本文ここから

標準活性汚泥法エアレーションタンクにおいて従属栄養細菌による酸素消費が硝化速度に及ぼす影響

氏名 多田 實
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第171号
学位授与の日付 平成13年3月26日
学位論文の題目 標準活性汚泥法エアレーションタンクにおいて従属栄養細菌による酸素消費が硝化速度に及ぼす影響
論文審査委員
 主査 教授 桃井 清至
 副査 教授 森川 康
 副査 教授 原田 秀樹
 副査 助教授 大橋 晶良
 副査 助教授 小松 俊哉

平成12(2000)年度博士論文題名一覧] [博士論文題名一覧]に戻る.

目次

命名法

第1章 総論 p.1
第1節 標準活性汚泥法実施設エアレーションタンクにおける硝化反応の数学的モデル式の意義と現状 p.1
第2節 本研究の目的 p.1
第3節 本論文の構成と内容 p.2

第2章 活性汚泥法反応槽における硝化反応に係わる数学的モデル式の変遷 p.6
第1節 活性汚泥法反応槽における硝化反応に係わる数学的モデル式の歴史的経緯 p.6
第2節 IAWQモデルにおける硝化速度 p.7
第3節 結論 p.8

第3章 研究の背景 p.9
第1節 硝化反応に係わる微生物 p.9
1-1 硝化細菌 p.10
1-2 従属栄養型硝化細菌 p.10
1-3 その他の微生物 p.11
第2節 既往文献におけるASM-3で使用する各種パラメータの推定値およびその信頼性の検討 p.11
2-1 KA,O,KA,NH,KA,HCOの検討 p.12
2-2 μm,A,YA,XAの検討 p.18
第3節 標準法実施設AT内における酸素消費の検討および研究の背景 p.21
3-1 活性汚泥フロック内における微生物間の基質競合が硝化速度に及ぼす影響 p.21
3-2 酸素消費に対し酸素供給が制限される場合の硝化速度の挙動 p.24
第4節 標準法実施設ATにおける酸素収支および研究の目的 p.28
第5節 結論 p.31
5-1 硝化反応に係わる微生物の総括 p.31
5-2 既往文献におけるASM-3で使用する各種パラメータの推定値およびその信頼性の検討の総括 p.31
(1) KA,O,KA,NH,KA,HCOの検討 p.31
(2) μm,A,YA,XAの検討 p.32
5-3 標準法実施設AT内における酸素消費の検討および研究の背景 p.32
5-4 標準法実施設ATにおける酸素収支および研究の目的 p.33

第4章 小型反応槽試験 p.34
第1節 調査方法 p.34
1-1 装置と運転方法 p.34
1-2 実験条件 p.35
1-3 水質試験方法 p.36
第2節 小型反応槽試験の結果と考察 p.36
2-1 Rr試験における酸素消費速度とDOの関係 p.37
2-2 Rr試験におけるN-Rrと小型反応槽における硝化速度の関係 p.38
2-3 ATU-Rrの正確さおよび信頼性 p.40
2-4 反応槽におけるATU-Rrと有機物濃度の関係 p.41
2-5 DOとNH4+-N除去の関係 p.43
2-6 送気量とT-Rr,ATU-Rr,N-Rrの関係 p.44
2-7 MLSSとDO、硝化速度の関係および反応槽における酸素収支 p.45
2-8 水温、送気量が硝化速度に及ぼす影響 p.52
2-9 水温、送気量がATU-Rr,N-Rrに及ぼす影響および酸素収支 p.53
第3節 結論 p.59

第5章 標準法実施設ATにおける調査 p.61
第1節 調査対象施設の概要 p.61
1-1 A処理場における調査対象施設の概要 p.61
1-2 B処理場における調査対象施設の概要 p.63
第2節 調査方法 p.63
2-1 施設の運転方法 p.63
2-2 測定項目および試験方法 p.65
第3節 A処理場における調査結果 p.67
3-1 AT内のDO,NH4+-N,硝化速度,ATU-Rrの変化 p.67
3-2 AT各槽における従属栄養細菌、硝化細菌、活性汚泥生物全体による酸素消費量の変化 p.69
3-3 AT内における酸素収支 p.71
第4節 B処理場における調査結果 p.73
4-1 標準法における調査結果 p.73
(1) NH4+-N,NOx-N,硝化速度の変化 p.73
(2) 硝化速度と送気量の関係 p.77
(3) 汚泥返送率が硝化に及ぼす影響 p.78
4-2 ステップ法における調査結果 p.79
(1) NH4+-N,NOx-N,硝化速度の変化 p.79
(2) 硝化速度と送気量の関係 p.80
第5節 AおよびB処理場ATにおけるDOと硝化速度の関係 p.82
第6節 結論 p.84

第6章 実施設ATにおける硝化の制御 p.86
第1節 標準法実施設ATにおける硝化反応の制御の現状と課題 p.86
1-1 制御用計測器の現状と課題 p.86
1-2 送気量制御方法の現状と課題 p.87
第2節 標準法実施設ATにおける硝化反応の制御の改善についての提案 p.88
2-1 実施設ATにおける硝化反応の制御に対する基本的考え方 p.88
2-2 実施設ATにおける硝化反応の制御改善への提案 p.90
(1) ATの運転方法 p.90
(2) 送気量の制御 p.90
(3) 制御用DO計の設置位置 p.93
(4) 施設・設備の改善 p.93
第3節 結論 p.95

