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Deformation and Fracture of Aluminum Thin Foils at Elevated Temperatures (アルミニウム薄膜の高温における変形と破壊)

氏名 周 清
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第232号
学位授与の日付 平成13年8月31日
学位論文題目 Deformation and Fracture of Aluminum Thin Foils at Elevated Temperatures (アルミニウム薄膜の高温における変形と破壊)
論文審査委員
 主査 教授 田中 紘一
 副査 教授 福澤 康
 副査 助教授 鎌土 重晴
 副査 茨城大学 助教授 伊藤 吾朗
 副査 東北大学 助教授 小池 淳一

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1 Introduction―Deformation of thin film p.1
1.1 Thin films in IC p.1
l.2 Deformation of thin film p.3
1.2.1 Stress and mechanical problem p.3
1.2.2 Methods for measuring stress in thin film p.5
1.2.3 Methods for mechanical testing p.8
1. Nanoindentation p.8
2. Microbeam Deflection p.10
1.3 Deformation and fracture in thin films at elevated temperatures p.12
1.3.1 Aging of interconnecting line p.12
1.3.2 Stress-temperature cycles and stress relaxation p.14
1.4 Scope of this study p.17
Reference p.18
2 Creep behavior and effect of thickness and grain size p.20
2.1 Introduction p.20
2.2 Experimental method p.22
2.2.1 Specimen preparation p.22
2.2.2 Procedure p.26
2.3 Experimental results p.27
2.3.1 Creep curves p.27
2.3.2 Thickness and grain size effect p.29
1. Thickness t p.29
2. Grain size d p.29
3. t/d p.32
2.3.3 Dependence of creep rate on applied stress p.33
2.3.4 Creep fracture p.38
2.3.5 Subgrain observation p.41
2.4 Discussion p.42
2.4.1 Creep mechanism p.42
2.4.2 A model to evaluate the influence of t and d p.42
2.5 Conclusion p.45
Reference p.46
3 Texture effect p.48
3.1 Principle of dislocation slipping p.48
3.2 Experimental method p.49
3.3 Experimental results p.50
3.4 Discussion p.58
3.5 Conclusion p.60
Reference p.61
4 Deformation microstructure and its relation with creep mechanism p.62
4.1 Introduction p.62
4.1.1 Threshold determination p.63
4.1.2 Subgrain p.64
4.2 Experimental procedure p.66
4.3 Results and Discussion p.67
4.3.1 Microstructure related to threshold stress p.67
4.3.2 Microstructure related to subgrain p.69
1. TEM p.69
2. OIM p.71
4.3.3 Creep mechanism p.72
4.4 Conclusion p.77
Reference p.78
5 Temperature influence on creep behavior p.79
5.1 Introduction p.79
5.2 Experimental procedures p.81
5.2.1 Preparation of specimen p.81
5.2.2 Creep test p.81
5.3 Experimental results p.83
5.4 Discussion p.90
5.5 Conclusion p.94
Reference p.95
6 Summary p.96
6.1 Summary of this study p.96
6.2 Remained issues p.98
Published Papers Related to This Work p.99

