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十字交差配列二円柱における上流円柱の縦渦励振現象に関する研究

氏名 熊谷 勇雄
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第248号
学位授与の日付 平成14年3月25日
学位論文題目 十字交差配列二円柱における上流円柱の縦渦励振現象に関する研究
論文審査委員
 主査 助教授 高橋 勉
 副査 教授 白樫 正高
 副査 教授 増田 渉
 副査 教授 金子 覚
 副査 助教授 門脇 敏

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目次 p.I
記号 p.III
従来の研究で使用された記号 p.IV
本研究で使用した記号 p.V
第1章 序論 p.1
1-1. 緒言 p.2
1-2. 従来の研究 p.8
1-2-1. カルマン渦励振の抑制および異常振動の発生 p.8
1-2-2. 縦渦の構造および流出特性 p.18
1-2-3. 上流円柱に作用する変動揚力 p.32
1-3. 本研究の目的 p.34
1-4. 本研究の概要 p.34
第2章 実験装置および実験方法 p.36
2-1. 実験装置 p.37
2-1-1. 風洞装置 p.37
2-1-2. 上流円柱の支持方法 p.37
2-1-2-1. 固定系 p.37
2-1-2-2. 加振系 p.38
2-1-2-3. 弾性系 p.38
2-1-3. 下流円柱の支持方法 p.38
2-2. 測定方法 p.45
2-2-1. 主流速度 p.45
2-2-2. 上流円柱の変位および振動数 p.45
2-2-3. 縦渦の流出周波数 p.46
2-2-4. 上流円柱に作用する変動揚力 p.46
2-3. 測定機器および信号処理装置 p.53
2-4. 十字交差配列二円柱の寸法および流動・振動条件 p.54
第3章 固定支持された十字交差配列二円柱からの縦渦流出 p.55
3-1. 緒言 p.56
3-2. 本章の目的 p.56
3-3. 実験装置および実験方法 p.57
3-4. 実験結果および考察 p.59
3-4-1. 二円柱直径が等しい十字交差配列二円柱からの縦渦流出 p.59
3-4-2. 縦渦流出に及ぼす下流円柱直径の影響 p.65
3-4-3. 上流円柱に作用する変動揚力 p.68
3-5. 結論 p.81
第4章 縦渦流出に及ぼす上流円柱の振動の影響 p.82
4-1. 緒言 p.83
4-2. 本章の目的 p.83
4-3. 実験装置および実験方法 p.84
4-4. 実験結果および考察 p.87
4-4-1. 縦渦のLock-in現象発生の判別 p.87
4-4-2. Lock-in現象に及ぼす主流速度、上流円柱振動数・振幅の影響 p.92
4-4-3. 上流円柱の振動と縦渦流出の位相差 p.94
4-4-4. 縦渦のLock-in現象発生条件 p.97
4-5. 結論 p.101
第5章 十字交差配列二円柱における上流円柱の縦渦励振の発生条件 p.102
5-1. 緒言 p.103
5-2. 本章の目的 p.103
5-3. 実験装置および実験方法 p.104
5-4. 実験結果および考察 p.106
5-4-1. 縦渦のLock-in現象および縦渦励振の発生条件 p.106
5-4-1-1. Lock-in現象発生の判別 p.106
5-4-1-2. 縦渦のLock-in現象および縦渦励振 p.111
5-4-1-3. Lock-in現象および縦渦励振の発生条件 p.120
5-4-1-4. 実質変動揚力係数 p.125
5-4-2. 縦渦励振の発生に及ぼす二円柱隙間の影響 p.131
5-4-3. 縦渦励振の発生に及ぼす下流円柱直径の影響 p.137
5-5. 結論 p.143
第6章 結論 p.144
参考文献 p.148
謝辞 p.151