第7章 本論文の結論 p.97
第1節 活性汚泥法反応槽における硝化反応に係わる数学的モデル式の変遷 p.97
第2節 研究の背景 p.97
2-1 標準法AT内で硝化反応に係る微生物 p.97
2-2 既往文献におけるASM-3で使用する各種パラメータの推定値およびその信頼性の検討 p.97
2-3 標準法実施設AT内における酸素消費の検討および研究の背景 p.98
2-4 標準法実施設AT内の酸素収支および研究の目的 p.98
第3節 小型反応槽試験 p.98
第4節 標準法実施設ATにおける調査 p.100
第5節 実施設ATにおける硝化の制御 p.101

おわりに p.103

参考文献 p.104

謝辞 p.109

 従来、標準活性汚泥法実施設エアレーションタンク(以下、AT)における硝化反応の反応速度論的解析には溶存酸素(以下、DO)とアンモニア性窒素の2種類の基質が関与するMonod 型の反応速度式が適用されてきた。
 しかし、ATにおける硝化速度を解析した結果を報告している多くの文献ではMonod 型の反応速度式で使用されている飽和定数は0.5-3.5g/m3,菌体収率は0.02-0.13とともに幅広い範囲に分布しているし、また、実際にDOと硝化速度の関係を調査するとその関係は調査対象系毎に大きく異なり、更に、実施設ATにおける調査ではDOが0 mg/ L 近辺の極めて低濃度でも硝化が起こっている報告もあるなど、AT内で起こっている硝化反応をMonod 型の反応速度式から予測しようとすると信頼性が低い。このことは、Monod が提案した式は1種類の細菌を1種類の栄養基質で「純粋培養」したときに発見した経験式であり、活性汚泥混合液のように従属栄養細菌、硝化細菌等多種類の微生物が散気により供給された酸素を競合して生息している「混合培養」系にまでMonod 型の反応速度式を適用できるのか検討する必要があることを示唆している。特に、活性汚泥バイオマスの大部分を占める従属栄養細菌による酸素消費が硝化細菌による酸素消費、即ち、硝化速度に影響を及ぼしている可能性は高く、この場合、硝化速度はMonod 型の反応速度式とは別の反応機構に従っていることが予想される。
 そこで、本論文では、活性汚泥混合液に硝化細菌の硝化活性を阻害する薬品を添加して活性汚泥微生物による酸素消費を従属栄養細菌によるものと硝化細菌によるものに分離して測定し、両微生物による酸素消費が水温、送気量、MLSS等ATの運転条件とどのような関係にあるのか実態を明らかにするととともに、AT内の硝化速度にMonod 型の反応速度式が適用できるか検討を試みた。
 本論文の第1章ではAT内で硝化反応に係わる微生物を検証し、独立栄養型の硝化細菌だけでなく、従属栄養型の硝化細菌(Arthrobacter等)も硝化反応に関与している可能性があることを指摘した。
 第2章では従属栄養細菌と硝化細菌による酸素消費のメカニズムを最近の生化学的知見より考察し、従属栄養細菌と硝化細菌の酸素に対する反応性に差があるとは考えにくく、両微生物による酸素の消費量は各々の微生物が活性汚泥で占めるバイオマスに比例すると考えられること、更に、このことは活性汚泥フロック中で従属栄養細菌による酸素消費が硝化細菌による酸素消費、即ち、硝化速度に影響を及ぼす可能性があることを指摘した。
 第3章ではAT内における散気による酸素の供給と従属栄養細菌、硝化細菌による酸素消費の関係式を提示した。
 第4章では5Lの小型反応槽を用い、活性汚泥混合液における両微生物による酸素消費と水温、送気量、MLSS等ATの運転条件との関係を調査し、従属栄養細菌による酸素消費は細胞内に取り込む有機物と比例した酸素量以上には酸素を消費しないこと、活性汚泥フロック中ではバイオマスの大部分を占める従属栄養細菌の酸素消費が常に優先し、硝化細菌は従属栄養細菌が消費した後の残余の酸素を摂取して硝化を進めていること、及び、散気により供給された酸素と活性汚泥微生物が消費する酸素が均衡していることなどの事実を明らかにした。第4章で得られた結果は第2章で生化学的知見から予測した硝化速度の挙動と一致し、また、第3章で提示した酸素収支式が成立していたことを示している。
 第5章では標準活性汚泥法で運転する2ヵ所の実施設ATにおける調査を通じ、実施設ATでも酸素の供給と消費は均衡し、従属栄養細菌による酸素消費が安定した後の硝化速度は送気量に比例していたことを明らかにした。このことは第4章の小型反応槽で得られた結果から予測されるものであり、小型反応槽、実施設ATともに同じ反応機構で硝化が進んでいることを示している。また、2ヵ所の実施設ATにおけるDOと硝化速度の関係は大きく異なり、両者の関係にMonod 型の反応速度式を適用するのは適当でない結果が得られた。
 第6章では第1章から第5章で得られた結果を基に実施設ATにおいて硝化を促進するための制御手法の改善方法を提案している。

非公開論文

お気に入り

マイメニューの機能は、JavaScriptが無効なため使用できません。ご利用になるには、JavaScriptを有効にしてください。

ページの先頭へ戻る