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非線形なsin2Ψ線図をもつ材料のX線応力測定法

氏名 斎藤 雄治
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第332号
学位授与の日付 平成17年3月25日
学位論文題目 非線形なsin2Ψ線図をもつ材料のX線応力測定法
論文審査委員
 主査 教授 栗田 政則
 副査 教授 岡崎 正和
 副査 教授 鎌土 重晴
 副査 助教授 井原 郁夫
 副査 新潟大学教育人間科学部 教授 鈴木 賢治

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本論文で用いる座標系・記号 p.1

第1章 緒論 p.6
 1.1 はじめに p.6
 1.2 研究の背景 p.7
 1.3 本研究の内容 p.10
 1.4 本論文の構成 p.10
 参考文献 p.12

第2章 非線形なsin2Ψ線図をもつ材料のX線応力測定法 p.15
 2.1 緒言 p.15
 2.2 測定理論 p.16
 2.2.1 回折線ピーク位置と応力の関係 p.16
 2.2.2 応力値の求め方 p.16
 2.2.3 無応力状態のsin2Ψ線図の勾配 p.21
 2.2.4 応力定数の実験による求め方 p.21
 2.2.5 sin2Ψ線図の交点 p.24
 2.2.5.1 応力測定方向と負荷応力方向が一致する場合 p.24
 2.2.5.2 応力測定方向と負荷応力方向が直交する場合 p.25
 2.2.6 ki値とk'i値の理論値 p.25
 2.2.6.1 任意の結晶構造をもつ単結晶 p.26
 2.2.6.2 kxyiとk'xyiが0になる条件 p.27
 2.2.6.3 等方性材料に対するki値 p.29
 2.3 結言 p.31
 参考文献 p.32

第3章 集合組織をもつ材料の応力測定法 p.33
 3.1 緒言 p.33
 3.2 sin2Ψ線図の勾配Mと切片Nの応力に対する変化 p.33
 3.2.1 実験方法 p.33
 3.2.2 実験結果および考察 p.35
 3.2.3 まとめ p.47
 3.3 集合組織をもつ材料の無応力状態のsin2Ψ線図の勾配 p.48
 3.3.1 実験方法 p.48
 3.3.2 実験結果および考察 p.48
 3.3.3 まとめ p.54
 3.4 シリコン単結晶に被覆したアルミニウム薄膜の応力測定 p.55
 3.4.1 はじめに p.55
 3.4.2 シリコン単結晶とアルミニウム薄膜のひずみと応力の関係 p.55
 3.4.3 アルミニウム薄膜のki値 p.58
 3.4.4 実験方法 p.59
 3.4.5 実験結果および考察 p.61
 3.4.6 まとめ p.66
 3.5 マグネシウム合金の押出材の応力測定 p.67
 3.5.1 はじめに p.67
 3.5.2 実験方法 p.67
 3.5.3 実験結果および考察 p.71
 3.5.4 まとめ p.80
 3.6 冷間圧延鋼板の応力測定 p.81
 3.6.1 はじめに p.81
 3.6.2 実験方法 p.81
 3.6.3 実験結果および考察 p.84
 3.6.4 まとめ p.98
 3.7 結言 p.99
 参考文献 p.100

第4章 単結晶材料の測定法 p.102
 4.1 緒言 p.102
 4.2 シリコン単結晶への適用 p.102
 4.2.1 はじめに p.102
 4.2.2 シリコン単結晶のki値とk'i値 p.103
 4.2.3 実験方法 p.105
 4.2.4 実験結果および考察 p.108
 4.2.5 シリコン単結晶とアルミニウム薄膜の残留応力測定 p.120
 4.2.6 まとめ p.121
 4.3 ガーネット単結晶への適用 p.122
 4.3.1 はじめに p.122
 4.3.2 ガーネット結晶のki値 p.122
 4.3.3 実験方法 p.125
 4.3.4 実験結果および考察 p.126
 4.3.5 まとめ p.130
 4.4 結言 p.131
 参考文献 p.132

第5章 結論 p.133

付録 p.135
A X線応力測定について p.135
 A.1 X線回折によるひずみの測定 p.135
 A.2 X線回折 p.136
 A.3 回折面の選択 p.136
 A.4 回折線の測定 p.137
 A.5 回折線ピーク位置の決定 p.139
 A.6 回折線ピーク位置とひずみの関係 p.140
 A.7 X線応力測定の基礎式 p.141
 参考文献 p.144

B 板厚と幅の比が大きい試験片の曲げ応力 p.145
 B.1 計算方法 p.145
 B.2 計算結果および考察 p.147
 B.3 まとめ p.149
 参考文献 p.149

C 無応力状態の回折線ピーク位置の測定誤差が応力値に及ぼす影響 p.150

D ガーネット単結晶 p.152
 D.1 ガーネットの結晶構造 p.152
 D.2 用途および特性 p.153
 D.2.1 光通信デバイス p.153
 D.2.2 レーザ用ガーネット p.154
 D.3 製造方法 p.155
 D.3.1 液相エピタキシャル法 p.155
 D.3.2 CZ法(チョクラルスキー法) p.155
 D.4 まとめ p.155
 参考文献 p.156

