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選択組立における組み合わせ最適化

氏名 山田 泰弘
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第61号
学位授与の日付 平成7年3月24日
学位論文の題目 選択組立における組合せ最適化
論文審査委員
 主査 教授 高田 孝次
 副査 教授 梅村 晃由
 副査 教授 久曽神 煌
 副査 教授 柳 和久
 副査 法政大学 教授 古林 隆

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目次
第1章 緒論 p.1
1.1 選択組立の意義と問題点 p.1
1.2 従来の研究状況 p.3
1.3 本研究の目的と論文の構成 p.6
第2章 組合せ最適化とマッチング p.9
2.1 緒言 p.9
2.2 選択組立問題 p.9
2.3 選択組立の評価基準 p.12
2.3.1 組立の成功率を評価する基準-組立率- p.12
2.3.2 組立品の品質を評価する基準-絶対特性差の平均とばらつき- p.12
2.4 二部グラフの最大マッチング p.13
2.5 二部グラフの最小費用マッチング p.14
2.6 二部グラフのミニマックスマッチング p.15
2.7 結言 p.1
第3章 組立率の最大化 p.17
3.1 緒言 p.17
3.2 選択組立の方法 p.17
3.2.1 層別法 p.17
3.2.2 最大マッチング法を利用した選択組立 p.20
3.3 シミュレーション p.21
3.3.1 部品規格が無視できる場合 p.22
3.3.2 部品規格が無視できない場合 p.27
3.3.3 特性の分散の影響 p.32
3.3.4 最大マッチング法の組立率 p.33
3.4 結言 p.36
第4章 組立品の特性の最適化-最小二乗和基準- p.37
4.1 緒言 p.37
4.2 ランダム組立における組立品の特性 p.38
4.3 シミュレーション p.40
4.3.1 特性分布の影響 p.40
4.3.2 ロットサイズの影響 p.46
4.3.3 ランダム組立率の影響 p.49
4.4 結言 p.51
第5章 組立品の特性の最適化-ミニマックス基準- p.52
5.1 緒言 p.52
5.2 ミニマックスの最小二乗和解を求める方法 p.52
5.2.1 アルゴリズム1 p.52
5.2.2 アルゴリズム2 p.53
5.2.3 ミニマックスの最小二乗和解の計算時間 p.54
5.3 シミュレーション p.55
5.3.1 特性分布の影響 p.56
5.3.2 ロットサイズの影響 p.58
5.3.3 ランダム組立率の影響 p.61
5.4 結言 p.63
第6章 バッファサイズの決定 p.64
6.1 緒言 p.64
6.2 選択組立機能を有する組立システム p.64
6.3 選択組立の方法 p.65
6.3.1 層別法 p.65
6.3.2 組合せ最適化手法を利用した選択組立 p.66
6.4 挙動解析 p.69
6.4.1 最大残留部品数 p.70
6.4.2 残留部品数 p.71
6.4.3 組立品の絶対特性差 p.73
6.5 結言 p.74
第7章 事例研究-自動車エンジンにおける選択組立問題- p.75
7.1 緒言 p.75
7.2 軸部品と穴部品の選択組立問題 p.75
7.3 選択組立の方法 p.76
7.3.1 層別法 p.76
7.3.2 最小費用マッチング法を利用した選択組立 p.77
7.4 事例解析 p.78
7.4.1 軸径分布の最適化 p.80
7.4.2 シミュレーション p.81
7.5 結言 p.86
第8章 結論 p.87
付録 組立作業時間の低減 p.90
1.1 緒言 p.90
1.2 選択組立最適化機能を有する組立システムの構成と部品供給方式 p.90
1.2.1 組立システムの構成 p.90
1.2.2 部品供給方式 p.91
1.3 選択組立における組立順序選択問題 p.93
1.4 組立順序選択基準 p.94
1.5 シミュレーション p.95
1.6 結言 p.99
参考文献 p.100
謝辞 p.102

