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Characteristics of Cr-Al-N-O Thin Films Prepared by Pulsed Laser Deposition (パルスレーザー堆積法で作製したCr-Al-N-O薄膜の特性)

氏名 平井 誠
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第250号
学位授与の日付 平成14年3月25日
学位論文題目 Characteristics of Cr-Al-N-O Thin Films Prepared by Pulsed Laser Deposition (パルスレーザー堆積法で作製したCr-Al-N-O薄膜の特性)
論文審査委員
 主査 教授 八井 浄
 副査 助教授 江偉 華
 副査 助教授 末松 久幸
 副査 講師 武田 雅敏
 副査 大阪大学接合科学研究所助教授 巻野 勇喜雄

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Chapter 1. Introduction p.1
1-1. Overview p.1
1-2. Literature Survey p.3
1-2-1. Pulsed Laser Deposition p.3
1-2-2. Transition Metal Oxynitride Thin Films with Bi Structure p.4
1-2-3. Ti-Al-N Thin Films p.4
1-2-4. Cr-Al-N Thin Films p.5
1-3. Statement of The Problem p.6
1-4. Objectives of This Study p.6
1-5. Outline of This Thesis p.7
References p.8
Chapter 2. Characteristics of Cr-N-O Thin Films Prepared in Nitrogen Atmosphere p.9
2-1. Introduction p.10
2-2. Experimental Setup p.10
2-3. Results and Discussion p.13
2-3-1. Characteristics of Cr-N-O Thin Films p.13
2-3-2. Oxidation Behaviors of Cr-N-O Thin Films p.20
2-4. Conclusions p.25
References p.26
Chapter 3. Characteristics of Cr-Al-N-O Thin Films Prepared in Nitrogen Atmosphere p.27
3-1. Introduction p.28
3-2. Experimental Setup p.28
3-3. Results and Discussion p.31
3-3-1. Characteristics of Cr-Al-N-O Thin Films p.31
3-3-2. Oxidation Behaviors of Cr-Al-N-O Thin Films p.39
3-4. Conclusions p.43
References p.44
Chapter 4. Characteristics of Cr-Al-N-O Thin Films Prepared in Vacuum p.46
4-1. Introduction p.47
4-2. Experimental Setup p.48
4-3. Results and Discussion p.50
4-3-1. Characteristics of Cr-Al-N-O Thin Films p.50
4-3-2. The Factor in Hardening of Cr-Al-N-O Thin Films p.64
4-3-3. Oxidation Behaviors of Cr-Al-N-O Thin Films p.71
4-4. Conclusions p.78
References p.79
Chapter 5. Summary p.82
5-1. Conclusions to be Specified p.82
5-2. Problems to be Solved p.84
5-3. Some Future Prospects p.84
Acknowledgements p.86
List of Published Literatures Regarding This Study p.87
List of Papers Published as A Conference Proceeding p.88
List of Other Published Literatures p.89
List of Presenting Reports at Several Meetings p.90

