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Laboratory test and numerical analysis of chloride ingress into concrete subjected to airborne salt (飛来塩分を受けるコンクリート中への塩分浸透に関する室内実験と数値解析)

氏名 DEVI NURALINAH
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第621号
学位授与の日付 平成24年6月30日
学位論文題目 Laboratory test and numerical analysis of chloride ingress into concrete subjected to airborne salt (飛来塩分を受けるコンクリート中への塩分浸透に関する室内実験と数値解析)
論文審査委員
 主査 准教授 下村 匠
 副査 教授 丸山 久一
 副査 教授 岩崎 英治
 副査 教授 高橋 修
 副査 新潟大学工学部 准教授 佐伯 竜彦

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TABLE OF CONTENTS
ACKNOWLEDGEMENTS p.i
ABSTRACT p.ii
TABLE OF CONTENTS p.iv
1 INTRODUCTION p.1
 1.1 Research background p.1
 1.1.1 Deterioration of concrete structures by chloride attack p.1
 1.1.2 Airborne salt affecting coastal concrete structures p.3
 1.1.3 Transport model for chloride in concrete p.7
 1.1.4 Verification of durability concrete structures against chloride attack in practical code p.9
 1.1.5 Problem in present methods p.11
 1.2 Objective of this study p.11
 1.3 Structure of the dissertation p.12
 References p.12
2 REVIEW OF PREVIOUS RESEARCH p.14
 2.1 Research on chloride transport in concrete p.14
 2.2 Research on chloride transportation using the wind tunnel at Nagaoka University of Technology p.28
 References p.29
3 WINDOW TUNNEL FOR LABORATORY TEST OF CHLORIDE INGRESS INTO CONCRETE SUBJECTED TO AIRBORNE SALT p.31
 3.1 Introduction p.31
 3.2 Outline of the wind tunnel p.31
 3.2.1 Structure of the wind tunnel p.31
 3.2.2 Exterions of the wind tunnel p.33
 3.2.3 Driving system of the wind tunnel p.34
 3.2.4 Electrical control system of the wind tunnel p.34
 References p.35
4 LABORATORY TEST OF CHLORIDE INGRESS INTO CONCRETE SUBJECTED TO AIRBORNE SALT p.36
 4.1 Objective p.36
 4.2 Test method p.36
 4.2.1 Concrete specimen p.36
 4.2.2 Measurement of airborne salt by gauze specimen p.37
 4.2.3 Exposure of specimens p.38
 4.2.4 Measurement of chloride in concrete p.38
 4.3 Test results and discussion p.41
 4.3.1 Test results p.41
 4.3.2 Influence of airborne salt on chloride ingress into concrete p.43
 4.3.3 Influence of water-cement ratio on chloride ingress into concrete p.43
 4.3.4 Influence of exposure time on chloride ingress into concrete p.43
 4.3.5 Influence of depth from the surface on chloride content in concrete p.44
 4.4 Comparison of the test results with previous researchers'data p.45
 4.5 Summary of the chapter p.46
 References p.47
5 INVESTIGATIONS OF EXPERIMENTALLY OBTAINED SURFACE CHLORIDE p.48
 5.1 Introduction p.48
