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ボルトの締結された円形フランジの剛性評価に関する研究

氏名 木村 弘之
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第196号
学位授与の日付 平成15年3月25日
学位論文題目 ボルトの締結された円形フランジの剛性評価に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 武藤 睦治
 副査 教授 長井 正嗣
 副査 教授 古口 日出夫
 副査 助教授 田辺 郁男
 副査 助教授 井原 郁夫

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目次

第1章 緒論 p.1
 1.1 緒言 p.1
 1.2 従来の研究および課題 p.7
 1.2.1 ボルト締結部のばね定数に関する研究 p.7
 1.2.2 フランジ締結体の強度や密封性能に関する研究 p.9
 1.2.3 点支持円板に関する研究 p.11
 1.2.4 ボルト締結された構造物の耐震性能に関する研究 p.12
 1.2.5 従来の研究の課題 p.13
 1.3 本研究の目的と特徴 p.15
 1.4 本論文の構成 p.17
 参考文献 p.20

第2章 点支持円板の剛性についての理論解析 p.25
 2.1 緒言 p.25
 2.2 点支持円板 p.26
 2.2.1 円板の基礎方程式と一般解 p.26
 2.2.2 中心に集中荷重が作用する点支持円板 p.28
 2.2.3 中心に曲げモーメントが作用する点支持円板 p.30
 2.3 剛体と結合している点支持円板 p.32
 2.3.1 中心に軸方向荷重が作用する外周点支持/内周固定円板 p.32
 2.3.2 中心に曲げモーメントが作用する外周点支持/内周固定円板 p.35
 2.4 円筒殻と結合している点支持円板 p.38
 2.4.1 円筒とフランジとの結合部の剛性 p.38
 2.4.2 中心に軸方向荷重が作用する外周点支持/内周ばね支持円板 p.41
 2.4.3 中心に曲げモーメントが作用する外周点支持/内周ばね支持円板 p.43
 2.4.4 外周に曲げモーメントが作用する外周点支持/内周ばね支持円板 p.44
 2.5 結言 p.46
 参考文献 p.47

第3章 ボルト締結された円形フランジの曲げ剛性 p.49
 3.1 緒言 p.49
 3.2 理論解析 p.50
 3.2.1 ボルト部分の剛性 p.50
 3.2.2 フランジ部分の剛性 p.55
 3.2.3 ボルト締結部全体の剛性 p.59
 3.3 実験方法 p.60
 3.3.1 静的曲げ試験I(横荷重による曲げ) p.60
 3.3.2 静的曲げ試験II(4点曲げ) p.62
 3.4 結果および考察 p.65
 3.4.1 点支持円板の変位分布 p.65
 3.4.2 ボルト本数の影響(静的曲げ試験I) p.67
 3.4.3 ボルト本数の影響および円筒タンクとの結合部剛性の影響(静的曲げ試験II) p.71
 3.5 結言 p.76
 参考文献 p.77

第4章 ボルト締結された円形フランジの軸方向剛性 p.79
 4.1 緒言 p.79
 4.2 理論解析 p.81
 4.2.1 ボルト部分の剛性 p.81
 4.2.2 フランジ部分の剛性 p.81
 4.2.3 締結部全体の剛性 p.86
 4.3 実験方法 p.87
 4.4 結果および考察 p.90
 4.4.1 フランジ面が分離している場合 p.90
 4.4.2 フランジ面が接触している場合 p.95
 4.5 結言 p.100
 参考文献 p.101

第5章 実機への適用 p.103
 5.1 緒言 p.103
 5.2 ボルト締結された円形フランジの剛性評価フロー p.104
 5.2.1 ボルト締結された円形フランジの曲げ剛性 p.104
 5.2.2 ボルト締結された円形フランジの軸方向剛性 p.107
 5.3 図式解法 p.110
 5.3.1 ボルト締結された円形フランジの曲げ剛性 p.110
 5.3.2 ボルト締結された円形フランジの軸方向剛性 p.111
 5.4 タンクモデルへの適用例 p.118
 5.4.1 試験方法 p.118
 5.4.2 FEMによる解析方法 p.120
 5.4.3 結果および考察 p.121
 5.5 ブッシングモデルへの適用例 p.125
 5.5.1 試験方法 p.125
 5.5.2 FEMによる解析方法 p.127
 5.5.3 結果および考察 p.127
 5.6 結言 p.130
 参考文献 p.131

