本文ここから

鋼橋の完成検査システムに関する開発研究

氏名 小櫻 義隆
学位の種類 工学博士
学位記番号 博甲第2号
学位授与の日付 昭和62年6月30日
学位論文の題目 鋼橋の完成検査システムに関する開発研究
論文審査委員
 主査 教授 鳥居 邦夫
 副査 教授 菅野 昌義
 副査 教授 矢田 敏夫
 副査 教授 林 正
 副査 助教授 高田 孝次
 副査 東京大学 教授 伊藤 学

昭和62(1987)年度博士論文題名一覧] [博士論文題名一覧]に戻る.

第1章 序文 p.1
第1節 仮組立工程の現状と問題点 p.1
第2節 本研究の目的 p.2
第3節 本論の構成 p.3
第2章 システムの概要 p.4
第1節 部材計測システム p.4
第2節 データ処理システム p.7
第3章 部材計測システム p.10
第1節 部材計測システムの内容 p.10
1.まえがき p.10
2.測定方法 p.14
3.外部標定要素の決定 p.17
4.三次元計測座標値の決定 p.20
5.測定装置及び測定場 p.23
(1)カメラの架台 p.23
(2)測定場 p.24
6.ターゲット p.26
(1)ターゲットの形状選定 p.26
(2)コントラストの高いターゲット p.26
7.画像処理方法 p.27
(1)階調 p.27
(2)2値化 p.27
(3)輪郭線の抽出 p.28
(4)画像中心点の算出 p.34
第2節 測定カメラに求められる諸条件 p.36
1.まえがき p.36
2.スキャン精度の向上 p.37
(1)CCD素子の寸法誤差 p.37
(2)サーボ機構による誤差 p.38
(3)横方向スキャン軸と縦方向スキャン軸の直交性の狂いによる誤差 p.40
(4)画像面とレンズ光軸との直交性による誤差 p.40
(5)レンズの収差 p.42
(6)被写界深度外で測定する場合のピンボケによる誤差 p.44
(7)スキャン精度の推定 p.47
3.画面の主点位置 p.51
4.画面距離 p.52
5.カメラの外観寸法精度 p.53
6.まとめ p.54
第3節 カメラの内部標定要素の検定 p.55
1.まえがき p.55
2.内部標定要素の定義 p.58
(1)主点の位置と画面距離 p.58
(2)CCDラインセンサーの傾き p.60
(3)レンズの歪曲収差 p.60
(4)内部標定要素を考慮したカメラ座標値 p.61
3.内部標定要素を考慮した単写真標定 p.62
(1)共線条件方程式の誘導 p.62
(2)逐次近似解法 p.64
(3)良好な収束解を得るための方法 p.70
4.内部標定要素の検定実験 p.71
(1)実験概要 p.71
(2)CCDカメラによるターゲット中心座標値の読みとり精度 p.73
(3)内部標定要素の検定結果 p.74
(4)外部標定による検定値の確認 p.79
5.まとめ p.80
第4節 測定場のレイアウトに関する検討 p.82
1.まえがき p.82
2.各種測定装置の精度の推定 p.83
3.基準点の配置と測角精度の関係 p.84
(1)基準点が1個の場合の測角精度 p.84
(2)基準点が2個の場合の測角精度 p.89
4.測定場のレイアウトの決定 p.95
(1)基準点の据え付け位置とCCDカメラの姿勢 p.95
(2)三次元計測座標値の誤差評価法 p.97
(3)基線長の検討 p.98
(4)測定場のレイアウト p.100
5.測定精度の推定 p.102
6.まとめ p.104
第5節 測定精度の検定実験 p.105
1.実験概要 p.105
2.実験結果及び考察 p.108
第4章 データ処理システム p.111
第1節 データ処理システムの内容 p.111
1.まえがき p.111
2.データ処理システムのフロー p.114
3.計測座標値の統合 p.116
(1)第1次統合 p.116
(2)第2次統合 p.117
(3)第3次統合 p.117
4.部材データの作成 p.120
