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Ti酸化物を担持したゼオライドの光挙動及びNO光分解反応性

氏名 張 士成
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第126号
学位授与の日付 平成8年3月25日
学位論文の題目 Ti酸化物を担持したゼオライトの光挙動及びNO光分解反応性
論文審査委員
 主査 教授 藤井 信行
 副査 助教授 野坂 芳雄
 副査 教授 井上 泰宣
 副査 助教授 丸山 一典
 副査 助教授 佐藤 一則

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目次
第一章 緒論 p.1
1.1 NOx低減への光触媒の応用 p.1
1.2 担持したTiO2光触媒の現状 p.5
1.3 TiO2光触媒上のラジカルに関する研究 p.9
1.4 本研究の目的と論文の構成 p.10
第二章 光触媒のキャラクタリゼーション p.12
2.1 光触媒の評価 p.12
2.1.1 X線解析(XRD)の測定 p.12
2.1.2 UV-vis拡散反射スペクトル p.12
2.1.3 FT-IRの測定 p.14
2.1.4 フォトルミネッセンスの測定 p.14
2.1.5 ESRの測定 p.14
2.2 光触媒反応性の評価 p.14
2.2.1 反応装置 p.14
2.2.2 転化率と収率の定義 p.17
第三章 Ti修飾X、Yゼオライト光触媒 p.18
3.1 X、Yゼオライトの組成と構造 p.18
3.2 実験 p.20
3.2.1 触媒の調整 p.20
3.2.2 NOの光分解反応の評価 p.20
3.3 結果と考察 p.21
3.3.1 酸化チタンを綴じ込めるゼオライトの評価 p.21
3.3.2 NOの光分解反応性 p.27
3.4 結論 p.30
第四章 チタノシリケートゼオライトの光挙動およびNO光分解反応性 p.31
4.1 チタノシリケートゼオライト p.31
4.2 実験 p.31
4.2.1 触媒の調整 p.31
4.2.2 NO反応の評価 p.31
4.3 結果と考察 p.32
4.3.1 チタノシリケートゼオライトの評価 p.32
4.3.2 UV-vis反射スペクトルとフォトルミネセンス p.36
4.3.3 チタノシリケートゼオライトのESRスペクトル p.40
4.3.4 NOの光分解活性 p.44
4.4 結論 p.44
第五章 イオン交換の方法で修飾したZSM-5ゼオライトの光挙動 p.46
5.1 ZSM-5ゼオライト p.46
5.2 実験 p.48
5.3 結果と考察 p.48
5.3.1 TiO-ZSM-5ゼオライトのキャラクタリゼーション p.48
5.3.2 NOの光分解反応 p.52
5.3.3 NOの熱分解反応 p.55
5.4 結論 p.57
第六章 チタン担持したゼオライトのESR研究 p.59
6.1 酸化チタンに関するESR研究 p.59
6.2 実験 p.60
6.2.1 触媒の作製 p.60
6.2.2 触媒の評価 p.60
6.3 結果と考察 p.60
6.3.1 Ti/ZSM-5ゼオライトにおけるNOの光分解反応性 p.60
6.3.2 光吸収スペクトル p.61
6.3.3 フォトルミネッセンス p.63
6.3.4 ESRの結果 p.65
6.3.5 NOの相互作用 p.69
6.4 結論 p.71
第七章 まとめ p.72
7.1 ゼオライトを担体とする問題 p.72
7.2 UV-vis吸収の関連 p.72
7.3 ESRスペクトルの関連 p.76
7.4 NO光分解反応の関連 p.76
7.5 おわりに p.77
参考文献 p.79
後記 p.82
私の修士課程および研究体験 p.82
投稿論文と会議発表 p.83
原著論文 p.83
国際会議発表 p.83
その他の口頭発表 p.83
謝辞 p.85

