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高品質画像の再現に関する研究

-視知覚特性を考慮した画像処理・符号化-

氏名 甘 青
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第85号
学位授与の日付 平成6年3月25日
学位論文の題目 高品質画像の再現に関する研究 -視知覚特性を考慮した画像処理・符号化-
論文審査委員
 主査 教授 萩原 春生
 副査 教授 袖山 忠一
 副査 教授 松田 甚一
 副査 教授 吉川 敏則
 副査 助教授 中川 匡弘
 副査 北陸先端化学技術大学院大学教授 宮原 誠

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目次
第1章 序論 p.5
1.1 研究の背景 p.5
1.2 本研究の目的と概要 p.6
第2章 画質の評価と視知覚特性 p.9
2.1 High Quality Imaging p.9
2.2 画質を決める要因 p.9
2.2.1 物理的要因 p.12
2.2.2 心理的要因 p.13
2.3 視知覚特性 p.14
2.3.1 明るさにおける視知覚の特性 p.14
2.3.2 色知覚における知覚特性 p.18
2.3.3 画像の局所的特徴に対する視知覚特性 p.20
2.4 画質の評価 p.21
2.4.1 評価の基準 p.22
2.4.2 評価の方法 p.22
2.5 まとめ p.25
第3章 高品質画像通信の周波数領域における検討 p.27
3.1 まえがき p.27
3.2 NTSC信号のスペクトル p.28
3.2.1 1次元周波数スペクトル p.28
3.2.2 3次元周波数スペクトル p.29
3.2.3 静止画像と動画像のスペクトル p.32
3.2.4 付加信号の副搬送波のスペクトルの一例 p.33
3.3 EDTV: NTSC付加信号の画像の局所特徴に及ぼす影響 p.38
3.4 隙間が利用可能な条件 p.40
3.4.1 輝度信号が付加信号へ及ぼす妨害の計算 p.40
3.4.2 隙間が利用できる動き速度範囲 p.44
3.4.3 静止部分は隙間に付加信号を多重し、動き部分は多重しない方法 p.46
3.5 EDTVにおける画像の局所的特徴の検討 p.49
3.6 むすび p.50
第4章 高品質カラー画像の処理に必要な信号レベルの解像度 p.53
4.1 まえがき p.53
4.2 画像情報を記述する色空間 p.56
4.2.1 マンセル色空間 p.56
4.2.2 (R,G,B)→(H,V,C)変換 p.57
4.2.3 MTMの改善 p.59
4.2.4 色差 p.64
4.3 色量子化誤差の特徴解析 p.65
4.3.1 解析方法 p.65
4.3.2 解析結果 p.65
4.3.3 色空間の局所部分における量子化誤差の評価 p.67
4.4 色差≦1での均等色空間の量子化 p.69
4.4.1 V,C軸の量子化 p.69
4.4.2 H軸の量子化 p.70
4.5 色差≦1でのRGB色空間の量子化 p.73
4.5.1 線形量子化 p.73
4.5.2 非線形量子化 p.74
4.5.3 信号のダイナミックレンジの考慮 p.74
4.6 むすび p.77
付録A MTM2 p.78
第5章 高品質カラー画像の高能率符号化 p.81
5.1 まえがき p.81
5.2 画像の局所特徴を保存する符号化法 p.81
5.3 自然画像に含まれる色の特徴 p.84
5.4 符号化アルゴルズム p.89
5.4.1 Peano曲線 p.91
5.4.2 Transparent Coding p.96
5.4.3 高圧縮符号化 p.97
5.5 符号化再生画像の評価 p.103
5.6 むすび p.107
第6章 符号化によって劣化したカラー画像の画質評価尺度PQScolor p.108
6.1 まえがき p.108
6.2 カラー画像符号化における符号化歪みの特徴 p.108
6.3 画像の局所特徴劣化の画質に及ぼす影響 p.112
6.4 色差を用いた方法: PQScolor1 p.113
6.4.1 システム構成 p.113
6.4.2 シミュレーションに用いた画像 p.119
6.4.3 PQScolorlによる評価実験結果(NBS色差に基づく) p.121
6.4.4 主成分分析結果 p.123
6.4.5 重回帰分析結果 p.125
6.4.6 まとめ p.127
6.5 HVC色空間における各色信号の差を用いた方法: PQScolor2 p.127
6.5.1 システム構成 p.127
6.5.2 各色信号の差成分毎の重回帰分析結果 p.132
6.5.3 PQScolor2による評価実験結果 p.135
6.5.4 主成分分析結果 p.135
6.5.5 重回帰分析結果 p.138
6.5.6 まとめ p.140
6.6 むすび p.140
付録B 視覚の色度の空間周波数特性の近似関係 p.142
第7章 結言 p.143
謝辞 p.147
展望 p.149
文献 p.159
著者発表論文 p.169

