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Numerical simulation of long term cyclic drying-wetting behavior of concrete under natural environmental action (自然環境作用下におかれたコンクリートの長期的乾湿繰返し挙動の数値シミュレーション)

氏名 HTUT THYNN THYNN
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第628号
学位授与の日付 平成24年8月31日
学位論文題目 Numerical simulation of long term cyclic drying-wetting behavior
 of concrete under natural environmental action (自然環境作用下におかれたコンクリートの長期的乾湿繰返し挙動の数値シミュレーション)
論文審査委員
 主査 准教授 下村 匠
 副査 教授 丸山 久一
 副査 教授 岩崎 英治
 副査 教授 高橋 修
 副査 教授 細山田 得三
 副査 准教授 宮下 剛

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Table of Contents page
Abstract p.i
Acknowledgements p.ii
Table of Contents p.iii
Chapter 1: Introduction p.1
 1.1 Background p.1
 1.2 Scope and Objectives p.2
 1.3 Overview of Dissertation p.3
 References p.5
Chapter 2: Literature Reviews p.6
 2.1 Literature on Water Transport Model in Concrete by Capillary Absorption p.6
 2.2 Literature on Climatic Action on Deterioration Process of Concrete p.8
 2.3 Literature on Climatic Action Model p.11
 References p.12
Chapter 3: Computational Model for Water Transport in Concrete under Cyclic Drying-wetting Condition p.13
 3.1 Introduction p.13
 3.2 Pore Size Distribution Function p.13
 3.3 Diffusion in Non-saturated Concrete p.14
 3.3.1 Transport of vapor and liquid water in concrete p.16
 3.3.2 Boundary condition p.16
 3.4 Capillary Suction p.16
 3.4.1 Capillary suction in straight glass vessels p.16
 3.4.2 Capillary suction from concrete surface p.19
 3.5 Alternation of Diffusion and Capillary Suction p.21
 3.6 Conclusions p.23
 References p.24
Chapter 4: Verification of the Water Transport Model in Concrete by Laboratory Test p.25
 4.1 Introduction p.25
 4.2 Experimental Program p.25
 4.2.1 Specimen p.25
 4.2.2 Test conditions p.27
 4.3 Results and Discussion p.28
 4.3.1 Parameters used in the computational model p.28
 4.3.2 Experimental and analytical results under constant temperature and humidity p.28
 4.3.3 Experimental and analytical results under cyclic drying-wetting condition p.31
 4.4 Conclusions p.35
 References p.36
Chapter 5: Water Transport in Concrete under Natural Environment p.37
 5.1 Introduction p.37
 5.2 Experimental Program p.37
 5.2.1 Specimen p.37
 5.2.2 Test conditions p.37
 5.3 Results and Discussion p.40
 5.3.1 Parameters used in the computational model p.40
 5.3.2 Experimental and analytical results of sheltered specimen p.40
