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組織制御によるマグネシウム合金の高強度・高延性化および加工性の改善

氏名 吉田 雄
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第340号
学位授与の日付 平成17年3月25日
学位論文題目 組織制御によるマグネシウム合金の高強度・高延性化および加工性の改善
論文審査委員
 主査 教授 鎌土 重晴
 副査 教授 福澤 康
 副査 教授 東 信彦
 副査 助教授 井原 郁夫
 副査 東北大学大学院 工学研究科教授 小池 淳一

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目次

第1章 序論

 1.1 構造材料としてのマグネシウム合金の必要性 p.1
 1.2 展伸用マグネシウム合金 p.4
 1.3 マグネシウムの変形 p.6
 1.4 マグネシウムの特性と組織因子の関係 p.8
 1.4.1 合金化 p.10
 1.4.2 結晶粒微細化 p.10
 1.4.3 集合組織 p.14
 1.5 研究目的 p.14
 参考文献 p.16

第2章 マグネシウム合金の塑性異方性

 2.1 緒言 p.19
 2.2 実験方法 p.21
 2.2.1 AZ31合金圧延板の評価 p.21
 2.2.2 ECAE加工 p.22
 2.3 実験結果および考察 p.23
 2.3.1 供試材のミクロ組織 p.23
 2.3.2 引張特性とその異方性 p.23
 2.3.3 引張特性の異方性と変形機構の関係 p.29
 2.3.4 結晶方位分散による異方性の低減 p.36
 2.4 結言 p.39
 参考文献 p.42

第3章 Mg-Li-Zn系α+β二相合金の結晶粒微細化と低温超塑性

 3.1 緒言 p.43
 3.2 実験方法 p.44
 3.2.1 Mg-8~10%Li-1%Zn合金の溶製と特性評価 p.44
 3.2.2 Mg-10%Li-1%Zn合金の超塑性特性評価 p.44
 3.3 実験結果および考察 p.47
 3.3.1 α相の分断およびβ相の微細化 p.47
 3.3.2 各合金の室温引張特性 p.50
 3.3.3 各合金の373K引張特性 p.50
 3.3.4 LZ101合金の超塑性特性 p.55
 3.3.5 超塑性変形機構 p.59
 3.4 結言 p.63
 参考文献 p.65

第4章 ECAE加工したMg-Al-Zn系合金のミクロ組織と機械的性質

 4.1 緒言 p.67
 4.2 実験方法 p.68
 4.3 実験結果および考察 p.69
 4.3.1 as-ECAE材のミクロ組織 p.69
 4.3.2 as-ECAE材の集合組織 p.74
 4.3.3 as-ECAE材の引張特性 p.76
 4.3.4 焼なましによる組織変化と流動応力の粒径依存性 p.79
 4.3.5 超微細粒材料の室温変形機構 p.82
 4.3.6 ECAE加工材の二次加工への応用 p.87
 4.4 結言 p.90
 参考文献 p.92

第5章 微細粒AZ61マグネシウム合金の低温超塑性

 5.1 緒言 p.94
 5.2 実験方法 p.95
 5.3 実験結果および考察 p.95
 5.3.1 ミクロ組織 p.95
 5.3.2 超塑性特性 p.97
 5.3.3 引張試験後の試料の表面観察 p.100
 5.3.4 付随調整機構の見積り p.102
 5.4 結言 p.103
 参考文献 p.106

第6章 AZ31マグネシウム合金の引張特性に及ぼすMn量の影響

 6.1 緒言 p.107
 6.2 実験方法 p.109
 6.3 実験結果および考察 p.110
 6.3.1 Mn含有量が異なる合金のミクロ組織 p.110
 6.3.2 Mn含有量が異なる合金の機械的性質 p.113
 6.3.3 Mn含有量と強度の関係 p.116
 6.3.4 Mn含有量と延性の関係 p.118
 6.4 結言 p.120
 参考文献 p.121

第7章 プレス成形に適したマグネシウム合金板の創製およびその機械的性質と成形性

 7.1 緒言 p.122
 7.2 実験方法 p.123
 7.2.1 Mg-2~4.5%Al-0.7%~1.5%Zn合金の作製と評価 p.123
 7.2.2 AZ31合金圧延板の表面加工熱処理 p.126
 7.3 実験結果および考察 p.128
 7.3.1 Mg-2~4.5%Al-0.7%~1.5%Zn合金F材および焼なまし材の特性評価 p.128
 7.3.2 AZ31合金ブラスト材の特性評価 p.153
 7.4 結言 p.158
 参考文献 p.162

第8章 総括 p.164

謝辞 p.168

 近年自動車等輸送機器の軽量化に有効なマグネシウム合金を使用する機運が高まっている。しかし、一般にマグネシウムのすべり系は室温では底面すべりのみと言われ、冷間加工がほとんど不可能である上、絶対的な強度も低く、広範な工業的応用が制限されている。一方、最近ではマグネシウム合金でも、結晶粒径や集合組織等を改善した試料では強度や延性の向上が報告されており、組織制御による機械的性質の向上も可能であると言える。
 本研究では、マグネシウム合金の強度および延性向上を目的として、各種マグネシウム合金に結晶粒径や集合組織、析出物などの組織制御を行った試料の機械的性質およびミクロ組織因子との関連について評価した。さらに、成形性の改善を図るため、その評価結果を実際的な展伸用合金開発に応用し、そのような合金の機械的性質ならびに成形性を評価した。

