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コンクリート部材における乾燥収縮応力の導入とひび割れの発生に関する研究

氏名 青木 優介
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第240号
学位授与の日付 平成14年3月25日
学位論文題目 コンクリート部材における乾燥収縮応力の導入とひび割れの発生に関する研究
論文審査委員
 主査 助教 授下村 匠
 副査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 長井 正嗣
 副査 教授 丸山 久一
 副査 助教授 大塚 悟
 副査 助教授 高橋 修

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第1章 序論 p.1
1.1 本研究の背景と目的 p.1
1.2 既往の研究と本研究の方針 p.2
1.2.1 コンクリートの一軸拘束収縮試験 p.2
1.2.2 乾燥収縮ひび割れ予測に関する既往の研究 p.3
1.2.3 既往の研究における問題点の総括と本研究の方針 p.4
1.3 引張変形特性とひび割れ発生条件の影響因子と本研究の範囲 p.5
1.4 本論文の構成 p.7
(第1章の参考文献) p.8
第2章 コンクリートの一軸引張試験方法に関する検討 p.9
2.1 はじめに p.9
2.2 既往の一軸引張試験方法における問題点 p.9
2.3 ドッグボーン型供試体に関する検討 p.10
2.3.1 実験の概要 p.10
2.3.2 供試体の破断性状 p.11
2.3.3 載荷中の供試体のひずみの測定 p.12
2.4 連続繊維シートにより補強した角柱供試体に関する検討 p.12
2.4.1 開発に至った経緯 p.12
2.4.2 実験の概要 p.14
2.4.3 供試体の破断性状 p.14
2.4.4 載荷中の供試体のひずみの測定 p.15
2.5 第2章のまとめ p.16
(第2章の参考文献) p.17
第3章 コンクリートの一軸引張挙動に及ぼす載荷速度と乾燥の影響に関する系統的検討 p.19
3.1 はじめに p.19
3.2 載荷速度と乾燥期間を変化させたコンクリートの一軸引張試験 p.20
3.2.1 一軸引張試験供試体 p.20
3.2.2 供試体の作成および養生 p.21
3.2.3 実験水準 p.21
3.2.4 載荷試験 p.22
3.3 引張変形特性に関する実験結果 p.23
3.3.1 載荷速度の影響 p.23
3.3.2 乾燥の影響 p.23
3.3.3 載荷速度の影響と乾燥の影響の複合 p.24
3.4 ひび割れ応カに関する実験結果 p.24
3.4.1 載荷速度の影響 p.24
3.4.2 乾燥の影響 p.25
3.4.3 載荷速度の影響と乾燥の影響の複合 p.25
3.5 第3章のまとめ p.27
(第3章の参考文献) p.28
第4章 一軸引張試験結果に基づくコンクリートの引張変形特性とひび割れ応カに関する実験式の定式化 p.29
4.1 はじめに p.29
4.2 コンクリートの引張変形特性の実験式の定式化 p.29
4.2.1 実験式の仮定 p.29
4.2.2 実験定数の決定 p.30
4.3 コンクリートのひび割れ応カの実験式の定式化 p.33
4.3.1 実験式の仮定 p.33
4.3.2 実験定数の決定 p.33
4.4 実験式による一軸引張試験結果の再計算 p.35
4.5 第4章のまとめ p.36
第5章 一軸拘束収縮試験による引張変形特性とひび割れ応カ実験式の検証 p.37
5.1 はじめに p.37
5.2 実験方法 p.38
5.2.1 一軸拘束収縮試験 p.38
5.2.2 自由収縮試験・強度試験 p.38
5.2.3 供試体の作成および養生 p.39
5.3 一軸拘束収縮試験体の解析方法 p.39
5.3.1 解析のフロー p.39
5.3.2 自由収縮ひずみ p.40
5.3.3 応力解析 p.40
5.3.4 ひび割れの判定 p.42
5.4 実験結果および解析結果 p.43
5.5 第5章のまとめ p.45