(1)主桁の部材データ p.120
(2)二次部材データ p.130
5.誤作発見 p.131
6.主桁の組立 p.132
(1)第1次組立 p.132
(2)添接可否の判定 p.135
(3)第2次組立 p.136
7.二次部材の組立 p.137
8.修正指令 p.138
9.情報伝達 p.139
第2節 主桁の組立シミュレーション3次元解析モデル p.140
1.まえがき p.140
2.主桁の第1次組立 p.141
(1)数値解析モデル p.141
(2)組立方法 p.144
3.添接可否の判定 p.146
4.主桁の第2次組立に関する検討 p.148
(1)片押し配置法 p.148
(2)ランダム配置法 p.150
(3)逐次配置法 p.150
(4)3種配置法の数値計算例 p.153
(5)考察 p.157
5.主桁の第2次組立 p.158
(1)2次元解析モデル p.158
(2)3次元解析モデル p.161
(3)解析モデルの応用 p.165
6.まとめ p.168
第3節 二次部材の組立シミュレーション3次元解析モデル p.169
1.まえがき p.169
2.対傾構の組立解析モデル p.170
(1)端対傾構の解析モデル p.170
(2)端対傾構の曲げ・ねじり変形後の部材座標値 p.172
(3)部材の組立大座標値 p.173
(4)ガセットの組立大座標値 p.174
(5)端対傾構の配置法 p.178
(6)添接可否の判定 p.178
(7)中間対傾構の解析モデル p.179
3.横構の組立解析モデル p.181
4.荷重分配横桁の組立解析モデル p.182
第4節 部材及び仮組立の照査法 p.183
1.検査項目 p.183
2.部材精度 p.184
(1)腹板高 p.184
(2)板の平面度(腹板) p.184
(3)フランジの直角度 p.184
(4)部材長 p.184
3.仮組立精度 p.185
(1)支間長 p.185
(2)桁間隔 p.185
(3)主桁の通り p.185
(4)主桁のそり p.186
(5)桁の出入り p.186
(6)桁の鉛直度 p.186
4.ボルト孔関係 p.188
第5節 ドリフトピン導入力実験 p.189
1.実験目的 p.189
2.実験要領 p.190
(1)供試体 p.190
(2)実験装置 p.190
3.実験結果及び考察 p.195
第5章 トータルシステム検証実験 p.200
第1節 実験概要 p.200
第2節 部材精度 p.204
1.主桁の精度 p.204
2.二次部材の精度 p.207
第3節 主桁のシミュレーション結果及び考察 p.212
1.主桁の仮組立検査項目 p.212
2.スプライスの孔ずれ p.213
3.現場継手部の隙間 p.214
4.主桁の組立変形 p.216
(1)曲げ変形 p.216
(2)ねじり変形 p.217
5.支間長 p.218
6.平面対角及び桁の出入り p.219
7.主桁の通り p.220
8.桁間隔 p.221
9.桁高 p.222
10.桁の鉛直度 p.223
11.製作そり p.224
12.フランジの直角度 p.225
13.板の平面度(腹板) p.226
14.現場継手部の相対誤差 p.227
(1)桁高 p.227
(2)腹板 p.227
第4節 二次部材のシミュレーション結果及び考察 p.230
1.端横桁 p.230
2.対傾構 p.233
3.横構 p.235
4.二次部材の接合率 p.236
第5節 まとめ p.237
第6章 結論 p.238
謝辞 p.246
付録 p.247
付録I 幾何形状補正 p.247
付録II 仮想面の処理方法 p.252
II-1 仮想面の決定 p.252
II-2 仮想面上の投影点 p.254
II-3 仮想面上の局部座標系 p.255
II-4 ターゲット高さの補正 p.257
付録III 座標軸の回転による座標交換 p.259
参考文献 p.262

