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セラミックスの燒結における高温等方加圧(HIP)法の適用技術の研究開発

氏名 藤川 隆男
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第57号
学位授与の日付 平成7年3月24日
学位論文の題目 セラミックスの焼結における高温等方加圧(HIP)法の適用技術の研究開発
論文審査員
 主査 教授 石崎 幸三
 副査 教授 植松 敬三
 副査 教授 鎌田 喜一郎
 副査 教授 高田 雅介
 副査 助教授 小松 高行

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目次
第1章 序論 p.1
1-1 緒言 p.1
1-2 HIP法の歴史 p.1
1-3 HIP法のセラミックスの焼結への適用技術
1-3-1 「シールド+HIP」法 p.4
1)ガラスアンプ法 p.4
2)プレスシール法 p.5
3)コーティング法 p.5
4)ガラス浴法 p.5
1-3-2 「焼結+HIP」法 p.7
1-3-2-1 処理材料周囲の雰囲気の影響 p.8
1-3-2-2 雰囲気の調整方法 p.8
1)全圧法 p.8
2)分圧法 p.9
3)詰め粉法 p.9
1-4 本研究の目的と研究の方法 p.10
第2章 「焼結+HIP」法による焼結助剤無添加窒化ケイ素の焼結と特性評価 p.12
2-1 緒言 p.12
2-2 実験方法 p.13
2-3 実験結果 p.14
1)密度 p.14
2)構成相 p.15
3)曲げ強度 p.15
4)酸化挙動 p.17
5)クリープ特性 p.18
6)微細構造 p.19
2-4 考察 p.20
1)HIPによる密度焼結の効果 p.20
2)微細構造と強度特性の関係 p.21
3)酸化挙動 p.22
2-5 結言 p.23
第3章 「焼結+HIP」法の窒化ケイ素製ロータモデルへの適用と評価 p.25
3-1 緒言 p.25
3-2 原料組成とシール方法の選定 p.25
3-2-1 原料組成の選定 p.25
3-2-2 シール方法とシール用ガラス材の選定 p.25
3-3 プロセス上の課題の検討 p.26
3-3-1 収縮・変型挙動についての検討 p.26
1)CIP成形圧力と密度の関係 p.26
2)仮焼の条件と仮焼後の成形体の特性 p.30
3)HIP処理工程における収縮・変型挙動 p.32
3-3-2 表面粗さおよび表面近傍の性状の検討 p.34
1)表面粗さの検討 p.35
2)表面近傍の不均質相の厚さの検討 p.36
3-3-3 焼結体特性の評価 p.37
3-3-4 まとめ p.42
3-4 ロータモデルの特性評価 p.44
3-4-1 製造プロセスの策定 p.44
3-4-2 試験片での強度評価 p.45
3-4-3 スピンテストの結果と考察 p.49
3-4-4 まとめ p.50
3-5 結言 p.51
第4章 「焼結+HIP」法による高強度窒化ケイ素の製造 p.58
4-1 緒言 p.53
4-2 窒素HIP処理についての実験 p.53
4-3 窒化とアルゴンの混合ガスを用いた「焼結+HIP」法の実験的検討 p.55
4-4 窒化分圧とHIP処理温度が強度特性に与える影響 p.59
4-5 緒言 p.60
第5章 酸化物系セラミックスの酸素雰囲気HIP処理 p.62
5-1 緒言 p.62
5-2 アルミナの酸素雰囲気HIP処理 p.63
5-2-1 実験方法 p.63
5-2-2 実験結果 p.64
5-2-3 考察 p.65
5-2-4 まとめ p.66
5-3 イットリア部分安定化ジルコニアの酸素雰囲気HIP処理 p.70
5-3-1 実験方法 p.70
5-3-2 実験結果 p.71
5-3-3 考察 p.73
5-3-4 まとめ p.76
5-4 結言 p.77
第6章 炭酸カルシウム系セラミックスの詰め粉法によるHIP処理 p.78
6-1 緒言 p.78
6-2 実験方法 p.79
6-3 実験結果 p.81
1)焼結条件と密度、炭酸カルシウムの分解量 p.81
2)原料粉末の大気中での熱分解特性等の調査 p.83
3)コーラルサンド焼結体の機械的特性 p.87
6-4 考察 p.88
1)熱分解の抑制 p.89
2)コーラルサンド成形体の2段焼結法による緻密化 p.90
6-5 結言 p.90
第7章 セラミックス製造へのHIPの新たな利用 p.92
7-1 緒言 p.92
7-2 窒化反応への利用 p.92
7-2-1 窒素ガスによるモリブデンの窒化 p.92
7-2-2 Sm2Fe17の窒化 p.95
7-3 超高温HIP処理による大粒径のA1N焼結体の製造 p.101
7-4 現状の課題と今後の展望 p.103
7-5 結言 p.105
第8章 総括 p.106
参考文献 p.111
添付資料(研究業績リスト) p.116

