lossless and lossy Integrated conding for digital still images
(ディジタル静止画像のためのロスレス・ロッシー統合符号化)
氏名 ソムチャート・チョクチャイタム
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第253号
学位授与の日付 平成14年8月31日
学位論文題目 lossless and lossy Integrated conding for digital still images (ディジタル静止画像のためのロスレス・ロッシー統合符号化)
論文審査委員
主査 助教授 岩橋 政宏
審査委員 教授 神林 紀嘉
審査委員 教授 吉川 敏則
審査委員 教授 中川 匡弘
審査委員 助教授 張 熙
審査委員 東京都立大学教授 貴家 仁志
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1.Introduction on Image Compression p.11
1.1 Background of the research p.11
1.2 Overview of the proposed coding systems p.13
1.2.1 Overview of the Lossless Wavelet Transform (LWT) + Lossless Multi-channel Prediction (LMP) p.14
1.2.2 Overview of the LWT + Lossless/Lossy Multi-channel Prediction (LLMP) p.15
1.2.3 Overview of a bit-rate adaptive coding system based on Lossless DCT (L-DCT) p.15
1.3 Outline of the dissertation p.17
2.Basic Concepts of the Lossless-Lossy Image Compression p.19
2.1 Basic concepts of rounding operation and quantization p.19
2.1.1 A basic concept of rounding operation p.19
2.1.2 A basic concept of quantization p.20
2.2 The LWT and its equivalent expression p.22
2.2.1 Signal processing of the LWT p.22
2.2.2 An equivalent expression of the LWT p.24
2.3 The Lossless DCT (L-DCT) and its equivalent expression p.25
2.3.1 Signal processing of the L-DCT p.26
2.3.2 An equivalent expression of the L-DCT p.27
2.4 Basic measurement tools p.28
2.4.1 The entropy rate p.28
2.4.2 The peak-signal-to-noise ratio (PSNR) p.29
2.4.3 The rate distortion curve p.29
2.4.4 The lossy coding gain p.30
3.Lossless Scalable Coding of Images via Lossless Multi-Channel Prediction p.31
3.1 Motivation of this proposal p.31
3.2 Remaining correlation of output of the LWT p.32
3.2.1 The "2/2" - The simplest LWT p.32
3.2.2 Advantages of the lowest band signal of the LWT p.34
3.2.3 High band signals and remaining correlation p.35
3.3 Lossless Multi-Channel Prediction (LMP) p.37
3.3.1 Signal processing of the LMP p.37
3.3.2 Lossless coding criterion p.38
3.3.3 Optimization procedure p.39
3.4 Simulation results p.40
3.5 Summary of this proposal p.45
4.Integrated Lossy and Lossless Image Coding Based on Lossless Wavelet Transform and Lossy-Lossless Multi-Channel Prediction p.46
4.1 Motivation of this proposal p.46
4.2 Quantization error effect and local decoding p.48
4.3 Lossy-Lossless Multi-Channel Prediction (LLMP) p.48
4.3.1 Analysis filter of the LLMP p.48
4.3.2 Synthesis filter of the LLMP p.53
4.3.3 Optimization in lossless mode p.55
4.3.4 Optimization in lossy mode p.55
4.3.5 Conclusion of encoding procedure in the LLMP p.57
4.3.6 Conclusion of decoding procedure in the LLMP p.58
4.4 Simulation results p.58
4.4.1 Signal processing in the LLMP for simulation p.58
4.4.2 Simulation results for lossless coding p.59
4.4.3 Simulation results for lossy coding p.60
4.4.4 Filter characteristics of LWT + LLMP p.65
4.5 Summary of this proposal p.66
5. A Bit-rate Adaptive Coding System Based on Lossless DCT p.67
