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A study of Nonlinear Elastic Problems in Smectic liquid Crystals

(スメクティック液晶における非線形弾性問題に関する研究)

氏名 向井 畝津子
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第101号
学位授与の日付 平成7年3月24日
学位論文の題目 A Study of Nonlinear Elastic Problems in Smectic Liquid Crystals(スメクティック液晶における非線形弾性問題に関する研究)
論文審査委員
 主査 助教授 中川 匡弘
 副査 教授 松田 甚一
 副査 教授 神林 紀嘉
 副査 助教授 川田 重夫
 副査 教授 赤羽 正志

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Contents
I.Introduction
1.1 Overview p.1
1.2 Thermotropic Liqoid Crystals p.2
1.3 Surface Stabilized Ferroelectric Liquid Crystal (SSFLC) Cell p.5
Figures p.7
II. On the Double-kink Layer Structure in Compressible Smectic Phaes
2.1 Initoduction p.14
2.2 Theory p.15
2.3 Numerical Results p.20
2.4 Concluding Remarks p.21
Figures p.22
References (Chapter II) p.26
III. Anchoring Effect on the Layer Structures in Compressible Smectics
3.1 Initoduction p.27
3.2 Theory p.28
3.3 Numerical Results p.33
3.4 Concluding Remarks p.34
Figures p.35
References (Chapter III) p.41
IV. Elastic Ddistortions between a Pair of Chevrons in Compressible SmC*
4.1 Initoduction p.42
4.2 Theory p.43
4.3 Numerical Results p.51
4.4 Concluding Remarks p.53
Figures p.55
References (Chapter IV) p.66
V. AStudy of Defects in SSFLC under a DC Electric Field
5.1 Initoduction p.67
5.2 Theory p.69
5.3 Numerical Results p.75
5.4 Concluding Remarks p.76
Figures p.77
References (Chapter V) p.86
VI. A Study of Layer Relaxations of the Chevrons in Compressible SmC*
6.1 Initoduction p.88
6.2 Theory p.90
6.3 Numerical Results p.97
6.4 Concluding Remarks p.98
Figures p.100
References (Chapter VI) p.111
VII. Summary p.113
VIII. Appendix(A Single Soliton Model p.116
Published Works p.124

 本論文においては、圧縮性スメクティック液晶の連続体理論に基づき、層構造とc-ダイレクタ配向に関する非線形弾性問題について幾つかの具体例をあげて論じ、その有用性を検証した。本解析において、弾性自由エネルギー密度は、層の膨張と圧縮、及び、層法線方向を同時に表す波数ベクトルαと液晶分子の配向を表すc-ダイレクタの空間的変化か、並びに、自発分極と電界のカップリングエネルギーによって表現され、変分原理から系の平衡方程式が導かれる。
 先ず、連続体理論に基づくソリトンモデルを拡張し、分子のチルト角に関する6次の圧縮項までを考慮した弾性自由エネルギーを用いることで、新たにダブルキンクソリトン解を解析的に導出した。その結果、ダブルキンクソリトン解は、高分解能X線回折で観測されている反強誘電性スメクティック液晶の臨界点近傍におけるトリプルピークに相当し、1次相転移を示すスメクティック液晶においては、臨界点近傍でダブルキンクソリトン層構造が出現し、臨界点に近づく程、その構造が明瞭になることが分かった。一方、2次相転移を示すスメクティック液晶については、その解析解は、シングルキンクソリトン解に帰着した。
 次に、応用の見地から、双安定性スイッチングを実現するのに適したブックシェルフ層構造を得るために、界面アンカリング特性が、シェブロン層構造に及ぼす効果を解析した。その結果、界面アンクリングの効果は、層構造に大きく影響し、特に、ストロングアンカリングの条件でプレチルト角を0とすると、有限なチルト角を有するSmC*相においてでさえ、疑似ブックシェル層構造が実現され得ることが明らかになった。
 高品質な液晶ディスプレイを実現するためには、欠陥の発生機構を解明する必要があるが、現在まで、欠陥を伴う層構造を2次元的に解析した報告は無い。そこで、スメクティック液晶において典型的な欠陥であるジグザグ欠陥のドメイン境界付近の構造を、2次元ソリトンミデルに基づき解析した。ディスロケーションが無い場合、渦無し場の条件が成立し、aはスカラ関数φを用いて表され、この層変異関数φとc-ダイレクタで書き下した弾性エネルギーを最小にする平衡方程式を解くことにより、層構造とc-ダイレクタ配向が、同時に決定される。ジグザグ欠陥は、一般に、表面安定化強誘電性液晶セルで光学的に観測され、Clarkのモデルでは、2つのシェブロンの境界で遷移面積を増すことにより、系の弾性エネルギーを低くすると考えられたてきたが、層圧縮のエネルギーが考慮されていない。一方、層圧縮性を考慮した本解析の結果、従来提案されてきたモデルとは異なり、互いに逆向きのシェブロン層構造間を滑らかに連結するようにキンクが移動することが明らかにされた。また、セル厚が厚く、分子のチルト角が大きい程、層の変形は大きく、同時に液晶分子の配向を示すc-ダイレクタの変形も顕著になることが分かった。尚、層圧縮の弾性定数を充分大きくすると、Clarkのモデルに漸近的に一致し、さらに、外部直流電流界を印加すると、セル厚方向に層構造のうねりが生じ、その対称性が破られることが見出された。
 次に、ジグザグドメイン境界のセル中央に+1の強度のc-ダイレクタのスクリュー型欠陥を配置し、ツイストセルにおける電界下でのディスクリネーションの生成・消滅過程の電界、及び、物質定数依存性を調べた。その結果、新たな1対の強度-1/2のディスクリネーションと強度+1のディスクリネーションの生成過程は、明確なしきい値電界特性を伴うことが明らかになり、また、チルト角が大きいと層変形とc-ダイレクタとのカップリングエネルギーが高くなるため、生成された強度+1のディスクリネーションは、なるべく低電界で消滅するように移動することが結論づけられた。同様な傾向は、aとc-ダイレクタのカップ゜リング定数が大きい場合にもみられた。尚、ディスクリネーションが消滅すると、電界方向に層構造のうねりが生じ、スクリュー型欠陥の無いユニフォームセルでの解析と同様の結果を得た。
 最後に、層法線方向とセル厚方向に関する2次元弾性変形問題として、1対のシェブロン層構造間の緩和現象を調べた。その結果、直流電界を印加すると、稲妻型欠陥では、層構造がブックシェルフ層構造に、一方、ヘアピン型欠陥では、チルトした層構造に構造変化することが解明された。また、層膨張モードでは、RibottaらがスメクティックA相で観測したバックリング不安定性に類似した現象が見出され、これは、弾性自由エネルギー密度関数の対称性の破れに起因することが理論的に結論された。

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