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積雪寒冷地域における冬期道路交通確保対策と道路除雪の評価に関する研究

氏名 酒井 孝
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第32号
学位授与の日付 平成5年9月22日
学位論文の題目 積雪寒冷地域における冬期道路交通確保対策と道路除雪の評価に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 鳥居 邦夫
 副査 教授 梅村 晃由
 副査 教授 早川 典生
 副査 教授 松本 昌二

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目次
第1章 序論 p.1
1-1 研究の背景と目的 p.1
1-2 論文の構成 p.2
第2 積雪寒冷地と道路交通 p.4
2-1 北陸地方の雪 p.4
2-1-1 降雪の特性 p.4
2-1-2 降積雪 p.7
(1)最大積雪深の分布 p.7
(2)日降雪深 p.8
(3)積算降雪深 p.9
2-1-3 豪雪の記録 p.11
2-2 道路交通の確保 p.15
2-2-1 道路除雪の必要性 p.15
(1)生活を支える道路 p.15
(2)社会・経済の変化 p.17
(3)地域の変化 p.21
2-2-2 雪寒法等の施行 p.24
(1)雪寒法の制定 p.24
(2)積雪寒冷特別地域の指定 p.25
(3)豪雪法の制定 p.26
(4)特別豪雪地帯の指定 p.26
(5)制度の変遷 p.8
2-2-3 道路交通の現況 p.30
(1)自動車交通量の増加 p.30
(2)北陸の人・貨物の動き p.31
(3)季節変動 p.32
2-3 雪寒事業の変遷 p.36
2-3-1 雪寒事業の概要 p.36
(1)雪寒事業の仕組み p.36
(2)除雪延長 p.36
(3)克雪道路と防雪施設等 p.41
(4)道路交通情報管理施設 p.42
(5)雪寒事業費 p.42
2-3-2 道路交通確保対策の変遷 p.48
(1)除雪の歴史 p.48
(2)除雪機械 p.51
(3)除雪機械の稼働状況 p.54
(4)歩道除雪 p.57
(5)克雪技術 p.58
2-4 道路除雪のあり方 p.65
2-4-1 道路除雪の社会的評価 p.65
2-4-2 道路除雪の課題 p.66
第3章 積雪寒冷地における道路線形 p.68
3-1 背景 p.68
3-2 目的 p.68
3-3 一般国道17号の現況 p.9
3-4 交通事故調査等からの分析 p.70
3-4-1 事故車両 p.70
3-4-2 障害車両 p.71
3-4-3 避けるべき道路線形 p.72
3-5 自動車の性能と走行性 p.73
3-5-1 縦断勾配 p.73
3-5-2 制動停止距離 p.75
3-5-3 曲線半径 p.76
(1)横滑りしない曲線半径 p.76
(2)制動停止距離を視距とした曲線半径 p.77
3-6 積雪地域における道路線形 p.78
3-7 評価 p.79
第4章 除雪機械の電算管理システムの開発と運用 p.80
4-1 背景 p.80
4-2 開発目的 p.81
4-3 システムの概要 p.82
4-3-1 車載装置の設計 p.82
(1)管理情報の収集記録 p.82
(2)データ収集手順と車載装置の機能 p.83
4-3-2 ソフトウェアの開発 p.84
4-4 システムデータの活用 p.86
4-5 評価 p.88
第5章 冬期道路情報システムの開発と運用 p.89
5-1 背景 p.89
5-2 除雪情報システム p.90
(1)システム開発 p.90
(2)積雪深さ計の面的配置 p.90
(3)ディスプレイ表示 p.91
5-3 降雪・凍結予測 p.91
(1)予測対象区域 p.92
(2)降雪予測 p.93
(3)凍結予測 p.94
5-4 ITVによる交通流監視システム p.95
5-5 路側放送(通信)システム p.96
5-6 上越地方における道路除雪情報システム p.97
5-6-1 背景 p.97
5-6-2 システムの概要 p.98
5-6-3 降雪・気温予測 p.99
(1)気象庁発表のデータの収集 p.99
(2)予測に必要なデータの整理 p.99
(3)降雪予測の手法 p.100
(4)気温予測 p.100
5-6-4 予測結果の検証 p.101
5-6-5 道路現況情報 p.102
5-6-6 運用後の結果評価 p.103
5-7 評価 p.103
第6章 冬期道路の確保に関する制度・政策 p.105
6-1 冬期歩行者空間確保パイロット事業の創設 p.105
6-1-1 背景 p.105
6-1-2 目的 p.106
6-1-3 施策の内容 p.106
(1)計画の策定 p.106
(2)事業の実施 p.106
6-1-4 新潟県の基本方針(案) p.107
6-1-5 十日町市雪みち計画の具体的実施例 p.110
(1)目的 p.110
(2)計画地域の概要 p.110
6-2 雪道ネック解消事業の創設 p.112
6-2-1 背景 p.112
6-2-2 目的 p.112
6-2-3 施策の内容 p.113
(1)計画の立案 p.113
(2)事業の実施 p.113
(3)新規の取組み p.113
6-2-4 具体的実施例 p.115
6-3 評価 p.117
第7章 道路除雪の評価 p.118
7-1 背景 p.118
7-2 冬期の道路機能と社会機能 p.118
(1)冬期の道路機能率と社会機能率 p.118
(2)冬期の道路機能と社会機能の関係 p.121
7-3 道路除雪の効果 p.122
(1)除雪効果の考え方 p.122
(2)除雪効果指数の算定 p.125
7-4 考察 p.130
7-5 結論 p.137
第8章 結論 p.138
8-1 総括 p.138
8-2 結び p.141
謝辞 p.143
文献 p.144

