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超高速ガス流を用いたエキシマレーザの流体特性に関する研究

氏名 今田 剛
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第95号
学位授与の日付 平成6年3月25日
学位論文の題目 超高速ガス流を用いたエキシマレーザの流体特性に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 八井 浄
 副査 教授 増田 渉
 副査 教授 藤井 信行
 副査 教授 白樫 正高
 副査 助教授 升方 勝己

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目次
第1章 序論 p.1
1-1 はじめに p.1
1-2 エキシマレーザ p.1
1-2-1 エキシマ p.1
1-2-2 放電励起エキシマレーザ p.2
1-2-3 エキシマレーザの応用 p.2
1-3 エキシマレーザの高繰返し化、高出力化と流体動力学特性の関係 p.3
1-4 本研究の目的と構成 p.4
1-4-1 目的 p.4
1-4-2 論文構成 p.5
第2章 超高速ガス流発生装置 p.7
2-1 はじめに p.7
2-2 Ludwieg管の動作原理 p.7
2-3 Ludwieg管の設計 p.8
2-3-1 設計手順 p.8
2-3-2 Ludwieg管の動作シミュレーション p.9
2-4 超高速ガス流発生実験 p.10
2-4-1 超高速ガス流発生装置LUCE p.10
2-4-2 乾燥空気による実験 p.11
2-4-3 ヘリウムによる実験 p.14
2-5 エキシマレーザの流体動力学特性評価用ガス流発生装置としてのLUCEの性能 p.14
2-6 まとめ p.15
第3章 レーザ動作とガス成分の関係 p.16
3-1 はじめに p.16
3-2 レーザ発振部の構造 p.16
3-2-1 ダブルパルス励起回路 p.16
(I)特長 p.16
(II)ダブルパルス励起回路の構成 p.17
3-2-2 励起放電部 p.18
3-3 単発レーザ動作実験 p.19
3-3-1 ガス混合比の最適化 p.19
3-3-2 レーザ発振特性 p.20
(I)放電電圧、放電電流、レーザ発振 p.20
(II)レーザ発振波長 p.20
(III)ビームパターン p.21
3-3-3 ダブルパルス動作実験 p.22
3-3-4 放電空間に注入されるエネルギー p.23
(I)予備電離放電により注入されるエネルギー p.23
(II)主放電により注入されるエネルギー p.24
3-4 レーザ動作とガス成分の関係 p.25
3-4-1 実験方法 p.25
3-4-2 実験結果 p.25
(I)残留ガス分析 p.25
(II)HCl及びXeガスの分析 p.27
(III)レーザガスとレーザチャンバの反応 p.27
(IV)励起放電及びレーザ発振と不純物生成 p.27
3-5 まとめ p.31
第4章 エキシマレーザ励起放電中のガス擾乱 p.32
4-1 はじめに p.32
4-2 実験装置 p.32
4-3 実験結果及び検討 p.34
4-3-1 静止レーザガス中のガス擾乱 p.34
(I)実験条件 p.34
(II)放電状態 p.34
(III)ガス擾乱及び衝撃波の伝播 p.35
(IV)衝撃波伝播特性の比較 p.36
(V)グロー放電時のその他の衝撃波の伝播特性 p.39
4-3-2 静止ネオンガス中のダブルパルス放電によるガス擾乱 p.41
(I)1番目の励起放電による衝撃波の発生 p.41
(II)繰返し動作を模擬した場合のガス擾乱の観測 p.43
4-3-3 超高速ガス流中でのガス擾乱の可視化 p.46
4-4 超高速ガス流と繰返し励起放電の関係 p.49
4-4-1 解析方法 p.49
4-4-2 超高速ガス流とガス擾乱の関係 p.51
4-4-3 繰返し放電時のガス密度擾乱 p.53
4-5 LUCEによる最高繰返し周波数の見積り p.53
4-6 まとめ p.55
第5章 XeClエキシマレーザ発振のガス温度依存性 p.56
5-1 はじめに p.56
5-2 XeClエキシマレーザ発振特性とガス冷却 p.56
5-3 イオン-イオン再結合によるXeClエキシマ生成再結合係数の温度特性 p.57
5-3-1 解析方法 p.57
5-3-2 解析結果 p.58
5-4 XeClエキシマレーザ発振の温度依存性 p.60
5-4-1 レート方程式の構築とシミュレーションコードの信憑性 p.60
5-4-2 レーザ出力の温度特性 p.62
5-5 ガス温度とHCl分圧比の関係 p.63
5-6 まとめ p.64
第6章 結論 p.65
謝辞 p.67
参考文献 p.68
研究業績 p.70