 現在、切削工具のコーティング材としては窒化チタンアルミニウム(Ti-Al-N)が多用されている。しかし、過酷な条件下で使用されるコーティング材は、長寿命化を達成するために、硬度や耐酸化性を一層向上させる必要がある。窒化クロムアルミニウム(Cr-Al-N)は、窒化クロム(CrN)に窒化アルミニウム(AlN)が固溶した材料であり、AlNの固溶量が非常に多いことが分かっている。固溶硬化は固溶量が多いほど有効なので、Cr-Al-Nによって硬度の向上が期待できる。また、Crの表面に形成される酸化クロム(Cr2O3)は、Tiの表面に形成される酸化チタン(TiO2)よりも熱的に安定なので、Cr-Al-NはTi-Al-N以上の耐酸化性を示すと考えられる。これまで、耐酸化性に関してCr-Al-NがTi-Al-Nより優れていることが知られているが、硬度的にはTi-Al-Nを超えるものが作製されていない。これは、AlNの固溶量に対するCr-Al-Nの硬度の挙動の理解が不十分なことが原因であった。物理的気相蒸着法の1つであるパルスレーザー堆積法(PLD)は、容易に薄膜の組成を制御ができる特徴がある。また、PLD法で作製した薄膜には、チャンバー内の残留酸素が数10at.%膜中に混入することが報告されている。そこで、本研究では、PLD法で作製した酸窒化クロムアルミニウム(Cr-Al-N-O)薄膜の硬度特性を明確化することを目的とした。以下に本論文の各章の概要を示す。
 第1章「序論」では、Cr-Al-N-O薄膜の有用性を概説し、従来の研究の問題点を明確にするとともに、本研究の目的、意義および構成を述べる。
 第2章「窒素雰囲気中で作製したCr-N-O薄膜の特性」では、AlNを固溶させる前段階として、Cr-N-O薄膜を作製しその特性を明らかにした。ラザフォード後方散乱分光法(RBS)により、窒素雰囲気中で作製した薄膜の組成はCr0.38N0.24O0.38であり、膜中には窒素よりも酸素の方が多く含まれることが分かった。また、B1(NaC1)構造を持つCr-N-O薄膜は、硬度がHV1800であり、酸化開始温度が600℃付近であった。これらの値はCrNの硬度や酸化開始温度と同程度であった。
 第3章「窒素雰囲気中で作製したCr-Al-N-O薄膜の特性」では、Cr-N-O薄膜にAlNを固溶し、特性の変化を調べた。薄膜の組成は、ターゲットの面積比(SR=SAl/(SCr+SAl))を変えて制御した。その結果、膜中の陽イオン組成(x=Al/(Cr+Al))は、SRにより容易に制御できることが分かった。薄膜はx=75at.%まではB1構造であったが、xがそれ以上になると結晶相が確認できなくなった。これは、Cr-Al-N-O薄膜が固溶限を超え、結晶化し難いB4(wurtzite)構造に変わったためと考えられる。なお、Cr-Al-N-O薄膜の固溶限がx=75at.%以上と観察されたが、これはCr-Al-Nの固溶限と一致した。薄膜の硬度は、膜中の内部応カが上昇すると共に硬くなり、x=75at.%で最大値(HV2800)を示した。しかし、この値はTi-Al-Nの硬度と同程度であった。また、酸化試験の結果から、Cr-Al-N-O薄膜はRT~900℃の範囲で酸化が進行しないことが判明した。
 第4章「真空中で作製したCr-Al-N-O薄膜の特性」では、Cr-Al-N-O薄膜の特性の更なる向上を目的とし、真空中で窒化物ターゲットを用い薄膜作製を行った。真空中での成膜は、膜中の酸素量の低減並びに基板表面上におけるマイグレーションの向上を期待したからである。膜中の酸素含有量が多過ぎると硬度の低下に繁がることが酸窒化チタン薄膜において報告されている。また、活発なマイグレーションにより薄膜の密度並びに結晶化度の向上が期待される。RBSによる組成分析により、膜中の酸素と窒素の割合は1対1であることが判明した。窒素雰囲気中で作製した薄膜では酸素の含有率の方が高かったので、真空中での作製により膜中の酸素量を低減できた。また、真空中で作製した薄膜においては、固溶限を超えてもB4構造に起因する結晶相が確認できた。これは、基板表面でのマイグレーンョンが活発になり結晶化が促進したものと考えられる。そして、Cr-Al-N-O薄膜の硬度は、x=25at%においてHV4000を超えることが判明した日この値はTi-Al-NよりもHV1000程度高硬度であった。また、Cr-Al-N-O薄膜の硬度は、圧縮応力、結晶子サイズ、弾性率等の要因の中で、弾性率に最も依存することが分かった。耐酸化試験の結果から、Cr-Al-N-O薄膜の酸化開始温度は900℃以上であることが判明した。これはTi-Al-Nの酸化開始温度よりも100℃程高かった。また、微小角入射X線回折法より、膜表面にはCr2O3と酸化アルミニウム(α-Al2O3)が存在することが明らかとなった。熱的に安定なこれらの酸化皮膜が、酸素の拡散バリアとして働くために耐酸化性が向上していることが分かった。
 第5章「結言」では、本研究を通して明らかになったCr-Al-N-O薄膜の有用性を述べ、研究結果を総括した。

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