 現在、低濃度の大気汚染物質NOなどを除去するために、光触媒は注目されている。そして、酸化チタン光触媒はその廉価性、安定性および強い酸化活性などで実用化への研究が進んでいる。酸化チタンを効率的に利用し、機能化するために、その微粒子化および固定機能化に関する方法は多く提案されている。本研究では酸化チタンを機能化するために、吸着剤、触媒および触媒担体としてよく使っているゼオラインに酸化チタンをイオン化、微粒子化および複合化することを試みた。そして、XPS、XRD、ESR、UV-vis反射スペクトル、フォトルミネッセンスおよびFT-IRなどの方法で担持した酸化チタンの種々の性質を評価した。
 粒子半径約30nmの酸化チタン(P-25)を単にゼオライトと接触させるだけでは、450℃の温度において焼成にしても、酸化チタン粒子の性質が依然として残されている。これはUV-vis反射スペクトルの吸収端パターンから分かる。つまり、ゼオライトと電子的相互作用がない。低濃度のTi(OC3H7)4の溶液を含浸したゼオライト表面にTi(OC3H7)4が吸着されて、これの焼成によって、TiO2になる。この方法で通常溶液で作製しにくい微粒子状態の酸化チタンをゼオライト表面に固定化することが可能である。含浸溶液の濃度を調整することによって、粒子サイズの異なる酸化チタンが得られる。電子スピン共鳴法によって表面電子、ホール捕捉中心を調べた結果、粒子サイズが大きい場合(約20◆以上)粉末酸化チタン自身と同じ性質を呈する。酸化チタンの粒子サイズがこれより小さくなると、酸化チタン結晶の表面的性質がだんだん弱くなり、ゼオライトとの相互作用が強くなる。フォトルミネッセンスの測定から粒子サイズが小さくなると、担持した酸化チタンの発光ピークが短波長側にシフトするという結果が明白に観測され、励起種のエネルギー準位が高くなることを示唆した。つまり、担持された酸化チタン粒子が小さくなると、バンドギャップエネルギーが大きくなり、すなわち、量子サイズ効果が現われる。
 チタン酸化物粒子がもっとも小さくなる状態、つまり、一つの原子としてのTiの光性質を調べるために、ゼオライト中の四配位のアルミニウムをHCIで溶出し、欠陥を作る、そこにチタンを埋め込んで、ゼオライト中の四配位のチタンが得られる。このような状態のチタンをESRで調べた結果、光照射によってより多くの電子捕捉中心が観測された。つまり、ゼオライト中の四配位状態のチタンが潜在的な還元活性を持っていることを示唆した。また、ホール捕捉中心も普通の酸化チタンと違って、H2Oと関係せずに骨格酸素と直接関係がある。この結果から、
[-Ti4+ - O2- ] → [-Ti3+ … O1- -]*
のような励起過程が存在すると考えられる。
 チタン酸化物がもっと不飽和になる状態、つまり、TiO2+イオンの状態でゼオライトの中に導入されると、光吸収現象、フォトルミネッセンスなど色々な性質があることを確認した。通常X、Y、ZSM-5ゼオライトのイオン交換量は次のような X > Y > ZSM-5 順番である。導入したTiの分散状態がこの順番に従って高くなる。これはフォトルミネッセンスの測定から明白に示される。つまり、ゼオライトのイオン交換量が大きい場合、特にX、Yゼオライトの場合、導入されたTiが二量体、三量体を生成する可能性がある。X、Yゼオライトは同じ結晶構造を持っているが、同じTiの担持量にしても、イオン交換量が大きいXゼオライトの表面に多くのTiが観測される。
 NOの反応性の比較から、Tiを担持したゼオライトには酸化チタン粉末に普通観測されない光分解反応性を呈する。つまり、光照射の条件でNOがN2、N2OおよびO2を生成する。Tiの分散度が高い場合、NOの転化率が高くなる傾向がある。この触媒をCu2+でイオン交換したZSM-5と比べれば、光反応の場合に、Tiを導入したZSM-5ゼオライトはNOの光分解反応活性を示す。熱反応の場合、Tiを導入したZSM-5ゼオライトはCu-ZSM-5触媒と異なり、主に酸化反応を行う。

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