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セラミックス材料の均一性の向上に関する基礎的研究

氏名 張 躍
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第76号
学位授与の日付 平成5年3月25日
学位論文の題目 セラミックス材料の均一性の向上に関する基礎的研究
論文審査委員
 主査 教授 植松 敬三
 副査 教授 鎌田 喜一郎
 副査 教授 山田 明文
 副査 教授 高井 雅介
 副査 助教授 井上 誠

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目次
第一章 序言
1-1 セラミックスの製造プロセス、欠陥と特性との相関関係
1-1-1 概要 p.1
1-1-2 微細構造の均一性と材料特性との関係 p.2
1-1-3 製造プロセスと微細構造の均一性との関係 p.3
1-2 粉体顆粒の内部構造
1-2-1 概要 p.4
1-2-2 顆粒内部構造の評価方法 p.5
1-2-3 スプレードライ顆粒の内部構造 p.6
1-2-4 顆粒の成形特性 p.8
1-3 乾燥プロセス
1-3-1 概要 p.10
1-3-2 スラリーの乾燥挙動 p.11
1-3-3 乾燥プロセスにおける可溶性物質の偏析 p.13
1-4 本研究の目的及び内容 p.15
参考文献 p.17
第二章 加熱乾燥における可溶性物質移動の数学的シミュレーション
2-1 緒言 p.24
2-2 数学的モデル
2-2-1 一次元モデル p.24
2-2-2 バインダーの吸着についての補正 p.27
2-2-3 球状モデル p.28
2-3 スプレードライにおけるスラリー滴の乾燥挙動の計算 p.30
2-4 予備計算結果
2-4-1 一次元モデル p.31
2-4-2 球状モデル p.32
2-5 考察
2-5-1 計算方法について p.32
2-5-2 表面偏析に影響するパラメーター p.33
2-6 結論 p.34
参考文献 p.35
第三章 アルミナ粉体間細孔中におけるPVA拡散の測定
3-1 緒言 p.43
3-2 拡散モデル及び計算方法 p.43
3-3 実験 p.45
3-4 結果
3-4-1 圧粉体球の気孔分布 p.46
3-4-2 uptake図 p.46
3-4-3 分配係数補正の効果 p.46
3-4-4 種々のパラメーターの影響 p.47
3-5 考察
3-5-1 測定方法の評価 p.48
3-5-2 分配係数の解析 p.48
3-5-3 粒子が拡散係数に及ぼす影響 p.50
3-6 結論 p.51
参考文献 p.52
第四章 PVA-水-アルミナ系スラリーの一次元乾燥のモデル的研究
4-1 緒言 p.61
4-2 実験方法
4-2-1 スラリーの乾燥挙動の測定 p.61
4-2-2 成形体中のPVA分布及びその特性の測定 p.62
4-3 結果
4-3-1 乾燥挙動 p.62
4-3-2 PVA分布の計算 p.63
4-3-3 数学的モデルの実証 p.64
4-3-4 乾燥した成形体の特性 p.65
4-4 考察
4-4-1 PVA濃度と乾燥温度が乾燥挙動に及ぼす影響 p.66
4-4-2 数学的モデルの評価 p.67
4-4-3 PVA濃度と乾燥温度がPVA分布に及ぼす影響 p.68
4-4-4 PVA吸着の効果 p.69
4-4-5 PVA表面偏析と表面特性との関係 p.69
4-5 結論 p.70
参考文献 p.71
第五章 スプレードライ顆粒中のPVA表面偏析と内部構造
5-1 緒言 p.84
5-2 実験方法 p.84
5-3 結果 p.85
5-4 考察 p.86
5-4-1 スプレードライ顆粒におけるPVAの表面偏析 p.86
5-4-2 中空顆粒の形成 p.87
5-5 結論 p.89
参考文献 p.90
第六章 顆粒均一性の制御: フリーズドライ
6-1 緒言 p.96
6-2 実験方法 p.96
6-3 結果
6-3-1 凍結挙動及びフリーズドライ成形体中のPVA分布 p.97
6-3-2 顆粒及び成形体の内部構造 p.98
6-4 考察
6-4-1 PVA分布 p.99
6-4-2 顆粒の特性と成形体微構造との関係 p.100
6-5 結論 p.101
参考文献 p.102
第七章 総括 p.111
謝辞 p.118

