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散乱光を用いた表面粗さ測定法の研究

氏名 トウ 智聡
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第212号
学位授与の日付 平成12年8月31日
学位論文題目 散乱光を用いた表面粗さ測定法の研究
論文審査委員
 主査 教授 栗田 政則
 副査 教授 秋山 伸幸
 副査 教授 福澤 康
 副査 助教授 明田川 正人
 副査 中部大学教授 加藤 章

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1 緒言 p.1
1.1 研究の背景 p.1
1.2 従来の研究 p.1
1.3 本研究の内容 p.4
1.4 本論文の構成 p.5

2 二次元ガウス関数を用いた散乱光の広がりの評価法 p.7
2.1 はじめに p.7
2.2 散乱光強度分布の二次元ガウス関数による近似 p.8
2.3 二次元ガウス関数の標準偏差σxとσy,半値幅Bおよび積分幅C p.10
2.4 実験結果および考察 p.17
2.5 結言 p.24

3 表面粗さ曲面の傾斜角分布 p.25
3.1 はじめに p.25
3.2 表面粗さ形状の二次元的な傾斜角分布の計算 p.26
3.3 二次元的傾斜角分布と散乱光強度分布との関係 p.29
3.4 研削試験片の傾斜角分布 p.32
3.5 ブラスト試験片の傾斜角分布 p.45
3.6 結言 p.51

4 表面粗さの光学的測定 p.52
4.1 はじめに p.52
4.2 研削試験片の光学的表面粗さ測定 p.52
4.3 研磨紙による研磨面の光学的表面粗さ測定 p.55
4.4 ブラスト試験片の光学的表面粗さ測定 p.60
4.5 結言 p.66

5 任意方向の表面粗さの光学的測定 p.67
5.1 はじめに p.67
5.2 二次元ガウス関数の標準偏差 p.67
5.3 実験方法 p.69
5.4 実験結果および考察 p.69
5.5 結言 p.73

6 光散乱の理論とその応用 p.74
6.1 はじめに p.74
6.2 幾何光学の微小鏡面モデル p.75
6.3 波動光学の光散乱モデル p.75
6.4 幾何光学モデルの検証 p.79
6.5 結言 p.86

7 結論 p.87

8 謝辞 p.89

参考文献 p.90

付録 p.94
A 表面粗さパラメータ p.94

 近年,自動化加工技術の進歩に伴い,高精度で迅速な表面粗さ測定技術の確立が重要な課題になっており,インプロセスでの非接触な表面粗さ測定法の開発が工業界で強く望まれている.ところで,試験片の表面に照射した光ビームの散乱光は表面粗さが大きくなるほど広がるので,散乱光の広がりから表面粗さが評価できる.これが光散乱法の原理である.光散乱法は表面粗さを非接触に迅速に測定できるのみならず,触針式とは異なり試験片の震動の影響を受けにくいので,インプロセスでの測定ができるという長所をもっている.また,触針式が一方向(一次元)の測定であるのに対して,光散乱法は二次元的な散乱光強度分布から二次元的な表面粗さが評価できる.さらに,光散乱法は光触針式に比べて,測定装置が単純で安価に製作できるという長所をもっている.
 従来から表面粗さ測定に広く使われている算術平均粗さRa,二乗平均平方根粗さRqおよび最大高さRyなどのパラメータは表面粗さ曲線の高さ方向の情報のみを表している.これに対して,表面粗さ曲線の傾斜角分布は,この曲線の高さ方向のみならず横方向の情報も表している.散乱光強度分布は,表面粗さ曲線の傾斜角分布を表していると考えられる.
 本研究は散乱光を用いて表面粗さを非接触に迅速に測定する方法を提案したもので,7章からなっている.
 第1章では,本研究の研究背景,研究内容,本論文の構成および目的について述べた.
 第2章では,CCDカメラで測定した散乱光強度分布を二次元ガウス関数で近似し,研削試験片の研削方向およびその直交方向に関するこの関数の標準偏差によって強度分布の二方向の広がりを求め,これによって直交二方向の表面粗さを同時に評価した.さらに,二次元ガウス関数の標準偏差と従来から広く用いられている半値幅および積分幅などの散乱光の広がりを評価するパラメータとの関係を求め,ガウス関数の標準偏差で半値幅および積分幅が表せることを明らかにした.
 第3章“表面粗さ曲面の傾斜角分布”では,散乱光強度分布と傾斜角分布との関係を明らかにするために,試験片の三次元的表面粗さ曲面を触針式表面粗さ測定機で測定し,二次元的な傾斜角分布を求めた.また,散乱光強度分布と傾斜角分布との関係を二次元微小鏡面モデルで解析し,求めた研削試験片とブラスト試験片の二次元傾斜角分布と散乱光強度分布とを比較した結果,傾斜角分布も二次元ガウス関数で近似でき,その標準偏差が大きくなるにつれて散乱光強度分布を近似したガウス関数の標準偏差は増加し,散乱光強度分布は表面粗さ曲面の傾斜角分布を表していることが明らかになった.
 第4章“表面粗さの光学的測定”では,研削試験片,研磨紙による研磨試験片およびブラスト試験片を用いて,直交する二方向の表面粗さを同時に測定する方法を示した.
 第5章“任意方向の表面粗さの光学的測定”では,散乱光強度分布を近似した二次元ガウス関数の任意方向の標準偏差の求め方を示し,散乱光強度分布および傾斜角分布の任意方向の標準偏差を比較した.その結果,任意方向の散乱光強度分布の標準偏差は表面粗さ傾斜角分布の標準偏差とともに大きくなるので,任意方向の散乱光分布から傾斜角分布が求められることが明らかになった.
 第6章“光散乱理論とその応用”では,散乱光強度分布を幾何光学と波動光学の理論を用いて考察し,コンピュータシミュレーションによって幾何光学モデルの有効範囲を求めた.また,幾何光学のモデルを用いてブラスト試験片の表面粗さを光学的に測定し,光学的方法による結果と触針式測定機による結果とを比較することによって幾何光学のモデルの有効性を明らかにした.
 第7章“結論”では,以上の各章で得られた光学的表面粗さ測定法についての結論をまとめた.

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