本文ここから

The development of an automatic analyzer for fabrics and textures of polar ice cores(極地氷床コアの集合組織自動解析装置の開発)

氏名 王 うん
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第179号
学位授与の日付 平成11年3月25日
学位論文の題目 The development of an automatic analyzer for fabrics and textures of polar ice cores(極地氷床コアの集合組織自動解析装置の開発)
論文審査委員
 主査 助教授 東 信彦
 副査 教授 梅村 晃由
 副査 教授 秋山 伸幸
 副査 教授 高田 孝次
 副査 教授 久曽神 煌
 副査 国立極地研究所 教授 渡辺 興亜

平成10(1998)年度博士論文題名一覧] [博士論文題名一覧]に戻る.

CONTENTS

Chapter1 Introduction p.1
1.1 Polar Ice core studies p.1
1.2 History of fabrics and textures measurements p.3
 1.2.1 Fabrics measurements p.3
 1.2.2 Textures measurements p.5
1.3 Construct of this thesis p.5

Chapter2 Method to measure the ice crystal c-axis orientation-A new optical method with CCD cameras p.7
2.1 Introduction p.7
2.2 The optical properties of ice crystal p.7
 2.2.1 The structure of ice crystal and c-axis p.7
 2.2.2 Birefringence p.9
 2.2.3 Ice crystal between the crossed polaroids p.9
2.3 Theoretical basis of the "Extinction Method" p.12
 2.3.1 Basic equation p.12
 2.3.2 Determination of A1 and A1' in basic equation p.14
 2.3.3 Extinction angle calculation p.17
 2.3.4 Determination of the c-axis orientation p.21
2.4 Experimental verification with quartz thin-sections p.23
 2.4.1 Samples p.23
 2.4.2 Experiment equipment p.23
 2.4.3 Experiment steps p.23
 2.4.4 Results p.25
2.5 Proposal of the quadrant judgement algorithm p.25
2.6 Conclusion p.32

Chapter3 Automatic device to measure the fabric and texture with image processing techniques p.33
3.1 Introduction p.33
3.2 Design of the automatic device p.33
3.3 Construction of the device p.34
3.4 Analysis procedure p.38
 3.4.1 Steps of analysis p.38
 3.4.2 The coordinates transform p.41
 3.4.3 Crystals recognition and texture measurement by image processing techniques p.44
3.5 Accuracy of the automatic system p.50
 3.5.1 Accuracy of the c-axis orientation measurement p.50
 3.5.2 Errors in texture measurement p.57
3.6 Conclusion p.62

Chapter4 New method to depict the fabric and texture data p.63
4.1 Introduction p.63
4.2 Background of the indication p.63
 4.2.1 Indication of fabrics p.63
 4.2.2 Indication of textures p.65
4.3 Visualization by color mapping p.65
 4.3.1 Color mapping and color models p.66
 4.3.2 Parameters for color mapping p.68
 4.3.3 Methods of calculating the local mean values p.70
 4.3.4 Correspondent the color with the Z value p.71
4.4 Conclusion p.78

Chapter5 Dome Fuji ice core fabric and texture analysis by using the automatic device p.79
5.1 Introduction p.79
5.2 Sample preparation p.79
5.3 Results p.80
 5.3.1 Fabrics results p.91
 5.3.2 Texture results p.91
5.4 Discussion p.92
5.5 Conclusion p.94

