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砂のような粒状体の粒子形状と一次性質、二次性質に関する研究

氏名 吉村 優治
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第47号
学位授与の日付 平成6年6月22日
学位論文の題目 砂のような粒状体の粒子形状と一次性質,二次性質に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 小川 正二
 副査 教授 鳥居 邦夫
 副査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 丸山 久一
 副査 助教授 本城 勇介

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目次
第1章 序論 p.1
1.1 まえがき p.1
1.2 既往の研究 p.2
1.2.1 土の工学的分類に関する研究
1.2.2 粒子形状の表現に関する研究
1.2.3 一次性質,二次性質に関する研究
1.3 本研究の目的 p.11
1.4 本論文の構成 p.12
参考文献 p.13
第2章 粒状体の粒子形状の簡易な定量化法と粒度組成の定量化 p.16
2.1 はじめに p.16
2.2 簡易な粒子形状の定量化の方法 p.17
2.2.1 凹凸係数FUの定義
2.2.2 定量化の方法
2.2.3 標本個数の検討
2.2.4 粒状体のFUの計測例
2.3 視覚印象図とFUの関係 p.24
2.4 投影断面による粒径加積曲線の推定 p.25
2.5 粒度組成の定量化 p.26
2.5.1 粒子寸法
2.5.2 粒度分布
2.6 まとめ p.27
参考文献 p.29
第3章 河川堆積砂の性質 p.31
3.1 はじめに p.31
3.2 試料の採取方法 p.33
3.3 河川堆積物の特徴と分析範囲 p.34
3.4 河川堆積砂の物理的性質 p.36
3.4.1 土粒子の密度
3.4.2 粒子寸法
3.4.2 粒度分布
3.4.4 粒子形状
3.5 粒度特性からみた液状化の危険性 p.43
3.5.1 液状化を起こす粒径範囲および液状化危険値の定義
3.5.2 液状化判定
3.6 N値からの相対密度の推定 p.47
3.7 実験に用いる人工試料 p.50
3.8 まとめ p.53
参考文献 p.55
第4章 粒状体の間隙比およびせん断特性に及ぼす一次性質の影響 p.59
4.1 はじめに p.59
4.2 密度特性への一次性質の影響 p.60
4.3 排水せん断特性 p.64
4.3.1 実験方法
4.3.2 内部摩擦角への一次性質の影響
4.3.3 ダイレイタンシー特性への一次性質の影響
4.3.4 変形特性への一次性質の影響
4.4 フォールコーン貫入量と内部摩擦角の関係 p.74
4.5 まとめ p.77
参考文献 p.78
第5章 粒状体の等方圧密およびせん断特性に及ぼす粒子形状の影響 p.80
5.1 はじめに p.80
5.2 等方圧密特性 p.81
5.3 排水せん断特性 p.84
5.3.1 実験方法
5.3.2 実験結果例と実験データ整理方法
5.3.3 変形特性への粒子形状の影響
5.3.4 ダイレイタンシー特性への粒子形状の影響
5.3.5 内部摩擦角への粒子形状の影響
5.4 繰返し非排水せん断特性 p.99
5.5 せん断強度への粒子表面粗度の影響 p.104
5.6 まとめ p.110
参考文献 p.112
第6章 結論 p.115
謝辞 p.119

 本論文では、粒状体の基本的要素である粒度組成および粒子形状の一因子が砂の最大、最小間隙比で表される密度特性に及ぼす影響を検討し、その因子が間隙比あるいは相対密度を介して強度、変形などのせん断特性に及ぼす影響を明らかにしている。さらに、基本的要素のうち特に二次性質に及ぼす影響の大きかった粒子形状に着目し、飽和砂の密度を種々に変化させたときの等方圧密および排水せん断特性、液状化抵抗に及ぼす粒子形状の影響を拘束圧依存性を含めて明らかにしている。また、研究を進めるに先立ち、まず粒状体の形状の影響に関する系統的な研究を阻害してきた粒子形状の簡易な定量化の方法を提案するとともに、濃尾平野を例として天然の河川砂の特徴を把握し、研究の基本的要素の検討範囲を設定している。
 第1章は序論であり、本研究と比較的かかわりの深い粒状体に関する既往の研究を示し、本研究の目的を述べている。
 第2章では、土質工学会でも基準化されていない粒子形状の評価のために、粒子形状を表す凹凸係数FUの簡易な定量化の方法を提案し、これまでに土質工学の分野で粒子の形状評価に用いられてきた丸みや角張り度の視覚印象図を定量化している。さらに、FUの定量化の際に粒子の中径の計測により、ふるい分け試験を行わないでも粒径加積曲線を描くことが可能であることを明らかにしている。また、本研究で検討する粒子形状以外の基本的要素(粒子寸法、粒度分布)の定量化指標についても述べている。
 第3章では、濃尾平野を例に、実際の河川堆積砂の組成、粒子形状などの一次性質の特徴を分析するとともに、粒度特性により液状化の危険性の検討を行っている。また、液状化発生の簡易予測法であるFL値法で用いられる、N値から相対密度への換算法の妥当性について述べている。さらに、ここで明らかになった自然砂の特徴に基づき各因子の検討範囲を決定し、粒状体の基本的要素である粒径、粒度分布および粒子形状FUの一因子が異なるように人工的に粒度調整した試料の性質を示している。
 第4章では、人工試料および河川堆積砂について、基本的特性である最大間隙比emax、最小間隙比eminで表される密度特性に及ぼす一次性質の影響を検討している。その結果、emax、eminは粒径が大きく、粒度分布が良く、FUが大きくなるほど小さくなり、特に粒子形状の影響が大きいことを示している。さらに、人工試料について相対密度あるいは間隙比を介して砂の基本的要素である粒径、粒度分布および粒子形状FUの独立した一因子が二次性質である内部摩擦角φd、ダイレイタンシー特性、変形特性などのせん断特性に与える影響について検討し、φdへの粒径の影響はほとんどなく、φdは粒度分布が良くなるとわずかに減少し、FUが大きくなると著しく小さくなることを明らかにしている。さらに、破壊時のストレス-ダイレタンシー関係は粒度組成には影響を受けず、FUが大きくなるほど小さくなることを示している。これらの結果は粒状体のせん断強度特性は粒子形状が同じ相似粒度の材料を用いた実験によって定まることを示唆するものである。また、せん断初期の変形係数E50は余裕間隙比によって一義的に定まること、フォールコーンの貫入量からせん断強さをある程度推測できることなど粒状体力学における新たな知見を見いだしている。
 第5章では、せん断特性に及ぼす影響の大きい粒子形状に着目し、密度、拘束圧力を種々に変化させたときの等方圧密および排水せん断特性、液状化特性に及ぼす粒子形状の影響を検討している。その結果、砂を等方圧密すると正規圧密状態の粘性土と類似のe-logp'関係を示し、その傾度である圧縮指数は粒子形状に無関係に初期間隙比により一義的に決まること、液状化抵抗も粒子が丸くFUが大きくなるにしたがって小さくなり、動的強さよりも静的強さへの粒子形状の影響が大きいことなどを明らかにしている。また、アルミ丸棒を用いた2次元モデルという極めて限られた条件下ではあるが、せん断強さに及ぼす粒子の表面粗度の影響を検討し、粒子の表面粗度および表面の状態(滑らかさ)は内部摩擦角にほとんど影響しないことも明らかにしている。
 第6章は結論であり、本研究で得られた知見を整理するとともに、今後の課題を述べている。

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