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橋形クレーンの動特性に関する研究

氏名 任 永祥
学位の種類 工学博士
学位記番号 博乙第2号
学位授与の日付 平成元年12月20日
学位論文の題目 橋形クレーンの動特性に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 伊藤 廣
 副査 教授 矢田 敏夫
 副査 教授 五十嵐 昭男
 副査 助教授 長谷川 光彦
 副査 東京大学 教授 井口 雅一

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目次
序論 p.1
記号 p.2
第1章 緒論 p.7
1-1 クレーンの動特性に関する研究の概要 p.7
1-1-1 研究の背景と経緯 p.7
1-1-2 解析モデルと解析手法 p.8
1-2 クレーンの動特性に関する研究の課題 p.10
1-3 橋形クレーンの概要 p.11
1-4 研究の動機 p.11
1-5 研究の目的 p.12
1-6 研究の概要 p.13
第2章 理論解析 p.18
2-1 緒言 p.18
2-2 理論解析システムの概要 p.18
2-3 有限要素法モデル p.19
2-4 静的縮合法によるマトリックスの縮約 p.22
2-5 連続体モデル p.25
2-5-1 解析モデルの設定 p.25
2-5-2 静的たわみ曲線 p.26
2-5-3 等価ばね係数および等価減衰係数 p.32
2-5-4 等価質量 p.33
2-5-5 静的縮合法による解析精度についての考察 p.38
2-6 質点・ばね系モデル p.40
2-6-1 解析モデルの設定 p.40
2-6-2 ワイヤロープの等価ばね係数 p.40
2-6-3 巻上げワイヤロープの非線形特性について p.41
2-7 運動方程式 p.45
2-8 駆動部分の特性 p.49
2-8-1 巻上げ電動機の特性 p.49
2-8-2 トロリ横行用電動機の特性 p.54
2-9 動的強度の解析 p.55
2-9-1 有限要素法を用いた応力解析 p.55
2-9-2 連続体モデルを用いた応力解析 p.57
2-10 動的影響係数の定義 p.58
2-11 結言 p.58
第3章 実機実験 p.60
3-1 緒言 p.60
3-2 実験概要 p.60
3-2-1 実験内容 p.60
3-2-2 実験水準 p.68
3-3 実験方法 p.70
3-4 結言 p.76
第4章 地切り、巻上げ動作 p.77
4-1 緒言 p.77
4-2 運動方程式 p.77
4-3 理論値と実験値の比較 p.78
4-4 動的影響係数Φに関する考察 p.82
4-4-1 連成係数κの影響 p.82
4-4-2 巻上げ速度Vの影響 p.86
4-4-3 巻上げ位置Xによる影響 p.86
4-5 結言 p.87
第5章 トロリの横行動作 p.88
5-1 緒言 p.88
5-2 運動方程式 p.88
5-3 理論値と実験値の比較 p.89
5-4 相互作用係数Db p.92
5-5 ガーダのたわみ修正係数Dm p.94
5-6 Db、Dmの動的影響 p.94
5-7 つり荷振れ角θの影響 p.96
5-8 クレーン構造規格等についての検討 p.100
5-9 結言 p.101
第6章 巻上げ・横行の複合動作 p.103
6-1 緒言 p.103
6-2 理論値と実験値との比較 p.103
6-3 始動のタイミングの動的影響 p.109
6-4 結言 p.112
第7章 橋形クレーンの周波数 p.113
7-1 緒言 p.113
7-2 固有値解析およびモード解析 p.113
7-2-1 理論解析 p.113
7-2-2 振動周波数に関する計算式 p.116
7-3 振動周波数の影響因子 p.119
7-4 結言 p.123
第8章 巻上げ動荷重係数 p.124
8-1 緒言 p.124
8-2 巻上げ動荷重係数の理論的検討 p.125
8-3 巻上げ作業中の系の振動周期 p.130
8-4 実機実験による考察 p.131
8-4-1 ΓoxσepΓの計算式の検討 p.131
8-4-2 地振り時間についての検討 p.133
8-5 巻上げ動荷重係数の実用計算式 p.136
8-6 結言 p.140
結論 p.141
謝辞 p.143
付録
A 有限要素法モデルの解析結果 p.144
B (2.9)式の証明 p.169
C シミュレーション解析用プログラムのフローチャートおよび解析定数 p.171
D 実験データの抜粋 p.173
E 主要諸国における水平荷重およびたわみに関するクレーン規格の比較 p.189

