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運動誤差補正可能なアクティブスクイーズ空気軸受の基礎的研究

氏名 磯部 浩巳
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第180号
学位授与の日付 平成14年3月25日
学位論文題目 運動誤差補正可能なアクティブスクイーズ空気軸受の基礎的研究
論文審査委員
 主査 教授 久曽神 煌
 副査 教授 高田 孝次
 副査 教授 矢鍋 重夫
 副査 教授 柳 和久
 副査 教授 金子 覚

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第1章 緒論 p.1
1.1 スクイーズ効果 p.1
1.1.1 原理 p.1
1.1.2 定常スクイーズ空気膜の圧力発生 p.1
1.1.3 特長 p.3
1.2 スクイーズ効果に関する従来の研究 p.3
1.3 本論文の目的 p.7
1.4 本論文の構成 p.8
第2章 簡易機構を用いたアクティブスクイーズ空気軸受の基礎的実験 p.13
2.1 緒言 p.13
2.2 基本原理 p.13
2.2.1 実験モデル p.14
2.2.2 スクイーズ運動 p.15
2.2.3 位置決め動作 p.15
2.3 実験装置 p.16
2.4 実験結果および考察 p.18
2.4.1 浮上実験 p.18
2.4.2 駆動周波数―浮上量の関係 p.20
2.4.3 空気膜の負荷特性 p.21
2.4.4 浮上体の位置制御 p.23
2.5 結言 p.25
第3章 スクイーズ空気膜特性の数値解析 p.27
3.1 緒言 p.27
3.2 数値解析のためのモデル p.28
3.3 加振面の変位パターン p.29
3.4 無次元化および差分化 p.30
3.5 解析手順 p.34
3.6 解析結果 p.36
3.6.1 定常状態の解析例 p.36
3.6.2 過渡応答の解析例 p.41
3.7 結言 p.42
第4章 スラスト軸受によるスクイーズ空気膜の特性実験 p.44
4.1 緒言 p.44
4.2 スラストスクイーズ空気軸受の構成 p.44
4.3 定常スクイーズ空気膜特性の実験的・数値解析的検討 p.47
4.3.1 スクイーズ空気膜による物体支持 p.47
4.3.2 圧力センサ部の凹みによる影響の考察 p.49
4.3.3 物体下面にのみ発生するスクイーズ空気膜の特性 p.50
4.3.4 物体両面に発生するスクイーズ空気膜の特性 p.53
4.4 スクイーズ空気膜を介した物体非接触移動特性の実験的・数値解析的検討 p.56
4.4.1 ステップ応答 p.56
4.4.2 空気膜の負荷荷重-変位特性 p.59
4.4.3 2次遅れ系による空気膜特性の近似 p.60
4.4.4 立ち上がり位相差による応答特性 p.62
4.4.5 下板振動と両面振動による位置決め特性 p.65
4.5 結言 p.67
第5章 ラジアルスクイーズ空気軸受の製作 p.70
5.1 緒言 p.70
5.2 ラジアルスクイーズ空気軸受の構成 p.70
5.2.1 静圧スラスト案内および磁気カップリング p.70
5.2.2 軸および加振板 p.73
5.2.3 加振板案内機構のばね剛性の算出 p.73
5.2.4 加振板案内機構の設計と駆動特性の実験的検証 p.75
5.2.5 平行案内機構のばね特性 p.78
5.2.6 励振装置の周波数特性 p.78
5.2.7 回転軸と軸受の幾何学的関係 p.80
5.2.8 駆動・測定システム p.80
5.3 ラジアルスクイーズ軸受の特性実験 p.82
5.3.1 空気膜による回転軸の支持 p.82
5.3.2 駆動周波数・振幅による運動誤差の変化 p.83
5.4 スクイーズ空気膜の負荷-変位特性 p.85
5.4.1 非回転軸における駆動振幅の影響 p.85
5.4.2 非回転軸における平均すきまの影響 p.86
5.4.3 非回転軸における負荷-変位特性と駆動周波数の関係 p.87
5.4.4 非回転軸における負荷-変位特性と振幅比の関係 p.88
5.4.5 回転軸における空気膜のばね剛性 p.89
5.5 スクイーズ空気軸受設計指針の提案 p.92
5.6 結言 p.93
第6章 アクティブスクイーズ空気軸受 p.96
6.1 緒言 p.96
6.2 運動誤差補正原理 p.96
6.3 回転運動誤差の動的補正システム p.98
6.4 比例ゲイン,積分ゲインの設定 p.99
6.5 回転軸の実時間運動誤差補正 p.102
6.6 結言 p.108
第7章 結論 p.110
謝辞 p.114
添付資料(研究業績) p.115

