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横電界駆動TNモ-ドに関する研究

氏名 岡 真一郎
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第297号
学位授与の日付 平成16年3月25日
学位論文題目 横電界駆動TNモ-ドに関する研究
論文審査委員
 主査 教授 赤羽 正志
 副査 教授 高田 雅介
 副査 助教授 安井 寛浩
 副査 助教授 河合 晃
 副査 助教授 小野 浩司
 副査 講師 木村 宗弘

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目次
第1章 序論 p.1
 1.1 液晶 p.1
 1.2 研究の背景 p.2
 1.3 研究目的 p.2
 1.4 本論文の構成 p.3

第2章 液晶 p.5
 2.1 液晶の分類 p.5
 2.1.1 ネマティック相とスメティック相 p.5
 2.1.2 コレステリック相 p.7
 2.2 ネマティック液晶 p.7
 2.2.1 オーダーパラメータ p.7
 2.2.2 液晶の物性値 p.8
 2.2.3 アンカリング強度 p.12

第3章 液晶ディスプレイ p.15
 3.1 液晶ディスプレイの歴史 p.15
 3.2 液晶ディスプレイの基本原理 p.16
 3.3 液晶ディスプレイの駆動方法 p.17
 3.3.1 Twisted Nematic Mode p.17
 3.3.2 In-Plane Awitching Mode p.19
 3.3.3 In-Plane Switching Twisted Nematic Mode p.22

第4章 実験方法 p.25
 4.1 実験準備 p.25
 4.1.1 配向処理 p.25
 4.1.2 液晶セル p.27
 4.2 LCDの評価法 p.28
 4.2.1 等コントラスト曲線 p.30
 4.2.2 色度図 p.32
 4.2.3 応答速度の評価法 p.34

第5章 ITモードの評価 p.35
 5.1 ITモードの電気光学応答 p.35
 5.2 アンカリング強度の影響 p.35
 5.2.1 方位角アンカリング強度の透過率および応答速度への影響 p.35
 5.2.2 配向膜による影響 p.37
 5.3 透過率の視角特性 p.40
 5.3.1 電気光学応答 p.40
 5.3.2 等コントラスト曲線 p.41
 5.3.3 色度特性 p.44
 5.3.4 ヒステリシス特性 p.45
 5.4 セルパラメーターの影響 p.47
 5.4.1 透過率のセル厚依存性 p.47
 5.4.2 液晶の物性値の影響 p.48
 5.5 動的応答 p.53
 5.5.1 回転粘性係数 p.53
 5.5.2 応答速度の改善方法の提案 p.54
 5.6 結語 p.57

第6章 方位角アンカリング強度の評価 p.59
 6.1 従来の方位角アンカリング強度の問題点 p.59
 6.2 方位角のアンカリング強度測定 p.60
 6.2.1 トルクバランス法 p.60
 6.2.2 ネールウォール法 p.61
 6.2.3 改良トルクバランス法 p.63
 6.2.4 それぞれの方位角アンカリング強度測定法の検討 p.64
 6.3 方位角アンカリング強度の詳細な検討 p.64
 6.3.1 偏光顕微鏡による相転移観察 p.65
 6.3.2 液晶セルのリタデーション温度依存性 p.69
 6.3.3 ラビング強度依存性 p.70
 6.4 結語 p.74

第7章 アモルファスITモード p.75
 7.1 アモルファス配向技術 p.75
 7.1.1 アモルファスTNモード p.76
 7.1.2 アモルファスITモード p.78
 7.2 a-ITモードの評価 p.78
 7.2.1 電気光学応答 p.78
 7.2.2 視角特性 p.79
 7.2.3 ヒステリシス特性 p.79
 7.2.4 色度特性 p.81
 7.2.5 動的応答 p.81
 7.3 結語 p.84

第8章 ノーマリーブラックITモード p.85
 8.1 NB-LCD p.85
 8.2 厚いセルを使用したNB-ITモード p.86
 8.2.1 電気光学応答 p.87
 8.2.2 視角特性 p.88
 8.2.3 等コントラスト曲線 p.88
 8.2.4 色度特性 p.89
 8.3 光学補償NB-ITモード p.89
 8.3.1 光学補償NB-ITモードの理論計算法 p.90
 8.3.2 視角特性 p.92
 8.3.3 等コントラスト曲線 p.94
 8.3.4 補償フィルムと駆動セルのリタデーション p.96
 8.3.5 色度特性 p.98
 8.3.6 TNF-ITモードの視角特性改善法 p.98
 8.4 結語 p.103