 HIP(Hot Isostatic Pressing)法は、高温高圧のガス雰囲気下で、高圧ガスの圧力を利用して粉末の焼結、鋳造品や焼結品の残留気孔の除去、拡散接合などを行う技術である。原料粉末を成形焼結して製造されるセラミックスにおいても、常圧下での焼結のみでは残留する気孔が欠陥となり、機械的特性の低下や信頼性に欠ける等の課題があり、HIP法はこれを解決する技術として注目を浴びている。HIP法により緻密なセラミックスを製造する場合、粉末を成形した後、表面をガス不透過のシール材料で覆って処理を行う「シール+HIP」法と、一旦常圧下等で焼結して残留気孔が表面と連通していない状態としてそのまま処理を行う「焼結+HIP」法の2通りの方法がある。本研究では、この2つの方法について、HIP法のセラミックス製造への適用における技術の確立を目標とし、窒化ケイ素、酸化物系セラミックス、炭酸カルシウム系セラミックスを例として緻密化の条件および得られた焼結体の特性評価を行った。
 「シール+HIP」法については、窒化ケイ素を対象として、常圧焼結法では緻密な焼結体を得られない焼結助剤無添加での焼結を行って、得られた焼結体の室温および1200℃での強度特性等の評価を行うと同時に、ホットプレス用に開発されたY2O3-Al2O3添加系を対象としてロータ形状のモデル部品を製作してHIP処理条件等の検討を行い、最終的に室温および1200℃以上の高温下でのホットスピンテストを実施した。高純度の粉末原料を用いて、2000℃という窒化ケイ素の大気圧下での分解温度以上の温度で焼結した焼結助剤無添加の焼結体は高温強度や耐酸化性に優れていることを実証した。また、部品製作への適用では、強度特性は満足するが、不純物のFeによる強度のバラツキがあり、信頼性の向上にはFe等の混入防止技術の確立が必要であることを示した。
 「焼結+HIP」法については、HIP法適用時の雰囲気ガスの影響を主体に検討を行った。
 窒化ケイ素については、Y2O3-AlO3添加系を対象として1200℃での強度の確保の観点から窒素圧力の影響の検討を行い、100MPaの圧力でHIP処理を行う場合、アルゴンガスに2vol%程度窒化混合して1700℃近傍で処理を行うことが好ましいことを示した。
 酸化物系セラミックスについては、アルミナとY-PSZを対象として、アルゴンガスでヒータにモリブデンとグラファイトを用いた場合と、アルゴンに酸素を混合した酸素雰囲気でのHIP処理について得られた焼結体の室温強度特性や色調を比較検討した。Y-PSZについては、グラファイトヒータを用いると炭素が焼結体中に侵入して黒色化すると同時に、後の熱処理によりこの炭素が放出されてクラックが発生することを示すと同時に、酸素雰囲気HIP処理はもちろん、アルゴンガスでも炭素源のないモリブデンヒータではこの問題の無いことを実証した。
 炭酸カルシウムは550℃以上の高温では分解するため、常圧での焼結は不可能であるが、同種粉末に埋めて高圧のアルゴンガス雰囲気下で焼結を試みた。結果として、10MPa程度の圧力で焼結した後、100MPa程度に加圧する方法で緻密な焼結体を製造することに成功した。
 また、HIP法のセラミックスの製造への新しい利用のしかたとして、従来のようにガス圧力を単なる加圧圧縮して緻密化の駆動力として使用するのみならず、より積極的に用いることが考えられ、高圧の窒素ガスを用いて金属や金属間化合物を製造する技術について検討を行った。対象材料としては、大気圧下でへ窒素による窒化が不可能なモリブデンおよび磁石材量であるSm2Fe17を選定した。モリブデンについては180MPaまでの圧力域ではMo2Nが合成可能であることを、Sm2Fe17についてはSm2Fe17N3が短時間で合成可能なことを示した。
 以上述べた数種の材料のHIP処理に際し、新たに考案された個々の適用技術は、それぞれの材料の処理に適したHIP処理(酸素HIP装置など)や製造プロセス(窒化ケイ素の窒素HIPなど)に反映され、実用化がなされている。
 最後に現状の課題と今後の展望として、工業生産への利用の拡大を図るには、HIP法の生産性の改善、装置コストを低減するために必要十分な範囲で低い圧力を利用すること、また、利用分野や利用技術の拡大が必要であることを示した。HIP法のもつ高温下での高圧ガス雰囲気を利用するという特徴は、現状以上の広範な利用の可能性を持っており、とくに新しい利用技術についての研究開発の活発化が期待される。

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