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多孔質舗装の音響特性と音響シミュレーション手法に関する研究

氏名 川眞田 智
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第143号
学位授与の日付 平成12年3月24日
学位論文題目 多孔質舗装の音響特性と音響シミュレーション手法に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 丸山 暉彦
 副査 教 授 丸山 久一
 副査 助教授 宮木 康幸
 副査 助教授 下村 匠
 副査 石川工業高等専門学校助教授 西澤 辰男

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1. 序論 p.4
1.1 はじめに p.4
1.2 本研究の目的 p.5
1.3 本研究の内容 p.5

2. 多孔質舗装の音響特性 p.9
2.1 本章の概要 p.9
2.2 多孔質舗装の音響特性測定法 p.10
2.3 管内法による多孔質舗装の音響特性 p.13
2.4 多孔質舗装の音響特性の特徴 p.20
2.5 多孔質舗装の吸音メカニズム p.22
2.6 まとめ p.28

付録A 多孔質舗装(排水性舗装)の現場法による吸音特性について p.30

3. 多孔質舗装の音響FEMモデル p.36
3.1 本章の概要 p.36
3.2 従来の音響モデル p.37
3.3 音響FEM(有限要素法) p.43
3.4 多孔質舗装の音響FEM要素モデル p.46

付録B 多孔質舗装(排水性舗装)の流れ抵抗について p.51

4. 多孔質舗装の音響FEMモデルの実験による検証 p.54
4.1 本章の概要 p.54
4.2 管内法による実測及び計算結果の比較 p.55
4.3 現場法(現場吸音率測定法)による実測及び計算結果の比較 p.63
4.4 音波伝搬における実測及び計算結果の比較 p.68
4.5 まとめ p.76

5. 多孔質舗装の音響FEMモデルを用いた音波の伝搬予測計算 p.78
5.1 本章の概要 p.78
5.2 計算対象 p.79
5.3 評価方法 p.83
5.4 計算結果 p.85
5.4.1 計算結果1(空隙率と超過減衰) p.85
5.4.2 計算結果2(舗装厚さと超過減衰) p.86
5.4.3 計算結果3(最大粒径と超過減衰) p.88
5.5 考察 p.90
5.6 まとめ p.92

6. 音響FEMの発生音予測計算への適用について p.94
6.1 本章の概要 p.94
6.2 タイヤ/路面騒音(タイヤ発生音)について p.95
6.3 多孔質舗装の音響FEMモデルを用いた気柱共鳴音の解析 p.98
6.3.1 気柱共鳴音 p.98
6.3.2 多孔質舗装における気柱共鳴音(実験による検討) p.99
6.3.3 多孔質舗装における気柱共鳴音(FEMによる検討) p.103
6.3.4 多孔質舗装における気柱共鳴音と騒音低減効果 p.105
6.3.5 まとめ p.108
 -多孔質舗装の音響FEMモデルを用いた気柱共鳴
6.4 多孔質舗装の音響FEMモデルを用いたホーン効果の解析 p.109
6.4.1 計算対象 p.109
6.4.2 計算結果 p.110
6.4.3 まとめ p.117
 -多孔質舗装の音響FEMモデルを用いたホーン効果の解析

