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クローラシューと走行路面の動的相互作用に関する研究

氏名 仲川 力
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第117号
学位授与の日付 平成10年6月17日
学位論文の題目 クローラシューと走行路面の動的相互作用に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 伊藤 廣
 副査 教授 矢鍋 重夫
 副査 教授 長谷川 光彦
 副査 教授 丸山 暉彦
 副査 助教授 阿部 雅二朗

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記号 p.1
第1章 緒論 p.3
1.1 はじめに p.3
1.2 クローラ式走行体に関する従来の研究 p.5
1.3 クローラ自走時の駆動力発生機構 p.8
1.4 本研究の概要 p.9

第2章 クローラ走行の基礎理論 p.11
2.1 はじめに p.11
2.2 理論解析方法 p.12
2.3 走行路面 p.14
2.3.1 モデリングの方法 p.14
2.3.2 垂直方向路面 p.14
2.3.3 水平方向路面 p.17
2.4 実機への適用例 p.19
2.4.1 供試モデルと解析モデル p.19
2.4.2 解析結果および考察 p.25
2.4.3 動的接地圧分布 p.26
2.7 まとめ p.35

第3章 供試モデル実験 p.36
3.1 はじめに p.36
3.2 供試機モデル. p.37
3.3 誘導電動機の特性 p.41
3.4 シュー挙動測定装置 p.43
3.4.1 シュー挙動測定装置の概要 p.43
3.4.2 路面反力の測定 p.47
3.4.3 シュー傾斜角の測定 p.47
3.5 供試路面 p.47
3.6 計測システム p.50
3.7 路面特性実験 p.50
3.8 まとめ p.58

第4章 クローラ自走時の走行特性 p.59
4.1 はじめに p.59
4.2 理論解析 p.59
4.2.1 解析方法および解析モデル p.59
4.2.2 解析モデルの拘束条件 p.60
4.2.3 駆動系モデリング p.64
4.2.4 接地面における滑り量と沈下量 p.64
4.3 解析条件 p.66
4.4 理論値と実験値の比較および考察 p.68
4.5 自走時におけるシュー挙動 p.72
4.5.1 接地面全域における検討 p.72
4.5.2 転輪下近傍における検討 p.74
4.6 シュー挙動がクローラ走行に与える影響 p.77
4.7 まとめ p.78

第5章 クローラ自走時の駆動力発生機構 p.79
5.1 はじめに p.79
5.2 クローラベルト張力 p.79
5.3 動的接地圧分布および動的せん断応力分布 p.84
5.4 すべり率 p.88
5.5 自走時の推進力発生機構 p.92
5.1 まとめ p.96

第6章 結論 p.98

参考文献 p.102

本研究に関連した発表論文 p.105
I.学会論文 p.105
II.講演論文 p.106
謝辞 p.107
付録 p.109
付録1.クローラ式走行体に関する資料 p.111
1.1 Theory of land locomotion p.111
1.2 Tеоия Tрактора p.111
1.3 クローラ式走行体の動特性(第1報,直進走行の理論的研究) p.119
付録2.解析プログラムに関する資料 p.125
2.1 フローチャート p.125
2.2 混合連立微分代数方程式 p.126
付録3.供試モデルに関する資料 p.131

 本研究は,建設機械等の走行装置として広く用いられているクローラ式走行体に関する機械工学と土木工学の学際領域における基礎研究である.いまだ十分に解明されていないクローラ走行時のシューと路面間の動的相互作用を明らかにし,クローラの性能の把握および向上に資する理論を構築することを目的とする.理論解析方法を構築するとともに実験解析も合わせて行い,理論の妥当性を確認した.また,理論および実験の両解析結果を総合的に考察し,シューの挙動および路面間の動的相互作用を初めて定量的に解明した.さらに,従来未知であった,建設機械の設計および操作上重要な自走時における走行推進力の発生機構を理論的に明らかにした.
 本論文は,6章より構成されており,前半の第2章,第3章では理論および実験解析の方法について,後半の第4章,第5章では,クローラ自走時の動特性について述べる.各章の概要は以下の通りである.
 第1章は,緒論である,クローラ式走行体に関する従来の研究と経緯を紹介し,本研究の背景を概説する.これにより,クローラ式走行体に関する現在の課題を明確にし,本研究の目的と意義について述べる.
 第2章は,シューと路面間の動的相互作用を正確に考慮できるクローラの走行理論について述べる.解析モデルにおいて、走行体のクローラベルトは,それを構成するトラックリンクおよびシューを個々にモデル化する.走行路面は,その多様な力学的特性を変形履歴も含めて表現できるようなモデルを作成する.これらのモデルを融合し,クローラ走行時の動特性,特にシューと路面間の動的相互作用を詳細に解析できる理論を構築する.まず,実機の代表例としてパワーショベルを取上げ,これが直進自走する場合について理論解析し,実機実験の結果と比較検討し理論の妥当性を検証する.さらに,従来,十分解明されていなかったクローラ走行時の動的接地圧分布を求め考察する.
 第3章は,クローラシューと走行路面の動的相互作用をより正確に実測するために行ったクローラ式走行体の供試モデルによる走行実験について述べる.設計製作した供試モデルの仕様および性能について紹介し,走行時におけるシューの傾斜角およびシューに作用する垂直カおよぴせん断力を測定するために考案した方法について説明する.このモデルによる走行実験を,砂質土よりなる水平路面上で行う.理論解析にも必要な走行路面の特に使われる.
 第4章は,従来十分解明されていないクローラ自走時におけるシューの挙動を詳細に明らかにすることを目的とする.第2章に示したクローラ走行の基礎理論を,走行装置の主構成要素である転輪,トラックリンクおよびクローラシューと走行路面の幾何学的関係をより厳密に考慮できるように発展させた.走行体は,マルチポディダイナミクスの理論を適用し,クローラベルトは多体拘束系としてモデル化する.クローラ自走時のシューの動的挙動について理輪および実験解析を行った.理論解析結果を第3章の供試モデルによる実験結果と比較検討して,その妥当性を確認した.シューと路面間のせん断力の定量的な解析結果により,接地面の多くの領域において,シューが路面をクローラ進行方向にせん断する逆すべり現象が生じることを明らかにした.さらに理論解析により,接地面全域と転輪下近傍における個々のシュー挙動について詳しく検討し,逆すべり現象の発生過程等を考察した.
 第5章では,第4章の成果を基に,従来なされている1枚のシューが走行路面に接触し離脱するまでの動特性のみならず,時々刻々における路面と接触しているすべてのシューの挙動および路面との動的相互作用について,定量的に解析し詳細に考案した.これにより,クローラの走行性能を考える際に重要な自走時における推進力の発生機構について検討した.自走時の定常走行状態では,推進力は複雑に正負に変動し,常時連統的に発生しているのはないことを明らかにした.さらに,クローラベルトの張力、シューと路面間の接地圧,せん断応力の分布のほか,すべり率,推進力の時間変動を示し総合的かつ詳細に考察した.これにより,クローラ自走時の推進力発生機構を初めて明らかにした.
 第6章は,本研究の結論と総括について述べる.本研究で得られた成果により、クローラ式走行体の性能に大きく影響を及ぼすシューと路面間の動的相互作用を正確に把握することが可能となった.特に,クローラ自走時の推進力発生機構は,自走を主として行うクローラ式建設機械の性能向上のための設計指針等を示すもので,その工業有用性は大きいものと思われる.

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