 現在セラミックス材料における最重要課題は高性能化及び高信頼化である。セラミックス材料の強度低下の主因である破壊源は成形体中に存在する欠陥の一部が焼結により除去されず材料中に残ることにより生成するものであるため、高性能化及び高信頼化の達成には、焼結前の製造プロセスを解明することにより成形体中の欠陥を除去することが必要である。本研究では、セラミックスラリーの乾燥-粒体顆粒-成形体について系統的検討を行うことにより、成形体の均一性向上を行うことを目的とする。本論文は7章から構成されている。
 第1章"序言"では、セラミックス高性能化のためのプロセッシングにおける研究の現状について述べ、本研究の目的を明らかにした。
 第2章"加熱乾燥における可溶性物質移動の数学的シミュレーション"では、一次元乾燥体及びスプレードライ顆粒中のバインダー分布についての数値解計算法を確立することを目的に、スラリーの乾燥プロセスにおける内部液体の表面への移動、バインダーの内部への拡散、バインダーの固相粒子表面への吸着、及びスラリーの乾燥速度、乾燥収縮などの乾燥挙動を考慮し、物質保存則を用いることによってバインダーの移動についての数学的モデルをたてた。
 第3章"アルミナ粉体間細孔中におけるPVA拡散の測定"では、数学的シミュレーションを行うのに必要不可欠なパラメータであるバインダーの拡散係数を求めるため、攪拌溶液から球状圧粉体中への拡散実験を行った。拡散係数の決定の際に、拡散終了時のPVAの分配係数Kをその時点での球中の濃度と溶液中の濃度の比だけでなく、拡散可能な細孔の体積に関係する補正係数を考慮して求める必要のあることを示した。本研究の実験範囲内では拡散係数は圧粉体の気孔率、球径及びPVA水溶液の体積等の測定パラメータによっては顕著な影響を受けず、粉体間細孔中の拡散係数は再現性よく測定できた。この系におけるバインダーの拡散係数と温度との関係を調べ、拡散係数が温度と共に増加することを示した。本方法で求めたPVAの拡散係数はスラリー中のPVAの拡散係数と類似するものだと考えられた。
 第4章"PVA-水-アルミナ系スラリーの一次元乾燥のモデル的研究"では、モデル的な実験法を用いて、この系のスラリーの乾燥挙動及び乾燥後の成形体中のPVA分布を求めた。この系の乾燥プロセスでは、恒率乾燥段階の短縮現象が生じ、減速乾燥段階でも収縮が生じることが明らかとなった。全乾燥期間に占める恒率乾燥期間の割合はPVA濃度が高く、乾燥温度が高いほど、減少した。乾燥速度は乾燥温度の増加及びPVA濃度の減少とともに増加した。シミュレーションにより求めたPVA分布と実測値との比較を行い、数学的モデル乾燥過程におけるバインダーの移動を正確に表現することを実証した。すなわちバインダーの表面偏析は溶液の内部から表面方向への流動とその反対方向へ向かう逆拡散との総合的効果により生じる。PVAの固相粒子表面への吸着はPVA濃度の低い場合には、PVAの表面偏析を著しく抑制する作用をもった。バインダーの表面偏析は乾燥体の表面に硬く、緻密な表面層を形成する事が明らかになった。
 第5章"スプレードライ顆粒中のPVA表面偏析と内部構造"では、スプレードライにおけるスラリー滴中のバインダーの表面偏析及びスラリー滴のサイズとバインダー濃度の影響を調べるため、数学的シミュレーションを行った。また、浸液透光法を用いて、スプレードライ顆粒におけるPVAの表面偏析を検証した。内部構造の観察によって、PVA濃度の増加または顆粒サイズの増加とともに中空顆粒が増加することを示した。中空顆粒の生成メカニズムとして"Ballooning"と内部収縮を示した。
 第6章"顆粒均一性の制御:フリーズドライ"では、一次元フリーズドライのモデル実験法を開発し、種々の冷媒下でのスラリー凍結速度及び乾燥体中でのバインダー分布を調べた。フリーズドライによって可溶性バインダーの表面偏析が抑制できることを明らかにした。フリーズドライ及びスプレードライ顆粒から作成した成形体の内部構造を浸液透光法とSEMを用いて観察した結果、スプレードライ顆粒の成形体ではバインダーの表面偏析により、顆粒間には空隙が、また顆粒表面にはクラックが存在することが明らかになった。フリーズドライ成形体では、大きな欠陥を含まない均一な構造が得られた。
 第7章"総括"では、本論文を総括した。
 本研究は、セラミックスプロセシング科学を進歩させる上での重要な成果であると結論した。

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