第6章 結論 p.133
 6.1 各章の結言 p.133
 6.2 変電器の耐震設計への提言 p.135
 6.3 今後の課題 p.135

主要論文 p.137
関連論文 p.137
謝辞 p.139

付録A 点支持円板のたわみ p.141
付録B 式(2-15)の誘導 p.149

ボルトによって締結された機械構造物、たとえば変電機器の耐震解析を行う上で、ボルト締結部の剛性を考慮する必要があることは、従来から指摘されているが、工学的観点から未だに十分な検討が行われていなかった。本論文では、このような現状を踏まえ、変電機器の耐震解析精度の向上を計ることを研究目的として、フランジ締結体の剛性を理論解析、FEM解析、静的試験および動的試験により総合的に評価、検討を行った。本論文は、緒論および結論を含めて全6章から構成される。各章の概要は、次の通りである。
 第1章「緒論」では、本研究を行うに至った背景および現状の問題点について述べ、さらに従来の研究についてレビューし、課題を抽出した。さらに、円形フランジ締結体が多用されている変電機器の耐震性能を評価する上で、ボルトによる締付け荷重がボルトピッチ円上に離散的に配置されていることやフランジの内周が円筒タンクと結合していることを考慮して、円形フランジ締結体の剛性評価法を確立する必要があることを明らかにした。
 第2章「点支持円板の剛性についての理論解析」では、まず、外周が等間隔に点支持された円板に軸方向荷重や曲げモーメントが作用する場合の円板のたわみを、薄板の曲げ理論を用い、さらに支持点反力を円周上にフーリエ級数展開することで解析的に求める方法を示した。また、この解析手法を「外周が等間隔に点支持され、内周が円筒殻と結合している円板」に適用し、軸方向荷重や曲げモーメントが作用した場合の円板のたわみ式を誘導した。
 第3章「ボルト締結された円形フランジの曲げ剛性」では、円形フランジ締結体の曲げ剛性の評価方法を確立する目的で、ボルト本数や円筒タンクとフランジの結合部剛性の影響を考慮した簡易的な解析モデルを考え、このモデルを用いてボルトおよびフランジそれぞれの剛性を算出し、さらに締結部全体の剛性を計算する方法を提案した。これによる解析結果は、曲げ剛性評価試験の結果とよく一致することを示した。
 ボルト部分の曲げ剛性については、フランジ接合面が完全に接触している場合、接合面の一部が分離している場合について、それぞれ曲げモーメントと角度変化との関係を簡易的に計算する方法を示した。これに対応する実験結果は、2直線で表される解析結果とよく一致し、ボルトの剛性を十分推定できることを示した。
 フランジ部分の曲げ剛性については、外周が等間隔に点支持され内周が円筒と結合した円板に曲げモーメントが作用する場合の変位分布を解析的に求め、ボルト本数や円筒タンクとフランジの結合部剛性が剛性に及ぼす影響について定量的に明らかにした。
 第4章「ボルト締結された円形フランジの軸方向剛性」では、円形フランジ締結体の軸方向剛性の評価方法を確立する目的で、フランジ接合面が分離している場合および接触している場合について検討し、以下の結果が得られた。
 フランジ接合面が分離(接触)している場合の軸方向剛性を評価するために、内周が円筒殻と結合し外周が等間隔に点支持(固定)された円板モデルに、軸方向荷重が作用する場合の変位分布を板の曲げ理論を用い、さらに支持点反力を円周上にフーリエ級数展開することで解析的に求め、フランジの軸方向剛性を計算する方法を提案した。
 これらの計算式に基づいてフランジの軸方向剛性に及ぼすボルト本数の影響および円筒とフランジの結合部剛性の影響について計算を行ない、ボルト本数および円筒とフランジの板厚比が増すほど軸方向剛性が増すことを定量的に明らかにした。これによる解析結果は、軸方向剛性に関する実験結果と良く一致することを示した。
 第5章「実機への適用」では、円形フランジ締結体の剛性についての簡易評価式の実機への適用を目的として、パソコン等によって剛性を計算するための手順を示した評価フロー、およびグラフを利用して求める図式解法を示した。次に、円形フランジ締結体の曲げ剛性評価式を動的に検証した。すなわち、タンクモデル、ブッシングモデルを用いた加振試験および上記曲げ剛性を考慮したFEM解析を行い、機器の固有振動数および応答(加速度、変位、応力)について検討し、以下の結果が得られた。
 ボルト締結部の曲げ剛性を考慮して解析することによって、機器の固有振動数および共振正弦3波加振試験時の応答を従来より精度良く推定できることを示し、本論文で提案しているボルト締結部の剛性評価方法が有効であることを示した。
 第6章「結論」では、本研究を総括している。本研究の結果、変電機器の固有振動数や共振正弦3波加振時の応答を設計段階で精度良く予測できる実用的な手法が確立された。これにより、合理的な耐震設計をすることが可能となり、ひいては変電機器の地震に対する信頼性向上に寄与すると考える。

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