本文ここから

ドライプロセス用高性能原子線源の開発とその実用化に関する研究

氏名 下川 房男
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第59号
学位授与の日付 平成7年3月24日
学位論文の題目 ドライプロセス用高性能原子線源の開発とその実用化に関する研究
論文審査員
 主査 教授 一ノ瀬 幸雄
 副査 教授 八井 浄
 副査 教授 濱崎 勝義
 副査 教授 鎌田 喜一郎
 副査 助教授 河合 晃
 副査 助教授 石黒 孝

平成6(1994)年度博士論文題名一覧] [博士論文題名一覧]に戻る.

目次
第1章 序論
1-1 本研究の目的と意義 p.1
1-2 本研究の背景 p.1
1-2-1 イオンプロセス、中性粒子プロセスの基礎 p.1
(1)イオン、中性子粒子の生成過程、輸送過程、並びに個体との相互作用 p.1
(2)イオン、中性子粒子の持つ運動エネルギーとドライプロセス現象 p.3
1-2-2 イオンを用いたプロセス応用の現状と課題 p.5
(1)ドライエッチング技術 p.6
(2)薄膜形成技術 p.7
(3)イオン注入技術 p.8
(4)分析技術 p.9
1-2-3 中性粒子を用いたプロセス応用の現状と課題 p.9
(1)中性粒子プロセスの特徴 p.10
(2)中性粒子線の生成方法の分類 p.12
(3)従来型原子線源の動作原理 p.14
(4)従来型原子線源の基本特性とそのプロセス応用に関する研究 p.16
1-3 本研究の概要と構成 p.17
参考文献 p.20
第2章 大容量原子線源の開発とその基本特性 p.23
2-1 緒言 p.23
2-2 原子線源の設計・製作とその動作原理 p.24
2-2-1 原子線源の設計 p.24
(1)原子線源の大容量化に関する設計指針 p.24
(2)原子線源に装着する電磁石の設計 p.24
(3)原子線源を構成する部品・材料の選定 p.27
2-2-2 原子線源の構成並びに動作原理 p.29
(1)原子線源の構成 p.29
(2)原子線源の動作原理 p.29
2-2-3 原子線源の製作 p.30
2-3 原子線源の特性評価法 p.31
2-3-1 特性評価項目 p.35
2-3-2 ビーム電流密度、ビーム中性化率 p.35
2-3-3 エネルギー分布 p.35
2-4 原子線源の基本特性 p.38
2-4-1 ビーム電流密度、ビーム中性化率 p.41
2-4-2 エネルギー分布 p.41
2-4-3 高速原子の生成メカニズム p.46
2-4-4 原子線源のその他の特性 p.54
2-4-5 従来型と本原子線源の性能比較 p.56
2-5 結言 p.63
参考文献 p.64
第3章 低エネルギー原子線源の開発とその基本特性 p.67
3-1 緒言 p.67
3-2 低エネルギー原子線源の構成と動作原理 p.68
3-2-1 熱電子型原子線源 p.68
3-2-2 ホロカソード型原子線源 p.70
3-3 低エネルギー原子線源の特性評価法 p.72
3-3-1 ビーム電流密度、ビーム中性化率 p.72
3-3-2 エネルギー分布 p.74
3-4 低エネルギー原子線源の基本特性 p.75
3-4-1 熱電子型原子線源 p.75
(1)ビーム電流密度、ビーム中性化率 p.75
(2)エネルギー分布 p.76
3-4-2 ホロカソード型原子線源 p.77
(1)原子線源動作状態と放電状態の観察 p.77
(2)ビーム電流密度、ビーム中性化率 p.78
(3)エネルギー分布 p.80
3-5 結言 p.81
参考文献 p.82
第4章 SiO2/Siへの高速原子並びにイオン照射実験とチャージフリープロセス p.83
4-1 緒言 p.83
4-2 実験方法 p.84
4-2-1 酸化膜の電荷量の測定方法及び測定装置 p.84
4-2-2 SiO2/Siへの高速原子並びにイオン照射実験 p.85
4-3 実験結果 p.86
4-4 結言 p.92
参考文献 p.93
第5章 高速原子線を用いた化合物半導体のドライエッチング技術とその応用 p.94
5-1 緒言 p.94
5-2 化合物半導体のドライエッチング技術の現状と課題 p.96
5-2-1 光・電子集積回路製作のための基本技術 p.96
5-2-2 半導体レーザー端面ミラーの具備条件とその製作方法 p.96
(1)半導体レーザ端面の具備条件 p.96
(2)半導体レーザー端面ミラーの作製方法 p.97
5-2-3 各種ドライエッチング技術の比較 p.98
5-2-4 ドライエッチング用ガス p.101
5-3 反応性高速原子線エッチング装置の設計・製作 p.101
5-3-1 エッチング装置の設計指針 p.101
(1)エッチング室 p.102
(2)真空排気系 p.102
(3)ガスコントロールシステム p.104
5-3-2 エッチング装置の製作、性能緒言 p.105
(1)エッチング装置 p.105
(2)真空排気系 p.107
(3)ガスコントロールシステム p.107
5-4 反応性高速原子線を用いた化合物半導体のドライエッチング p.107
5-4-1 エッチング特性 p.107
(1)選択比 p.107
(2)エッチング速度 p.108
(3)エッチング形状 p.112
5-4-2 加工誘起損傷評価 p.115
(1)実験方法 p.115
(2)結晶学的方法 p.116
(3)光学的方法 p.116
(4)電気的方法 p.120
5-4-3 エッチング面の汚染評価 p.122
(1)実験方法 p.122
(2)汚染評価 p.122
5-5 高速原子線エッチング法の応用 p.124
5-5-1 半導体レーザ(LD)・・半導体受光素子(PD)一体化素子 p.124
5-5-2 新機能半導体レーザー(U字型半導体レーザ) p.127
5-5-3 マイクロエンコーダー p.131
(1)従来のエンコーダとマイクロエンコーダの比較 p.131
(2)マイクロエンコーダーの製作方法とその基本特性 p.133
5-5-4 その他の応用 p.135
(1)半導体レーザ集積型振動子 p.135
(2)半導体レーザと光ファイバーの集積型結合素子 p.135
(3)電機・光混載マルチチップモジュール用配線板 p.136
(4)自動化光MDF用マトリックスボード p.137
5-6 結言 p.140
参考文献 p.142
第6章 高速原子線を用いた薄膜形成とその応用 p.145
6-1 緒言 p.145
6-2 複合個体潤滑膜(潤滑膜/硬質膜)の提案とその従来技術 p.146
6-2-1 複合個体潤滑膜の提案 p.146
6-2-2 複合個体潤滑膜の材料選定 p.147
6-2-3 潤滑膜並びに硬質膜形成に関する現状と課題 p.148
6-3 高速原子線スパッタ蒸着法の設計・製作 p.149
6-3-1 高速原子線スパッタ蒸着法の特徴 p.149
6-3-2 高速原子線スパッタ蒸着法の構成 p.151
6-3-3 個体潤滑膜と硬質膜形成の考え方 p.152
(1)基板表面のスパッタクリーニング p.152
(2)混合層の形成による密着性の向上 p.153
(3)薄膜の結晶性の向上、変更 p.153
6-4-3 設計・作製した高速原子線スパッタ蒸着装置とその緒元 p.154
6-4 高速原子線スパッタ蒸着法による薄膜形成 p.155
6-4-1 MoS2個体潤滑膜の形成 p.155
6-4-2 c-BN硬質膜の形成 p.159
6-4-3 MoS2潤滑膜/c-BN硬質膜から成る複合個体潤滑膜の形成 p.161
6-5 高速原子線スパッタ蒸着法の応用 p.162
6-6 結言 p.163
参考文献 p.165
第7章 総括 p.167
謝辞 p.171
本研究に関する発表論文 p.172