(第5章の参考文献) p.46
第6章 コンクリートの引張変形特性とひび割れ応力に及ぼす養生期間中の自己収縮応力履歴と断面寸法の影響に関する検討 p.47
6.1 はじめに p.47
6.2 実験方法 p.48
6.2.1 一軸拘束収縮試験 p.48
6.2.2 自由収縮試験・強度試験 p.49
6.2.3 供試体の作成および養生 p.49
6.3 解析方法 p.50
6.3.1 解析のフロー p.50
6.3.2 実験式の修正 p.50
6.4 養生期間中の自己収縮応力履歴の影響に関する検討 p.51
6.4.1 検討方法 p.51
6.4.2 自己収縮応力履歴の影響を考慮しない解析 p.52
6.4.3 養生期間中の自已収縮応力履歴の影響に関する考察 p.52
6.5 乾燥周長断面積比の影響に関する検討 p.53
6.5.1 検討方法 p.53
6.5.2 乾燥周長断面積比の影響を考慮しない解析 p.53
6.5.3 乾燥周長断面積比の影響に関する考察 p.54
6.6 第6章のまとめ p.55
(第6章の参考文献) p.56
第7章 コンクリート部材の乾燥収縮ひび割れ性状に及ぼす部材寸法の影響に関する検討 p.57
7.1 はじめに p.57
7.2 実験方法 p.58
7.2.1 一軸拘束収縮試験 p.58
7.2.2 自由収縮試験・強度試験 p.59
7.2.3 供試体の作成および養生 p.59
7.3 解析方法 p.59
7.3.1 解析のフロー p.59
7.3.2 有効弾性係数とひび割れ応力の実験式 p.60
7.4 部材長さの影響に関する検討 p.60
7.4.1 検討方法 p.60
7.4.2 実験結果と解析結果 p.61
7.5 部材の断面積の影響に関する検討 p.62
7.5.1 検討方法 p.62
7.5.2 実験結果と解析結果 p.62
7.6 第7章のまとめ p.63
(第7章の参考文献) p.63
第8章 既往の一軸拘束収縮試験結果による提案解析手法の総合的検証 p.65
8.1 はじめに p.65
8.2 検証方法 p.65
8.2.1 検証に用いる一軸拘束収縮試験結果 p.65
8.2.2 解析方法 p.66
8.2.3 一軸拘束収縮試験の解析における断面変化部の取り扱い p.67
8.2.4 実験結果と解析結果の比較方法 p.68
8.3 実験結果と解析結果の比較 p.69
8.4 第8章のまとめ p.70
(第8章の参考文献) p.71
第9章 結論 p.73
(本研究の関連文献) p.75
謝辞 p.76
付録I 実験データ集 p.77
I.1 はじめに p.77
I.2 一軸引張試験に関する実験データ p.78
I.3 一軸拘束収縮試験に関する実験データ p.91
付録II 既往の一軸拘束収縮試験の解析条件・解析結果 p.99
II.1 はじめに p.99
II.2 ひび割れ応力の基準値・自由収縮ひずみの回帰 p.99
II.3 解析条件の一覧 p.100
II.4 実験結果と解析結果の一覧 p.103

 本研究は,コンクリート部材の乾燥収縮ひび割れ予測技術を確立するための基礎研究である.ひび割れの予測に不可欠なコンクリートの特性である,乾燥収縮を拘束されたコンクリートの応力-ひずみ関係,ひび割れ発生条件を汎用的な材料モデルとして開発することに主眼を置いている.本研究では,モデル化を行う前提として,両特性に関する現象の基本的特徴を明らかにすることを目的とした.すなわち,乾燥収縮ひび割れ現象に関連する諸要因が,コンクリートの応力-ひずみ関係,ひび割れ発生条件に及ぼす影響について,一軸拘束収縮試験,一軸引張試験を併用した実験的検討により明らかにすることとした.
 本研究では,コンクリートの応力-ひずみ関係,ひび割れ発生条件に影響を及ぼす要因のうち,載荷速度の影響,乾燥の影響,載荷速度の影響と乾燥の影響の複合効果,養生期間中の自已収縮応力履歴の影響,乾燥周長断面積比の影響について検討する.検討の順序としては,乾燥収縮ひび割れ現象特有の問題であることから,載荷速度と乾燥の影響に関する検討を優先させ,養生期間中の自已収縮応力履歴の影響,乾燥周長断面積比の影響については,載荷速度と乾燥の影響に関する知見を下地にして検討を行うことにした.
