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応力・ひずみ履歴を受けた粘性土の力学特性

氏名 酒井 直樹
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第264号
学位授与の日付 平成15年3月25日
学位論文題目 応力・ひずみ履歴を受けた粘性土の力学特性
論文審査委員
 主査 教授 杉本 光隆
 副査 教授 海野 隆哉
 副査 助教授 大塚 悟
 副査 助教授 豊田 浩史
 副査 金沢工業大学 教授 川村 國夫

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目次

第1章 序論 p.1
1.1 研究の背景 p.1
1.2 本論文の構成 p.2

第2章 既往の研究 p.4
2.1 地盤の強度 p.4
2.2 残留強度について p.6
2.3 不飽和土の破壊基準について p.7
2.4 応力履歴について p.8
 2.4.1 応力履歴に関する実験的研究 p.9
 2.4.2 応力履歴に関する理論的研究 p.9

第3章 試験装置と試料
3.1 三軸試験機 p.11
 3.1.1 三軸試験機 の原理 p.11
 3.1.2 実験手順 p.11
 3.1.3 各種手順の詳細 p.12
 三軸試験機の応用 p.13
 不飽和土への応用 p.14
 微小ひずみ領域への応用 p.14
3.2 中空ねじりせん断試験 p.15
 3.2.1 中空ねじりせん断試験の原理 p.16
 円筒座標系の基本式 p.16
 中空円筒供試体についての応力とひずみの仮定 p.16
 中空供試体に働く応力 p.17
 中空供試体に働くひずみ p.17
 主応力と主ひずみ p.21
 中空供試体に使われる関係式 p.22
 3.2.2 中空ねじりせん断試験について p.24
 試験装置 p.24
 供試体の体積変化測定法 p.25
 3.2.3 実験手順 p.25
3.3 リングせん断試験 p.27
 3.3.1 リングせん断試験機について p.27
 載荷と計測 p.27
 定体積試験と定圧試験 p.28
 供試体の準備 p.29
 3.3.2 実験手順 p.29
3.4 試料 p.31
 3.4.1 試料の物理的性質 p.31
 3.4.2 試料の鉱物的性質 p.33

第4章 大変位せん断ひずみ履歴を受けた飽和粘性土の力学特性 p.39
4.1 はじめに p.39
4.2 残留状態とは p.41
4.3 試験手順 p.42
4.4 試験結果と考察 p.45
 4.4.1 定体積リングせん断試験の検証 p.45
 豊浦砂 p.45
 カオリン粘土 p.47
 4.4.2 残留状態の評価 p.49
 4.4.3 リングせん断試験による残留強度測定に関する考察 p.50
4.5 まとめ p.53

第5章 サクション応力履歴を載荷した不飽和粘性土の力学特性 p.54
5.1 はじめに p.54
5.2 不飽和供試体について p.55
5.3 実験手順 p.56
 5.3.1 試験装置 p.56
 5.3.2 供試体 p.57
5.4 実験結果 p.60
 5.4.1 三軸試験 p.60
 状態の異なる供試体の圧密過程 p.60
 Aタイプ供試体のせん断特性 p.61
 Bタイプ供試体のせん断特性 p.62
 Cタイプ供試体のせん断特性 p.64
5.4.2 中空ねじりせん断試験 p.66
 含水比一定試験 p.66
 サクション一定試験 p.66
5.5 考察 p.68
 5.5.1 応力履歴の影響 p.68
 5.5.2 排水条件の影響 p.70
 5.5.3 マトリックスサクションによる強度増加について p.72
5.6 まとめ p.74

第6章 三次元状態下でのせん断応力履歴を受けた飽和粘性土の力学特性 p.75
6.1 はじめに p.75
6.2 実験手順 p.76
 6.2.1 供試体 p.78
6.3 実験結果 p.79
 6.3.1 初期せん断の力学特性 p.79
 αsの影響 p.79
 bsの影響 p.79
 6.3.2 せん断応力履歴が載荷された飽和粘性土の力学特性 p.80
 力学特性におけるqsの影響 p.81
 力学特性におけるαhの影響 p.82
 力学特性におけるbhの影響 p.83
 せん断履歴が強度に及ぼす影響 p.85
 αhとbhの相互作用が力学特性に与える影響 p.86
 6.3.3 拘束圧の変化が力学特性に与える影響 p.88
 6.3.4 粘土材料の違いが力学特性に与える影響 p.89
6.4 考察 p.98
 6.4.1 応力とひずみの非共軸性 p.98
 6.4.2 硬化パラメータの検討 p.100
 6.4.3 弾性限界面 p.104
 ひずみのレベルの違いによる弾性係数について p.104
 支配パラメータの決定 p.106
 せん断応力履歴による影響のモデル化 p.108
 6.4.4 せん断応力履歴を受けた粘性土のモデル化 p.114
6.5 実問題に対する適用 p.119
 6.5.1 はじめに p.119
 土圧 p.119
 応力履歴を考慮した壁体裏の土圧の評価 p.119
 6.5.2 数値計算方法について p.120
 解析モデル p.120
 解析条件 p.121
 6.5.3 解析結果 p.122
 予備検討 p.122
 壁面摩擦の検討 p.123
 壁面を押した時の変位 p.124
 6.5.4 まとめ p.125
6.6 結論 p.130

