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Walsh関数を応用したPWMインバータ制御システムの高性能化に関する研究

氏名 チオエイサイ クリット
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第249号
学位授与の日付 平成14年3月25日
学位論文題目 Walsh関数を応用したPWMインバータ制御システムの高性能化に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 近藤 正示
 副査 教授 高橋 勲
 副査 助教授 大石 潔
 副査 助教授 野口 敏彦
 副査 千葉大学 助教授 佐藤 之彦

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第1章 序論
1.1 研究の背景 p.1
1.2 研究の目的 p.2
1.3 論文の概要 p.3
参考文献 p.5
第2章 Walsh関数によるPWMインバータ制御システムの高性能化の手法
2.1 緒言 p.9
2.2 Walsh高調波級数の数学的基礎 p.11
2.2.1 周期関数のWalsh高調波級数展開 p.11
2.2.2 Walsh高調波級数展開による周期関数の近似 p.16
2.3 Walsh関数の一定値によるWalsh高調波計算の簡略化 p.20
2.4 Walsh乗算法によるPWM波形から指令値成分の分離 p.26
2.5 信号波形の平均値によるWalsh高調波の高精度検出 p.30
2.6 その他のWalsh関数の応用 p.35
2.7 結言 p.40
参考文献 p.41
第3章 低次高調波低減PWMパターン合成への応用
3.1 緒言 p.43
3.2 直接計算によるPWM波形の合成法 p.45
3.2.1 PWM波形を正弦波指令値に合わせる原理 p.45
3.2.2 PWM波形のWalsh高調波 p.46
3.2.3 正弦波指令値と合わせる方法 p.48
3.2.4 Walsh関数の直交性によるWalsh逆行列の簡略計算 p.49
3.2.5 PWM波形のスイッチング関数の計算方法 p.50
3.2.6 合成結果および三角波キャリヤ比較PWM波形との比較 p.51
3.3 スイッチング数と高調波数が異なる場合の合成法 p.56
3.3.1 スイッチング関数の設定およびWalsh高調波の誘導 p.56
3.3.2 合成結果および歪評価 p.59
3.4 繰り返し計算によるFourier高調波を低減する方法 p.61
3.4.1 Fourier高調波を低減する原理 p.62
3.4.2 Fourier高調波低減法の動作 p.63
3.4.3 PWM波形の歪低減プロセス p.64
3.4.4 合成結果のFourier高調波 p.65
3.5 結言 p.68
参考文献 p.69
第4章 三角波キャリヤ比較PWM電圧指令値波形の再生への応用
4.1 緒言 p.71
4.2 三角波キャリヤ比較PWMの動作 p.73
4.2.1 コンパレータの数学モデル p.73
4.2.2 三角波キャリヤ比較PWM波形の高調波 p.75
4.3 指令値波形の再生法 p.77
4.3.1 Walsh高調波による指令値波形の再生 p.77
4.3.2 1周期分のデータを取得する方法 p.78
4.3.3 PWM波形のWalsh高調波変換法 p.79
4.3.4 PWM波形のデータ数と再生誤差の評価 p.80
4.4 キャリヤおよび指令値波形による再生波形の変化 p.82
4.4.1 キャリヤのDuty比とWalsh関数のcal成分 p.82
4.4.2 キャリヤの種類とPWM波形の高調波 p.85
4.4.3 指令値波形とPWM波形の高調波 p.88
4.4.4 変調率とPWM波形の高調波 p.90
4.5 フィルタによる指令値波形の再生 p.92
4.6 結言 p.98
参考文献 p.99
第5章 位置センサレスPMモータ駆動への応用
5.1 緒言 p.101
5.2 PMモータの回路方程式とWalsh高調波 p.102
5.2.1 PMモータの回路方程式 p.102
5.2.2 PMモータ電流の高調波計算 p.103
5.2.3 Walsh高調波を用いたインダクタンスの推定 p.107
5.3 PMモータの回転子位置の推定方法 p.109
5.3.1 PMモータのインダクタンス推定法 p.109
5.3.2 三相三角波キャリヤの導入とWalsh電圧高調波を0に固定する方法 p.110
5.3.3 Walsh高調波による回転子位置の推定法 p.112
5.4 実験によるPMモータの駆動 p.114
5.4.1 PMモータ駆動の実験方法 p.114
5.4.2 電流リプルのWalsh高調波検出 p.116
5.4.3 PMモータのステップ応答 p.119
5.5 結言 p.124
参考文献 p.125
第6章 結論
6.1 本研究の成果 p.127
6.2 今後の課題 p.132
付録
I] 2進数の和 p.135
II] 擬似逆行列 p.136
参考文献 p.139
発表論文
謝辞