謝辞 p.157

X線応力測定法は,結晶材料表面の局所の残留応力を非破壊的に測定できる.この測定法は元来巨視的に弾性等方性の多結晶材料に対する弾性学の理論に基づいている.この理論によれば,試料面法線と回折面法線とのなす角Ψと回折線ピーク位置との関係を示すsin2Ψ線図は,平面応力状態における等方性材料では直線となる.このとき,応力値は応力定数Kとsin2Ψ線図の直線の勾配Mとの積として求まる.しかし,工業的には冷間圧延材,冷間引抜き材および薄膜材のように集合組織をもつ材料や単結晶などのように弾性異方性材料が広く用いられており,このような材料はsin2Ψ線図が非線形となるので等方性弾性体に対する測定理論は適用できない.また,単結晶は多結晶体とは異なり,X線の回折条件を満たす特定の方向からX線を入射しなければ回折線が得られない.このため,集合組織をもつ材料や単結晶材料に対する多くの測定法が提案されているが,異方性材料に対して一般的に適用でき,しかも迅速に測定できる方法はまだ得られていない.
本研究は,非線形なsin2Ψ線図をもつ材料のX線応力測定法を提案したものである.
この理論は,回折線ピーク位置すなわち格子ひずみが応力に比例して変化するという前提のみを用いて導かれているので,等方性材料のみならず異方性材料でも弾性体であれば広く適用できる.本研究ではこの測定理論を応用して,集合組織をもつ冷間圧延鋼板,アルミニウム薄膜,マグネシウム合金,シリコンおよびガーネット単結晶の応力測定法を示した.
本論文は,5章から構成されている.
第1章では,X線応力測定法の原理と弾性等方性の多結晶材料に対する従来の測定理論を説明した.また,集合組織をもつ材料および単結晶材料に対して,従来提案されているX線応力測定法の問題点を明らかにした.
第2章では,本研究で提案した非線形なsin2Ψ線図をもつ材料の残留応力の測定理論を述べた.この測定法は,試料面内の直交二方向に測定した非線形なsin2Ψ線図上の回折線ピーク位置に最小二乗法を用いて当てはめた直線の勾配から,平面応力状態の残留応力を求めるものである.このためにまず,この測定理論を異方性材料である単結晶および集合組織をもつ材料に応用するために,直交異方性材料ではせん断応力τxyは測定する垂直応力σxに影響しないことを明らかにした.また,種々の負荷応力を試験片に加えたときに,sin2Ψ線図上の回折線ピーク位置の各点に最小二乗法を用いて決定した直線の勾配Mと切片Nは応力に比例して変化し,応力値は等方性材料の場合と同様にこの勾配Mと応力定数Kとの積として求まることを示すとともに,各負荷応力に対して求めたsin2Ψ線図の直線群は一点で交わることを理論的に明らかにした.さらに,任意の結晶構造をもつ単結晶や等方性材料に対する応力定数の理論値の求め方や,弾性定数が未知の単結晶や集合組織材に対する応力定数の実験的な決定方法を明らかにした.
第3章では,まず集合組織をもつ炭化けい素とオーステナイト系ステンレス鋼の試験片について実験し,非線形なsin2Ψ線図をもつ材料に対してもsin2Ψ線図の直線の勾配と切片は応力に比例して変化し,種々の負荷応力に対するsin2Ψ線図の直線群は一点で交わるという2章の理論を実験的に裏付けた.次に,残留応力をもたない集合組織材のsin2Ψ線図はほぼ水平線となるが,これに負荷応力を加えると回折線ピーク位置は直線からずれて集合組織材特有のうねりを生じることを実験的に見出した.さらに,第2章で提案した測定理論を用いて,集合組織をもつアルミニウム薄膜,マグネシウム合金の押出材,冷間圧延鋼板の試験片の応力を測定し,これらの集合組織材の応力測定法を明らかにした.また,集合組織材に対しても等方性材料と同様に,測定される応力はこれに直交する応力成分の影響をほとんど受けないことを実験的に検証した.
第4章では,第2章の測定理論を用いてシリコンとガーネット単結晶の応力測定法を示した.シリコン単結晶に種々の負荷応力を加えて負荷方向とそれに直交する方向の回折線ピーク位置を測定して求めた応力定数の実測値は理論値とよく一致した.また,測定される応力はこれに直交する応力成分の影響を受けないことを示し,これをガーネット単結晶の応力測定に応用した.ガーネット単結晶の試験片の弾性定数は得られないので応力定数Kは理論的に求まらない.そこで試験片に加えた種々の負荷応力に対する回折線ピーク位置から応力定数を実験的に決定した.これらの単結晶に対しても集合組織をもつ材料と同様に,sin2Ψ線図の直線の勾配と切片は応力に比例して変化し,種々の負荷応力に対するsin2Ψ線図の直線群は一点で交わるという2章の理論を実験的に検証できた.
第5章では,本研究で得られた結論をまとめた.

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