73
4.3.1 ピストンの軸回転率 p.73
4.3.2 ピストン軸回転の影響 p.77
4.3.3 半径隙間の影響および強制潤滑の効果 p.82
4.4 第4章の総括 p.87
第5章 ピストン機構の潤滑特性の数値解析 p.88
5.1 緒言 p.89
5.2 ピストンに作用する流体力 p.90
5.2.1 基礎方程式 p.90
5.2.2 油膜圧力分布 p.96
5.2.3 油膜負荷容量特性 p.101
5.2.4 最小油膜厚さと負荷容量の極限値 p.109
5.3 ピストン機構の負荷特性 p.111
5.3.1 ピストンに作用する力 p.112
5.3.2 固体接触力、油膜負荷容量および油膜形状 p.118
5.3.3 ピストン軸回転の影響 p.122
5.3.4 ピストン~シリンダ間摩擦の影響 p.122
5.3.5 実験結果との比較 p.126
5.4 第5章の総括 p.129
第6章 結論 p.131
6.1 研究結果の総括 p.132
6.2 今後の展望 p.135
参考文献 p.136
謝辞 p.142

 本論文は油圧ピストン機構の潤滑特性の解明および改善に関する研究について述べている。多くの油圧機器は機能上の基本要素としてピストン機構を利用している。同機構におけるピストン~シリンダ間の潤滑状況は機器の性能に支配的な影響を及ぼすことから、その潤滑特性の解明および改善が不可欠である。これらの機器のうち、特に斜板式ピストンポンプ・モータは構造が簡単で小形軽量であることから現在最も広く使用されている。しかしながらその構造によりピストンに加わる横荷重が大きくなるため他の機器に比べ潤滑状況が厳しく、特に低速において流体潤滑の実現が困難とされている。したがって、ピストン~シリンダ機構における摺動面間の流体潤滑膜の形成および流体潤滑に移行する直前の混合潤滑特性を明確に把握し、より広い作動範囲にわたって流体潤滑を実現することが強く求められている。
 本研究は、混合潤滑状態下における潤滑状態を観測しこれを定量的に評価するための新しい方法を提案し、斜板式ピストンポンプ・モータのピストン機構に対しこれを適用して詳細な実験を行い、さらに数値解析に基づく検討を加え、両者の結果を総合することにより同ピストン機構の潤滑特性を明らかにし、その潤滑状態を改善するための指針を与えている。
 本論文は6章から構成されている。
 第1章『序論』では、油圧ピストン機構についての従来の研究の概説を通してその潤滑上の問題点を明らかにし、混合潤滑状態下における特性の解明および改善の重要性を指摘し、本研究の位置づけ、意義、目的を明確にする。
 第2章『ピストン機構の潤滑状態の観測および評価方法』では、ピストン機構の潤滑状態を明確に把握するため、まず従来の研究結果および実験方法を検討した上で問題点を指摘し、新しい測定方法の開発の必要性を論じる。そして接触状態を簡便に観測する実用的な方法として、ピストン機構の摺動面間に微小電圧を印加してその分離電圧(接触電気抵抗)を測定する装置を開発する。これにより混合潤滑状態下における摺動面間の金属接触の程度および油膜による分離状態の形成が観測できることを示し、さらに測定結果から求めた接触率λによりピストン機構の混合潤滑状態を定量的に評価できることを示す。
 第3章『ピストンの軸方向往復運動の潤滑特性(軸回転を拘束した場合)』では、シリンダ内のピストンの自軸を中心とする回転運動(軸回転)を拘束した装置を製作し、前章の方法を適用してピストンが軸方向往復運動のみを行う場合の潤滑状態について実験的に調べる。まず作動条件(シリンダ内供給圧力、斜板回転速度、作動油温度)による潤滑状態の変化を調べ、それらに対する潤滑状態の依存関係を明確にする。次に表面粗さ、ピストンのテーパおよび半径隙間の影響を調べ、モータ行程においては最も良い潤滑状態を与える最適の半径隙間が存在することを明らかにする。さらに摺動面間に圧油を導入した場合の強制潤滑の効果について調べ、高圧・低速域において強制潤滑により潤滑状態を大幅に改善できることを明らかにする。
 第4章『ピストンの軸回転を伴う場合の潤滑特性』では、実際の作動条件により近い状態として、ピストンの軸回転が前章の往復運動に重なった時のピストン機構の潤滑状態について実験的に調べる。まずピストンの回転角を測定し、斜板回転速度との関係およびピストン軸回転の発生原因を明らかにする。次にピストンを回転自由にして潤滑状態を観測できる装置を製作して実験を行い、その測定結果を第3章の結果と比較することにより、ピストンの軸回転により金属接触が緩和され、油膜による分離状態を形成しやすくなることを示す。また、ピストン軸回転を伴う場合もモータ行程において最適半径隙間が存在することおよび高圧・低速域における強制潤滑の改善効果が大きいことを明らかにする。
 第5章『ピストン機構の潤滑特性の数値解析』では、ピストン機構の潤滑特性について数値解析に基づく検討を加える。まず摺動面間の油膜圧力分布を数値計算し、油膜負荷容量特性と運転条件および油膜形状の関係を求める。この結果に基づいて、ピストンとシリンダが接触している時の固体接触力および油膜負荷容量を求め、さらに摺動面間の潤滑特性を表す接触率λと修正ゾンマーフェルト数(くさび効果による動圧と静圧の比を表す無次元量)の関係を求める。またこれを実験結果と比較することにより、数値解析結果の妥当性を検討する。
 第6章『結論』では、本研究の結果を総括し、これに基づいてピストン~シリンダ機構の潤滑状態の改善の指針を与え、今後の研究課題について展望を述べる。

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