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融雪を伴う熱交換器の特性に関する研究

氏名 石川 信幸
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第166号
学位授与の日付 平成13年3月26日
学位論文の題目 融雪を伴う熱交換器の特性に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 青木 和夫
 副査 教授 梅村 晃由
 副査 教授 白樫 正高
 副査 助教授 東 信彦
 副査 助教授 門脇 敏

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目次

第1章 緒論 p.1
1-1 はじめに p.1
1-1-1 豪雪地帯の雪処理 p.1
1-1-2 雪処理における融雪熱交換器の利用 p.2
1-2 従来の研究とその概要 p.3
1-3 本研究の目的 p.6
1-4 本論文の概要 p.7

第2章 降雪時の融雪 p.8
2-1 緒言 p.8
2-2 熱交換器上の融雪状態 p.9
2-3 特性解析 p.10
2-3-1 解析モデル p.10
2-3-2 熱収支 p.11
2-3-3 完全融雪条件 p.12
2-3-4 融雪効率 p.13
2-4 実験装置および方法 p.15
2-5 結果と考察 p.17
2-5-1 完全融雪条件 p.17
2-5-2 融雪効率 p.18
2-6 結言 p.21

第3章 積雪時の融雪 p.22
3-1 緒言 p.22
3-2 積雪時の融雪熱交換器の特性解析 p.22
3-2-1 融雪過程について p.22
3-2-2 準定常モデルによる融雪過程の解析 p.25
3-2-3 融雪熱交換器の解析 p.32
3-3 実験装置および方法 p.36
3-4 結果と考察 p.37
3-4-1 周囲温度が0℃の場合 p.38
3-4-2 周囲温度が0℃以下の場合 p.40
3-4-3 全体融雪効率 p.42
3-4-4 降雪融雪と積雪融雪の比較 p.43
3-5 結言 p.45

第4章 プレートフィン付熱交換器による融雪 p.46
4-1 緒言 p.46
4-2 プレートフィン付融雪熱交換器の解析 p.47
4-2-1 降雪時の融雪 p.47
4-2-2 積雪時の融雪 p.57
4-3 実験装置および方法 p.65
4-4 結果および考察 p.66
4-4-1 降雪時の融雪 p.66
4-4-2 積雪時の融雪 p.72
4-4-3 降雪融雪と積雪融雪の比較 p.74
4-5 結言 p.75

第5章 複数パス熱交換器による融雪 p.76
5-1 緒言 p.76
5-2 特性解析 p.77
5-2-1 熱交換器の分類 p.77
5-2-2 複数パス融雪熱交換器のモデル化と解析 p.78
5-2-3 完全融雪条件 p.83
5-2-4 全体融雪効率 p.83
5-3 実験装置と方法 p.85
5-4 結果および考察 p.87
5-4-1 フィン表面の温度分布 p.87
5-4-2 完全融雪条件 p.88
5-4-3 融雪効率 p.90
5-4-4 パイプピッチの最適化 p.93
5-5 結言 p.95

