本文ここから

界面付着を考慮した薄膜コンクリートオーバーレイ舗装の設計に関する研究

氏名 中西 弘光
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第142号
学位授与の日付 平成12年3月24日
学位論文題目 界面付着を考慮した薄膜コンクリートオーバーレイ舗装の設計に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 丸山 久一
 副査 助教授 宮木 康幸
 副査 助教授 下村 匠
 副査 石川工業高等専門学校助教授 西澤 辰男

平成11(1999)年度博士論文題名一覧] [博士論文題名一覧]に戻る.

第1章 既往の研究と本研究の目的
1.1 研究の背景 p.1
1.2 既往の研究 p.2
1.3 既往の研究における課題 p.5
1.4 研究の目的と手順 p.8

第2章 舗装版の応力解析手法としての「組合せ梁構造」の提案
2.1 組合せ梁構造の概念 p.10
2.2 Winkler基礎上の梁の基本式 p.12
(1) 無限長の梁の一般式 p.13
(2) 半無限長の梁の一般式 p.14
(3) 有限長の梁の一般式 p.14
2.3 組合せ梁構造の自由縁部への適用 p.16
2.3.1 自由縁部への適用のための組合せ梁構造 p.16
2.3.2 組合せ梁構造による計算 p.17
(1) 輪荷重の取り扱いと輪荷重によるたわみ式 p.17
(2) 側梁との接合点でのせん断力による主梁のたわみ p.21
(3) 主梁の側梁との接合点でのたわみ p.22
(4) 側梁のたわみ p.23
(5) 主梁/側梁接合点でのせん断応力の算出 p.24
(6) 主梁についての曲げモーメント、せん断力、たわみの計算 p.24
(7) 輪荷重応力の計算 p.24
(8) 輪荷重によって舗装体に生じるせん断応力の計算 p.25
2.3.3 組合せ梁構造のコンクリート舗装版自由縁部への適用 p.26
(1) 組合せ梁構造における舗装体剛性の考慮 p.26
(2) 組合せ梁構造式の計算結果に及ぼす側梁設置数の影響 p.27
(3) 各種計算式と組合せ梁構造式との計算結果の比較(版厚の影響) p.30
(4) 各種計算式と組合せ梁構造式との計算結果の比較(輪荷重の影響) p.33

第3章 組合せ梁構造の複合版への適用
3.1 従来の複合版舗装設計 p.35
3.1.1 曲げ応力の計算手法 p.35
3.1.2 界面のせん断応力の計算手法  p.36
3.2 界面の付着性を考慮した複合梁の考え方 p.37
3.2.1 概要 p.37
3.2.2 界面の付着性を考慮した複合梁の中立軸 p.38
3.2.3 付着性を考慮した複合梁の断面2次モーメント p.39
3.2.4 界面の付着性を考慮した複合梁のせん断応力 p.41
3.3 付着性を考慮した組合せ梁構造の計算結果の検証 p.42
3.3.1 コンクリート版下面に生じる輪荷重応力の検証 p.42
(1) 界面の付着状態が完全接着の場合 p.42
(2) 界面の付着状態が不完全接着の場合 p.43
3.3.2 コンクリート版下面に生じるせん断応力の検証 p.45
3.4 第3章のまとめ p.47

第4章 薄層コンクリートオーバーレイの試験舗装
4.1 試験施工の計画 p.49
4.1.1 試験施工の目的と概要 p.49
4.1.2 試験施工の計画 p.50
(1) 概要 p.50
(2) 試験施工の全体配置 p.51
(3) 試験施工工区の詳細 p.51
4.2 試験施工 p.53
4.2.1 試験施工箇所の路盤支持力係数 p.53
4.2.2 試験施工に用いた下層アスファルト混合物の性状 p.53
4.2.3 試験施工に用いた薄層コンクリートの性状 p.54
(1) 使用するコンクリートの配合 p.54
(2) コンクリートの強度試験結果 p.55
4.2.4 試験舗装の施工 p.56
(1) 施工状況 p.56
(2) 計測用機器の埋設 p.60

