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地盤の調査方法が沿岸域に分布する土の特性評価に与える影響の研究

氏名 田中 政典
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第205号
学位授与の日付 平成15年6月18日
学位論文題目 地盤の調査方法が沿岸域に分布する土の特性評価に与える影響の研究
論文審査委員
 主査 教授 海野 隆哉
 副査 教授 杉本 光隆
 副査 助教授 大塚 悟
 副査 助教授 豊田 浩史
 副査 芝浦工業大学 工学部 教授 足立 格一郎

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目次

第1章 序論 p.1
1.1 研究の目的と背景 p.1
1.2 本論文の構成 p.4
参考文献 p.7

第2章 軟弱地盤の調査手法に関する既往の研究 p.8
2.1 概説 p.8
2.2 サンプリング方法に関する既往の研究 p.15
 2.2.1 サンプラーに関する研究 p.15
 2.2.2 世界の代表的なサンプリング法 p.20
 2.2.3 我が国の日本のサンプリング法 p.22
2.3 原位置試験と適用性に関する既往の研究 p.27
 2.3.1 現場ベーンせん断試験(FVT) p.27
 2.3.2 電気式静的コーン貫入試験(CPT) p.31
 2.3.3 ダイラトメーター試験(DMT) p.34
2.4 本章のまとめ p.36
参考文献 p.38

第3章 沿岸域に分布する地盤の特徴 p.42
3.1 概説 p.42
3.2 試験方法と試料作製方法 p.42
 3.2.1 残留応力測定試験 p.43
 3.2.2 一軸圧縮試験 p.44
 3.2.3 三軸圧縮試験 p.44
 3.2.4 一面せん断試験 p.45
 3.2.5 再構成試料作製方法 p.45
3.3 堆積環境が地盤の工学的性質に及ぼす影響 p.47
 3.3.1 珪藻土 p.47
 3.3.2 珪藻含有量が土の工学的性質に及ぼす影響 p.47
3.4 本章のまとめ p.60
参考文献 p.62

第4章 調査方法が地盤のせん断強さに及ぼす影響 p.63
4.1 概説 p.63
4.2 試験方法 p.64
 4.2.1 X線透過試験 p.65
4.3 サンプリング方法の違いがせん断強さに及ぼす影響 p.67
 4.3.1 我が国と諸外国のサンプラー比較 p.67
 4.3.2 各種サンプラーから得られた試料の品質比較 p.74
 4.3.3 サンプラーの刃先角度がせん断強さに及ぼす影響 p.81
 4.3.4 試料採取長がせん断強さに及ぼす影響 p.84
 4.3.5 追切りによる試料採取とせん断強さ p.88
 4.3.6 採取された試料のサンプラー内の強度分布 p.91
4.4 ボーリング方法の違いがせん断強さに及ぼす影響 p.94
 4.4.1 ウォッシュボーリングとシェルビーチューブサンプラー p.94
 4.4.2 ディスプレイスメントボーリング p.94
4.5 本章のまとめ p.98
参考文献 p.99

第5章 室内試験によるせん断強さの評価 p.100
5.1 概説 p.100
5.2 一軸圧縮試験の適用性に関する研究 p.101
 5.2.1 一軸圧縮試験の理論的背景と残留有効応力 p.101
 5.2.2 微視構造の観点から残留有効応力と一軸圧縮強さ p.123
5.3 一軸圧縮試験に代わる室内試験方法 p.145
 5.3.1 室内ベーンせん断試験 p.145
 5.3.2 一面せん断試験 p.147
 5.3.3 三軸圧縮試験 p.148
 5.3.4 間隙径による一軸圧縮強さの補正 p.149
5.4 本章のまとめ p.153
参考文献 p.155

第6章 沿岸域の地盤特性に適した地盤調査方法 p.157
6.1 概説 p.157
6.2 改良地盤 p.158
 6.2.1 サンドコンパクション地盤 p.158
 6.2.2 石炭灰(FGC)処理地盤 p.184
6.3 特殊な軟弱地盤 p.201
 6.3.1 中間土地盤 p.201
 6.3.2 さんご磯混じり地盤 p.211
6.4 本章のまとめ p.222
参考文献 p.225