 5.3.3 Experimental and analytical results of non-sheltered specimen p.42
 5.4 Conclusion p.44
 References p.45
Chapter 6: Enhancement of Water Transport Model in Concrete p.46
 6.1 Introduction p.46
 6.2 Evaluation of Condensation on Concrete Surface p.46
 6.3 Modeling of Penetration of Condensed Water into Concrete p.49
 6.4 Results and Discussion p.51
 6.4.1 Parameters used in the computational model p.51
 6.4.2 Analytical results by the conventional method p.51
 6.4.3 Analytical results by Method A p.53
 6.4.4 Analytical results by Method B p.54
 6.4.5 Analytical results by Method C p.55
 6.5 Conclusions p.56
 References p.56
Chapter 7: Modeling of Environmental Action for Prediction of Long-term Water Content in Concrete p.57
 7.1 Introduction p.57
 7.2 Formation of Environmental Model p.57
 7.3 Sensitivity Analysis of Environmental Model p.60
 7.3.1 Simulation of water content of sheltered and non-sheltered specimen p.60
 7.3.2 Comparison of environmental models p.63
 7.4 Conclusions p.64
 References p.64
Chapter 8: Case Study of Prediction of Long-term Water Content in Concrete Structures p.65
 8.1 Introduction p.65
 8.2 Simulation of Long-Term Water Content in Concrete Structures in Japan p.65
 8.2.1 Modeled environmental actions p.65
 8.2.2 Calculated concrete structures p.68
 8.2.3 Results and discussion p.69
 8.3 Simulation of Water Content in Concrete in Literature p.69
 8.4 Conclusion p.72
 References p.73
Chapter 9: Conclusions p.74
Appendix p.76

 コンクリート構造物の耐久性、長期供用性は、コンクリートの乾燥収縮、凍害、中性化、疲労、コンクリート中の鉄筋腐食などの劣化現象に支配される。これらの劣化現象の進行にはコンクリート中の水分量が深く関係している。したがって、構造物の状態把握、劣化進行予測を行うには、コンクリート構造物中の水分量の空間分布およびその経時変化を精度よく推定することが有効である。実構造物では、乾湿の条件が部位により、また時間により多様に変化するので、それらを考慮できる算定手法が求められる。さらに構造物は供用期間が数十年にわたるので、与えられた条件から数十年で水分量の変化を予測する必要がある。本研究は、実構造物が受ける種々の乾湿作用とそれによりもたらされる多様なコンクリート中の水分移動現象を、微視的メカニズムに基づき精度よく再現することができる解析モデルの開発と、実構造物が長期乾湿挙動の解析に用いる環境作用モデルの開発を目的とした。
 実環境下におかれたコンクリートが受ける乾湿作用として影響が大きいのは、気中のコンクリートが周囲の空気の湿度変化により生じる乾燥・吸湿現象と、雨水などがコンクリート表面に直接接した場合に生じる吸水現象である。前者は湿度勾配を駆動力とした拡散モデルにより表され、後者は毛細管吸水として表現されることがこれまで明らかにされている。本研究の特徴は、これまで本研究室で開発されてきた水分移動解析システムについて、新たな実験事実に基づき改良を加えたこと、実構造物の長期水分移動予測に用いる入力データについて感度解析を行い、従来着目されてこなかった環境作用モデルの検討を行ったことである。
 本論文は9章より構成される。
 第1章では、本研究の工学的背景より説き起こし、本研究の目的を設定している。
 第2章では、本研究の主題であるコンクリート中の水分移動に関する既往の研究をレビューしている。
 第3章では、本研究で用いる水分移動モデルの概要について述べている。気中におかれた不飽和状態のコンクリート中における乾燥・吸湿の拡散移動は、既往のモデルを利用している。コンクリート表面が液状水に接した際に生じる吸水現象については、既往の研究で提案された速度則を、ガラス毛細管を用いた独自の実験により妥当性を検証し採用している。
