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ポーラスアスファルト舗装機能高度化のための排水性トップコート工法に関する工学的研究

氏名 大道 賢
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第296号
学位授与の日付 平成16年3月25日
学位論文題目 ポーラスアスファルト舗装機能高度化のための排水性トップコート工法に関する工学的研究
論文審査委員
 主査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 海野 隆哉
 副査 助教授 下村 匠
 副査 助教授 高橋 修
 副査 大阪市立大学大学院 工学研究科教授 山田 優

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目次
第1章 緒論 p.1
 1.1 研究の背景 p.1
 1.2 研究の目的と意義 p.2
 1.3 本論文の構成 p.3
 第1章参考文献 p.6
第2章 ポーラスアスファルトの設計・施行因子と舗装供用性 p.7
 2.1 ポーラスアスファルトの誕生と伸展 p.7
 2.1.1 ポーラスアスファルトの誕生 p.7
 2.1.2 我が国におけるポーラスアスファルト p.8
 2.1.3 ポーラスアスファルトの進展と研究開発 p.10
 2.2 ポーラスアスファルトの供用性と損傷 p.14
 2.2.1 ポーラスアスファルトの舗装供用性 p.14
 2.2.2 ポーラスアスファルトの損傷の現状 p.15
 (1) 骨材飛散 p.15
 (2) 空隙詰まり p.18
 2.3 ポーラスアスファルトの供用性向上策 p.21
 2.3.1 ポーラスアスファルト用改質アスファルト p.21
 2.3.2 排水用トップコート工法 p.24
 2.3.3 その他の方法 p.25
 (1) 空隙詰まり除去方法 p.25
 (2) エポキシアスファルト p.25
 (3) 樹脂モルタル充填方法 p.25
 (4) 2層式排水性舗装 p.26
 第2章参考文献 p.27
第3章 ポーラスアスファルト舗装体の多機能性と機能高度化 p.29
 3.1 総説 p.29
 3.2 ポーラスアスファルト舗装体の多機能性と高度化 p.31
 3.2.1 吸水性材料充填による保水性舗装 p.31
 3.2.2 液状体被覆による若返り再生工法 p.33
 3.2.3 霧状被膜(フォグコート)塗布による強化トップコート工法 p.35
 3.2.4 光触媒を利用したNOx除去トップコート工法 p.37
 3.3 ポーラスアスファルトにおける排水性トップコート工法の適用 p.39
 第3章参考文献 p.41
第4章 排水性トップコート工法による機能高度化 p.42
 4.1 総説 p.42
 4.2 排水性トップコート工法の機能 p.44
 4.2.1 材飛散抵抗性の向上 p.44
 4.2.2 空隙詰まりの抑制 p.46
 4.2.3 空隙詰まりの回復 p.48
 4.3 排水性トップコート工法の機能 p.50
 4.4 まとめ p.52
 第4章参考文献 p.53
第5章 排水性トップコート工法の界面特性 p.54
 5.1 総説 p.54
 5.2 界面特性に関する基本的特性 p.56
 5.2.1 透水性能の評価方法 p.56
 (1) 透水性試験 p.56
 (2) 空隙詰まり評価の測定 p.58
 (3) 空隙詰まり回復評価の測定 p.59
 5.2.2 界面特性の評価方法 p.60
 1)付着濡れ仕事量(Wa) p.60
 2) トップコート材と水との界面張力(γSl) p.61
 5.3 散布時の樹脂濡れ特性(トップコート材と母体アスコンとの濡れ特性) p.63
 5.3.1 試験に用いた材料 p.63
 5.3.2 付着濡れ仕事量(Wa)の測定 p.65
 (1) 測定結果と付着濡れ仕事量の測定 p.65
 (2) 解析結果 p.65
 5.4 散布後の水と樹脂との界面張力特性(水とトップコート材の界面特性) p.70
 5.4.1 試験に用いた試料 p.70
 5.4.2 界面張力(γSl)と透水機能の測定 p.70
 (1) 界面張力(γSl)の算定とと透水機能の測定 p.70
 (2) 空隙詰まり物質流し込み回数と残存透水率 p.74
 (3) 排水性トップコート工法による機能回復効果 p.76
 5.5 まとめ p.78
 第5章参考文献 p.80
第6章 高度化樹脂材の開発と現場試験施工 p.81
 6.1 総説 p.81
 6.2 樹脂材の開発 p.81
 6.2.1 共同開発と各関係機関の役割 p.81
 6.2.2 Rエポエマルジョン樹脂とその特徴 p.83
 6.3 現場試験施工 p.84
 6.3.1 施工計画と事前の確認試験 p.84
 6.3.2 試験施工現場における各種試験 p.87
 (1) 散布時路面温度と樹脂の硬化状態 p.87
 (2) 骨材飛散 p.88
 (3) 空隙詰まり p.89
 (4) 現場透水試験結果 p.90
 (5) 滑り抵抗 p.92
 6.4 まとめ p.93
 第6章参考文献 p.94
第7章 結論と今後の課題 p.95

