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大型薄肉構造物の高精度構造解析法に関する研究

氏名 渡邊 力
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第168号
学位授与の日付 平成13年3月26日
学位論文の題目 大型薄肉構造物の高精度構造解析法に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 林 正
 副査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 長井 正嗣
 副査 助教授 宮木 康幸
 副査 助教授 岩崎 英治

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目次

記号

ABSTRACT

第1章 序論 p.1
1.1 緒言 p.1
1.2 既往の研究 p.3
1.2.1 ハイアラーキ要素 p.3
1.2.2 局所応力解析への応用 p.4
1.2.3 自由振動解析への応用 p.5
1.2.4 座屈解析への応用 p.7
1.3 研究目的と概要 p.8

第2章 ハイアラーキ要素 p.9
2.1 ハイアラーキの概念 p.9
2.2 二次元要素 p.11
2.2.1 四辺形要素 p.11
2.2.2 三角形要素 p.14
2.3 三次元要素 p.17
2.3.1 一般化変位 p.18
2.3.2 変位関数 p.18
2.4 まとめ p.19

第3章 ハイアラーキ要素法の定式化 p.21
3.1 概要 p.21
3.2 剛性方程式と運動方程式 p.21
3.2.1 Mindlin 要素 p.21
3.2.2 ソリッド要素 p.26
3.3 座屈方程式 p.28
3.3.1 増分理論による定式化 p.28
3.3.2 Mindlin 要素 p.31
3.3.3 ソリッド要素 p.34
3.4 まとめ p.36

第4章 各種ハイアラーキ要素 p.37
4.1 任意形状要素 p.37
4.1.1 写像関数 p.37
4.1.2 ハイアラーキ写像 p.37
4.1.3 微積分の変換 p.39
4.1.4 任意形状要素の定式化 p.41
4.2 定形要素 p.44
4.2.1 積分の漸化式 p.44
4.2.2 線形剛性行列 p.47
4.2.3 幾何剛性行列 p.49
4.2.4 初期変位マトリックス p.52
4.3 特殊要素 p.54
4.3.1 縮退要素 p.54
4.3.2 遷移要素 p.55
4.3.3 特異要素 p.56
4.3.4 Kirchhoff 要素 p.57
4.4 まとめ p.58

第5章 数値計算法 p.59
5.1 全体剛性行列の組立て p.59
5.1.1 内部自由度の消去 p.59
5.1.2 平面シェル要素の仮想回転剛性 p.60
5.2 固有値問題の縮小法(2段階動的縮小法) p.60
5.2.1 固有値問題の縮小 p.60
5.2.2 固有方程式 p.61
5.2.3 静的縮小法 p.62
5.2.4 動的縮小法 p.62
5.2.5 2段階動的縮小法 p.63
5.2.6 逆2段階動的縮小法 p.64
5.2.7 2段階動的縮小法のアルゴリズム p.64
5.3 その他の数値計算法 p.66
5.3.1 次数低減積分法 p.66
5.3.2 プログラミング p.66
5.4 まとめ p.67

第6章 局所応力解析への応用 p.69
6.1 条件数と丸め誤差 p.69
6.1.1 ハイアラーキ関数 p.69
6.1.2 条件数と解析精度 p.70
6.1.3 要素形状が条件数に与える影響 p.72
6.2 平板の曲げ応力解析 p.75
6.2.1 せん断ロッキングと次数低減積分 p.75
6.2.2 形状関数の効率的な選択方法 p.77
6.2.3 Kirchhoff 要素 p.78
6.2.4 ハイアラーキ要素の精度 p.80
6.2.5 要素分割の影響 p.81
6.2.6 集中荷重の問題 p.83
6.3 平面応力解析 p.84
6.3.1 円孔板の応力集中問題 p.84
6.3.2 L形板 p.86
6.4 構造物の局所応力解析 p.87
6.4.1 補剛板の局所応力 p.87
6.4.2 薄肉門型ラーメン隅角部の局所応力 p.89
6.4.3 鋼床版2主桁橋の補剛リブ開孔部応力 p.92
6.5 まとめ p.98

第7章 自由振動解析への応用 p.101
7.1 ハイアラーキ要素の精度 p.101
7.1.1 Kirchhoff 要素 p.101
7.1.2 Mindlin 要素 p.102
7.1.3 ソリッド要素 p.105
7.2 2段階動的縮小法の計算効率 p.107
7.2.1 薄肉門型ラーメン p.107
7.2.2 コンクリート箱桁橋 p.110
7.3 まとめ p.112

第8章 座屈解析への応用 p.113
8.1 平板の座屈解析 p.113
8.1.1 Kirchhoff 要素 p.113
8.1.2 厚板の座屈係数 p.115
8.1.3 Mindlin 要素の等価せん断補正係数 p.119
8.1.4 板厚比と非線形項の影響 p.120
8.2 補剛板の座屈解析 p.122
8.2.1 一方向圧縮をうける補剛板 p.122
8.2.2 面内曲げを受ける補剛板 p.124
8.2.3 面内せん断を受ける補剛板 p.125
8.3 薄肉構造の座屈解析 p.127
8.3.1 集中荷重を受けるI形断面はり p.127
8.3.2 一方向圧縮を受ける箱形断面柱 p.130
8.3.3 逆L形ラーメンの局部座屈 p.131
8.4 まとめ p.134

