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Morphololgical and Compositional Design for Metal Oxide Using Metal-EDTA Complex Route

(金属-EDTA錯体法による金属酸化物の形態・組成設計)

氏名 中村 淳
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第338号
学位授与の日付 平成17年3月25日
学位論文題目 Morphololgical and Compositional Design for Metal Oxide Using Metal-EDTA Complex Route(金属-EDTA錯体法による金属酸化物の形態・組成設計)
論文審査委員
 主査 教授 齋藤 秀俊
 副査 教授 西口 郁三
 副査 教授 植松 敬三
 副査 教授 高田 雅介
 副査 教授 小松 高行
 副査 中部キレスト株式会社 代表取締役社長 南部 信義

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Table of contents

Table of contents p.ii
List of publications and meetings p.v
List of figures p.xii
Acknowledgements p.xviii

Chapter 1 General Introduction p.1
1-1 Overview p.1
1-2 Literature survey p.2
1-3 Statement of problem p.12
1-4 Objective of this study p.13
1-5 Outline of this thesis p.14
References p.16

Chapter 2 Metal Composition of Y2O3:Eu Powder Evaluated Using Particle Analyzer p.19
2-1 Introduction p.20
2-2 Experimental p.21
2-3 Results and Discussion p.23
 2-3-1 Metal Composition of each particles p.23
 2-3-1-1 EDTA powder p.23
 2-3-1-2 Phosphor powder p.26
 2-3-2 Cathodoluminescence p.30
2-4 Conclusion p.32
References p.34

Chapter 3 Powder of Y2O3:Eu Red Phosphor Synthesized from Metal-EDTA Complexes p.35
3-1 Introduction p.36
3-2 Experimental p.37
3-3 Results and Discussion p.38
3-4 Conclusion p.47
References p.49

Chapter 4 Downsizing of Particles in EDTA Complex and Y2O3: Eu Powders p.50
4-1 Introduction p.51
4-2 Experimental p.52
4-3 Results and Discussion p.53
4-4 Conclusion p.61
References p.62

Chapter 5 Effect of Boron Concentration in Y2O3:(Eu,B)Phosphor on Crystallinity and Luminescence Property p.63
5-1 Introduction p.64
5-2 Experimental p.65
5-3 Results and Discussion p.66
5-4 Conclusion p.73
References p.75

Chapter 6 Synthesis of Blue Phosphor by Decomposition of Metal Complex Powder 76
6-1 Introduction p.77
6-2 Experimental p.78
6-3 Results and Discussion p.79
6-4 Conclusion p.84
References p.85

Chapter 7 Laser Deposition of (Sr,Ba)TiO3 Films with Metal-ethylenediaminetetraacetic Acid Complexes p.86
7-1 Introduction p.87
7-2 Experimental p.89
7-2-1 Target preparation p.89
7-2-2 Deposition and analysis p.90
7-3 Result and Discussion p.91
 7-3-1 Growth of polycrystalline SrTiO3 Films p.91
 7-3-2 Epitaxy of SrTiO3 films p.95
 7-3-3 Growth of polycrystalline (Ba,Sr)TiO3 films p.99
7-4 Conclusion p.100
References p.101