第6章 結論 p.96

謝辞 p.100

参考文献 p.101

おもな記号 p.103

 我が国の国土の半分に及ぶ面積は、豪雪地帯対策特別措置法で定める「豪雪地帯」に属している。この豪雪地帯における雪処理は、住民の生活に密着する問題であるとともに、我が国の社会経済にも関与する重要な問題となる。雪処理の方法は、機械的仕事により雪を排除する「除雪」と熱エネルギーの供与により雪を融解する「融雪」に分けられる。雪を根本的に処理することが可能であることから、融雪は雪処理として有効な方法と言える。
 融雪による雪処理には地下水散布やヒーター加熱が利用されているが、使用環境に及ぼす採水や融雪排水の影響や廃熱等の利用が可能であることを考慮すると、特に、熱交換器を用いた間接加熱による無散水型融雪の利点が挙げられる。
 近年、生産・生活様式の変化や地域社会の多様化に合わせて、雪処理への要求は、単に安全性の改善を主体とするものから地域生活の快適性を求めるものへと次第に変化しており、今後の雪処理においては、使用環境における適合性や効果に対して雪処理装置の特性を十分に比較検討することが不可欠といえる。しかし、これまで融雪を伴う熱交換器に対して、融雪特性に影響する降雪時と積雪時の区別や熱交換器上の融雪過程の違いは一般に議論されておらず、使用環境における適合性を判断するための比較検討の指針も十分に整理されていないのが現状である。
 本研究は、融雪を伴う熱交換器に関して、熱交換器上の融雪過程の違いを考慮した融雪特性を明らかにするとともに、融雪熱交換器の設計や適合性の評価に関わる解析手法の確立を目的としている。
 本論文は、以下に示す6章により構成されており、その概要は次の通りである。
 第1章「緒論」では、本研究の背景と工学的意義を述べ、ついでに融雪を伴う熱交換器特性に関する従来の研究を概観するとともに、本研究の目的を明らかにしている。
 第2章「降雪時の融雪」では、一次元熱交換器を対象として、降雪時における融雪熱交換器の特性を検討している。ここで、融雪熱量を外気への熱損失と同様に評価する見掛けの外気温度を用いた降雪融雪モデルによる解析法を提示した。本解析法により、降雪融雪時の完全融雪条件および融雪効率が三つの無次元パラメータからなる関係式で整理されることを明らかにするとともに、解析結果と野外における降雪融雪実験結果との比較によりモデルの妥当性を示している。これにより降雪時における融雪熱交換器の特性に対する基礎的な取り扱いが示されている。
 第3章「積雪時の融雪」では、積雪を対象とする融雪熱交換器の特性を検討している。初めに、融雪水の雪層内への浸透・凝固現象を含む融雪過程を表した準定常融雪モデルを提示し、下面加熱による積雪融雪実験結果やこれまでに扱われていた非定常融雪モデルとの比較により本モデルの妥当性を示している。次に、積雪時の融雪熱交換器に対して準定常融雪モデルを適用した解析法を示し、実際の積雪を用いた融雪熱交換器による実験結果との比較により解析の妥当性を検討している。さらに、降雪融雪と積雪融雪の比較から、融雪熱交換器における融雪対象が異なる場合の有効性を明らかにしている。
 第4章「プレートフィン付熱交換器による融雪」では、プレートフィンを有する融雪熱交換器の特性解析を検討している。降雪融雪時では、プレートフィンに二次元熱伝導を考慮した熱交換器モデルのもとで、無次元パラメータを用いた融雪特性解析を行い、解析結果と野外での降雪実験結果との比較により本解析法の妥当性を示している。積雪融雪時では、プレートフィン上の融雪過程に対して、境界固定法を用いた準定常融雪モデルを適用する解析法を提示し、解析結果と野外における融雪実験結果の比較から本解析の妥当性を示している。さらに、降雪時と積雪時の比較から、融雪対象の違いによるプレートフィン付融雪熱交換器の特性の相違を明らかにしている。
 第5章「複数パス熱交換器による融雪」では、複数をパスを有するプレートフィン付熱交換器に関する降雪時の融雪特性を、無次元パラメータの導入により解析する手法を示している。また、融雪特性に及ぼすパイプピッチの影響を明らかにするとともに、パイプピッチの最適化手法について言及している。
 第6章「結論」では、本研究の各章で得られた結論を総括して述べている。
 本論文は、融雪を伴う熱交換器の特性に関して、降雪時と積雪時とする融雪対象の区別や熱交換器上で生じる実際の融雪過程の違いを考慮した実験的および理論的な検討を行い、融雪熱交換器の特性に関する基礎的な取り扱いを確立するとともに、実際的な融雪熱交換器構造を対象とした問題に拡張して、融雪を伴う熱交換器に対する統括的な特性解析法を明らかにしている。

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