 本研究は、今後世界が要求するであろうHigh Quality Imagingに注目し、高品質な画像が再現できる通信システムの構成を目的とする。
 先ず、画質を決定する最も重要な物理的要因である解像度を取り上げる。解像度には空間的なものと信号レベル的なものとがある。現存の方式との互換性を保ちつつそれ以上の空間解像度を求めることが可能かどうかを論じる。次に、信号レベル方向の解像度がどの程度必要かを論じる。特に、画像情報の様々な表現メディア(印刷、放送、コンピュータを含むシステム)において区別なく画像を忠実に再生するのに必要な色空間と信号レベル方向の解像度を論じる。更に高品質を保つ画像圧縮方法を検討し、最良な符号化方法を見つけるのに欠かせない客観的画質評価尺度の開発を目指す。
 以下に本論文の各章の概要を示す。
 第2章では、最終的に品質を評価する人間の視知覚特性を調査して自然画像の画質に重要な役割を果たす物理・心理的な要因を明確にし、画質の客観評価尺度について論じる。
 第3章では、画質を決める重要な物理的要因である空間的な解像度について論じる。空間解像度は人間の知覚できる範囲内で高いほど良いが、ハード及びソフト的(方式、規格、etc.)に制限がある。特にテレビジョン放送のような国内だけでなく国際的なコミュニケーションメディアでは既に規格が定められており、新たな規格を作定しても政治的または技術的に簡単に受け入れられる可能性は低い。そこで従来方式との互換性をなんとか確保して空間解像度を上げる努力がされている。本論文では、NTSC方式の3次元画像信号処理におけるスペクトラムの形状を数式により表現し、これら努力が有効な範囲を理論的に示す。特に、動視覚特性の面から、テレビジョンのような主に動画像を扱うシステムではその努力が価値があるかを定量的に論じる。
 第4章では、異種メディア間の画像情報交換において、画像情報をどのような共通の形で交換すべきか、そして、画質を決めるもう1つの物理要因である信号レベル方向の解像度について論じる。前章の議論から、人間の満足できる画質を得るためには、方式や規格を新しく制定し直す必要がある。今日、ディジタル技術が主流となり、ハード技術が急速に発展しつつあるため、ハード面の制約を取り払い、視知覚に基づいて、方式や規格を検討すべきである。この章では、高品質な色を再現するには画像情報をどのような形で表現すべきかを議論し、そして、色知覚の限界を考慮し、アナログカラー原画像に対して量子化されたディジタル画像との差を検知限以下にするのに必要充分な信号レベル方向の解像度について理論的に検討する。これには人間の色知覚を正確に反映する色空間が必要となる。本論文では、特に従来のものより精度の高い均等色空間を新たに開発し、これを用いて、カラー画像の信号レベル方向の解像度の理論的必要量を人間の色知覚を考慮して論じる。そしてこれまで広く用いられてきた(R, G, B)色信号各8bits/pelの精度では不十分であることを明らかにし、人間の色差の検知限をもとに解析した必要精度を示す。
 第5章では、Peano曲線を用いた高画質・高能率カラー画像符号化を提案する。第4章では、画像情報を均等色空間で記述し、視知覚に適合した形で表現することが理想的であることを示した。しかしながら必要な情報量が膨大である。画像ソースの提供源としてはできるだけ高画質のものを提供すべきであるが、利用者の状況に応じて情報量を圧縮することはやむをえない。本論文では均等色空間において、自然界に存在する色及び画像処理システムの色再現範囲が不規則な形を有することに着目し、視知覚上劣化のない圧縮方法を提案する。更に高い圧縮を実現するために、圧縮に用いる量子化テーブルの3次元情報をPeano曲線のフラクタル性を利用して1次元に変換し、効率よく再圧縮する符合化方法を示す。
 第6章では、カラー画像の客観評価尺度を論じる。画像情報を非可逆的な処理・圧縮すると画質の劣化は避けられない。この場合画質劣化が最小になるような符号化器を設計できることが理想であるが、人間の代わりとなる良い評価尺度がない。本論文は、色知覚特性に基づき、カラー画像の客観評価尺度実現へのアプローチとこれに基づいて検討中の評価尺度について示す。
 第7章では、次世代画像通信における高品質画像の実現性及び将来の展望について論じる。

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