 5.2 Determination of experimental surface chloride p.48
 5.2.1 Method of determination of surface chloride p.48
 5.2.2 Results and discussion p.50
 5.3 Summary of the chapter p.57
 References p.58
6 INVESTIGATIONS ON EXPERIMENTAL DIFFUSION COEFFICIENT p.59
 6.1 Introduction p.59
 6.2 Time-dependent diffusion coefficient
 6.2.1 Method of determination of time-dependent diffusion coefficient p.59
 6.2.2 Results and discussion p.61
 6.3 Mean diffusion coefficient p.65
 6.4 Concentration-dependent diffusion coefficient p.68
 6.4.1 Procedure of derivation of concentration-dependent diffusion coefficient p.68
 6.4.2 Results and discussion p.69
 6.5 Summary of the chapter p.82
 References p.83
7 NUMERICAL SIMULATION OF CHLORIDE INGRESS INTO CONCRETE p.84
 7.1 Analytical method p.84
 7.1.1 Combinations of boundary condition model and diffusion coefficient model p.84
 7.1.2 Calculation methods p.84
 7.2 Simulation of the wind tunnel test p.86
 7.2.1 Time-dependent chloride profiles p.86
 7.2.1 Chloride content at reinforcing bar position in concrete in long time p.92
 7.2 Summary of the chapter p.93
 References p.94
8  SIMULATION OF CHLORIDE INGRESS IN A ACTUAL STRUCTURES p.95
 8.1 Introduction p.95
 8.2 Analysis of chloride ingress into concrete specimens exposed under real environment
 8.2.1 Calculation of field test results by Meira p.96
 8.2.2 Calculation of chloride ingress into concrete with sulfate resistant Portland cement (SRPC) p.98
 8.3 Analysis of chloride ingress into concrete structure under real environment p.99
 8.4 Summary of the chapter p.100
 References p.101
9  CONCLUSIONS p.102
 9.1 Conclusions p.102
 9.2 Recommendations of future research p.103
APPENDICES p.104
 Appendix A-1 p.104
 Appendix A-2 p.106
 Appendix A-3 p.107
 Appendix A-4 p.108
 Appendix A-5 p.110
 Appendix A-6 p.124
 Appendix A-7 p.126
 Appendix A-8 p.132

 社会の持続的発展を支える基盤施設である鉄道、道路の交通系インフラ構造物には、地震等の自然災害に強く、環境作用による劣化に対して耐久的であることが求められる。海岸付近のコンクリート構造物にとって、寒冷地、温暖地問わず最も深刻な劣化現象は、塩害すなわち海岸からの海水飛沫や飛来塩分によるコンクリート中の鋼材の腐食である。建設される構造物が供用期間中に劣化で支障をきたさないようにするためには、構造物の設計段階において、当該構造物の劣化シミュレーションを行い、十分な耐久性を有することを確認する必要がある。塩害に対しては、コンクリート中への塩分浸透過程の予測を行わなければならない。本研究はそのための基礎研究として、コンクリート表面に到達した飛来塩分がコンクリート中に浸透する過程を、実験と数値解析により検討した。
 コンクリート中への塩分浸透過程は拡散型モデルにより表現されることが多い。したがって、飛来塩分等の環境作用を境界条件に反映すること、コンクリート中の塩分移動特性を適切に表現する拡散係数を設定することが課題となる。しかし、飛来塩分量に代表される環境作用の実測値から、コンクリート中への塩分浸透解析の境界条件を定める方法は確立されていない。実環境に長期間暴露されたコンクリートでは、飛来塩分の季節変動、乾湿繰返し作用、日射など様々な因子の影響を受けるため、定量化の基礎となる純粋な飛来塩分と塩分浸透の関係が取得できないからである。そこで、本研究では、本研究室で開発された風洞型の飛来塩分環境再現装置を用いて、実験室において、温度、飛来塩分量、コンクリートの乾湿の度合いが一定に制御された実験環境を作成した。この装置を用いて、飛来塩分環境下に置かれたコンクリート中への塩分浸透に関する再現性の高い系統的な実験データを取得し、コンクリート中への塩分浸透過程を予測する数値解析モデルにおけるコンクリート表面の境界条件、およびコンクリート中の塩化物イオン拡散係数を検討した。