 昭和32年に創設された道路雪寒事業(以下事業という)の推進によって、雪国の厳しい環境は大幅に改善され、いま次の時代の雪国のあり方が議論されるようになってきている。そして、各地で、雪を利用した地域おこしが行われまさに、克雪から利雪時代へ大きな転換期を迎えている。このような時代に対応した新しい事業のあり方が求められている。
 本研究では、約30年間の事業と技術の発展過程を展望しながら、21世紀をめざした雪国づくりのために、総合的な対策を確立する必要があることを示している。総合対策の今後の中心課題は次の項目に集約される。1)雪国支援のための制度・政策の確立。2)雪に強い道路整備と技術開発。3)除雪等の合理的な運用手法の開発(マネージメント)。4)住民参加など地域の総力の結集手法の開発。5)雪国への国民の理解の促進、事業効果の測定手法の開発。
 本研究ではそれぞれの項目について具体的な成果を示す。とくに5)について、長年の懸案であった事業の効果を測定する手法を新たに提案するとともに、この方式の精度が高く一般的に適用できることを示した。
 第1章では、研究の背景と本研究の位置づけとその目的について述べている。
 第2章では、研究を進めるにあたって雪国の現状として、とくに、北陸地域の雪の特性や社会生活、冬期交通等の現状と課題について述べる。また、雪寒事業の発展過程や対策の現状にふれるとともに、今後、緊急に取り組むべき課題を示している。
 第3章では、積雪寒冷地における望ましい道路線形について述べている。
 雪国の道路線形や道路構造については道路整備の初期の段階では、無雪地域の基準に準じていた。その後、機械除雪工法の進歩など冬期の道路環境に対応した雪国の新しい基準が求められている。しかし、従来、積雪地域での道路線形について、交通事故、障害車の実態調査の結果に基づいて具体的に検討した例は少なく、本論文では、設計速度50km/h以上で、縦断勾配4%、40km/h以下では縦断勾配5%が目安となるほか、スノータイヤで、視距が5~15mのびること等を提案し、北陸地方建設局で実施している道路設計に採用されているほか、現在、道路構造令の改定作業が進められているが、本研究結果が基本となっている。
 第4章では、除雪車運行状況を新たに開発した運行記録計で適切に把握し、除雪費用の効率的、効果的運用に資するシステムについて述べている。
 このシステムは他の地方建設局でも使用されこのシステムの優位性を示している。さらに、現在、除雪機械だけでなく、一般建設機械に使用すべく基準化が進められている。今後、労働力不足が予想され、一層、除雪作業の効率化が要請されるため、マネージメントが重要になり、除雪機械の効率的運用に大きな力を発揮するものと期待されている。
 第5章では、冬期道路情報システムの開発と運用について述べている。
 除雪を適切に、経済的に行うためには、降雪状況(予測)を早期に把握し、的確な体制を組むことが重要である。とかく、従来、除雪作業の開始の指令は人の勘に頼ってきた一面があるが、精度の高いセンサーを利用して、その観測データを収集し、適切な判断と、それにもとづく指令が可能になった。
 このシステムによって、雪の降り方、時間的平面的広がりについてその特性を把握する事ができ、極めて適切な運営ができ、除雪作業の適切な運営ができ、除雪作業の適切な運用に資するところが、大きい。現在、長岡市、上越市を中心にした地域でパイロット事業として実施しているが、他の管理者でもこのシステムの導入を検討しているところが多い。
 第6章では、冬期道路の確保に関する制度政策について述べている。
 雪対策のなかで、制度政策についてあまり議論がなされていないきらいがあるが、今後きわめて重要なテーマである。ここでは、雪国の実態をふまえ、制度政策にしてゆく手法について述べている。とくに、ここでは、最近の大きな課題となっている冬期の歩行者空間ほ確保することを目的とした冬期歩行者空間確保パイロット事業と雪道ネック解消事業を取り上げている。
 歩道除雪、流雪溝および雁木などの施設整備と地元住民の協力で地域一体となって、効率的な歩行者空間の確保を目的として本事業を創設したものである。
 第7章では、除雪事業投資効果の評価手法について述べている。これまで、適切な評価方法はなかったものである。
 本研究では、道路除雪の投資効果を定量的に評価するとともに、無雪期に対する道路機能率と冬期社会機能を求め、その経年変化を比較するとともに、道路除雪を投資額と雪による経済的損失軽減額を対比比較する定量的評価手法を示している。除雪投資効果指数は19年間の単純平均で5.9倍を示し、除雪投資の効果の大きいことが判明した。さらに、この評価方式が適切であることは他の指標からも証明される。こうした成果をもとに今後、国民の雪に対する議論が一層高まるものと期待されている。
 第8章では、本研究の結論を述べている。

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