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粉体成形プロセスにおける粒子配列制御の効果

氏名 奥本 良博
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第124号
学位授与の日付 平成10年12月9日
学位論文の題目 粉体成形プロセスにおける粒子配列制御の効果
論文審査委員
 主査 教授 石崎 幸三
 副査 教授 福澤 康
 副査 助教授 鎌土 重晴
 副査 助教授 伊藤 吾朗
 副査 新潟大学 助教授 堀田 憲康

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粉体成形プロセスにおける粒子配列制御の効果
第1章 緒論 p.1
1.1 セラミックスの製造と強度評価 p.1
1.1.1 セラミックスの製造 p.1
1.1.2 成形加工の分類 p.2
1.1.3 プレス成形加工 p.5
1.1.4 プレス成形の前処理としての顆粒調製 p.6
1.1.5 セラミックスの強度評価 p.6
1.1.6 焼結体の強度信頼性に影響する内部欠陥 p.7
1.2 熱問等方加圧(HIP)法による多孔体の作製 p.8
1.2.1 多孔体 p.8
1.2.2 開気孔性多孔質体の作製 p.8
1.3 本研究の目的と研究計画 p.9
1.3.1 研究の目的 p.9
1.3.2 研究計画 p.10

第2章 アルミナ・スラリーの分散特性が顆粒祷性に及ぼす影響 p.23
2.1 はじめに p.23
2.2 実験方法 p.24
2.2.1 スラリーの分散特性 p.24
2.2.2 顆粒の調製 p.24
2.2.3 顆粒の特性の評価 p.24
2.3 結果と考察 p.25
2.3.1 スラリーの分散状態 p.25
2.3.2 顆粒の組織 p.26
2.3.3 顆粒の破壊強さと分散剤添加量との関係 p.27
2.4 まとめ p.28

第3章 顆粒特性の成形体組織および焼結体強度への影響 p.38
3.1 はじめに p.38
3.2 実験方法 p.39
3.2.1 アルミナ顆粒の調製 p.39
3.2.2 一軸プレス成形体の作製及び内部組織観察 p.39
3.2.3 CIP成形体の作製及び内部組織観察 p.39
3.2.4 焼成及び焼結体の強度測定 p.40
3.3 実験結果と考察 p.40
3.3.1 一軸プレス成形体の特性と焼結体の強度特性 p.40
3. B.2CIP成形体の特性と焼結体の強度特性 p.42
3.4 まとめ p.44

第4章 アルミナ顆粒の分級顆粒径の一軸成形体組織及ぴ焼結体強度特性への影響 p.58
4.1 はじめに p.58
4.2 実験方法 p.59
4.2.1 アルミナ顆粒の調製と評価 p.59
4.2.2 成形体の作製と評価 p.59
4.2.3 焼結体の作製と評価 p.59
4.3 実験結果と考察 p.60
4.3.1 顆粒の特性 p.60
4.3.2 一軸プレス成形体の特性 p.60
4.3.8 焼結体の強度特性 p.61
4.4 まとめ p.62

第5章 アルミナ顆粒の顆粒径分布の一軸成形体組織および焼結体強度椿性への影響 p.72
5.1 はじめに p.72
5.2 顆粒径分布 p.72
5. B実験方法 p.74
5.3.1 顆粒の調製 p.74
5.3.2 成形体及び焼結体の作製と評価 p.74
5.4 実験結果と考察 p.75
5.4.1 顆粒の特性 p.75
5.4.2 成形体及び焼結体の特性 p.75
5.5 まとめ p.76

第6章 熱間等方加圧(HIP)法による貫通気孔を持つ多孔質金属の作製 p.84
6.1 はじめに p.84
6.2 実験方法 p.85
6.2.1 多孔質金属の作製 p.85
6.2.2 多孔質金属の評価 p.86
6.2.3 多孔質金属の電気化学検出器電極への応用 p.86
6.3 実験結果と考察 p.88
6.3.1 開気孔率、相対密度に及ぼすHIPの効果 p.88
6.3.2 流体透過性に及ぼすHIPの効果 p.88
6.3.3 HPLC電気化学検出器電極としての性能 p.91
6.4 まとめ p.92

