本文ここから

泥岩の盛土材料への適用に関する研究

氏名 黒島 一郎
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第195号
学位授与の日付 平成14年12月11日
学位論文題目 泥岩の盛土材料への適用に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 杉本 光隆
 副査 教授 海野 隆哉
 副査 助教授 大塚 悟
 副査 岐阜大学農学部 農業工学科元教授 仲野 良紀
 副査 長岡工業高等専門学校 環境都市工学科教授 福田 誠
 副査 防衛大学校土木工学科教授 山口 晴幸

平成14(2002)年度博士論文題名一覧] [博士論文題名一覧]に戻る.

第1章 序論 p.1
 1.1 本研究の背景 p.1
 1.2 既往の研究 p.2
 1.2.1 泥岩の物理・科学的性質に関する研究 p.2
 1.2.2 泥岩を盛土材料として用いる研究 p.4
 1.2.3 スレーキング試験方法 p.4
 1.2.4 軟岩の試験項目 p.4
 1.2.5 軟岩の盛土材料への適用 p.6
 1.2.6 泥岩の盛土材料への適用における課題 p.8
 1.3 本研究の目的 p.9
 1.4 本論文の構成 p.11
 参考文献 p.12

第2章 泥岩の基本的性質 p.14
 2.1 試験の目的 p.14
 2.2 泥岩の生成課程 p.14
 2.3 物理特性 p.16
 2.4 空隙分布 p.19
 2.5 鉱物組成 p.22
 2.6 力学特性 p.24
 2.7 まとめ p.27
 参考文献 p.28

第3章 泥岩のスレーキング特性 p.29
 3.1 試験の目的および概要 p.29
 3.2 試料 p.29
 3.3 岩塊の乾燥特性 p.30
 3.4 スレーキング試験 p.33
 3.4.1 試験方法 p.33
 3.4.2 試験結果 p.35
 3.5 スレーキングへの影響因子 p.48
 3.6 まとめ p.55
 参考文献 p.56

第4章 泥岩粗粒材料の変形・強度特性 p.57
 4.1 試験の目的および概要 p.57
 4.2 試料 p.57
 4.3 地表面から採取した試料 p.57
 4.3.1 試験の目的 p.57
 4.3.2 試料 p.58
 4.3.3 試験方法 p.58
 4.3.4 試験結果 p.59
 4.4 地山から採取した試料 p.70
 4.4.1 試験目的 p.70
 4.4.2 試料 p.71
 4.4.3 試験方法 p.72
 4.4.4 試験結果 p.74
 4.5 まとめ p.105
 参考文献 p.108

第5章 泥岩粗料材料の締固め特性 p.109
 5.1 試験の目的および概要 p.109
 5.2 試料 p.109
 5.3 空気乾燥試料の締固め特性 p.109
 5.4 湿潤試料の締固め特性 p.113
 5.5 水浸試料の締固め特性 p.117
 5.6 締固め試料のCBR特性 p.125
 5.7 まとめ p.128
 参考文献 p.130

第6章 泥岩粗料材料の沈下特性 p.131
 6.1 試験の目的および概要 p.131
 6.2 試料 p.131
 6.3 定速度圧縮試験 p.132
 6.3.1 試験方法 p.132
 6.3.2 試験結果 p.133
 6.3.3 考察 p.138
 6.3.4 まとめ p.139
 6.4.1 試験方法 p.140
 6.4.2 試験結果 p.141
 6.4.3 考察 p.150
 6.5 原位置試料定荷重圧縮試験 p.151
 6.5.1 試験方法 p.151
 6.5.2 試験結果 p.152
 6.5.3 考察 p.157
 6.5.4 まとめ p.157
 6.6 沈下予測 p.158
 6.6.1 空気乾燥試料 p.158
 6.6.2 原位置試料 p.161
 6.6.3 まとめ p.167
 6.7 乾湿繰返し圧縮試験 p.167
 6.7.1 試験方法 p.167
 6.7.2 試験結果 p.169
 6.7.3 考察 p.181
 6.7.4 まとめ p.181
 6.8 まとめ p.182
 参考文献 p.185

第7章 造成工事への適用 p.186
 7.1 造成工事概要 p.186
 7.2 室内試験結果の反映 p.188
 7.3 事前調査 p.189
 7.3.1 概要 p.189
 7.3.2 スレーキング特性調査 p.190
 7.3.3 圧縮沈下試験 p.192
 7.3.4 強度試験 p.192
 7.4 工法規定試験 p.193
 7.4.1 試験目的 p.193
 7.4.2 管理基準値 p.194
 7.4.3 転圧試験方法 p.197
 7.4.4 試験結果 p.198
 7.5 施工管理 p.202
 7.5.1 管理方法 p.202
 7.5.2 盛土材料 p.203
 7.5.3 沈下管理 p.209
 7.6 まとめ p.213
 参考文献 p.215

