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逆解法による工作機械壁面熱伝達率の推定

氏名 李 鍾斗
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第125号
学位授与の日付 平成10年12月9日
学位論文の題目 逆解法による工作機械壁面熱伝達率の推定
論文審査委員
 主査 教授 高田 孝次
 副査 教授 梅村 晃由
 副査 教授 久曽神 煌
 副査 助教授 古口 日出男
 副査 助教授 田辺 郁男

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第1章 緒論 p.1
1.1 研究の背景
1.2 従来の研究 p.2
1.3 本論文の目的と構成 p.2

第2章 熱伝達率が熱変形に及ぼす影響 p.4
2.1 緒言 p.4
2.2 熱流束測定の現状 p.4
2.3 熱伝達率が熱変形に及ぼす影響 p.8
2.4 結言 p.16

第3章 Gauss-Newton法による複数面の熱伝達率の推定 p.17
3.1 緒言 p.17
3.2 熱伝達率推定方法の原理 p.17
3.3 計算機シミュレーションによる検討 p.24
3.3.1 シミュレーションモデル p.24
3.3.2 初期値が推定結果に及ぼす影響 p.26
3.3.3 誤差のない温度データを用いた推定 p.26
3.3.4 誤差のある温度データを用いた推定 p.27
3.3.5 温度履歴のある温度データを用いた推定 p.28
3.4 実験による内部熱源の強さ推定方法の評価 p.30
3.5 実機NCフライス盤による評価 p.34
3.5.1 NCフライス盤の熱変形 p.34
3.5.2 NCフライス盤の熱変形解析による評価 p.38
3.6 結言 p.48

第4章 特異値分解法による複数面の熱伝達率の推定 p.50
4.1 緒言 p.50
4.2 熱伝達率推定方法の原理 p.50
4.3 シミュレーションモデルによる評価 p.61
4.3.1 推定結果 p.62
4.3.2 温度測定時闘帯の検討 p.66
4.3.3 誤差のある温度データによる検討 p.66
4.4 モデル実験による評価 p.67
4.4.1 単純なブロックモデルの場合 p.67
4.4.2 主軸台モデルの場合 p.69
4.5 実機NCフライス盤による評価 p.76
4.6 結言 p.82

第5軍ニューラルネットワークによる複数面の熱伝達率の推定 p.83
5.1 緒言 p.83
5.2 熱伝達率推定方法の概要 p.83
5.3 学習データの採集 p.86
5.4 ニューラルネットワークモデルの構築と熱伝達率の推定 p.89
5.4.1 主軸を無負荷運転する場合(実験1) p.89
5.4.2 主軸端面を強制冷却する場合(実験2) p.95
5.5 結言 p.98

第6章 結論 p.99
6.1 本研究の総括 p.99
6.2 本手法の長所短所 p.102
謝辞 p.105
付録 p.106
参考文献 p.112

 工作機城の熱変形は,加工精度を左右する最も重要な因子の1つとして認識され、従来より種々の研究が行われてきているが,今日,高速・高精度・高機能を特徴とする工作機械の開発研究において、熱変形の詳細な解析がますます重要になっている.その際,有限要素法は有力な解析手段であるが、実際の適用にあたっては,熱的境界条件としての壁面熱伝達率を個々のケースに対して正しく与えることは必ずしも容易でなく,定量的に信頼できる結果が得られない場合が多い.
 いっぽう,このような初期条件・境界条件の把握が困難な問題に対して「逆解法」を適用する研究が進み,その有用性が注目されている.上記の工作機械熱変形解析はまさにこの種の問題の一つと見ることができ,「逆解法」の適用が有効と考えられる.
 本研究では,工作機械壁面上の複数の点で測定した温度を用いて,逆解法により熱伝達率分布を推定する方法を提案している.工作機械壁面における熱伝達率が構造全体の温度応答や熱変形に与える影響については,その重要性が指摘されながら,実機での測定が困難なため,これまで十分な研究がなされていない.本研究で提案した方法は,この問題に対する具体的な解析手段である.これにより,有限要素法による熱変形解析において適正な境界条件を与えることが可能となり,解析結果の信頼性が向上した.さらに,工作機械の熱変形挙動を確認するための長時間運転試験のかなりの部分を,コンピュータ・シミュレーションに置き換えることが可能であり,実用面での効果も大きいことを確認した.
 本論文は6章からなり,各章の要旨は次の通りである.
 第1章「緒論」では,工作機械の熱変形解析に関する従来の研究の概要を述べるとともに,本論文の目的と範囲を示している.
 第2章「熱伝達率が熱変形に及ぼす影響」では,工作機械壁面における熱伝達が工作機械の熱変形に及ぼす影響を幾つかの具体例によって検討し,熱伝達率分布推定の重要性を指摘している.そのうえで,逆解法により工作機械壁面の熱伝達率分布を推定する考えを示し,あわせて,実用的な観点から熱伝達率の推定に求められる精度について考察している.
 第3章「Gauss-Newton法による複数面の熱伝達率の推定」では,逆解法として,多変数極値探索法の1つであるGauss-Newton法を用いる方法を提案している.すなわち,工作機械壁面の温度測定データと有限要素モデルをもとに,Gauss-Newton法によって内部熱源の強さと熱伝達率分布を推定する方法を構築している.構築した手法を主軸ユニット,たて型NCフライス盤の熱的挙動解析に適用し,その妥当性を検証している.
 第4章「特異値分解法による複数面の熱伝達率の推定」では,逆解法の第2の方法として特異値分解法の適用を試みている.これは,実測した温度と有限要素モデルを用いて準代数的に複数面の熱伝達率を推定するものである,逆解法を用いる場合,一般に,得られた解がが適正解であるかどうかの検証に困難が伴うが,本手法の特徴は,特異値分解法の結果を参照しつつ合理的に適正解に至ることができる点である.
 第5章「ニューラルネットワークによる複数面の熱伝達率の推定」では,逆解法の他の一方法としてニューラルネットワーク法を検討している.本手法においても,第3章と第4章の手法と同様に壁面温度測定結果を入力テータとするが,有限要素モデルを用いないので,メモリ容量の小さな計算機で迅速に熱伝達率分布を推定できること.有限要素法によるモデル化が困難な問題にも対応できることが特徴である.ここでは,主軸台を対象として,主軸を無負荷運転させた場合の熱伝達率分布の推定を行っている.
 第6章「結論」では,以上の各章で得られた結果をまとめるとともに,上記3手法の得失を論じ,工作機械の設計,試験等における各手法の適用指針を与えている.

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