5.1 Motivation of this proposal p.67
5.2 The proposed bit-rate adaptive coding system p.70
5.2.1 "Lossless" mode p.70
5.2.2 "Lossy" mode p.70
5.2.3 "Near-lossless" mode p.70
5.3 Theoretical analysis p.71
5.3.1 Rate distortion curve of the PCM-based coding systems p.71
5.3.2 Rate distortion curve of the L-DCT-based coding systems with Quantization in transform domain (Lossy mode) p.72
5.3.3 Rate distortion curve of the L-DCT-based coding systems with Quantization in spatial domain (Near-Lossless mode) p.75
5.3.4 Theoretical estimation of the turning point p.76
5.4 Simulation results p.78
5.4.1 Effectiveness of our bit-rate adaptive coding system p.78
5.4.2 Accuracy of our theoretical analysis p.83
5.5 Mathematical proof p.85
5.5.1 PSNR of both methods in high bit rate p.85
5.5.2 Slopes of rate distortion curves p.86
5.5.3 Existence of the turning point p.87
5.6 Summary of this proposal p.88
6. Conclusion of the dissertation p.90
Appendix I p.92
References p.96
List of Publications p.99
Acknowledgements p.101
ディジタル画像信号のデータ量を圧縮できる画像符号化技術は、コンピュータ利用技術やディジタル通信網ならびに蓄積メディアの急速な技術発展に伴い、例えば、ディジタル画像通信システム、遠隔監視装置、テレビ電話、DVD、スキャナ、ディジタル・カメラなど、様々な分野において種々の形態で応用されている。
現在、広く普及している画像符号化技術の場合、高い圧縮率を実現するために再生画像の画質が犠牲となってしまう。これに対し、医療分野での画像診療や芸術作品のようなオリジナルデータの保存のためには、このような再生画像に歪みを許すという意味での有歪み符号化(ロッシー符号化)よりも、全く歪みを許さない無歪み符号化(ロスレス符号化)の方が適している。
これらの要求に対し、これまではロッシー符号化とロスレス符号化がそれぞれ別々に発展してきている。例えばJPEG国際標準に代表されるように、前者のためには離散コサイン変換(DCT)と量子化とエントロピー符号化に基づく方式が、後者のためには線形予測(DPCM)とエントロピー符号化に基づく方式が、それぞれ普及している。
一方、近年ではJPEG2000国際標準化に見られるように、ロスレス符号化とロッシー符号化を一つのアルゴリズムに統合する必要があるという要求が生じてきており、本論文では、こうした要求を満たすためのロスレス・ロッシー統合符号化アルゴリズムを提案することを目的としている。その結果、単にアルゴリズムが統合されるばかりか、ビットストリームの一部を受信すると画質は良くないが概要を判断できる低解像度画像が再生され、更に一部を受信するとより高画質となり、全部を受信すると原画像が無歪みで再生されるといった、プログレッシブ伝送符号化が可能となる。また、現在広く普及しているDCTベースの符号化との上位互換性についても考慮することで、従来の画像データ資産を活用できる統合符号化についても提案を行う。
第1章では、従来法の問題点を述べ、本論文の目的と構成をまとめる。また、本論文の目的に関連する他機関における研究報告についても言及し、それらとの関係を明示する。
第2章では、本論文の第3章以降の技術的内容の理解を助けるための準備として、符号化の要素技術、基本理念および数学的記述法についてまとめる。具体的には、ラウンディング処理と量子化処理の基本概念、ロスレス・ウェーブレットとロスレスDCTと等価表現法、基本的な評価基準について説明する。
第3章では、統合符号化の一手法として近年注目されているリフティング・ウェーブレットを基礎として、そのロスレス符号化時の符号化効率を改善する方法を提案する。はじめに、従来法の場合は、帯域分割を行っても帯域間および帯域内に相関が残っており、これを活用することで符号化効率を向上できる可能性があることを示す。次に、「分離型」2次元構成された従来法のリフティング・ウェーブレットを「非分離型」で構成する方法を提案する。これにより、従来の分離型構成が個々の画像に対する符号化効率の最適化を行う上での制約となっていることを指摘し、この制約を取り除くことでロスレス符号化の効率を0.2[bpp]程度改善できることを示す。
第4章では、リフティング・ウェーブレットに最適量子化および局所復号を導入することで、第3章の方法をロッシー符号化に拡張する。すなわち、ウェーブレット変換に基づくロスレス・ロッシー統合符号化を提案し、ロッシー符号化時の性能を向上させる。まず、各帯域における量子化誤差が再生画像にどのように影響するかを調べ、その結果から各帯域における最適な量子化ステップサイズを導出する。また、エンコーダに局所復号回路を導入することで量子化誤差の発散を防ぐ。レート歪み曲線により提案法を評価した結果、従来法に比べて0.2~0.5[dB]程度の性能改善効果が確認された。
第5章では、現在広く普及しているDCTベースの符号化方式との互換性を維持できるロスレス・ロッシー統合符号化を提案する。そのために、可逆アダマール変換を内包する可逆DCTを導入し、符号化ビットレートに応じて量子化の実施領域(空間領域か周波数領域か)を切り替えることで、効果の良いロッシー符号化を実現する。また、この切り替え点については、量子化誤差およびラウンディング誤差に対し伝達経路が誤差分散にどのように影響するかを解析することで理論的に導出する。最後に、ウェーブレット方式と同程度の符号化効率を保ちつつも、ロッシーなDCT方式と上位互換なロスレス・ロッシー統合符号化が提案法により可能となることを確認する。
第6章では、本論文により得られた結論をまとめる。また、更なる改善のための今後の課題についても述べる。