第7章 まとめ p.131

謝辞 p.133
参考文献 p.135

本研究は,履歴を受けた粘性土の力学挙動を明らかにするために,室内要素試験を行い,各履歴が力学挙動に与える影響を考察したものである.
 一般に地盤は,その置かれた応力条件下のみならず,盛土切土による地形改変や,長い年月にわたる堆積や浸食によって生じる複雑な履歴を受けている.そのために変形やせん断挙動に対し,著しい異方性を示す.しかし,多様な履歴が複合して影響を及ぼしていることから,どの履歴による影響が卓越しているのかの評価は困難である.そこで,応力状態や境界条件の明確な室内試験を行い,供試体に対し任意の履歴を載荷することでその影響を明らかにしようとするものである.
 第1章では,地盤において,外的な作用により生じる応力・ひずみ履歴が多様であることを説明し,その履歴が地盤における力学挙動に及ぼす影響を実際の現場での例を引用して解説している.多様な履歴において,本研究で注目する応力・ひずみ履歴ついて解説する.それを踏まえたうえで,本研究の背景と目的を述べている.
 第2章では,粘性土の受けるひずみ・応力履歴について,次の3種類の履歴について既往の研究をまとめた.大変位せん断ひずみをうけた場合,サクション応力履歴を受けた場合,三次元応力状態下でのせん断応力履歴を受けた場合の3種類の履歴を受けた供試体に対する力学挙動について,それぞれ実験的,理論的な既往の研究成果をまとめ,本研究の位置づけを明確にしている.
 第3章では,本研究で使われる試験装置について詳細に述べている.ここでは,リングせん断試験装置,三軸試験装置,中空ねじりせん断試験装置について原理的なことから,試験装置の特徴,そしてその応用について述べ,さらに試験方法や供試体作製方法についても説明している.
 第4章では,大変位せん断ひずみ履歴を与えた時の粘性土の力学挙動を,リングせん断試験装置を用いることにより考察した.既存のリングせん断試験装置を改良し,定体積試験を可能にした.定体積試験において有効応力経路を求めることにより,せん断中に発生する間隙水圧を評価し,供試体の残留状態を実験的に検証した.さらに,以上の成果を用いて残留強度測定法について検討を行った.
 第5章では,飽和粘性土に対して,サクション応力履歴を与えることにより不飽和粘性土供試体を作製し,その力学特性を三軸圧縮試験,中空ねじりせん断試験を用いて考察した.せん断強度に対するマトリックサクションの影響を調べるために,不飽和土に関して多くの研究が実施されているが,せん断特性に関する供試体の応力履歴や排水条件の影響については,あまり知られていない.本章での目的は,不飽和化により応力履歴を受けた不飽和粘性土の強度変形特性について調べることである.この目的を達成するために,2種類の不飽和化による応力履歴を与えた供試体に対し,三軸試験を行い,破壊線に与える影響を考察した.さらに中空ねじりせん断試験による排水条件を変えた試験を行い,排水条件が破壊線に与える影響を考察し,破壊規準の適用性について検証を行った.
 第6章では,粘性土地盤は,過去の応力状態の変化によりせん断応力履歴を受け,3次元的な異方性の影響を強く受けていることが知られている.このような異方性の影響を応力誘導異方性といい,その強度・変形特性に及ぼす影響を統一的に評価するために,せん断履歴を様々に設定し,せん断試験を行う必要がある.本章では,飽和粘性土に対して中空ねじりせん断試験装置を用いて,主応力方向の回転を鉛直軸からの傾きα,中間主応力係数b ( = (σ2 -σ3)/(σ1 -σ3))という2つのパラメータを考慮して試験を行った.試験結果をもとに,せん断挙動の異方性を評価できる硬化パラメータの提案を行った.簡易な取り扱いとして,この異方性をせん断履歴により発現される弾性領域の拡大縮小として説明し,この弾性領域を弾性限界面として表現した.さらに有効拘束圧や応力比の影響,そして異なる種類の粘性土材料を用いることにより,その弾性限界面の一般性の検討を行った.弾性限界面を一般的な弾塑性モデルに組み込むことにより,せん断応力履歴の影響を評価できる改良構成モデルを提案した.この提案したモデルを,土圧の問題に適用し,通常のモデルと比較した結果,受動状態に対して改良モデルでは小さな土圧で塑性化がはじまり,受動土圧も小さくなる傾向にあることを示した.
 第7章では,本研究を総括し、本研究で得られた知見をまとめた。また今後の検討課題を示した。

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