謝辞

用語一覧

排水性舗装は排水性機能による走行安全確保と共に低騒音機能等へのニーズも加わって、その適用先は幹線道路、街路に限らず、多様な用途へ拡大し施工面積を増大させている.その一方で当舗装体がポーラスな構造であるために,空隙つぶれや空隙詰まりによる機能の低下,交差点などの横方向剪断力が生じる箇所での骨材飛散現象などが早期に生じその解決策が強く求められてきた.
排水性トップコート工法は,これら問題の解決に対し空隙詰まりや骨材飛散防止を目的で開発された工法であるが,その現場追跡調査が進むにつれて,基本的な骨材飛散防止機能以外にも,空隙詰まりが抑制される,空隙詰まりを生じても高圧洗浄などによる回復作業が容易である,そして透水係数が上昇するなどのポーラスアスファルトに対しての新たな機能が確認された.
しかし当工法を施すとなぜ透水係数が良くなるのか,さらに空隙詰まりがなぜ抑制されるのか等は厳密には解明されておらず,ただ現象面から,水と舗装体を被覆する高粘度改質アスファルトおよび排水性トップコート工法に使用する樹脂との"濡れ"具合の違いから,水との界面張力が関係しているのではないかと仮説した.
本論文では,排水性トップコート工法の新たな機能の作用因子を明確にすると共に,より効果的なトップコート用樹脂について開発提案し,排水性トップコート工法を施すことにより,ポーラスアスファルト舗装の機能高度化を提示したものである.
本論文は7章からなっている.
第1章は,緒論では道路環境が抱える問題点からポーラスアスファルトが普及した背景,その効果そして現状の問題点を述べ研究の背景とした.次いで,排水性トップコート工法を施すことによるポーラスアスファルト舗装の新たな機能維持効果に界面張力特性に関しての仮説を立て,その検証を行うことで,合理的な排水性トップコート工法を確立することを研究の目的とした.
2章では,ポーラスアスファルトの技術変遷と研究開発の現状をまとめ,現在ポーラスアスファルトが抱える損傷の形式と損傷原因について,その損傷防止対策等について検討されているバインダや工法を述べた.
3章では,本研究の出発点であるポーラス舗装体の多機能性と高度化に関する検討の例をあげ,排水性トップコート工法の位置付けを行うと共に,その他環境緩和機能や舗装体強化機能を有する工法についての有用性について述べた.
4章では,排水性トップコート工法の基本機能である骨材飛散抵抗性について,その効果を室内試験により明らかにすると共に,現場において調査された透水係数の向上や空隙詰まりの抑制などの報告から,その現象を室内で再現し各透水試験結果から,排水性トップコートには骨材飛散抵抗性以外にもポーラスアスファルトの透水性能を向上するなどの新たな機能があることを明らかにした.
5章では,排水性トップコート工法の排水機能向上効果をより高めるために,使用する樹脂材料の界面特性と被覆状態について,散布時樹脂とアスファルトの濡れ仕事量(Wa)と各透水試験の関係から,散布時樹脂の最適な条件を提案した.そして前章を受けて,排水性トップコート工法を施すことによる透水係数や空隙詰まりの抑制効果向上について界面張力からの仮説を立証するために,排水性トップコート工法に使用される数種類の樹脂の界面特性,すなわち樹脂と水との界面張力(γsl)を求め,新たに試作した透水試験器により,そのγslと透水係数の関係を導き出した.これより,透水係数の向上,空隙詰まりの抑制,空隙詰まりの回復効果すべてが,このγslによって説明できることを明らかにし,その効果はγsl値が低いほど(水と樹脂の濡れが良いほど)効果が高いことを各透水試験から検証した.
6章では,共同研究開発によって見出されたリサイクル樹脂エマルジョンを使用した現場試験施工の結果から,その有効性を検証した.
7章では,本研究で得られた結論と成果をまとめ,さらに今後の検討課題について述べた.

以上,本論文はポーラスアスファルトの機能を高度化するために,排水性トップコート工法は有用であり,その使用する硬化性樹脂の樹脂と水との界面張力,そして樹脂とアスファルトの付着濡れ量から,より高度な排水性トップコート工法の解明について研究開発したものである.この研究の成果により,ポーラスアスファルト舗装の問題点であった空隙詰まりを抑制し,空隙詰まりを生じてもその機能回復をより容易に行うことができることを明らかにした.

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