 本論文は橋形クレーンを対象とし、動特性に関する実用的な解析システムを開発し、作業中のつり荷と機体に関する挙動および動的強度を解明することを目的としている。
 第1章は、緒論である。クレーンの動特性に関する研究の経緯について述べ、設備クレーンの動特性に関する現在の課題を明記し、本研究の目的を述べた。
 第2章は、開発した解析システムの経緯を説明し、基礎理論を構築した。形状が複雑でしかも多様な橋形クレーンの耕造部分を有限要素法モデルで表し、全体マトリックスを形成し、静的解析により変位及び応力を求める。質量マトリックス、減衰マトリックスおよび剛性マトリックスを静的縮合法を用いて構造部分の水平変位η、垂直変位ζに関するマトリックスに縮約する。縮約したマトリックスに基づき、橋形クレーンの構造部分を門形ラーメンに近似して連続モデルを作成し、解析的な方程式で移動荷重に対応するたわみ曲線や種々の特徴値を表す。さらに、クレーンの駆動部分、トロリ、つり荷に関する糸を質点・ばねモデルに置き換え、連続体モデルと併せて全体の運動方程式に組み込んで、挙動のシミュレーション解析を行う。解析結果にマトリックスを縮約して求めた部材の応答係数を適用し、部材の動的応力変動を求める。このようにして、有限要素法モデル、連続体モデル、質点・ばね系モデルの三者の特長を融合した実用的な新しい解析システムを開発した。
 第3章は、理論の妥当性を検証するために行った実技実験の概要について述べた。
 第4章は、基礎理論および実機実験を踏まえ、橋形クレーンの基本運動である地切り、荷重巻上げ、着地についてつり荷および構造部分の挙動と動的強度の解析を行った。理論的研究と実験的検討の結果はよく一致し、従来不明であった橋形クレーンの機体とつり荷の挙動が明らかになった。さらに、橋形クレーンの特性を表す無次元量として連成係数κを定義し、κを用いて数値解析を行った。ガーダの垂直変位ζと水平変位ηの比は設計上重要な意味をもつことが明らかになった。また、つり荷の巻上げ速度V、巻上げ位置Xが動的影響係数Φに及ぼす影響をシミュレーション解析により解明した。
 第5章は、橋形クレーンの構造部分のたわみ曲線を方程式で表し、横行作業についてシミュレーションモデルによる挙動解析を動的応力解析を行った。理論的研究と実験的検討の結果はよく一致し、はじめて橋形クレーンのトロリ横行動作における動特性が解明された。また、橋形クレーンの水平、垂直方向のたわみに関する係数Db、Dmを用いて、静的状態における水平、垂直方向のたわみη、ζを決定する設計上有用な方法を開発した。さらに、つり荷の振れ角θは構造部分の最大応力値に影響を与えることを明らかにした。
 第6章は、巻上げ・横行の複合動作における挙動解析および動的応力解析を行い、はじめて橋形クレーンの複合動作における動特性が解明された。さらに、実機実験により、複合動作における始動のタイミング(tT-tH)の動的影響を調べた。複合動作をする場合、ロープ張力TRの動的影響を低減させるためには、巻上げ操作を横行より先行させる方が有利であることが明らかになった。また、機体の横揺れηを減少させるためには、適切な操作のタイミングを選択する必要があることがわかった。これらの研究成果は、今後、動的解析を基本とする橋形クレーンの設計に有用である。
 第7章は、橋形クレーンの固有振動数解析および振動モード解析を行い、固有振動数に影響を及ぼす因子を考察した。クレーンの剛脚、揺脚の剛性比IR/IF、ガーダの剛性IGおよびつり荷の重量m0g変化が各モードの振動周波数に及ぼす影響を明らかにした。さらに、機体における水平方向と垂直方向の変位η、ζが連成することに基づき、はじめて、二方向の振動周波数を同時に求めることができる方程式を導いた。この方程式は橋形クレーンの設計上有用であると思われる。
 第8章は、クレーンの設計上重要な意味を持つ巻上げ動荷重係数ψについて理論的および実験的検討の結果、現在、世界各国で制定されているψの計算式が必ずしも実状に合っているとはいいがたいことを指摘し、より正確で、実用的な計算式を提唱した。
 本研究によって、橋形クレーンを対象とする一例を取り上げ、挙動解析システムおよび動的応力解析システムが開発された。これらの実用的な解析手法は橋形クレーンのみならず、設備クレーン全般に広く適用できるものと思われる。なお、本研究によって得られた結論および動特性を表す種々の係数や理論計算式は今後、クレーンの計算基準や設計規格の検討上、重要な基礎資料になるものと考えられる。

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