本文ここから

地方都市圏域における市街地拡大制御に関する研究

氏名 内田 一平
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第162号
学位授与の日付 平成12年12月13日
学位論文の題目 地方都市圏域における市街地拡大制御に関する研究
論文審査委員
 主査 助教授 中出 文平
 副査 教授 森村 道美
 副査 助教授 佐野 可寸志
 副査 金沢大学 教授 川上 光彦
 副査 長岡工業高等専門学校 助教授 宮越 和弘

平成12(2000)年度博士論文題名一覧] [博士論文題名一覧]に戻る.

目次

第1章 序論
1-0 はじめに p.1
1-1 研究の背景 p.1
1-2 研究の視点を目的 p.5
1-3 研究の構成 p.6
1-4 用語説明 p.8

第2章 地方都市の特性と現行制度の適用状況
2-1 法制度にみる土地利用規制
2-1-1 法体系の整理と研究領域 p.11
2-1-2 都市計画法と農業各法による土地利用規制 p.12
2-2 個別法の概要
2-2-1 都市計画法関連 p.13
2-2-2 農業関連法による土地利用規制 p.15
2-3 まとめ p.19

第3章 地方都市の市街地拡大の実態
3-1 対象都市圏の抽出
3-1-1 地方都市圏の成長状況 p.23
3-1-2 新潟都市圏の概要 p.46
3-2 市街地の経年的変化と市街化区域の設定
3-2-1 線引き導入以前の市街地の変遷 p.51
3-2-2 市街化区域の指定状況と都市構造の物理的変化 p.54
3-2-3 市街地の密度構造変化 p.57
3-2-4 住居系市街地の市街地評価 p.58
3-3 まとめ p.61

第4章 区域区分制度の運用と設定に関する評価
4-0 地方都市の線引き特徴
4-0-1 経年的な決定状況 p.63
4-0-2 地方圏における線引きの特徴 p.67
4-1 新潟都市計画区域における線引き策定状況
4-1-1 新潟都市計画区域の線引き見直し経緯 p.68
4-1-2 市街化区域の設定状況 p.70
4-1-3 市街化区域編入位置 p.70
4-2 フレームの設定と形成市街地の乖離 p.74
4-3 上位計画と計画決定状況および計画担当者の意向
4-3-1 線引き見直し時の実作業の流れと問題点 p.77
4-3-2 原案作成時の対象市町村担当者の意向とその反映状況 p.80
4-4 まとめ p.83

第5章 営農を考慮した農村集落の宅地化の可能性
5-0 はじめに p.85
5-1 農業集落および農家世帯を取り巻く環境の変化 p.87
5-1-1 土地利用の状況 p.89
5-1-2 農村集落周辺の市街地形成過程 p.90
5-1-3 農家世帯の農業経営状況 p.94
5-2 農家世帯の意向と動向
5-2-1 ヒアリング調査法右方の概要 p.101
5-2-2 農村集落内の農家世帯における意向と動向 p.103
5-3 農村集落の市街化区域編入要望に伴う集落内合意形成上の問題 p.112
5-4 まとめ p.115

第6章 地方都市における市街地拡大制御手法の問題点と計画論
6-1 総括 p.117
6-2 都市計画法2000年改正に伴う問題点 p.119
6-3 市街地拡大制御の計画論 p.122