第9章 合理化2主桁橋の立体解析 p.137
9.1 合成T形断面桁 p.137
9.1.1 主桁および床版の応力 p.138
9.1.2 支点部のモデル化の影響 p.139
9.1.3 床版の応力 p.141
9.2 合理化2主桁橋 p.142
9.2.1 局所応力解析 p.142
9.2.2 局部座屈解析 p.154
9.3 まとめ p.156

第10章 結論 p.157

謝辞 p.158

付録A 三角形要素の面積分 p.159
付録B 厚板の自由振動の厳密解 p.162
B.1 基礎方程式 p.162
B.2 固有振動モード p.162
B.3 せん断モード p.165
付録C 節点帯板法 p.166
C.1 節点帯板要素 p.166
C.2 一般化変位 p.166
C.3 変位関数 p.167

参考文献 p.169

 要素細分割法(h法)による大型薄肉構造物の有限要素解析では、要素分割を多くすると知量の次元数が増大して解析規模に制約を受ける。そのため、ズーミング手法により部分構造の局所応力が計算されることが多いが、実構造に忠実なモデル化は困難である。さらに、要素の任意点で応力の精度が悪く、大容量の計算機を用いて要素を細分割しても局部的な応力状態を正確に把握できない。加えて、要素の細分化により入力データ数が増大してデータ作成状況が煩雑かつ膨大となる。
 それに対して、級数を用いて変位の補間関数を高次化して精度を改善するp法を用いれば、粗い要素分割を用いて全体解析を行うことができる。この方法では、要素分割を粗くすることにより離散化の誤差が少なくなるので、h法に比べて極めて少ない未知量で高精度の解が得られる。さらに、要素の任意の点で同精度の解が得られ、局所応力解析に適した手法である。しかし。実構造物に適用する際には、級数解法と大型要素を用いることによるp法特有の問題が生じる。
 本論文は、大型薄肉構造物の線形応力解析、自由振動解析と線形座屈解析に対して、p法による高精度で効率的な構造解析法の開発を目的として、高精度なハイアラーキ要素と計算効率を向上させるための数値計算法について研究を行い、成果をまとめたものである。
 論文は、全10章から構成されており、各章の概要は以下の通りである。
 第1章では、p法に関する既往の研究について考察し、本研究の目的と論文の概要を述べている。
 第2章は、ハイアラーキの概念とハイアラーキ要素の変位関数について述べたものである、p法では、階層型の形状関数に用いる様々な関数列が提案されているが、本研究では節点帯板法で用いた極めて簡単な多項式(ハイアラーキ多項式)を応用し、二次元と三次元要素に対して変位関数と階層図を既往の研究に比べ明快な形で表現している。
 第3章は、ハイアラーキ要素による線形応力解析、自由振動解析と座屈解析の定式化について論じており、Mindlin 理論と三次元弾性理論に忠実な剛性行列と質量行列、さらに増分理論により線形座屈理論に基づいた初期変位マトリックスを含む接線剛性行列を誘導している。
 第4章は、ハイアラーキ多項式の長所を活かして汎用性と効率性を考慮したハイアラーキ要素の定式化について論じている。まず、p法で用いられている混合関数法に比べプログラミングの容易なハイアラーキ写像を用いた任意形状要素の定式化を示している。次に、高次式による剛性行列を効率的に計算するために、ハイアラーキ多項式の多重積積分値の漸化式を求め、各種の剛性行列と質量行列を解析積分により求める定形要素を誘導している。さらに、これらの要素をそのままの形で適用することが難しい問題に対して、縮退要素、遷移要素、特異要素およびKirchhoff 要素を求めている。
 第5章は、ハイアラーキ要素に適した全体解析のアルゴリズムと数値計算法について論じている。まず、線形応力解析に対する全体解析のアルゴリズムについて述べ、自由振動解析と座屈解析の大規模固有値問題でも同様のアルゴリズムを用いるために動的縮小法を改良した2段階動的縮小法を開発している。さらに、Mindlin 要素の仮想回転剛性と次数低減積分法、および逆写像などのハイアラーキ要素特有の数値計算法について述べている。
 第6章では、線形応力解析に対する数値計算を行い、ハイアラーキ多項式と既往の関数列を用いた場合の丸め誤差による桁落ちの影響について考察し、各要素の精度と数値計算法の効率性について検証を行っている。さらに、p法の弱点である特異点問題に対して特異要素を用いて精度の悪化を防ぐ手法を数々の計算例により検証し、実規模の計算モデルによりズーミング手法を用いずに粗い要素分割で全体解析を行うと同時に精度の良い局所応力を計算できる全体解析法の有用性を確認している。
 第7章では、自由振動解析に対する数値計算を行い、各要素の精度を検証している。次に、2段階動的縮小法の計算効率について考察を行い、動的縮小法に対する優位性を述べている。さらに、数万元の固有値問題に適用して、2段階動的縮小法の有用性を確認している。
 第8章では、面内荷重が作用する平板の座屈解析の数値計算を行って、各要素の精度を検証し、薄板と厚板における各非線形項の影響を調べている。さらに、薄肉構造物の数値計算例により座屈解析における2段階動的縮小法の効率性を確認している。
 第9章では、Mindlin 要素とソリッド要素を混用する合成構造の数値計算を行って効率性を検証し、合理化2主桁橋の局所応力解析と局部座屈解析に応用して、本解法の実用性を確認している。
 第10章では、本研究の総括を行い、得られた研究結果をまとめている。

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