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工学表面の三次元トポグラフィ評価に関する研究

氏名 小林 直規
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第100号
学位授与の日付 平成7年3月24日
学位論文の題目 工学表面の三次元トポグラフィ評価に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 柳 和久
 副査 教授 秋山 伸幸
 副査 教授 高田 孝次
 副査 教授 久曽神 煌
 副査 助教授 井上 誠

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目次
第1章 緒論
1.1 緒言 p.1
1.2 従来の研究 p.4
1.3 本研究の目的 p.6
1.4 本論文の範囲と構成 p.6
1.5 本論文で用いる主な記号 p.8
第2章 表面凹凸形状の測定と前処理
2.1 緒言 p.11
2.2 表面凹凸形状の離散測定 p.12
2.2.1 測定領域とサンプリング間隔 p.12
2.2.2 実験試料および測定条件 p.13
2.3 測定データの前処理 p.16
2.3.1 前処理の必要性 p.16
2.3.2 短波長成分の除去 p.17
2.3.3 長波長成分の除去 p.20
2.4 探針先端形状の影響とその補正 p.21
2.4.1 探針先端形状が測定データに及ぼす影響 p.21
2.4.2 探針先端半径の測定と評価 p.24
2.4.3 測定データの補正法 p.27
2.5 表面凹凸の高さに関する統計分布のパワースペクトル p.28
2.6 緒言 p.35
第3章 表面凹凸の傾斜と局所突起頂上の探索
3.1 緒言 p.36
3.2 表面凹凸の傾斜評価 p.37
3.2.1 傾斜の定義 p.37
3.2.2 平滑化微分法 p.38
3.2.3 表面凹凸の傾斜分布とその定量化 p.40
3.3 表面凹凸の巨視的凸部と凹部および局所突起と窪みの定義 p.44
3.4 局所突起頂上の探索法 p.46
3.5 突起頂上探索のための評価領域の選定 p.49
3.6 緒言 p.57
第4章 局所突起頂上の空間分布
4.1 緒言 p.59
4.2 突起頂上高さの統計分布と評価パラメータ p.60
4.3 突起頂上点の面内配置とその定量化 p.63
4.3.1 突起頂上点の面内配置と個数密度 p.63
4.3.2 最近接点間距離とその統計分布 p.66
4.3.3 頂上点の配置形態と配置係数 p.68
4.3.4 頂上点の面内配置における異方性 p.69
4.4 評価パラメータに及ぼす評価領域の影響 p.72
4.5 結言 p.74
第5章 局所突起の先端形状
5.1 緒言 p.75
5.2 先端形状の評価領域と形状の同定法 p.75
5.3 先端形状の評価パラメータ p.78
5.4 円弧近似と曲率半径の算出法 p.84
5.5 評価パラメータに及ぼす形状評価領域の影響と探針影響の補正効果 p.93
5.6 突起頂上高さと形状評価パラメータとの相関 p.95
5.7 緒言 p.99
第6章 局所突起の隣接間隔と巨視的凸部の平均間隔
6.1 緒言 p.101
6.2 規則的な三次元表面凹凸の平均突起頂上間隔 p.101
6.3 巨視的凸部と局所突起頂上との関係 p.103
6.4 局所突起頂上と窪底の隣接間隔による平均凸部間隔の推定 p.106
6.5 緒言 p.116
第7章 結論 p.117
参考文献 p.121
謝辞 p.127