 本論文は、2種類の部品群から高品質な組立品をできるだけ多く得るための選択組立問題について、新しい組合せ最適化手法を提案している。
 従来の選択組立では、層別法と呼ばれるハードウェア主体の近似的最適化手法が広く用いられている。この方法は、大量生産において良い近似解が得られ有効であるが、多品種少量生産の傾向が強まっている今日、満足な組合せが得られない場合も多くなっている。いっぽう、近年のコンピュータを利用した生産管理技術の発展は、より厳密な最適化手法の適用を可能にしている。このような背景から、本論文ではグラフ理論を適用し、大量生産から少量生産までを統一的に扱え、より厳密な解が得られる新しい組合せ最適化手法を提案し、これが工業上有効であることをコンピュータシミュレーションと事例研究によって立証した。
 第1章「緒論」では、選択組立に関する従来の研究、実施例における課題を明らかにして、本研究の位置づけと目的を明確にした。
 第2章「組合せ最適化とマッチング」では本論文で扱う2種類の部品の選択組立問題を定式化し、二部グラフのマッチング問題として扱えることを示した。また、組合せ最適化の指標として、(a)組立の成功率を評価する組立率と、(b)組立品の品質を評価する絶対特性差(組合わされた二部品の特性値の差の絶対値)を用いている。指標(a)で最大組立率となる部品の組合せを得ることは、二部グラフの最大マッチングを求めることと等価になる。最大組立率を与える部品の組合せは一般に複数存在し得るため、これらの中から、指標(b)にて組立品に求められる品質に最も近い組合せを選択する。この最適化では、絶対特性差の組立規格の中心回りの二次モーメントを最小にする場合と、その最大値を最小にする場合を考え、前者は二部グラフの最小費用マッチング問題に、後者はミニマックスマッチング問題に帰着させることを示した。
 第3章「組立率の最大化」では、二部グラフの最大マッチング法による選択組立と層別法とをシミュレーションにより比較して、前者が常に高い組立率を与え、さらに、2種類の部品の特性分布が互いに異なっても組立率が高く維持できることを示した、特に、最大マッチング法は、層別法と比較とてロットサイズが小さいほど相対的に高い組立率が得られるので、中、少量生産における選択組立において有効であることを明らかにした。
 第4章「組立品の特性の最適化-最小二乗和基準-」では、組立品の絶対特性差の二乗を費用と定義し、二部グラフの最小費用マッチング法を利用して、最大組立率を与える部品の組合せの中から、絶対特性差の二乗和が最小の組合せを求めるアルゴリズムを提示した。これにて、組立品の絶対特性差の平均を組立規格の中心に近づけ、その分散が最小に近い組合せが求められることを確認した。
 第5章「組立品の特性の最適化-ミニマックス基準-」では、二部グラフのミニマックスマッチング法を適用したアルゴリズムを提示し、その有効性を検討した。シミュレーション結果から、組立品の絶対特性差の分布する範囲を、前章の最小二乗和基準を用いる場合より更に組立規格の中心回りに狭めらけることが確認された。また、ロットサイズが大きい場合やランダム組立率が高い場合には、ミニマックス基準による解が最小二乗和基準による解と一致することを明らかにした。
 第6章「バッファサイズの決定」では、組合せ最適化手法を適用すると、組立工程で部品を一時保管するために必要なバッフアのサイズを、層別法よりも小さくしても高品質な組立品が得られることを示した。また、組立終了時点における残留部品の発生が、層別法では組立品の発注数の増加に伴って増加するのに対して、組合せ最適化手法では発注数にほとんど依存せずに常に少なく、部品数の生産計画をより適正に立案できる。
 第7章「事例研究-自動車エンジンにおける選択組立問題-」では、嵌合部寸法の分散が大きく異なる軸部品と穴部品を選択組立している事例を取り上げ、現在適用されている層別法に換えて、最小費用マッチング法を利用した選択組立を適用する有効性をシミュレーションにて検証した。最小費用マッチング法を適用すれば、(1)軸径分布と穴径分布の一致度が低くても、小さなロットサイズで、層別法よりも高い組立率が得られる。(2)層別法よりも小さなバッファサイズで、残留部品の発生数をはるかに低減でき、効率的な組立工程ができる、の2点が確認された。
 第8章「結論」では、本研究で得られた諸結果を総括し、本論文の結論とした。

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