第5章 薄層コンクリートオーバーレイの静的載荷状態における評価
5.1 静ひずみ測定結果 p.61
5.1.1 静ひずみ測定要領 p.61
5.1.2 荷重載荷要領 p.61
5.1.3 静ひずみ測定結果 p.61
5.2 薄層コンクリート層下面ひずみ p.62
5.2.1 薄層コンクリート層下面ひずみの集計 p.82
5.2.2 載荷直下のコンクリート層下面ひずみ p.82
5.2.3 載荷位置が王位断方向にずれることの影響 p.83
5.3 付着係数の評価 p.85
5.3.1 付着係数に及ぼす下層アスコン面の処理方法の影響 p.85
5.3.2 付着係数に及ぼす載荷位置の影響 p.87
(1) 幅員方向に載荷位置が移動した場合の影響 p.87
(2) 延長方向に載荷位置が移動した場合の影響 p.89
5.3.3 下層アスコン層の弾性係数の評価 p.90
5.4 実測ひずみによる組合せ梁構造の検証 p.91
5.4.1 組合せ梁構造による計算 p.91
5.4.2 組合せ梁構造による実測ひずみの検証 p.92
(1) 載荷直下のひずみ p.92
(2) 道路延長方向のひずみ影響線 p.94
5.4.3 コンクリート層下面ひずみに及ぼす付着係数の影響 p.96
5.5 舗装体内部のせん断応力 p.97
5.5.1 組合せ梁構造によるせん断応力の推定 p.97
5.5.2 付着係数と界面せん断応力 p.100
5.6 第5章のまとめ p.101

第6章 薄層コンクリートオーバーレイの動的載荷状態における評価
6.1 動ひずみ測定結果 p.102
6.1.1 荷重載荷要領 p.102
6.1.2 動ひずみ測定要領 p.102
6.1.3 動ひずみ測定結果 p.103
(1) 後輪載荷時の動ひずみデータの集計 p.103
(2) 載荷位置と縁部でのコンクリート層下面ひずみ p.117
6.2 付着係数の評価 p.119
6.2.1 付着係数の算出結果の集計 p.119
6.2.2 付着係数に及ぼす影響 p.121
(1) 界面処理の影響 p.121
(2) 載荷位置の影響 p.121
6.3 動的載荷状態におけるアスコン弾性係数の評価 p.123
6.4 組合せ梁構造による実測ひずみの検証 p.124
6.4.1 組合せ梁構造による計算 p.124
6.4.2 組合せ梁構造による実測ひずみの検証 p.125
(1) 載荷直下の実測ひずみと計算ひずみ p.125
(2) 道路延長方向のひずみ影響線 p.126
6.4.3 組合せ梁構造によるせん断応力の推定 p.130
(1) 実測ひずみから計算したせん断力図 p.130
(2) せん断応力 p.134
6.5 第6章のまとめ p.136

第7章 薄層コンクリートオーバーレイの温度と温度拘束ひずみ
7.1 温度測定結果 p.137
7.1.1 温度測定方法 p.137
7.1.2 日内の温度変化 p.137
7.1.3 外気温とコンクリート表面温度 p.141
7.1.4 コンクリート層に生じる上下面温度差 p.142
7.1.5 外気温と上下面温度差 p.145
7.1.6 外気温とアスコン層上面(コンクリート層下面)温度 p.148
7.1.7 外気温とコンクリート層平均温度 p.151
7.1.8 コンクリート層の上下面の温度差と平均温度 p.152
7.2 薄層コンクリートオーバーレイ層の温度ひずみ p.153
7.2.1 温度ひずみの測定要領 p.153
7.2.2 薄層コンクリートオーバーレイ層の温度と拘束ひずみ p.153
7.2.3 薄層コンクリート層の平均温度と平均ひずみ p.157
7.2.4 薄層コンクリートオーバーレイ層の温度差と下面ひずみ p.160
7.2.5 薄層コンクリートオーバーレイ層のそり拘束ひずみ p.161
7.2.6 現行セメントコンクリート舗装要鋼式による検討 p.165
7.2.7 温度拘束ひずみ p.169
7.3 第7章のまとめ p.171

第8章 結論
8.1 本研究の成果に基づく薄層コンクリートオーバーレイ工法の試算 p.172
8.1.1 計算条件 p.172
(1) 試算の対象とする舗装 p.172
(2) 温度拘束応力 p.173
(3) SFRCの疲労曲線 p.174
8.1.2 疲労抵抗の計算 p.174
(1) コンクリート版縁部の輪荷重応力とその発生頻度 p.174
(2) コンクリート版縁部のエンド応力とその発生頻度 p.178
(3) 合成応力とその発生頻度の計算 p.178
(4) 疲労抵抗の計算 p.179
8.2 まとめ p.180