Chapter 8 General Conclusions p.102

 多元素系酸化物粉体・薄膜を製造するにあたり、組成、組織、形態および製造工程を精密に設計することが重要である。特に高い機能と特性を得るために、形態・組成設計には細心の注意を払わなければならない。
 本研究では多元素系酸化物粉体と薄膜の形態および金属組成を精度よく設計するための手段として、金属エチレンジアミン四酢酸(EDTA)錯体を用いたスプレードライ混合法を提案する。EDTAは殆ど全ての金属イオンと安定な錯体を形成するため、様々な組み合わせの多元素の金属錯体水溶液を容易に得ることができる。本研究で提案するスプレードライ混合法は、金属-EDTA錯体水溶液をスプレードライにより瞬時に乾燥することにより金属-EDTA錯体粉末を得る方法である。得られた金属-EDTA錯体粉末を加熱分解し、Y2O3:Eu赤色酸化物蛍光粉末、BaMgAl10O17:Eu青色酸化物蛍光体粉末および(Ba,Sr)TiO3酸化物誘電体膜を作製した。
 第1章「General Introduction」では、本研究の背景として金属酸化物の形態・組成設計に関するこれまでの研究をまとめて問題点を明らかにし、本研究の背景、目的および本論文の構成を示した。
 第2章「Metal Composition of Y2O3:Eu Powder Evaluated Using Particle Analyzer」では、スプレードライ混合法により得られた(Y,Eu)-EDTA錯体粉末およびそれを焼成することにより得られたY2O3:Eu粉末の金属組成均一性をパーティクルアナライザーで調査した。(Y,Eu)-EDTA錯体粉末では粒子間の金属組成のばらつきが大きいが、焼成後のY2O3:Eu粉末では粒子間の金属組成が均一になることを確認した。またY2O3:Eu粉末のカソードルミネッセンス強度はユーロピウム添加量につれて増加することから、ユーロピウム添加が精度よく行われていることを確認した。
 第3章「Powder of Y2O3:Eu Red Phosphor Synthesized from Metal-EDTA Complexes」では、スプレー混合法によりY2O3:Eu粉末を作製し、形態観察を行い、ユーロピウム添加量および結晶性と発光強度の関係を調査した。得られたY2O3:Eu粒子は直径1-30μmの球状だった。また発光強度は結晶子サイズにつれて大きくなることを確認した。ユーロピウム添加量がY2-xO3:Euxにおいてx=0.08で発光輝度は最大となり、x=0.10、1000℃、0.5時間焼成により得られたY2O3:EuはY2O3:Eu市販品の81%の輝度を有することを確認した。
 第4章「Downsizing of Particles in EDTA Complex and Y2O3:Eu Powders」では、スプレードライヤーのアトマイザに高圧力型二流体ノズルを用い、Y2O3:Eu粉末の微粒子化を試みた。得られたY2O3:Eu粒子は直径1-10μmの球状だった。二流体ノズルの空気圧の増大につれてY2O3:Eu粒子の平均粒径および粒度分布幅が小さくなることを確認した。スプレードライヤーのアトマイジング条件により得られる球状微粒子蛍光体粉末の粒径を設計することが可能であることが明らかとなった。
 第5章「Effect of Boron Concentration inY2O3:(Eu,B) Phosphor on Crystallinity and Luminescence Property」では、Y-EDTA、Eu-EDTAおよびホウ酸を用いたスプレー混合法によりホウ素を幅広い範囲で添加したY2O3:(Eu,B)粉末を作製し、ホウ素添加による形態変化、結晶化挙動、金属組成およびフォトルミネッセンス挙動を調査した。[B]/([Y]+[Eu])比が0.0005以下では結晶性の改善が確認されたが、更なるホウ素添加により、異相Y3BO6の析出を伴い結晶性が悪化した。[B]/([Y]+[Eu])比が1では化学量論組成であるYBO3が得られた。この結果から、スプレードライ混合法は焼成工程において揮発性ホウ素の蒸発を抑制することを明らかにした。またホウ素添加量増加に伴いフォトルミネッセンス強度は劇的に低下することから、Y3BO6相の形成がフォトルミネッセンス強度を低下させる原因であることがわかった。
 第6章「Synthesis of Blue Phosphor by Decomposition of Metal Complex Powder」では、スプレードライ混合法により得られた(Ba,Mg,Al,Eu)-EDTA錯体粉末を1400℃で焼成後、4%H2+Ar雰囲気下で熱処理することにより青色蛍光体BaMgAl10O17:Euが生成することを確認した。また蛍光体中のEuの添加量は設計値の-5%以内であり、スプレードライ混合法による優れた組成制御性が4成分系である青色蛍光体BaMgAl10O17:Euにおいても有効であることを確認した。
 第7章「Laser Deposition of (Sr,Ba)TiO3 Films with Metal-Ethylenediaminetetraacetic Acid Complexes」では、レーザー堆積法のターゲットに金属-EDTA錯体粉末を初めて利用した。(Sr,Ti)-EDTA錯体ターゲットを機械混合法とスプレードライ混合法により作製し、多結晶MgO基板上にSrTiO3薄膜を作製することで、ターゲット調製法の違いによる薄膜品質への影響を調査した。機械混合ターゲットではSrが欠損した膜を得たのに対し、スプレードライターゲットでは[Sr]/[Ti]=1.00である表面平滑性に優れたSrTiO3薄膜を得た。またスプレードライ混合ターゲットを用いることによりBaxSr1-xTiO3の組成xを0.1単位で制御することができた。
 第8章「General Conclusions」では各章の結果を詳細に検討し、本研究の目的に対して次の結論を得た。金属-EDTA錯体溶液からスプレードライを経て作製された金属-EDTA錯体混合粉を熱分解することにより多元素酸化物の金属組成と形態を精度よく設計するための有効な手段であることを証明した。多元素系酸化物粉体・薄膜を製造するにあたり、高い機能と特性を得るための形態・組成設計法を確立することができた。

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