 2面間の相対的な距離が周期的に変動したときに発生する圧縮性スクイーズ効果を利用した動圧空気軸受に注目し,軸受となる振動パッドの位置を調整することで,発生したスクイーズ空気膜で支持されている回転軸を非接触で移動させる方法を提案した.本論文の目的は,クスイーズ空気膜を介した物体の位置決め特性を数値解析的に求めること,および提案したスクイーズ空気軸受が回転軸を非接触で位置決め可能であり,さらに応用として回転軸の運動誤差補正が可能であることを実験的に検証することである.
 スクイーズ空気軸受は,その静圧空気軸受およびくさび作用を用いた動圧空気軸受の中間的な特性を持つと考えられる.すなわち,スクイーズ運動を行うアクチュエータへのエネルギ供給が必要であるが,圧電素子のような電気駆動アクチュエータを用いることで,閉鎖空間内で使用可能になる.また,軸の静止・回転に関わらず負荷容量を発生しているので,起動・停止時でも軸と軸受が接触することはない.これより,スクイーズ空気軸受は,両者の特長を持ち合わせているユニークな軸受であると考えられる.したがって,その特長に適合した環境下,すなわち閉鎖空間(例;汚染物質の流出防止,もしくは食品・薬品,半導体などの製造プラントなど作業環境の純度維持が必要な空間)で完全非接触が要求されるような応用分野への利用が考えられる.
 第1章「緒論」においては,スクイーズ空気軸受の原理を説明し,圧縮性・非圧縮性スクイーズ効果および運動誤差の動的補正を取り扱ったこれまでの研究を概観し,本論文の目的を述べた.
 第2章「簡易機構を用いたアクティブスクイーズ空気軸受の基礎的実験」においては,次章以降で述べられる数値解析手法の開発やラジアル軸受の製作の前段階として基礎実験を行った.高精度で再現性の高い実験を行うために,柔軟な板ばねで物体を平行案内する簡易型スクイーズ空気軸受を製作した.その結果,一例として半径15mmの振動パッドを駆動周波数800Hz,振幅3μmで励振した場合,外部からの負荷荷重4.9Nを受けている物体が,スクイーズ空気膜によって5.5μm浮上した.また,空気膜ばね剛性は,厚さの減少にともなって高くなる特性を持ち,測定範囲内での平均的な剛性は,1.8N/μmであった.これは,静圧空気軸受と比べて1/10~1/100程度,動圧空気軸受と比べて同程度~1/10程度である.さらに,振動パッドの振動位置を調整することで,浮上している物体を非接触で移動できることを確認した.浮上体の位置を測定して,簡単なフィードバック系を構築した結果,立ち上がり時間10msで位置決めできた.
 第3章「スクイーズ空気膜特性の数値解析」においては,スクイーズ空気膜を介した物体の位置決め特性について明らかにするための数値解析手法を提案した.圧縮性レイノルズ方程式と浮上物体の運動方程式をLeeの方法で差分化して,定常周期条件の下で繰り返し計算を行って定常スクイーズ空気膜の圧力分布および物体位置の時間変動を得た.その後,振動パッドがスクイーズ運動を維持したままで送り動作させた場合の,微小時間後圧力および物体位置の変化を順次計算することで,過渡応答を数値解析できた.
 第4章「スラスト軸受によるスクイーズ空気膜の特性実験」においては,物体の両面にスクイーズ空気膜を発生させ,物体を重力方向に非接触支持することのできるスラストスクイーズ空気軸受を用いて実験を行い,数値解析結果との比較検討を行った.その結果,センサの凹み深さを考慮することによって,空気膜圧力の実験結果と数値解析結果との差は,15%以下(周囲圧を基準)となり,本手法の有効性が確認された.また,物体浮上量についても,両者の結果は比較的よく一致した.従って,数値解析によるスクイーズ空気膜特性の定量的検討が可能であることがわかった.
 第5章「ラジアルスクイーズ空気軸受の製作」においては,回転軸の周囲に配置された4つの振動パッドでスクイーズ空気膜を発生し,回転軸を非接触支持するラジアルスクイーズ空気軸受を設計・製作した.実験の結果,安定なスクイーズ空気膜が発生し,回転軸を非接触支持できることを確認した.さらに,軸受の剛性は,駆動振幅の増加もしくは軸受すき間の減少によって増加するが,駆動周波数には依存しないことが分かった.
 第6章「アクティブスクイーズ空気軸受」においては,スクイーズ空気膜を介して浮上している回転軸の半径方向運動誤差を検出し,これを取り除くように振動パッドの位置を調整することで,運動誤差を実時間で補正するシステムを構築した.その結果,回転していない軸に対するステップ応答として,比例ゲインKp=0.9,積分ゲインKi=50において整定時間30msec,位置決め分解能0.05μmを得た.そして,提案された補正を行った結果,回転速度1rpmにおいて検出された偏心成分が支配的な約5.0μmp-p程度の運動誤差を,0.1μmまで減少させることができた.

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