 第4章では、第3章で定式化した水分移動モデルを室内実験により検証している。コンクリート供試体中の水分量の変化について実験と解析を比較した結果、一定温度、湿度下の単調乾燥現象、一般室内において定期的に散水を行った乾湿繰返し現象は、精度よく再現できることを確認した。
 第5章では、屋外における検証実験について述べている。直射日光と雨水の影響を受けないようにした屋根あり条件下と、それらの影響をすべて受ける屋外暴露条件下において2年あまり、コンクリート供試体中の水分量の変化を測定した。屋根あり条件下では、冬季に実験結果と解析結果の逆転が生じることが明らかとなった。屋外暴露条件下では、良好な再現性が確認された。
 第6章では、第5章で認められた実験と解析の結果に基づき、不一致の原因と改善方法について検討を行っている。屋外で屋根あり条件下の供試体の冬季における乾湿挙動が再現できなかった原因は、コンクリート表面温度の測定結果を参照することにより、表面温度の低下による結露がコンクリート中に吸水されたためであると推察し、結露が生じた際にはコンクリート表面を飽水状態にする境界条件を設定する方法を考案した。このモデル化により、冬季における乾湿挙動を含めて精度よく再現できることを立証している。なお、屋外暴露供試体の実験結果は、解析モデルに修正を加えなくとも再現されていたのは、元々考慮されている雨水による吸水の影響が大きいためである。
 第7章では、一般条件下にあるコンクリート構造物の長期水分量を予測するためには、どのように環境作用をモデル化するのがよいかを検討している。アメダスによる気象データを用いていくつかの解析入力データを作成し、これらを用いて第6章の実験結果を解析することで、環境作用のモデル化の精粗と評価される解析結果の精度の関係を検討している。その結果、毎月の平均の気温、湿度、降雨日数を入力値として解析を行えば十分であることを明らかとした。
 第8章では、アメダスのデータを用いて日本のいくつかの地域におけるコンクリート構造物中の水分量の長期予測のケーススタディを行っている。
 第9章では、本研究の成果と結論についてとりまとめている。今後の研究と実務への提言も述べている。
 本研究により、降雨、温度変化、湿度変化を受けるコンクリート構造物中の水分量の長期的な変化を予測する計算モデル、それらを実構造物に適用する際の環境作用のモデルが構築された。これらの成果は、実環境下におけるコンクリート構造物の寿命予測の信頼性向上に資するものである。

 本論文は「Numerical simulation of long term cyclic drying-wetting behavior of concrete under natural environmental action(自然環境作用下におかれたコンクリートの長期的乾湿繰返し挙動の数値シミュレーション)」と題し、9章より構成されている。
 第1章では、本研究の工学的背景より説き起こし、本研究の目的を設定している。 第2章では、本研究の主題であるコンクリート中の水分移動に関する既往の研究をレビューしている。
第3章では、本研究で用いる水分移動モデルの概要について述べている。コンクリート表面が液状水に接した際に生じる吸水現象については、ガラス毛細管を用いた独自の実験により検証したモデルを採用している。第4章では、水分移動モデルを室内実験により検証している。一定温度、湿度下の単調乾燥現象、定期的に散水を行った乾湿繰返し現象は精度よく再現できることを確認している。
 第5章では、屋外における検証実験について述べている。直射日光と雨水の影響を受けないようにした屋根あり条件下では、冬季に実験結果と解析結果の逆転が生じることを明らかとしている。一方屋外暴露条件下に対しては、良好な再現性が得られることを確認している。第6章では、第5章において屋外で屋根あり条件下の供試体の冬季における乾湿挙動が再現できなかった原因は、コンクリート表面温度の低下による結露がコンクリート中に吸水されたためであると推察し、結露の発生を予測する方法、結露のコンクリート中への吸水を計算する方法を提案している。この方法により、冬季における乾湿挙動を含めて精度よく再現できることを立証している。
 第7章では、一般条件下にあるコンクリート構造物の長期水分量を予測する際の、環境作用のモデル化の方法について検討している。アメダスによる気象データからいくつかの解析用入力データを作成し、環境作用モデルの精粗と評価される解析結果の精度の関係を検討している。その結果、毎月の平均の気温、湿度、降雨日数を入力値として解析を行えば十分な精度の予測結果が得られることを明らかとしている。第8章では、アメダスのデータを用いて日本のいくつかの地域におけるコンクリート構造物中の水分量の長期予測のケーススタディを行っている。
 第9章では、本研究の成果と結論についてとりまとめている。
 本研究により、降雨、温度変化、湿度変化を受けるコンクリート構造物中の水分量の長期的な変化を予測する計算モデル、それらを実構造物に適用する際の環境作用のモデルが構築された。これらの成果は、実環境下におけるコンクリート構造物の寿命予測の信頼性向上に資するものである。
よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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