謝辞 p.182

参考文献 p.183

 薄層コンクリートオーバーレイ舗装は、既設アスファルト舗装の上に薄層のコンクリートをオーバーレイする舗装の維持修繕工法の一つである。欧米では、ホワイトトッピングと称され、施工実績も多く、かつ関連する調査研究報告も多い。しかし、わが国では昭和50年代半ばにいくつかの試験施工がなされたものの、広く普及するには至っていない。
 欧米では本工法を郡道などの軽交通路に用いられているのに対し、わが国では重交通路の耐わだち掘れ対策として用いられ、過酷な荷重条件に曝されたことから十分な耐久性を示すには至らなかったのである。このことは、設計法に関する研究が十分でなかったことと深く関連する。即ち、薄層コンクリートオーバーレイ舗装の如く複合版舗装に対する現在の設計法の考え方は、複合版の界面が完全に接着していることを前提に成り立っている。しかし、改めて過去のデータを解析し直してみると、完全接着の仮定を疑わざるを得なくなってきた。もし、完全な接着が得られていないにもかかわらず完全接着の前提で設計することは、薄層コンクリートオーバーレイ層にとって危険側の設計になるのである。
 この薄層コンクリートオーバーレイ舗装がわが国でも一修繕工法として利用されるためには、界面の付着性を考慮した輪荷重応力の計算方法について研究する必要があり、また実際の薄層コンクリートオーバーレイ舗装での界面の接着性がどの程度であるかの研究も必要となる。更に界面接着と関連して、界面に生じるせん断応力についての研究も重要である。またコンクリート層には温度応力が生じるので、この温度応力と界面接着の関連についての研究も必要である。本論文は、これら薄層コンクリートオーバーレイ舗装の設計に必要な基礎的事項について取り纏めたものである。
 まず、第2章で舗装版をWinkler 基礎上の梁の集合体として解析する手法を提案する。界面が不完全接着状態の複合版舗装の解析は極めて困難であり、FEM による方法でも未だ研究段階である。しかし、舗装版を梁要素を分割できれば、梁であるならば界面が不完全接着状態であっても比較的簡単に解析できると考えたからである。本論文の中では「組合せ梁構造」と称している。
 次に、第3章でWinkler 基礎上の梁に関して、界面の付着性を考慮する方法を検討する。その中で、界面の付着性の程度を付着係数なる数値(0~1)で表現することを提案する。これによって、界面の付着の程度に及ぼす諸条件の影響をも数値化できる。また、界面の付着性と関連して、複合舗装体内部に生じるせん断応力の計算方法についても言及し、特に重要となる界面に生じるせん断応力の計算方法を提案する。
 そして、第4章では断面、材料、路盤支持力、そして界面処理の方法の異なる薄層コンクリートオーバーレイの試験舗装を実施する。
 第5章では、試験舗装体に埋設した温度センサーとひずみゲージから得た、薄層コンクリートオーバーレイ舗装の温度特性と温度応力(ひずみ)のデータを収集解析する。温度特性については、通常のセメントコンクリート舗装に比べて上下面の温度差は小さくなり、かつ温度差が負の時間割合が多くなることが判明した。また、温度応力に関しては界面の付着性が大きいものの方が温度応力が低減することが分かった。これは、従来のセメントコンクリート舗装では、上下面の温度差に比例する温度応力(そり拘束応力)が発生するとの考えであるが、この薄層コンクリートオーバーレイの場合界面の付着性により伸縮拘束応力が発生し、これがそり拘束応力と打ち消し合うように作用するからである。
 第6章で試験舗装での静的載荷実験を、第7章で動的載荷試験を実施し、自由縁部における舗装体内部のひずみ分布を実測して界面の付着係数を測定するとともに、コンクリート層下面に生じる輪荷重応力(ひずみ)と、組合せ梁構造による計算結果との整合性を確認する。その結果、付着係数に関しては、従来の施行方法によるものでは0.3~0.4程度の付着係数しかえられていないことが判明した。しかし、この付着係数は、種々条件、即ち界面の処理方法、荷重の載荷位置、そして荷重の載荷速度などによって変化することも判明した。この付着係数によって、コンクリート層下面に生じる輪荷重ひずみ(応力)が大きく影響を受け、例えば付着係数が0.3程度であれば、発生するひずみは完全接着状態より(30~40)×10-6もの大きなひずみを生じさせることになる。一方、付着係数を高めることは、その界面に生じるせん断応力を大きくすることに繋がり、接着性の重要性を改めて指摘した。また、実測で得た付着係数を用いて、第2章、第3章で提案した組合せ梁構造で計算すると、実測値とほぼ対応する計算結果がえられることが確認された。
 以上、本研究の目的とした薄層コンクリートオーバーレイ舗装の設計に関する有益な知見を得ることができた。

平成11(1999)年度博士論文題名一覧

お気に入り

マイメニューの機能は、JavaScriptが無効なため使用できません。ご利用になるには、JavaScriptを有効にしてください。

ページの先頭へ戻る