 流れに直交するように配置された円柱の下流に別の円柱を十字交差配列した場合、二つの円柱の交差部近傍からは三次元構造をもった縦渦が周期的に流出する。縦渦の流出に伴い、上流側に配置された円柱(上流円柱)の表面には周期的な圧力変動が作用し、カルマン渦励振よりも大きい励振力を示す縦渦励振が誘起される場合がある。このような柱状物体の配置は熱交換器の蒸発管や空調設備のダクト吐出し口の面格子など実際の流れ場の各所において存在し、構造物・装置等の破壊および機能低下の原因となるため、縦渦励振を回避・抑制する技術を確立することが工業上重要である。
 本研究では、十字交差配列二円柱における縦渦の流出形態および流出特性を明らかにすることを目的とした。また、上流円柱の縦渦励振現象の発生条件および変動揚力係数を求め、これらに及ぼす二円柱直径比および二円柱隙間の影響を調べることにより、広い条件下において縦渦励振の発生を回避・抑制する技術を確立することを目的として、風洞装置を用いて実験的研究を行った。以下に各章において得られた結論を要約する。
 第1章「序論」では、本研究に関連する従来の研究報告について述べるとともに、本研究の目的および概要を示した。
 第2章「実験装置および実験方法」では、本研究で使用した実験装置および測定機器について説明するとともに、各種パラメータの測定方法について述べた。また、第3章、第4章、および第5章で行う各実験の測定系、すなわち固定系、加振系、および弾性系における、十字交差配列二円柱の寸法および流動・振動条件を示した。
 第3章「固定支持された十字交差配列二円柱からの縦渦流出」では、上流円柱が固定支持された十字交差配列二円柱において、直径が異なる下流円柱(直径d2)を用いて主流速度と二円柱隙間比s/d2をパラメータとして縦渦の流出周波数を測定した。その結果、上流円柱直径d1と下流円柱直径d2が異なる場合でも二円柱直径が等しい場合と同様に、二円柱隙間比が0≦s/d2≦0.25の範囲でTrailing vortexが、0.25≦s/d2≦0.5の範囲でNecklace vortexが流出することを見出した。さらに、主流速度、二円柱隙間比、および二円柱直径比d2/d1をパラメータとして上流円柱に作用する変動揚力を測定することにより、変動揚力が下流円柱直径に比例することを明らかにした。また、変動揚力が上流円柱の限られた領域にのみ作用することを考慮することにより、測定した変動揚力から実質変動揚力係数(CL)'rmsを求めた。これらの結果から、縦渦の流出および上流円柱に作用する励振力が、下流円柱直径に強く依存することを明らかにした。
 第4章「縦渦流出に及ぼす上流円柱の振動の影響」では、上流円柱の振動が縦渦の流出に及ぼす影響を明らかにするために、上流円柱に対して機械的に正弦振動を与えた。上流円柱直径d1と下流円柱直径d2が等しい十字交差配列二円柱において、二円柱隙間比s/d2を0.08もしくは0.28に設定し、主流速度U、上流円柱振動数fc、および振動振幅Zをパラメータとして縦渦の流出周波数を測定することにより、各パラメータのある範囲にわたってTrailing vortexおよびNecklace vortexの流出周波数が上流円柱の振動数に同期するLock-in現象が発生することを見出した。これらの測定結果をもとに、上流円柱の無次元振動数Stc(fc・d1/U)とストローハル数St0(fv0・d1/U)の比Stc/St0(=fc/fv0)と、無次元振動振幅Zrms/d1における各縦渦のLock-in現象発生条件を求めた。この結果から、Necklace vortexのLock-in現象はカルマン渦の場合と同様にStc/St0=1.0を含む狭い範囲で発生するのに対し、Trailing vortexのLock-in現象は1.0≦Stc/St0≦2.0の非常に広い範囲で発生することを明らかにした。
 第5章「十字交差配列二円柱における上流円柱の縦渦励振」では、上流円柱が流れに対して垂直な方向に振動できるように弾性支持された二円柱直径が等しい(d1=d2)十字交差配列二円柱を用いた。二円柱隙間比s/d2を0.08もしくは0.28に設定し、主流速度と上流円柱の構造減衰(対数減衰率)をパラメータとして縦渦の流出周波数と上流円柱の振動振幅を測定した。そして、その測定結果をもとに、スクルートン数Scと、固有振動数fnに対する固定系での縦渦流出周波数fv0の相対的偏差(fv0-fn)/fnにおける縦渦励振発生条件を明らかにした。この結果から、Trailing vortexによる縦渦励振の抑制には、構造減衰を大きくすることが有効であることを明らかにした。また、二円柱直径比d2/d1および二円柱隙間比を変えて縦渦励振発生条件を求めることにより、Trailing vortexによる縦渦励振は二円柱隙間比を約0.04以下に設定することで抑制され、Necklace vortexによる縦渦励振は下流円柱直径を上流円柱直径の約0.7に設定することで抑制されることを見出した。さらに、対数減衰率、二円柱直径比、および二円柱隙間比をパラメータとして実質変動揚力係数(CLR)'rmsを求め、固定系で得られた実質変動揚力係数(CL)'rmsと比較することにより、構造減衰、二円柱隙間比、および二円柱直径比が異なる場合でも、実質変動揚力係数(CLR)'rmsが上流円柱に作用する励振力を評価する上で有効であることを明らかにした。
 第6章「結論」では、本論文の各章において得られた結論を総括した。
 以上に示した結論から、本研究では二円柱隙間比および二円柱直径比の変化に対する縦渦の流出特性を明らかにするとともに、十字交差配列二円柱における上流円柱の縦渦励振現象を、二円柱隙間、下流円柱直径、および上流円柱の構造減衰を調整することにより定量的に回避・抑制する手段を見出した。

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