 VLSIなど半導体デバイスの高精細化は、ドライプロセス技術の進歩に負うこところが多い。しかし、従来のプラズマ及びイオンを用いるドライプロセスでは、チャージアップ現象に起因する絶縁破壊、パターン形成不良等の深刻な問題が湿在化している。
 本論文では、その解決を狙いに、電荷を持たない中性粒子すなわち原子線を用いたドライプロセス技術の確立を提唱し、プロセス導入に必須な高性能原子線源の開発を行うとともに、それをドライエッチング及び薄膜形成技術に応用した成果をまとめたものである。論文は「ドライプロセス用高性能原子線源の開発とその実用化に関する研究」と題し、7章より構成される。
 第1章は序論で、始めにプラズマ・イオンプロセスの現状を概観して従来技術の問題を指摘し、次世代ドライプロセス技術の開発課題を明確にした。
 第2章では、高性能化を狙いとして電磁石と多孔ビーム引出し電極を装着した原子線源を提案し、従来より一桁以上大きなビーム電流を引き出し得る実用的な原子線源の開発に成功した。更に原子線源におけるイオン中性化は、イオン残留ガスの電荷交換により生じていることを初めて明らかにした。
 第3章では、ビーム照射損傷の無いドライプロセスの実現を狙いに、熱電子源を装着した原子線源を考案し、数百eV程度の低エネルギー原子線の生成に成功した。
 第4章では、チャージフリープロセスの観点から、開発した原子線源の実用性を従来のイオン源と比較した。ビーム照射時のSiO2絶膜の誘起電荷量は、前者は後者に比べて遥かに少なく、本原子線源が次世代ドライプロセスに極めて有用であることを明らかにした。
 第5章では、開発した原子線源の実用化として光集積回路のモジリック化に不可欠なレーザ端面加工に適用し、ドライエッチングによる鏡面加工に成功した。その加工面には、誘起歪みや汚染が少なく、劈開レーザと遜色無い特性が得られることを実証し、将来の光部品製造の基板技術と成しえることを示した。
 第6章では、薄膜形成技術に適用し、MoS2膜と硬質BN膜から成る複合個体潤滑膜を用いて衛生搭載用機構部品の実現に寄与した。その中で、新しい薄膜形成法としてデュアルビーム原子線スパッタ法を提案した。
 第7章は、本研究の成果を総括したもので、特にその成果を通して次世代ドライプロセス技術の基盤を確立できたことを結論とした。
 以上のように、本論文は、チャージフリープロセスが将来必須であることを逸速く説き、その実現の要となる高性能原子線源を開発し、更にドライエッチング及び薄膜形成などの次世代ドライプロセス技術の基盤を確立したものである。

平成6(1994)年度博士論文題名一覧

お気に入り

マイメニューの機能は、JavaScriptが無効なため使用できません。ご利用になるには、JavaScriptを有効にしてください。

ページの先頭へ戻る