第8章 結論 p.215

謝辞 p.219

 堆積軟岩は日本に割合に広く分布しているが、堆積軟岩は性状が変化しやすいなどの理由により重要な土構造物には用いない、あるいは使用箇所を制限するなどによって盛土材料としては不適切な材料として扱われてきた。さらに、堆積軟岩を盛土材料として活用しなくても問題が発生しなかったため、盛土材料として使用するための研究もほとんど行われていなかった。しかし、日本の国土は狭くて土木工事において堆積軟岩と遭遇する機会は多く、堆積軟岩を盛土材料として活用することが必要になっているのが、現状である。
 堆積軟岩における性状の変化として最も顕著な現象は乾湿繰り返しによる細片化であり,一般的にはスレーキングと呼ばれている。スレーキングに関する研究は地すべりおよびトンネルの膨張性地山の分野で比較的古くから研究されており,多くの機関で試験方法が提案されている。しかし,スレーキングのメカニズムが究明されていないために多くスレーキング試験方法が提案されているが,試験結果の適用方法が不明確となっているのが現状である。そのためスレーキングのメカニズムを明らかにする必要がある。
さらに,盛土材料として活用するためには,これまでほとんど研究が行われていなかったため,盛土材料としての変形・強度特性,締固め特性および沈下特性などの力学的性質を明らかにする必要がある。この際,堆積軟岩は掘削時には硬くて塊状に産出するため,これらの特性を究明するにあたっては粗粒材料として扱う必要がある。
 また,粗粒材料を扱っていること,長期的な性状の変化を究明する必要があることなどから寸法および時間による影響についても調査研究する必要があり,現場における究明も必要である。このような背景のもとで,本研究では、堆積軟岩の代表的な材料である泥岩を取り上げることとし、泥岩としては神奈川県三浦半島に広く分布している三浦層群逗子泥岩を対象とした。
 本論文では、室内試験において乾湿繰り返しの条件を変化させて試験を行い、粒度分布の変化だけでなく、空隙分布の変化および粘土鉱物の変化からスレーキングのメカニズムを明らかにした。さらに、三軸圧縮試験,締固め試験および圧縮沈下試験によって泥岩粗粒材料の力学的性質を明らかにした。
 以上の室内試験結果から泥岩を盛土材料に適用できることが分かった。そこで,約20年前に泥岩によって施工された既設盛土内部を調査し,室内試験で明らかになっていたスレーキングのメカニズムを確認した。また,室内試験結果を造成工事に反映するとともに,盛土材料の品質管理および盛土の動態観測によって室内試験結果を検証し、泥岩を盛土材料に適用できることを明らかにした。したがって,本論文は,堆積軟岩のスレーキングのメカニズムおよび泥岩の力学的挙動の解明に寄与するものである。
 第1章は本研究の背景、泥岩に関する過去の研究結果を述べ,これらの研究の盛土材料に対する課題を指摘するとともに,本研究の目的について述べている。
 第2章では,研究の対象とした泥岩の基本的性質を述べている。基本的性質としては、泥岩の含水比と強度との関係、空隙分布の測定および鉱物組成について述べている。さらに、岩片に含まれる水分量が強度に影響することを明らかにしている。
 第3章では,スレーキングのメカニズムについて述べている。種々の条件におけるスレーキング試験結果を明らかにし,水の出入りがスレーキングの主因であることを明らかにしている。また,スレーキングによる空隙分布の変化を明らかにし、スレーキングが水の出入りによる空隙の体積変化に伴い空隙を介して亀裂面が発達し、細片化して起こることを明らかにした。
 第4章では,泥岩粗粒材料の変形・強度特性について述べている。泥岩粗粒材料の三軸圧縮試験を行い,粒径分布,風化度合いおよびスレーキング履歴が変形・強度特性に及ぼす影響を明らかにするとともに,泥岩の力学的挙動の特徴を明らかにした。
 第5章では,泥岩粗粒材料の締固め特性について述べている。粒度範囲および岩片の含水量による締固め特性への影響を明らかにするとともに、水浸した試料おいてスレーキングの有無による締固めおよびCBR特性への影響を明らかにした。
 第6章では,長期的な沈下に着目した泥岩粗粒材料の沈下特性について述べている。定速度圧縮試験による圧縮圧力と沈下量との関係、定荷重圧縮試験による沈下量の経時変化および水浸による沈下への影響について述べている。また,乾湿繰返し圧縮試験より、初期乾燥密度および初期含水比などによる沈下への影響について述べている。
 第7章では,室内試験結果からの造成工事への反映した項目,事前調査、転圧試験および盛土材料の圧縮沈下に関する動態観測から得られた知見を述べている。
 第8章では,以上の研究成果を要約し総括した。

ページの先頭へ戻る