 工業製品において表面機能がその性能や品質を支配する事例が多く見られる。構成要素部品の表面仕上げ精度を始めとして摩擦・磨耗特性や光学・磁気特性などの表面機能では微細な表面凹凸の幾何学的性質が深く関係している。工学表面のトポグラフィ(凹凸形状)情報を三次元的に測定する実用的方法はいくつか開発されているが、表面機能の解析に有意な幾何情報を得るためのデータ処理技術と評価法に関しては整備が遅れている。特に、情報機器の分野においては表面凹凸の局所的な不規則情報を空間的に定量化する機能重視の幾何パラメータの普及が望まれている。
 本論文は、以上のような背景から、工学表面の表面凹凸に存在する微細な突起形状に着目し、高精度測定により得られた格子状の離散化データから成る三次元トポグラフィ情報に基づいて、その統計幾何学的性質を定量的に評価する方法を開発したものであり、本文6章と結論より成っている。
 第1章「緒論」では、工学表面の凹凸形状測定や評価技術の現状および三次元評価の重要性、ならびに従来の研究の流れについて記述し、本研究の位置づけと目的・意義を明らかにした。
 第2章「表面凹凸形状の測定と前処理」では、表面凹凸形状を格子状に離散化する際の基本的な考え方を示すとともに、表面凹凸データの前処理方法を短波長成分と長波長成分に分けて検討した。すなわち、短波長成分に対しては二次曲面を用いた平滑化法を提案し、単純移動平均との比較によりその優位性を確認した。長波長成分に対しては測定領域全体を対象として二次曲面による回帰を適用した。また、有限曲率を持つ探針が測定データに及ぼす影響については探針径相当分を三次元的にオフセットさせて幾何学的に補正する方法を開発し、表面凹凸の突起先端部分に限定して本補正法の有効性を述べた。
 第3章「表面凹凸の傾斜と局所突起頂上の探索」では、まず、表面凹凸データの任意のサンプル点における三次元的な傾斜を新たに定義した。すなわち、その点を中心とした評価領域(ある波長帯域の面素)の全測定データに二次曲面を適合させ、その微分値をもって傾斜とする平滑化微分法を適用した。実験解析を通して三次元(絶対値)傾斜の統計分布は必ずしも傾斜がゼロのときに最大とならないことを示した。続いて、表面凹凸形状の記述に巨視的凸部と凹部および局所突起と窪みの工学用語を導入するとともに、局所突起頂上と窪底を同様の評価領域内において平滑化して得られる単峰状曲面の極大点あるいは極小点と定義した。さらに、上述の傾斜情報と隣接間隔が評価領域幅を下回らないという条件に基づいて、局所突起頂上や窪底を探索するデータ処理法を提案した。なお、本研究では関連する評価領域の大きさを二次元の自己相関関数の遅れ距離から導くこととした。
 第4章「局所突起頂上の空間分布」では、第3章の方法で抽出された局所突起頂上を対象に、その高さのヒストグラムを求め、統計分布の標準偏差とスキューネスにより特徴づけを行った。また、定量形態学の考え方を応用して、頂上の個数密度と頂上間の最近接点間距離から局所突起頂上の面内配置の定量化を試み、用いた試料面における頂上間の最近接点間距離の分布はワイブル分布で近似されること、個数密度の平方根と最近接点間距離の平均との積で表される配置係数から頂上の配置形態が弱規則性であることを明らかにした。さらに、頂上配置の異方性についても定量化が行えることを解析的に示した。
 第5章「局所突起の先端形状」では、まず、突起先端部へ円弧を当てはめる際の当てはめ幅について正弦関数を用いて考察し、極端に大きな振幅の場合を除いては波長の1/4以下で近似の誤差が小さいことを確認した。続いて、突起先端部の形状評価の簡便法として、突起先端部の弓形面積および頂上に接する直線と凹凸波形間の面積、さらに頂上に接する平面と実体間の体積などの新規パラメータに円弧近似を適用して算出した曲率半径が通常の当てはめ円弧の曲率半径と良く一致することを示し、本面積パラメータの簡便性と工業上の利用価値を述べた。また、局所突起の頂上高さと面積パラメータとの相関関係が接触変形問題に対して有益な情報を提供することも付け加えた。
 第6章「局所突起の隣接間隔と巨視的凸部の平均間隔」では、局所突起と巨視的凸部の相違点を明確にしたうえで、巨視的凸部の三次元的な平均間隔を推定する方法を提案した。すなわち、局所突起の頂上と窪底との最近接点間距離を係数倍することにより巨視的凸部の平均間隔を推定できることを示した。また、その係数の変動幅を規則的に三次元表面凹凸モデルを用いて検討した。
 第7章「結論」では、本研究を総括して得られた研究成果を述べた。

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