 本論文は,Walsh関数の高速計算・PWM高調波の分離性・高精度検出に着目し,それぞれの特長を低次高調波低減PWMパターンの合成・PWM波形の指令値波形の再生・PMモータ制御システムヘ応用し,それらを高性能化することを目的とする。PWMインバータ制御システムを高性能化するために,従来では三角関数およびFourier高調波解析・合成を使われてきたが以下のような問題が発生する。
 1)低次高調波低減PWMパターンの合成において,従来法ではPWMパターンのFourier高調波を導き,基本波以外の低次Fourier高調波をOにする方法である。しかし,繰り返し計算を利用するので計算時間が非常に長くなり,さらに,PWMパターンのスイッチング数が多くなるとFourier高調波を低減するためには工夫および経験が必要である。従って,高速および工夫が不要なPWMパターン合成手法が必要となる。
 2)三角波キャリヤ比較PWM波形から指令値波形の再生において,Fourier高調波領域ではPWM変調による不要高調波成分が低次高調波領域に広がる。低次高調波領城には元の指令値波形が存在しているので不要高調波成分と混じって,低次高調波から指令値波形を再生するとスイッチング高調波が含まれてしまう。従って,元の指令値波形と不要高調波成分を分離できる解析の手法が必要である。
 3)高周波PWMインバータの電流リプルを用いた位置センサレスPMモータの駆動において,電流リプルのFourier高調波成分の検出誤差を低減するためには高周波サンプリングが必要である。さらに,高速・高分解能A-D変換器が必要であり,特殊なDSPなどが必要となってしまう。従って,高周波サンプリングおよび高速・高分解能A-D変換器が必要としない高精度な高調波検出法が必要となる。
 以上の技術的背景と目的に基づいて本論文を6つの章から構成し,各章の内容を次のように設定した。
 第1章では,本論文の序論として本研究の背景を述べ,PWMインバータ制御システムのFourier高調波の解析・合成などの問題点をあげ,それに対応するWalsh関数の利点を示す。次に,研究目的の設定を行い,各章の概要を述べる。
第2章では,本論文で応用するWalsh関数による高性能化手法の原理を3つ提案し,それぞれの応用手法を述べる。(1)PWM波形のWalsh高調波計算は簡略・高速であることを示し,第3章に示す低次高調波低減PWM波形の合成に応用する。(2)Walsh波形の乗算法により三角波キャリヤ比較PWM波形のWalsh高調波成分はPWM波形の指令値成分と不要高調波成分との分離性が良いことを示し,第4章に示すPWM波形から指令値波形の再生に応用する。(3)信号波形の平均値からWalsh高調波の高精度を計算できることを示し,第5章に示す位置センサレスPMモータの駆動に応用する。
 第3章では,PWM波形のWalsh高調波計算の簡略化・高速化を生かして,高速計算による低次高調波低減PWMパターンの合成法を示す。まず,正弦波のWalsh高調波から直接PWMパターンのスイッチングタイミングを決定する方法を示し,Walsh関数の直交性により,スイッチングタイミングの計算式を簡略化できることを示す。スイッチングタイミング数とWalsh高調波数が等しい場合および等しくない場合のPWMパターン合成法を示し,それぞれの長所と短所を述べる。さらに,Fourier高調波とWalsh高調波の変換行列を導入し,繰り返し計算による低次Fourier高調波低減PWMパターンの合成法を示す。提案法で合成されたPWMパターンを三角波キャリヤ比較PWM波形と総合歪率の比較を行い,提案法の有効性を実証する。
 第4章では,Walsh高調波成分では三角波キャリヤ比較PWM波形の指令値波形成分と不要高調波成分との分離性の良さを使って,PWM波形から元の指令値波形を再生する方法を示す。三角波キャリヤ比較PWM変調に用いるコンパレータを乗算波形の和で近似し,Walsh関数波形の乗算法を導入することによりWalsh高調波がPWM波形から元の指令値波形成分を分離できることを証明する。次に,再生波形上のスイッチング高調波を低減するテクニックを述べ,キャリヤ波形および指令値波形が変化したときの再生波形への影響を検討する。また,Fourier高調波による再生波形と比較し,誤差評価を行う。さらに,実験によるFourier-LPF(Low Pass Filter)の再生波形をWalsh-LPFの再生波形と比較し,Walsh再生波形の有効性を示す。
 第5章では,Walsh高調波の高精度検出法に基づいて,PWMインバータのスイッチングにより生じたPMモータの電流リプル20[kHz]のWalsh高調波成分から回転子位置を推定し,位置センサレス制御でPMモータの駆動法を示す。提案法は,PMモータに高調波を注入しなく,BPF(Band Pass filter)を必要としない回転子位置の推定法である。まず,PMモータの回路方程式にWalsh関数を導入し,PMモータ電流リプルのWalsh高調波成分から回転子位置を推定できることを示す。Walsh高調波を定積分回路で検出すれば,高周波サンプリングおよび高速・高分解能A-D変換器が不要となる。次に、実験により定積分回路を用いて電流リプルのWalsh高調波成分を検出可能であることを確認し,位置推定誤差およびステップ応答結果により提案法の有効性を実証する。
 第6章では,本論文の結論として各章ごとの総括を行い,本研究に残された課題および今後の研究発展について述べる。

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