 第1章ではマグネシウム合金展伸材の現況、マグネシウムの変形と組織制御方法および本研究の目的を述べた。

 第2章では圧延集合組織を有する60mm厚のMg-3%Al-1%Zn (AZ31) 合金圧延板を用いて変形の異方性を調べた。RDと平行(0°)、NDと平行(90°)、およびその間の方向(45°)に引張試験した結果、0°方向では底面すべりのSchmid 因子が小さいため流動応力が高く、変形挙動も延性的であるが、45°方向では容易な底面すべりにより低耐力で降伏し、その後双晶の発生により大きな加工硬化を生じる。90°方向では45°方向と同程度の応力で引張双晶により降伏し、その後非常に大きな加工硬化を示し、延性も低下する。集合組織を分散化させることにより変形の異方性を低減できることを示した。

 第3章では、高温、低温で繰返しEqual Channel Angular Extrusion (ECAE)加工したMg-Li-Zn系α(Mg固溶体)+βLi固溶体)二相合金の、室温引張特性および超塑性特性を調べた。ECAE加工したMg-Li-Zn合金では室温引張特性が向上し、0.43Tm(Tm: 合金の融点)に相当する373Kでも1×10-4 s-1の低ひずみ速度域で約400%、0.49Tmに相当する423Kでは1×10-3 s-1の比較的高いひずみ速度で390%の伸びが得られ、低温超塑性が発現する。その機構として、引張試験中に動的再結晶による微細粒が生じるとともに、α相内の粒界や三重点にはβ相が析出し、これらが粒界すべりに寄与することによって超塑性が発現することを示した。

 第4章では、汎用性の高いAZ31合金およびMg-6%Al-1%Zn (AZ61) 合金にECAE加工を行い、加工条件と生成されるミクロ組織の関係、またそれらが引張特性に及ぼす影響を調べた。ECAE加工温度の低下とともに、AZ61合金ではAZ31合金より顕著に微細化し、加工温度448Kでは、粒径50~100nmの微細かつ球状のMg17Al12析出物とともに平均0.5mmの微細粒が得られる。そのような試料は、1×10-3 s-1のひずみ速度で引張強さ351MPa、伸び33%という高強度高延性を示す。さらに、流動応力と伸びに関して明瞭なひずみ速度依存性を示し、1×10-5 s-1のひずみ速度では室温でも67%の高延性が得られる。このような高延性には、底面すべりに加えて非底面aすべり、粒界すべり、変形中の回復が寄与していることを示した。

 第5章では、第4章で得られた微細粒AZ61合金の超塑性特性を評価した。300%以上の大きな伸びが、Tm/2以下の423Kと448Kにおいて、それぞれ1×10-4 s-1, 1×10-3 s-1以下で得られ、低温超塑性が発現する。さらに、1×10-2 s-1の高ひずみ速度では、473Kおよび523Kの比較的低い温度で高速超塑性が発現する。これらの試料の超塑性変形機構は、粒界すべりが主で、粒界拡散に律速された転位クリープが付随調整機構として働くことを示した。

 第6章では、Mnの含有量を0~0.5mass%まで変化させたAZ31合金圧延板を作製し、Mnが材料組織と機械的性質に及ぼす影響を調べた。Mn量0.15%以下の合金では、Mn量の増加とともに焼なまし時の粒成長が抑制されるとともに、Mnの固溶により強度が向上する。Mn量が0.15%を超える合金では、Al-Mn化合物が晶出するものの、これらは粒成長の抑制、強度の向上には寄与しない。さらに、0.15%Mn合金は、非底面すべりの活動および、せん断帯を伴わない均一変形により最も伸びが大きく、AZ31合金に添加するMn量として最適であることを示した。

 第7章では、Mg-Al-Zn系合金の成形性向上を目指して、Al量を2~4.5mass%、Zn量を0.7~1.5mass%と変化させた合金の圧延板を作製し、合金元素量や焼なましの有無が機械的性質および成形性に及ぼす影響を評価した。Al、Zn量の増加に伴い、圧延材の結晶粒は微細になり、室温では高強度・高延性を示すとともに、成形温度となる498KではF材は変形初期に動的再結晶が生じやすく、伸びが顕著に大きくなる。498Kで深絞り成形および張出し成形を行った結果、F材の方が高い成形性を示す。限界絞り比(LDR)は、引張試験における破断伸びと明確な関係はなく、Mg-3.0%Al-1.0%Zn合金F材が最も高い3.2のLDRを示す。また、室温強度が最も高いMg-4.5%Al-1.5%Zn合金F材でもLDRは2.8に達し、充分な成形性を有する。また、表面へのブラスト処理+焼なましによる結晶粒微細化と結晶方位のランダム化が可能で、その結果、曲げ、張出し性等の成形性改善に有効であることを明らかにした。

 第8章では、本論文で得られた結果を要約し、結論とした

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