第7章 総括 p.112
7.1 本研究で得られた結論 p.112
7.2 今後の研究指標 p.114
謝辞 p.115
著者の研究論文等のリスト p.116

 ふたつの粉体成形プロセスにおいて粒子配列の制御が及ぼす効果について検討した.
 第1章ではまず,セラミックス粉末のプレス成形加工について,製造プロセス全体における位置付け及び強度評価の現状について述べた,また粉体成形ブ回セスとして熱間等方加圧法による多孔質体の作製方法の概略について述べた,
 第2章から第5章にわたる前半ではセラミックス粉末のブレス成形における粒子配列制御の効果について,アルミナのプレス成形において,スラリーの調整条件から焼結体の強度特性まで一連の製造プロセスを包括した実験を実施した.
 第2章では顆粒調製条件の顆粒特性への影響について調査した.分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩を使用し,分散剤添加量によりアルミナ・スラリーの分散特性を変えてスプレードライヤーで作製したアルミナの顆粒について,その組織を浸液透光法で観察し,分散剤添加量と顆粒の破壊強さとの関係を検討した,アルミナ粉末への分散剤の飽和吸着量である分散剤添加量のスラリーは.最も低い粘度及ぴ最も高いゼータ電位の値を示し,最も分散した状態である.しかし。この最も分散した状態のスラリーからなる顆粒は不均質な組織を持つ中空顆粒であった.これに対して,分散剤添加量が飽和吸着量より少なく,緩い凝集状態のスラリーからなる顆粒は均質な組織を持っ中実顆粒であり,分散剤添加量が飽和吸着量であり分散状態のスラリーからなる顆粒および分散剤添加量が過剰であり再凝集状態のスラリーからなる顆粒は不均質な組織を持っ中空顆粒となった.このようにスラリーへの分散剤添加量は顆粒の組織及ぴ構造に大きな影響を及ぼしている.また,分散剤添加量の少ない顆粒ほど潰れやすく,分散剤添加量は顆粒の破壊強さにも大きく影響している.
 第3章では顆粒特性の成形体組織及び焼結体強度への影響について調査した.スラリー中に含まれる分散添加量を調整して破壊強さ等の特性を変化させた顆粒を用いた一軸プレス成形体,CIP成形体の内部組織及び焼結体の曲げ強さについて検討した.一軸プレス成形及びCIP成形に関わらず,破壊強さの大きく潰れにくい顆粒(分散剤添加量が飽和吸着量に等しいか。または多い顆粒)による成形体は顆粒の中空の痕跡や顆粒外殻の痕跡としての三日月状の欠陥が存在する.一方,破壊強さの小さく潰れ易い顆粒による成形体は均一な組織を示す,従って,プレス成型用顆粒としては,破壊強さの小さく潰れ易い顆粒(分散剤添加量が飽和吸着量より少なく,緩く凝集したスラリーにより調製した顆粒)が最適である.さらに,成形時の湿度は焼結体の強度特性に大きな影響を与えるが.本研究では湿度の影響については実験結果を得るだけに留まっている.
 第4章では分級顆粒径の成形体組織及び焼結体強度への影響について調査した.破壊強さの小さく潰れ易い顆粒(分散剤添加量が飽和吸着量より少なく,緩く凝集したスラリーにより調製した顆粒)を106~125,75~90,58~63,38~45μmに分級した粒径の異なる4種類の顆粒について,焼結体の強度信頼性や成形体の組織について検討した,分級した顆粒のかさ密度は,平均顆粒径82.5μmのとき最大値を示した.顆粒径が小さい場合(38~45μm),顆粒一個ずつにかかる成形圧力は顆粒径が小さいほど低く,顆粒の充填時にブリッジングをおこして生じた巨大欠陥が潰れず,低濃度に存在する.よってワイブル係数が低くなる.これに対して,顆粒径が大きい場合(106~125μm)は顆粒充填体にほぼ均質に存在する空隙が成形後も顆粒外形の痕跡として残るために.平均曲げ強度が低くワイブル係数が高くなる.4種類の顆粒の中では焼結体の強度特性は分級顆粒径75~90μmで作製したものが最も成形体厚さの変化に対して安定しており.良好であることがわかった.
 第5章では顆粒径分布の成形体組織及び焼結体強度への影響について調査した.破壊強さの小さく潰れ易い顆粒(分散剤添加量が飽和吸着量より少なく,緩く凝集したスラリーにより調製した顆粒)を38~45,45~53,53~63,63~75,75~90,90~106,106~125及ぴ125~150μmに分級Lた8種類の顆粒を用いて顆粒径分布を対数正規分布で整理し。標準偏差の異なる5種類の顆粒を調製した.これらの顆粒を用いて作製した焼結体の強度特性を検討した.標準偏差σg = 1.7の粒径分布をもつ顆粒が,最も高いかさ密度を示し,顆粒は最密充填状撞となった.また,標準偏差σg = 1.7の粒径分布をもつ顆粒による焼結体は,ワイブル係数が最も高く,強度信頼性に優れていた.
 後半の第6章ではHIP法による多孔質金属の作製における粒子配列制御の効果を検討した,HIP圧を変動し,焼結中の気孔内に媒体ガスの流れを起こすことで気孔を構成する粒子がそのガス流に沿うように配列することで通常HIP法で作製するより,高い流体透過性を有する多孔質金属を作製した.HIP圧を変動させることによって流体透遇率は向上するが・焼結体の開気孔率及ぴ相対密度に大きな変化は見られない.この方法で作製した白金多孔体を電気化学検出器の作用電極に応用し,電極の特性を評価した.白金多孔体作用電極は測定物質に対し安定した応答を得ることができた.さらに,応答ピーク高さと測定物質の濃度が比例したので,電気化学分析に用いることが可能である.
 第7章では本論文を総括し,本研究により粉体成形プロセスにおける粒子配列の制御の有効性が明らかとなった.また,今後解決すべき問題点を述べた。

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