 鋼橋、鉄塔、水門等の大型鋼構造物は製品の加工が完了すると、その完成状態を確認する検査手段として仮組立工程が組み込まれている。この工程は、架設現場での組立に先立ち、部材の接合の良否及び形状の確認を行うことを目的としている。
 特に鋼橋の仮組立工程では、
1 全製作工程の中に占める割合が高く、10~20%にも及ぶ。
2 広大な敷地が必要である。
3 危険を伴う高所作業が多い。
等の問題点がある。
 これらの諸問題を解決するには、製作部材の形状を三次元的に測定し、その測定されたデータを基に、計算機で組み立て状態をシミュレートすることで製品の検査を行う等の方法が考えられる。
 本論文は、上記の趣旨に基づき、鋼橋の仮組立工程を自動化することを目的として行ってきたシステム開発の研究成果をまとめたものである。
 ここでは、部材形状の測定に関するシステムを部材計測システム、また計算機で組み立て状態をシミュレートするシステムをデータ処理システムとした。
 第1章では、本研究の目的と本論の構成について述べた。
 第2章においては、本システムの概要として、部材計測システムとデータ処理システムの内容を簡単に述べた。
 第3章では、部材計測システムに関する項目を詳細にまとめた。
 第3章・第1節は、部材計測システムの内容として、測定原理から応用まで具体的に述べている。
 第3章・第2節では、現有のCCDカメラを測定カメラとして用いる場合の諸条件を論じるとともに、このカメラの内部標定要素を明確にした。その結果、内部標定要素は、CCDライセンサの傾き、主点の位置ずれ、画面距離であることが判明した。
 第3章・第3節では、第2節で検討されたCCDカメラの内部標定要素の検定法及びその検定結果についてまとめた。内部標定要素の検定法は単写真標定によるキャリブレーション方式を採用した。なお、この方式ではカメラの据付点を既知量とすることによりキャリブレーション精度を向上させた。検定実験結果によると、比較的精度のよい検定値(内部標定要素)が得られた。
 第3章・第4節においては、桁高2.7m、部材長17.5mの鈑桁の部材を高精度の測定が可能となるように測定場のレイアウトを検討した。その結果、測定場は幅10m、長さ24mの大きさとした。また、基線は6~11mの範囲が最適であることが判ったので、9mを基準長とすることにした。
 第3章・第5節では、本部材計測システムが実用可能か否かを確かめるため、実物大に近い測定場を製作し、測定精度の検定実験を行った。実験結果によると、本部材計測システムの測定精度は、鋼巻尺で部材を計測する場合と同じ程度の測定が可能であることが確認された。
 第4章では、データ処理システムに関する事項を詳細にまとめた。
 第4章・第1節では、データ処理システムの処理手順について、その内容を具体的に述べた。
 第4章・第2節は、主桁の組立法として考案した第1次組立と第2次組立の3次元解析モデルの紹介である。この場合の3次元解析モデルでは、鈑桁橋を対象とし、部材座標径に局部座標径の概念を導入することにより、組立時の曲げ及びねじり変形の挙動を表すことにした。また、第2次組立では、部材の組み直し順序の違いにより片押し配置法、ランダム配置法、逐次配置法の3種の配置法を考案した。これらの配置法で最も実用的な手法は、2次元解析モデルで数値計算を行った結果、ランダム配置法であることが判った。したがって、第2次組立の3次元解析モデルでは、ランダム配置法をシステムとして採用することにした。
 第4章・第3節では、二次部材の組立に関する3次元解析モデルについて紹介した。なお、ここでは、二次部材として最もポピュラーな構造を選び、それをモデル化した。
 第4章・第4節は、本システムで照査することのできる仮組立検査項目について、その処理内容の紹介である。なお、検査項目は、道路橋示方書を参照した。
 第4章・第5節は、ドリフトピンによるボルト孔ずれの矯正力(部材への導入力)に関する実験報告である。これによると、ドリフトピン1本当たりの導入力の限界値は、単せん断継ぎ手の場合3t、また複せん断継ぎ手の場合は5t程度であることが判った。これらの実験結果は、部材の組立シミュレーションモデルで考慮した曲げまたはねじり変形量の許容値を定めるための基準値とした。
 第5章では、トータルシステムとしての検証を行うため、実橋(鋼単純合成鈑桁橋)を対象に実験を行った。その結果、本システムは添接不可能となる部材の修正法を確立すれば、ほとんど問題なく実用に耐えるものであることが判った。
 第6章においては、以上の各項目で得られた結論を総合的に述べた。
 以上のように、本論文では、従来の仮組立工程に代わる検査システム法の研究成果を総括し、このシステムが導入されれば、現仮組立工程における組立ヤードでの危険作業からの解放、また工場敷地の利用効率における著しい改善が期待できることを示唆した。

昭和62(1987)年度博士論文題名一覧

  • 鋼橋の完成検査システムに関する開発研究
お気に入り

マイメニューの機能は、JavaScriptが無効なため使用できません。ご利用になるには、JavaScriptを有効にしてください。

ページの先頭へ戻る