Chapter6 Summary and outlook p.96
6.1 Summary p.96
6.2 Outlook p.97

APPENDIX p.100

REFERENCES p.104

ACKNOWLEDGMENTS p.109

PUBLICATIONS p.111

 過去の気候の変遷をはじめ,大気組成,火山活動,植物相などの歴史を復元するため,極地で掘削した氷床コアに含まれている示準物質,示相物質を分析する研究が盛んに行われている.しかし,氷床氷に含まれる示準物質や示相物質は氷とともに流動する.従って,氷コアの解析結果を正しく評価し,氷河・氷床の気候に対する応答機構を正しく理解するには,氷床の流動履歴を把握する必要がある.多結晶氷の集合組織(結晶主軸方位分布,結晶サイズ・形状)はさまざまな応力の元で繰り返された流動や再結晶の結果であるため,氷床氷の集合組織解析は氷床の流動を調べる上で極めて重要である.これまでの氷結晶主軸方位測定は,リグスビ-ステ-ジによる手動測定法が一般的に用いられていた.これは,交差偏光板の間のユニバ-サルステ-ジ上に置いた氷薄片上の個々の結晶毎に主軸を偏光方向に対して特定の方向に来るようにする方法であるため,多大の時間と労力を要する.また,結晶サイズなどの測定は主に氷薄片の偏光写真上で目視観察で行われており,これも多くの時間を要する.このため,迅速な測定方法および機器が望まれている.本論文は氷床深層コア集合組織解析のための新方法および装置の開発について論じたものである.各章で得られた結果を次のように示す.
 第1章「序論」では,多結晶氷の集合組織解析を含む主な極地コア研究を紹介し,従来の集合組織の測走法について述べ,個々の結晶を迅速的に測定できる測定方法および装置の必要性を示した.
 第2章では,氷結晶のような一軸性結晶の光学特性を利用し,交差偏光板の間に置かれた結晶を,CCDカメラによって異なる方向から観察した.各観察位置で求められた消光位(結晶が一番暗く見える交差偏光板の位置)の幾何学的関係に基づき,画像解析による結晶主軸(C軸)方位の測定法一消光位法を開発した.氷と同じ光学的性質を持つ石英単結晶薄片を用いて検証実験を行い,実験結果から誤った方位が算出される要因について検討し,C軸方位角の象限判定を取り入れた方法を提案し,その有効性を示した.
 第3章では,画像処理を用いる結晶粒認識,異なったカメラ観察位置間の各結晶粒の重心座標変換などの方法を開発し,消光位法に基づいた氷結晶C軸方位,結晶サイズ・形状を決定する自動解析装置を開発した.氷床コアおよび人工氷薄片を用いてC軸測定を行った結果,従来のリグスビ-ステ-ジによる測定結果とよく一致した.自動解析装置の解析精度を検討した結果,C軸の方位角の誤差は±0.34°で,天頂角の誤差は±2°であり,再現性は1°以下であることがわかった.また,画像処理による粒径・粒形の測定結果の誤差要因を検討し,粒径の修正を行った結果,氷薄片の偏光写真を目視測定による結果とよく一致した.さらに,これまでの解析方法と比べ,本装置による解析は以下のような特徴がある:1)CCDカメラの視野に写されたすべての結晶を短時間(約20分)に,しかも一括測定することができる.2)全結晶の平均C軸方位ではなく,個々の結晶のC軸方位を決定することができる.3)個々のC軸方位を決定するために結晶認識を行なう方法を開発したので,結晶サイズ,伸長度などのテクスチャデ-タを同時に採取することができる.よって,本装置は高速,高機能,高精度であることが示された.
 第4章では,個々の氷結晶の変形状態を視覚的に捉えるために,自動解析装置を用いて得られた集合組織デ-タを色に対応させ,カラ-で表示する方法を提案した.カラ-表示法により,C軸方位の空間分布を表わすことができ,隣接結晶間のC軸交角,場所による粒径・粒形の空間的な変動,各パラメ-タの相関関係を可視化することが可能となった.
 第5章では,本装置を用いて2500m及ぶ南極ド-ムふじ深層コアの集合組織解析を10m間隔と1m連続に行なった.1000を超える多量のサンプルを解析した結果,ド-ムふじ氷床では低温のため再結晶が起きていないこと,C軸が深くなるにつれ,鉛直方向に集中すること,粒径は過去の気候変動に影響されていること,少なくとも2500mの深さまでは層構造の乱れはないことなどが明らかとなった.
 第6章では,各章で得られた成果を総括し,本方法及び装置は氷床深層コア研究に極めて有効であると結論づけた.

平成10(1998)年度博士論文題名一覧

お気に入り

マイメニューの機能は、JavaScriptが無効なため使用できません。ご利用になるには、JavaScriptを有効にしてください。

ページの先頭へ戻る