 本論文は、9章より構成される。
第1章は序論であり、研究の背景、重要性を述べ、研究目的を掲げている。
 第2章では、国内外における既往のコンクリート中の塩分移動解析に関する主要な研究をレビューしている。また、本研究室における風洞を用いた研究の経緯を紹介している。
 第3章では、本研究で用いた風洞型飛来塩分環境再現装置の概要を述べている。
 第4章では、風洞型飛来塩分環境再現装置を用いて行ったコンクリート供試体の塩分浸透試験について述べている。コンクリートの配合、飛来塩分量を実験変数とした6体のコンクリート試験体の内部の塩化物イオン量分布の経時変化を約1年にわたり測定した。
 第5章では、第4章の実験結果より、飛来塩分を受けるコンクリートの表面塩化物イオン濃度の経時変化を実験的に定量化している。表面塩化物イオン濃度は、時間とともに増加し一定値に収束する傾向があること、飛来塩分と明確な相関関係があること、コンクリートの配合の影響を受けることを明らかにしている。
 第6章では、第4章の実験結果より、定数型、時間依存型、濃度依存型のコンクリート中の塩化物イオン拡散係数を導出している。従来、実験的に同定された拡散係数は時間とともに減少することが知られているが、その傾向を時間の関数としてだけではなく、塩化物イオン濃度の関数として表現する方法を提案している。
 第7章では、第5章で求めた表面塩化物イオン濃度と、第6章で求めた塩化物イオン拡散係数を用いて、コンクリート中の塩化物イオン濃度の経時変化を再計算している。境界条件と拡散係数のモデルの組み合わせを7種類比較検討した結果、暴露初期と後期を通じて精度よく再現するためには、時間依存型の表面塩化物イオン濃度と時間依存型または濃度依存型の塩化物イオン拡散係数を用いる必要があることを明らかにしている。また、境界条件を、表面塩化物イオン濃度で与えるのではなく、飛来塩分と表面塩化物イオン濃度とから境界における流束を評価する自然境界条件によっても、塩分浸透過程が表現できることを確認している。
 第8章では、実環境におけるいくつかのコンクリート中への塩分浸透の実測結果の再現計算を行っている。実験室における結果が実環境下における結果にも適用できることを確かめている。また、最も簡易な定数型の表面塩化物イオン濃度と定数型の拡散係数の組み合わせであっても、それらの数値を適切に設定すれば、実用上問題ない精度で塩分浸透過程を表現できることも確認している。
 第9章では、本研究で得られた知見をまとめている。
 本研究により、一定飛来塩分環境下におけるコンクリート中への塩分浸透過程に対する、各種拡散型モデルの適用性を明らかにすることができた。この成果は、実環境下における塩分浸透過程を表現するモデルを検討する際の基礎となるものである。

 学位申請者 Devi Nuralinah(デヴィ ヌラリナ)  本論文は「Laboratory test and numerical analysis of chloride ingress into concrete subjected to airborne salt(飛来塩分を受けるコンクリート中への塩分浸透に関する室内実験と数値解析)」と題し、9章より構成されている。
第1章では、研究の背景、重要性を述べ、研究目的を掲げている。海からの飛来塩分によるコンクリート構造物の塩害が深刻な問題であること、塩害の対策にはコンクリートに到達した飛来塩分がコンクリートに侵入する過程を予測する必要があること、そのためには信頼できる実験データの取得と数値解析法の検討が必要であることを述べている。
 第2章では、国内外における既往のコンクリート中の塩分移動解析に関する主要な研究をレビューしている。
 第3章では、本研究で用いた風洞型飛来塩分環境再現装置の概要を述べている。
 第4章では、風洞型飛来塩分環境再現装置を用いて行ったコンクリート供試体の塩分浸透試験について述べている。
 第5章では、飛来塩分を受けるコンクリートの表面塩化物イオン濃度の経時変化を実験的に定量化している。表面塩化物イオン濃度は、時間とともに増加し一定値に収束する傾向があること、飛来塩分と明確な相関関係があることを明らかにしている。
 第6章では、コンクリート中の塩化物イオン拡散係数を実験結果より導出している。従来、実験的に同定された拡散係数は時間とともに減少することが知られているが、その傾向を時間の関数としてだけではなく、塩化物イオン濃度の関数として表現する方法を提案している。
 第7章では、各種の数値解析法によりコンクリート中の塩化物イオン濃度の経時変化を再計算している。境界条件と拡散係数のモデルの組み合わせを7種類比較検討した結果、暴露初期と後期を通じて精度よく再現するためには、時間依存型の表面塩化物イオン濃度と時間依存型または濃度依存型の塩化物イオン拡散係数を用いる必要があることを明らかにしている。また、境界条件を、表面塩化物イオン濃度で与えるのではなく、飛来塩分と表面塩化物イオン濃度とから境界における流束を評価する自然境界条件によっても、塩分浸透過程が表現できることを確認している。
 第8章では、実環境におけるいくつかのコンクリート中への塩分浸透の実測結果の再現計算を行っている。本研究の成果が実構造物にも適用できることを確かめている。
 第9章では、本研究で得られた知見をまとめている。また、本研究の成果に基づき、構造物の塩害の進行をより正確に予測する方法を提案している。
よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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