第9章 結論 p.105
参考文献 p.107
謝辞 p.119
付録 A 理論計算法 p.121
 A.1 配向計算 p.121
 A.2 4×4マトリクス法 p.124
 A.2.1 伝播マトリクス p.124
 A.2.2 Dがzに依存しない場合 p.128
 A.2.3 Dがzに依存する場合 p.129
 A.2.4 異方性媒質の光の透過および反射 p.129
 A.3 誘電テンソルの座標変換 p.133

近年、液晶ディスプレイ(LCD)は我々の生活において欠かすことのできない存在へ成長を遂げた。LCDは携帯電話、パソコンディスプレイだけでなく、様々な生活用品に応用されている。今後さらに、LCDの需要は拡大し、また家庭用テレビなど、その応用分野もさらに発展していくと予想される。LCDがここまで発展を遂げた大きな理由は、大きく分けて三つのことが考えられる。一つは液晶材料の発展、次にTFT(Thin Film Transistor)に代表されるような周辺技術の発展、最後に様々な液晶駆動方法の提案が挙げられる。特に、三つ目の駆動方法の提案は1968年にDS(Daynamic Scattering)が発表されて以来、多数の方式が提案されている。
現在、最も一般的な駆動方法はTN(Twisted Nematic)モードである。TNモードは1971年に提案されたのち、その単純な構造のため現在も広く使用されている。TNモードの基本的原理は現在でも変わりないが、周辺技術を含めて、用途に応じて様々な応用方法が提案されている。しかしながら、TNモードは視角特性が悪い欠点がある。そこで、近年最も期待されている駆動方法に、IPS(In―Plane Switching)モードがある。TNモードは縦方向(基板に対して垂直)に電界を印加するのに対し、IPSモードは横方向(基板面内)に電界を印加する。IPSモードの特長は非常に広い視野角を持つことである。しかしながら、IPSモードは液晶層の厚さが透過率に非常に強く影響する欠点を持つ。これは、LCD製作を困難にする。
そこで、我々はTNモードの単純さと、IPSモードの広視野角を実現できる新規の駆動方法、IT(In―Plane Switching Twisted Nematic)モードを提案した。ITモードの特長は、IPSモードと同程度の視角特性に加えて、透過率の液晶層依存を小さくすることができることある。本研究の目的は、この提案したITモードの特性を実験・理論計算から明らかにし、最適条件について検討を行うことである。また、ITモードの長所・短所を評価し、その改善方法について検討を行った。さらに、ITモードを駆動する際に最も重要なパラメータである方位角アンカリング強度について詳しく評価を行い、真の方位角アンカリング強度の測定法について提案を行うと共に、アンカリングのメカニズムについても考察を行う。
実際にITモード液晶セルを作製し、その透過率を測定した。さらに、様々なセルパラメータを評価し、フランクの弾性理論から液晶ダイレクタ分布を計算し、ベレマンの4×4マトリクス法を用いて透過率の理論計算を行った。また、TNモードや、IPSモードと比較を行い、それぞれの優位点や欠点について評価を行った。
評価結果から、ITモードはTNモードより格段に、広い視角特性を実現できることがわかった。さらに、その駆動原理から比較的早い応答速度が得られ、カラーシフトも小さいことを確認した。しかしながら、高コントラスト比を得るためには、IPSモードと比べ高い電界が必要であることがわかった。
さらなるITモードの発展を目指し、三つの改良方法を提案し、評価を行った。まず、従来のLCDでは欠かすことのできなかった配向処理を必要としないアモルファスITモードを提案し評価を行った。この駆動方法は、広視野角で高速応答を実現することができるために、大型LCDに適していると考えられる。
通常、TNモードやITモードなど液晶のねじれ配向を利用した駆動方法では、電界無印加時に光が透過し、電界印加によって暗状態を示す。これは、液晶がねじれ配向している状態で、完全に光を遮断することが難しいためである。そのため、ITモードは暗状態を得るために、高い電界を必要とする。そこで、ITモードにおいて、電界無印加時に暗状態を得ることができる方法を提案した。提案した方法は液晶セルの厚さを制御するW-IT(Wide Cell Gap-IT)モード、もう一つは光学補償フィルムを使用した、光学補償ITモードである。前者は、応答速度が遅い欠点を持つが、高コントラスト、低電界駆動さらにITモードよりも広視野角を実現することができる。また、後者は、実際に作製することは困難であるが、もし完全に理想的なフィルムを作製することができれば、高コントラスト、低電界駆動、広視野角、高速応答が実現できると考えられる。
LCDを制御する際、アンカリング強度は非常に重要な要素となる。ITモードでは特に、基板面内方向に作用する方位角アンカリング強度が重要となる。方位角アンカリング強度を測定する方法は様々提案されているが、我々はその測定方法の問題点を見いだした。そこで、その問題点と改良方法について検討行い、方位角アンカリング強度について考察を行った。

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