第7章 結論 p.228
謝辞 p.233

 軟弱地盤のせん断強さは非排水せん断強さによって決まり,我が国ではそのせん断強さを一軸圧縮強さから求める方法が一般的である。一方,北欧地域においてはベーンせん断試験や電気式静的コーン貫入試験の結果から地盤の非排水せん断強さを求める方法が主流である。地盤の非排水せん断強さを求める方法は,それぞれの国や機関によって異なっており,今のところ国際的に定まった非排水せん断強さの評価方法はない。一方,堆積環境の観点から土の物性を考えると,我が国の沿岸域に分布する地盤は火山の噴火による降灰,北欧地域の地盤は氷河の影響を強く受けており,これらの地域の土の工学的性質は大きく異なることが予測される。
さらに,欧州基準化機構(CEN)では,限界状態設計法の導入に伴い,地盤調査と室内試験方法に関しても基準化の動きが見られる。CENによってこの基準が採択されると,この基準が国際基準化機構(ISO)に採用される可能性は高く,我が国への影響は計り知れないほど大きなものになると考えられる。
このような背景から,本論文では諸外国で行われている地盤調査方法を概観し,土の物性評価方法について我が国の手法と比較検討し,我が国のサンプリング技術が世界的に見てどのような位置にあるのか明らかにした。また,我が国の沿岸域の地盤には珪藻遺骸(珪藻)が多量に含まれていることが知られており,地盤の工学的特性を特徴づける重要な要因となっている。このため,珪藻の含有量が地盤の工学的性質に与える影響について考察を行った。さらに,一軸圧縮試験の適用性について分析を行い,試験の適用に問題のある場合にはそれに代わる室内試験方法あるいは原位置試験方法について検討を行った。
本論文は第1章から第7章までの章立てで構成されている。各章の概要は,以下のとおりである。
第1章「序論」では,研究の動機として地盤の物性を正確に把握することの必要性を述べ,その目的と背景,本論文の構成について述べた。
第2章「軟弱地盤の調査手法に関する既往の研究」ではサンプリング技術の発展の歴史と現在使われている世界の代表的なサンプリング方法および我が国のサンプリング方法を概観した。また,原位置試験に関する既往の研究成果などを述べた。
第3章「沿岸域に分布する地盤の特徴」では軟弱地盤に珪藻が含まれることによる工学的性質の変化を考察する。我が国の海成粘性土は北欧地域の粘性土と比較して自然含水比や液性限界が大きいことが知られている。これは我が国の粘性土には珪藻が多く含まれていることが一つの原因と考えられる。そこで,珪藻含有量が地盤の工学的性質に与える影響について各種力学試験を実施し検討を行った。この結果,珪藻含有量が増加すると残留有効応力や一軸圧縮強さは大きく低下することがわかった。また,珪藻を多量に含む試料であっても,拘束圧を受けていれば非排水せん断強さはそれほど大きな影響を受けないことを示し,設計に際しては適切な試験方法を選定することの重要性を指摘した。
第4章「調査方法が地盤のせん断強さに及ぼす影響」では地盤の調査方法が非排水せん断強さに及ぼす影響について考察する。諸外国で行われているボーリングおよびサンプリング方法と我が国のものとの比較を行い,そこから得られる試料のせん断強さの違いを論ずる。さらに,サンプラーの刃先角度や試料採取長がせん断強さに与える影響および追切りの影響がせん断強さに与える影響について考察した。我が国のサンプリング方法によって得られた非排水せん断強さは世界的に優れた方法と認められているサンプリング方法とほぼ同等であることを示し,世界における我が国のサンプリング技術の位置づけを明らかにした。
第5章「室内試験によるせん断強さの評価」では,沿岸域の設計で用いられる非排水せん断強さを求めるための一軸圧縮試験の適用性に関する分析を行い,一軸圧縮試験の問題点の抽出を行った。一軸圧縮強さは残留有効応力と密接な関係にあり,残留有効応力を保持できない土に対しては,拘束圧を加え残留有効応力を補う必要があることを指摘している。また,残留有効応力を微視構造の観点から考察し,一軸圧縮強さの補正法を検討した。
第6章「沿岸域の地盤特性に適した地盤調査方法」では,サンドコンパクションと石炭灰によって改良された地盤や中間土およびさんご礫地盤のような特殊な地盤に対して第2章~第5章で述べたサンプリングと原位置試験を適用し,試験方法の適合性と問題点を論じた。特殊な地盤の評価には一軸圧縮試験等の室内試験も参考にして総合的に判断する必要もあるが,原位置試験が最も正しい値を示すことを明らかにした。すなわち,従来のサンプリングに原位置試験を加えることによって,精度の高い地盤情報が得られることを示した。
第7章「結論」では第2~6章で得られた知見を総括し結論とした。

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