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拘束解除法による等方性および異方性弾性体二重連結領域問題の力学解析に関する研究

氏名 堤 隆
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第173号
学位授与の日付 平成13年3月26日
学位論文の題目 拘束解除法による等方性および異方性弾性体二重連結領域問題の力学解析に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 海野 隆哉
 副査 教授 古口 日出男
 副査 助教授 杉本 光隆
 副査 助教授 大塚 悟
 副査 助教授 岩崎 英治

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目次

第1章 緒論 p.1
1.1 はじめに p.1
1.2 歴史的経緯 p.2
1.3 本研究の目的 p.6
1.4 本論文の構成とあらまし p.7

第2章 二次元弾性論の基礎方程式と等角写像 p.19
2.1 緒言 p.19
2.2 等方性理論の基礎方程式と基本解 p.19
2.2.1 構成方程式 p.20
2.2.2 釣合方程式 p.21
2.2.3 幾何式、適合条件式 p.22
2.2.4 Airyの応力関数 p.23
2.2.5 複素応力関数 p.23
2.3 異方性理論の基礎方程式と基本解 p.25
2.3.1 構成方程式 p.26
2.3.2 面内問題における支配方程式 p.28
2.4 等角写像 p.29
2.5 楕円座標系における応力、変位成分 p.32
2.6 結言 p.33

第3章 対向する集中荷重を受けた異方性円板 p.37
3.1 緒言 p.37
3.2 問題の定式化 p.38
3.2.1 円板の解 p.38
3.2.2 作用外荷重 p.41
3.3 数値計算例 p.43
3.4 結言 p.52

第4章 任意荷重が作用する異方性楕円形リング p.55
4.1 緒言 p.55
4.2 問題の定式化 p.56
4.3 数値計算例 p.63
4.4 結言 p.78

第5章 孔縁に左右対称な応力が作用する円孔を有する等方性半無限体 p.81
5.1 緒言 p.81
5.2 問題の定式化 p.82
5.3 数値計算例 p.90
5.4 水平な地表面に近接して掘削された円形トンネル問題への適用 p.99
5.5 結言 p.120

第6章 孔縁に任意の応力が作用する円孔を有する等方性半無限体 p.123
6.1 緒言 p.123
6.2 問題の定式化 p.124
6.3 数値計算例 p.130
6.4 一様に傾斜した地表面に近接して掘削された円形トンネル問題への適用 p.136
6.5 結言 p.161

第7章 結論 p.165

 各種機械要素や土木構造物等に設けられた孔は一般に機能的に不可欠なものが多いが、内部での局所的な応力集中や変形を発生させ機会や構造物の機能低下や破壊を招くことがある。中でも、孔からさほど離れていないところに、もう一つの境界を有する二重連結領域問題については、二つの境界が互いに影響しあうため材料内に生じる応力・変位場はより複雑で大きな応力集中発生することがあるため、正確に把握することが必要である。さらに設計などの実務においては繰り返し計算が必要であるために計算時間の節約が要求され、応力・変位解析などの設計計算自体が効率的であることが要求される。応力・変位解析が効率的に行われるためには、計算が効率的で短時間に必要なデータが得られることが重要である。
 1930年頃から等方性弾性体二重連結領域問題に対する応力関数を用いた力学解析では、双曲座標を用いて二つの境界を写像平面上に同心円に写像して解析が行われた。しかし、この方法では煩雑な途中計算が必要となる。また、異方性の問題の場合は二つの境界を写像平面上に同心円に写像する写像関数が存在しないため、この方法で力学解析を行うことができない。1945年頃に有限要素法が開発され、工学の種々の分野に適用されるようになった。しかしながら、有限要素解析は計算精度が要素の取り方に依存するという欠点を有する。また、部分的な計算結果を必要とする場合でも領域全体を計算しなければならないため、電子計算機の大量の容量を必要とし、計算結果が得られるまでに時間を要するという非効率性を有する。
 このような歴史的背景を踏まえ、本研究では二重連結領域問題に対し、比較的容易に数値計算結果が得られる弾性解の確立を目的として、二種類の単連結領域問題の解を境界条件が十分に収束するまで重ね合わせを繰り返す拘束解除法によって二重連結領域問題の解を導き、数値解析列を示してその有用性を検証した。本論文は、材料力学、岩盤力学で基本問題となるいくつかの問題に対する研究結果をまとめたものである。
 第1章では、本研究の背景、目的および内容の概略を示し、本論文の構成について述べた。
 第2章では二次元弾性論に応力・変位の解析手法を確立するという観点から、Muskhelishviliらの等方性理論とLekhnitskii による異方性理論について述べた。
 第3章では直径軸上に対向する集中荷重が働く直交異方性円板の問題を扱った。この問題はコンクリートや岩石などの引張強度を用いるときに用いられる。等角写像された平面では内部に不連続性を含む領域が形成される、この領域において定義される解析関数は正、負のべきで表されるLaurent 形式となる。本章ではLekhnitskii が示した解析の中で不足していた点を補い、この問題の応力場と変位場を決定した。得られた解による数値計算例では実験結果とほぼ一致した結果であることを確認した。
 第4章では直交異方性弾性楕円リング問題について扱った。この章では拘束解除法を用いて、第3章で導いた直交異方性楕円体の解とLekhnitskii が彼の著書の中で示した楕円孔を有する無限体の解を重ね合わせ、この問題の解を導いた。得られた解による数値計算例では、外径に対し内径が7割より小さい場合において、林やDurelli らの数値計算例にほぼ一致することを確認した。
 第5章では孔縁に左右対称な応力が作用する円孔を有する等方性半無限体の問題を扱った。この章では、この問題に対して拘束解除法を用いて円孔を有する等方性弾性無限体の解と等方性弾性半無限体の解を重ね合わせて解を導くことによって、Jeffery が提案し鵜戸口が数値計算例を示した双曲座標系による方法に比べて計算手順が煩雑にならずに解析を行うことができることを示した。さらに、この解を用いて重力場において水平地表面からごく近い位置での円形トンネルの掘削によって発生する地盤の応力・変位の数値計算例を求め、提案手法の有用性を検証した。
 第6章では孔縁に任意の応力が作用する円孔を有する等方性半無限体の問題について扱った。この章では第5章で示した解析の過程で、円孔を有する等方性弾性無限体中の仮想直線境界上に発生する応力の定式化の際に、非対称な成分を表す項を新たに加えてこの問題の解を導いた。さらに、この解を用いて重力場において一様に傾斜した地表面からごく近い位置での円形トンネルの掘削によって発生する地盤の応力・変位の数値計算例を求め、提案手法の有用性を検証した。
 第7章では、本研究で得られた知見を総括して結論とし、今後の研究課題について述べた。

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