 現行の土地利用規制制度は、昭和59年に施行された国土利用計画法を頂点とした5つの下位法(都市計画法、農業振興地域の整備に関する法律、森林法、自然公園法などの関係法令)とともに体系づけられている。これらの法は、高度経済成長期における急速な市街化がもたらした諸問題を是正することに主眼がおかれていた。そのため、制度の枠組みは、大都市圏での対応に偏った制度であり、地方都市が抱える固有の問題を改善する枠組みと必ずしも対応が図れているわけではなく、制度策定から30年間の社会的変化も相俟って、制度と実態に乖離が生じている状況にある。
 また、地方都市(圏)は、これまでの全国総合開発計画における位置づけや、中核市、地方拠点都市の指定などにより、今後も都市化が促進していくとみられる。それに加え、地方分権一括法(H11)が成立し、実務レベルで地方行政に権限・業務が移行している状況にあり、今後は、担当地方行政機関の担うところが大きくなり、地方都市が独自の方針で土地利用の推進を図れる状況になっている。
 これらの状況は、現行の土地利用規制制度に示されるような全国一律の「大都市型」とは異なる独自の「地方都市型」の市街地制御の必要性を示している。
 以上を背景として、本論文の目的は、主に新潟都市計画区域を対象にして、(1)宅地開発関係主体(行政、地権者)間の意向・行動が市街化区域編入(市街地拡大)に及ぼすメカニズムと影響の解明(2)広域行政圏における行政(県および関係市町村)の位置づけと役割分担の確立(3)都市的土地利用と農業的土地利用の二律背反した土地利用形態の両立を考慮した市街化及び市街化制御方策の模索 の3つの視点を念頭に置きながら、地方都市における市街化の実態と区域区分制度の運用実態を明らかにすること、その過程で、全国一律に運用されている現行制度が地方都市で運用される際の問題点を明らかにすることである。得られた結果から、地方都市の実態に即した市街化制御方策の提案を試みている。
 本論文は、以下に示す6章から構成されている。
 第1章「序論」では、現在の法体系が確立するまでの歴史的背景とこれまでの既存研究の流れを示し、本研究課題の意義および目的について論述している。
 第2章「地方都市の特性と現行制度の適用状況」では、現在の土地利用規制制度の枠組みを示し、土地利用制度体系および制度自体が抱えている問題点を明らかにしている。
 第3章「地方都市の市街地拡大の実態」では、まずはじめに、全国32地方都市圏を対象に人口・世帯などの基本統計データを用いて、市街地拡大の実態を把握し、その結果と区域区分制度の運用範囲との比較から都市圏の分類を行い、運用範囲上問題がある都市圏群を明らかにした。その後、問題を有している新潟都市圏を市街地拡大の詳細調査地に選定し、開発許可と農地転用許可の実績などを用いて、市街地が拡大する要因の分析を行っている。また、広域都市計画区域全体の都市構造の変化や都市計画基礎調査区単位の密度構造の変化の状況を分析し、区域区分下における市街地形成の実態を明らかにしている。
 第4章「区域区分制度の運用と設定に関する評価」では、市街化区域の規模を決定する際に大きく寄与する将来人口フレームの設定に着目し、設定状況と設定の際の作業の流れから(1)上位計画との整合性の状況、(2)行政間(県都市局と県農政局、県都市局と市町村)の調整状況(3)都市計画担当者の意向の反映状況の視点から、行政による区域区分制度運用上の問題点を明らかにしている。
 第5章「営農を考慮した農村集落の宅地化の可能性」では、昭和60年代から農業環境の悪化に伴い農村集落より市街化の意向が出始め、市街化区域に編入される行動が顕在化している市街地縁辺部に位置する農村集落を対象に、ヒアリング調査をもとに(1)農用地を所有する個々の農家世帯意向と行動の把握、(2)農業集落の意向とその合意形成状況、(3)農家世帯の土地所有状況を明らかにし、集落内の合意形成に関する問題点および市街化区域編入に伴う制度運用の問題点を究明している。
 第6章「地方都市における市街地拡大制御手法の問題点と計画論」では、本研究の総括として、地方都市における市街化の実態と土地利用規制の制度および運用の問題点を挙げ、その改善策として地方都市で有効な市街化制御の枠組み、手法を提案している。

非公開論文

お気に入り

マイメニューの機能は、JavaScriptが無効なため使用できません。ご利用になるには、JavaScriptを有効にしてください。

ページの先頭へ戻る