近年の情報関連技術の急速な進展には,半導体産業技術の迅速な進行が背景にある。半導体デバイスの高集積化に伴い、デバイス中のアルミニウム配線も微細化されてきた。ここで顕在化してきた一つの問題として,配線内の異種材料間に熱膨張係数の違いから生じている熱応カによる断線がある。この現象は応カによる一種の高温変形,破壊として考えられる。配線の信頼性を向上させるには,これら薄膜の高温変形機構を解明する必要がある。蒲膜変形の評価には,既にナノインデンテーション法およびマイクロビーム法のような新しい手法が開発されているが,薄膜材料のクリープ変形を理解するにはまだ不十分である。薄膜の熱応カサイクル試験および高温での保持試験を試み、変形挙動の把握することに研究を置いた。ユニアキシアル引張試験に供する薄膜を基板から完全に剥離した状態の単一薄膜試料(free-standing film)とすることは,その作成と取扱いが、非常に困難である。本研究では、圧延加工により生産されたアルミニウム箔に対して従来と同様のクリープ試験を行い,厚さ,結晶粒径,集合組織および温度といった様々な要因とクリープ挙動とを関連させて考察し,特にアルミニウム箔の変形挙動と変形組織の対応について詳細に調べた。本論文は6章から構成されている。
第1章「薄膜の変形」では本研究に至る社会的要請および背景を述べ、これまでの薄膜変形に関する研究を紹介し、本研究の位置付けを明らかにした。その中ナノインデンテーション法およびマイクロビーム法を用いた薄膜変形の研究とこれらの二つの方法による成果と問題点を提示した。また,薄膜破断試験および熱応カサイクルについての研究をまとめ、単一薄膜試料での引張試験を,簡単に紹介した。これらの研究成果をふまえ、過去の研究に不足しているクリープによる薄膜変形の理解を主眼とする本研究の目的を明確にし、併せて本論文の構成を示した。
第2章「クリープ挙動および試料厚さと結晶粒径の影響」では、Al-1mass%Si-0.5mass%Cu
合金箔の200℃におけるクリープ試験について述べ、定常クリープ速度と試料厚さ(t)と結晶粒径(d)の関係を調べた。その結果,t≧50μmの場合では,厚さの減少とともにクリープ速度は増加するが、t≦50μmの場合では,逆にクリープ速度は減少することを明らかにした。これに基づいて10≦t≦500μmの範囲におけるクリープ速度のt/d依存性を見出した。クリープ変形機構を理解するために,実験から得られた定常クリープ速度データにしきい応力を適用し、SEMでの断面観察と定常状態での試料のTEM観察によって検証した。定常クリープ速度のn'乗を負荷応力に対してプロットすると,データ点はn'(true stress exponent)を7とした回帰直線によく合い、SEM観察では,いずれの試料も粒内破壊を呈しており,厚い試料の断面はディンプル、薄い試料ではチゼルラインを形成していた。また,TEM観察では,定常状態において亜結晶粒が生成していることから,本薄膜の高温変形は亜結晶粒の形成を伴う転位芯拡散による低温べき乗クリープ機構が支配的であると結論された。定常クリープ速度の試料厚さおよび結晶粒径依存性は,定常クリープでの亜結晶粒形成における結晶粒界と自由表面の役割の相違に起因する亜結晶粒寸法の差を考慮することにより無理なく理解することができた。
第3章「集合組織の影響」では、クリープ挙動に及ぼす箔の集合組織の影響について,X線回折を用いたODF解析による試験および試験結果を述べた。試料厚さの違いより、集合組織に違いが見られた。10および30μm厚の箔では強いS方位とGoss方位を発達したが、50,70および100μm厚の箔では,弱いCube方位を示すにとどまった。異なる方位のTaylor因子の違いから、クリープ速度の試料厚さ依存性が50μm以上と以下で異なる理由をよく説明した。クリープ速度に対する箔方位の影響は、多結晶体変形の多重すべりと結晶粒相互の拘束に起因すると結論づけた。
第4章「変形組織とクリープ機構の関係」では、変形組織の観察に基づくクリープ機構の解釈について述べた。EBSP法などにより第2章で示されたモデルを検証する実験を行うとともにTEMによって定常状態の変形組織を詳細に観察した。サブバンダリー近傍の転位密度は高く、堆積した転位がサブバウンダリーを形成していることを示した。また、TEMによる組織観察から転位と粒子の相互作用を示す、しきい応力を考慮した変形機構はSrolovits機構によってよく説明されることも分かった。OIMの結果により、サブバンダリーの方位差は小さい結晶粒の中で1°程度、大きい結晶粒の中で0.5°以下であった。
第5章「クリープ挙動に温度の影響」では、種種の温度で試験したアルミニウム箔のクリープ挙動について述べた。試験温度の範囲は500から650Kであり、それぞれについてクリープ変形の活性化エネルギーを求めた。活性化エネルギーは試料厚さによって変化することがわかったが、付加応力による変化はあまり見られなかった。また併せて光学顕微鏡とSEMの観察による粒界すべりを確認した。粒界すべりは加速クリープ段階でボードの形成に重要とおもった。
第6章「まとめ」では、本論文の内容を総括し,本研究により見出された新しい課題についてまとめとした。

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