 放電励起エキシマレーザの高繰返し化は、本レーザを効率的に活用する際の重要な課題である。高繰返し化を推進するには、レーザガスの流体動力学の観点から、1)数百m/sのガス流の発生、2)励起放電によるガス擾乱特性の把握、は最優先で解決すべき課題である。本研究の目的は、放電励起エキシマレーザの流体動力学特性評価用の超高速ガス流発生装置を開発して数百m/sのガス流生成を実証すること、励起放電と流体動力学の関係を解明することである。加えて、超高速・低温ガス流の利用により、レーザ出力の向上を行なうものである。
 第1章「序論」では、放電励起エキシマレーザの原理、有用性を概説し、従来の研究の問題点を明確にするとともに、本研究の目的と意義を述べた。
 第2章「超高速ガク流発生装置」では、エキシマレーザ流体動力学特性評価用ガス流発生装置として新たに開発したLUCE(Ludwieg Charge‐Tube Experiment)の動作原理、設計方法を記述し、ガス流発生実験結果の詳細を述べた。動作ガスが乾燥空気及びヘリウムの場合、流速~200m/s、圧力~294kPaの高速ガス流の発生を実証した。現在、レーザの流体動力学特性研究に用いられているガス流の流速は数十m/s程度であるので、本装置の開発により、放電励起エキシマレーザの流体動力学特性の詳細な解明、また、エキシマレーザの更なる高繰返し化が可能になった。加えて、超高速ガス流の断熱膨張により、ガスが乾燥空気の場合、ガス温度は常温より~254Kまで低下した。
 第3章「レーザ動作とガス成分の関係」では、ガス成分とレーザ出力の関係を解明するため、本研究遂行のために試作したレーザ発振部の構造、諸特性について記述し、ガス中の不純物とレーザ出力の関係を吟味した。XeClレーザとして動作させた場合、最適ガス混合比Xe/HCl/He/Ne=1.0/0.2/31.9/66.9(294kPa)となり、エネルギー~20mJ、パルス幅~20ns、波長~308nmのレーザ発振を得た。放電電圧、電流を実測し、放電空間へ注入されるエネルギー~5.2J、予備電離放電により注入される注入されるエネルギー~0.6Jを得た。四重極マスフィルタ型ガス質量分析器を用い、XeClレーザを繰返し動作(0.Hz、2160shot)させた場合のガス成分を分析した結果、レーザ出力が時間とともに低下し、このとき、炭化物、ハロゲン分子(Cl2様)などの不純物が生成されることが判明した。これらの不純物の発生源は、レーザガス中のHCl、ガスボンベ中の不純物(CO2)などである。
 第4章「エキシマレーザ励起放電中のガス擾乱」では、高速度イメージコンバータカメラとシャドウグラフ法を組み合わせることにより、放電空間の流体の様子を可視化し、その空間的・時間的な振舞いの詳細を明らかにした。励起放電により、放電空間のガスが希薄化すること、3種類の衝撃波(ガス流方向へ進行する衝撃波、電極間に往復する衝撃波、予備電離放電により発生する衝撃波)が発生することが判明した。ガス流方向へ進行する衝撃波の伝播速度は、初速度~740m/s(M~1.4)で、進行するにしたがい音速に近づく。電極間を往復する衝撃波は、長期間にわたり放電空間に残留する。また、グロー励起放電中にアークが混在すると、ガス流方向へ進行する衝撃波の伝播速度が速くなることが判明した。さらに、LUCEによる超高速ガス流中での実験より、音速の速いレーザガスを用いた場合、上流側の予備電離放電により発生した衝撃波が、下流側のそれに比べ、放電空間に滞在する時間が短くなることを明らかにした。加えて、非定常圧縮性2次元オイラー方程式により、ガス流中での繰返し放電とガス擾乱の関係を数値的に解析した。これより、LUCEによる超高速ガス流を用いれば、繰返し周波数~7kHzの高繰返し動作が可能であることが示唆された。
 第5章「XeClエキシマレーザ発振のガス温度依存性」では、XeClκエキシマ生成に関するイオン-イオン再結合反応(Xe++Cl-+Ne→XeClκ+Ne及びNeXe++Cl-+Ne→XeClκ+2Ne)の再結合係数(α1及びα2)を温度100~400Kの広範囲にわたり算定し、XeClレーザ発振のガス温度依存性を検討した。圧力294kPaの場合、ガス温度~200Kで、α1,2は最大値~3.8×10-26cm6/sに達する。この再結合係数を用い、XeClレーザ発振の温度特性を理論的に検討した。その結果、LUCEで得られる超高速ガス流のガス冷却効果を利用すれば、1)レーザ出力が常温の場合の1.5倍に向上すること、2)低HCl分圧比でも高出力動作が可能となること、が明らかになった。
 第6章「結論」では本研究を総括した結論を述べた。

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