7. 結論 p.119

 昨今,環境問題がさまざまなシーンでクローズアップされることが多くなってきた.本論文で取り扱う道路交通騒音も環境問題のひとつであり,特に都市部の沿道住民の方々にとって切実な問題となっている.この様な状況の中,道路交通騒音の対策手法として,車両騒音低減,低騒音舗装,高性能遮音壁などのハード面の対策技術及び交通規制,流通システム等のソフト面の対策技術など多岐にわたる研究開発がなされている.路面の低騒音化のアプローチは,排水性舗装をはじめとした多孔質舗装による低騒音舗装の研究開発が行われており,排水性舗装では,密粒度舗装に対して 2~5dB 程度の騒音低減効果が確認されている.排水性舗装は,空隙による排水性を持った舗装材として雨天時の走行安全性のために開発されたものであるが,空隙による低騒音性は付加的な性能であったにもかかわらず,昨今では施工の主目的となるケースが非常に多くなっている.
 排水性舗装をはじめとした多孔質舗装の低騒音効果のメカニズムについては,エアポンピング,気柱共鳴等の発生騒音(タイヤ/路面騒音)の抑制と吸音による超過減衰の2つのメカニズムが関与していると考えられ,両方とも多孔質構造による通気性や吸音性に起因していると考えられる.多孔質舗装の低騒音性のメカニズムや音響特性に関する研究は,これまでにも行われてきた.しかし,吸音率や音響インピーダンスを用いたコンベンショナルなアプローチが主体であり多孔質舗装を的確に表現し得る音響モデルや CAE(Computer-Aided Engineering)に展開可能な音響シミュレーション手法に関しては未だ確立されていない状態であった.
 そこで本論文では,多孔質舗装の特徴,吸音メカニズムを反映した音響モデルを構築し,CAEに容易に展開可能な音響シミュレーション手法を構築することを検討した.また,この音響シミュレーション手法の活用例として,多孔質舗装の吸音性の超過減衰に対する影響と低騒音性への寄与,多孔質舗装の吸音性とタイヤ/路面騒音の発生抑制効果の関係等を検討した.
 本論文は1章~7章の章立てで構成されており,各章の概要は以下に示す通りである.
 第1章では,道路交通騒音の低騒音化技術について概要を述べるとともに,低騒音舗装としての多孔質舗装について整理し,本研究の目的及び位置付けを明確にする.
 第2章では,多孔質舗装の音響的な特性評価を行い,その特徴を把握するとともに,多孔質舗装の吸音メカニズムについて考察を行った.多孔質舗装の吸音率はシャープなピークを持った特性となり,その吸音メカニズムは表面における干渉で説明される.そのため,グラスウールに代表される一般的な吸音材と同様に取り扱うことは適当ではないことが確認された.
 第3章では第2章で得られた結果を基に,多孔質舗装の構造の特徴を反映した有限要素法(音響 FEM )の要素モデルを新たに考案し,音響シミュレーションの手法の構築について検討した.具体的には,(1)多孔質舗装では空隙の一部で音波が伝搬する,(2)空隙の複雑さは音波伝搬の速度に反映される,(3)多孔質舗装内部での音波の減衰は一様である,という仮定から音響 FEM 要素モデルを構築した.
 第4章では第3章で構築した多孔質舗装の音響 FEM モデルによる音響シミュレーション手法(以下音響シミュレーション手法)を,供試体を用いた室内実験の結果と比較検討し,音響シミュレーション手法の妥当性を検討した.まず,本シミュレーション手法が多孔質舗装の音響特性を的確に表現できることを確認した.次に,現場吸音率測定法や多孔質舗装上での音波の伝搬について実測値とほぼ合致するという検討結果を得たため,本シミュレーション手法が妥当であることを確認した.以上より多孔質舗装の音響 FEM モデル及び音響シミュレーション手法の構築を完了した.
 第5章では,前章までで構築した音響シミュレーション手法を有効に活用し,これまで明確になっていなかった多孔質舗装の吸音性が超過減衰及び低騒音性にどのように寄与するかという問題を検討した.その結果,吸音特性は評価点のスペクトルに影響を与えるが,オーバーオール値(騒音レベル)に対しては最大2dB 程度の騒音低減効果であり,実際に観測される騒音低減効果との対比から吸音による超過減衰に比べて発生騒音の抑制効果の方が低騒音性に対する寄与率が高いことを確認した.
 第6章では多孔質舗装の音響シミュレーション手法を活用し,タイヤのリブ溝で発生する気柱共鳴及びタイヤと路面が構成するホーン状空間によるホーン効果を検討し,タイヤ発生騒音から見た多孔質舗装の低騒音性メカニズムについて検討した.
 気柱共鳴については,その発生強度が多孔質舗装の吸音特性(ピーク周波数,ピーク値)の影響を強く受けることが解明された.また,気中共鳴のみが騒音低減に寄与すると仮定した推定計算を行った結果,空隙率を増加しても騒音低減効果の最大値は6.5dB 程度と見積もられること等,気柱共鳴の発生強度と騒音低減効果の定性的傾向が確認された.
 ホーン効果の検討では,タイヤと路面が構成するホーン状の空間による放射特性により,大幅な音圧レベルの増加(ホーン効果,反射面の場合 800~1200Hz で約 13dB)が確認された.また,多孔質舗装の場合,吸音率がピークを示す周波数付近で音圧レベルは急激に低下し,ホーン効果が大幅に低減されること等が確認された.
 第7章では,以上で得られた知見をまとめ,さらに今後の検討課題について取りまとめ結論とした.

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