 載荷遠度と乾燥条件を変化させたコンクリートの一軸引張試験を行い,一軸引張条件下にあるコンクリートの応力-ひずみ関係,ひび割れ発生条件に及ぼす,載荷速度の影響,乾燥の影響,載荷速度の影響と乾燥の影響の複合効果に関する検討を行った.その結果,応力-ひずみ関係の傾き,すなわち有効弾性係数は,載荷速度が遅くなるほど小さくなること,乾燥初期に低下し,その後はほとんど変化しない傾向が得られること,載荷速度の影響と乾燥の影響の複合効果が現れることがわかった.ひび割れ発生条件の指標としては,ひび割れ応力を選択した.ひび割れ応力は,乾燥の有無にかかわらず載荷速度の影響をほとんど受けないこと,乾燥初期に低下し,その後は維持もしくは若干回復する傾向が見られること,載荷速度の影響と乾燥の影響の複合効果は現れないことがわかった.
 なお,上記の検討に先立ち,精度と安定性に優れたコンクリートの一軸引張試験方法を確立する必要があった.本研究では,(1)高い確率で供試体が試験区聞で破断すること,(2)供試体の作製,載荷が比較的容易であること,(3)試験区間がある程度の長さを有し,ひずみが測定できることの3条件を重視し,試行錯誤を重ねた.その結果,連続繊維シートにより補強した角柱型供試体を用いた一軸引張試験方法を確立した.この方法は,載荷速度や乾燥条件によらず高い確率で試験区間での破断を生じさせることができ,作製精度が得やすく,良好なひずみの測定が行えるものであった.
続いて,一軸引張試験で得られた載荷速度と乾燥の影響に関する知見の精度と適用性を検証した.一軸引張試験結果より,コンクリートの一軸引張応力-ひずみ関係,ひび割れ発生条件の実験式を導出し,これを用いた解析により,養生期間中の自己収縮の拘束を除去した一軸拘束試験供試体の応力導入過程,ひび割れの発生を説明できるかどうかを検証した.その結果,解析は,実験の応力導入過程,ひび割れ発生応力を良好に予測でき,載荷速度と乾燥の影響に関する知見は,良好な精度と適用性を有することが証明された.
 載荷速度と乾燥の影響に関する知見を下地にして,さらに養生期間中の拘束条件,試験区間の乾燥周長断面積比を変化させた一軸拘束収縮試験を用いて,一軸引張条件下にあるコンクリートの応力-ひずみ関係,ひび割れ発生条件に及ぼす,養生期間中の自已収縮応力履歴の影響,乾燥周長断面積比の影響について検討した.その結果,養生期間中の自己収縮応力履歴の影響により,コンクリートの有効弾性係数,ひび割れ応力が低下することを明らかにした.また,乾燥周長断面積比の増減により,コンクリートの有効弾性係数,ひび割れ応力に及ぼす乾燥の影響が増減することを明らかにした.
 最後に,広範な条件で行われている既往の一軸拘束収縮試験について,応力導入過程とひび割れの発生の予測を行うことにより,本研究で得られた知見の精度ならびに適用性に関する総合的検証を行った.その結果,本研究で得られた応力-ひずみ関係に及ぼす影響に関する知見は,乾燥周長断面積比の影響の評価に若干の疑問はあるものの,概ね良好な精度と適用性を有していることが証明された.また,ひび割れ応力に及ぼす影響に関する知見も,良好な精度と適用性を有していることが証明された.
 今後の課題として,本研究で得た知見の精度,適用性を向上させることを挙げた.特に,養生期間中の自已収縮応力履歴の影響,乾燥周長断面積比の影響に関しては,検討の余地が多く残されている.また,本研究では検討範囲外としたコンクリートの配合・使用材料の影響,水和による剛性・強度の発現の影響についても検討を行う必要がある.これらの課題を克服した上で,比較的単純な構造の実部材について実際に乾燥収縮ひび割れ予測を行うことにより,本研究の工学的価値がより明確になる.

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