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加工熱処理制御によるNi基ODS合金とその接合体の超高温疲労特性向上

氏名 山崎 泰広
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第189号
学位授与の日付 平成11年3月25日
学位論文の題目 加工熱処理制御によるNi基ODS合金とその接合体の超高温疲労特性向上
論文審査委員
 主査 助教授 岡崎 正和
 副査 教授 武藤 睦治
 副査 教授 福沢 康
 副査 助教授 伊藤 吾朗
 副査 新潟工科大学教授 布村 成貝

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第1章 緒論 p.1

1.1. ガスタービン用材料の歴史 p.1
1.2. Ni基ODS合金の開発 p.4
1.3. Ni基ODS合金に関する現在までの研究の趨勢と現状の問題 p.5
 1.3.1. 強度特性、および、その微視組成依存性に関する研究の趨勢 p.5
 1.3.2. 接合技術に関する研究の趨勢 p.7
1.4. 本論文の構成 p.9

第2章 組織制御援用によるNi基ODS超合金の疲労強度の向上 p.11

2.1. 緒言 p.11
2.2. 実験方法 p.12
 2.2.1. 供試材 p.12
 2.2.2. 金属組織および機械的特性 p.12
 2.2.3. 試験片形状 p.15
 2.2.4. 実験装置 p.16
 2.2.4.1. 疲労試験装置 p.16
 2.2.4.1. 高温用非接触型微小変位測定装置 p.16
 2.2.5. 実験条件 p.19
2.3. 実験結果 p.19
 2.3.1. 疲労強度と微視組織 p.19
 2.3.2. 微小疲労き裂の発生形態 p.25
 2.3.3. 内部起点型の疲労破壊 p.28
 2.3.4. 高温におけるき裂進展挙動 p.29
2.4. 考察 p.31
 2.4.1. 疲労強度の微視組織依存性および温度依存性 p.31
 2.4.2. 高温における内部起点型疲労破壊とS-N曲線 p.32
2.5. 結言 p.36

第3章 Ni基ODS合金の同種間拡散接合体の創成とその最適化 p.37

3.1. 緒言 p.37
3.2. 接合体製作方法 p.38
 3.2.1. 接合素材 p.38
 3.2.2. 接合体製作方法と接合条件 p.40
3.3. 接合体の高温引張試験方法 p.43
 3.3.1. 引張試験片形状 p.43
 3.3.2. 高温引張試験方法 p.43
3.4. 接合状態に及ぼす各種接合因子の影響 p.45
 3.4.1. 制作した接合体の接合状態の概略 p.45
 3.4.2. 接合温度の影響 p.46
 3.4.3. 接合後熱処理の影響 p.46
 3.4.4. 接合圧力の影響 p.47
 3.4.5. 接合面の表面仕上げ状態の影響 p.47
 3.4.6. 素材の組み合わせの影響 p.48
 3.4.7. 接合素材形状の影響 p.48
3.5. 残留微細領域と接合素材形状 p.58
3.6. 結言 p.60

第4章 Ni基ODS合金同種間拡散接合体の超高温における疲労強度と微小き裂進展 p.61

4.1. 緒言 p.61
4.2. 供試体および超高温疲労試験方法 p.62
 4.2.1. 供試体および疲労試験片形状 p.62
 4.2.2. 疲労試験装置 p.64
 4.2.3. 疲労試験条件 p.64
4.3. 超高温における疲労試験結果および考察 p.64
 4.3.1. 接合体の超高温における疲労強度 p.64
 4.3.2. 改良型接合体における微小き裂の伝ぱ挙動 p.72
4.4. 結言 p.74

第5章 Ni基ODS合金と結晶制御鋳造Ni基超合金の異種間拡散接合 p.75

5.1. 緒言 p.75
5.2. 接合体製作方法 p.77
 5.2.1. 接合素材とその形状 p.77
 5.2.2. 接合体制製作法と接合条件 p.81
5.3. 接合体評価方法 p.83
 5.3.1. 高温引張試験 p.83
 5.3.2. 高温疲労試験 p.84
5.4. Ni基ODS合金と多結晶鋳造Ni基超合金の拡散接合体の製作と超高温強度 p.84
 5.4.1. 超高温引張強度に及ぼす各種接合因子の影響 p.84
 5.4.1.1. 接合体の接合状態の概要 p.84
 5.4.1.2. 接合体の特性に及ぼす各種接合因子の影響 p.107
 5.4.2. 接合体の高温疲労強度特性 p.108
5.5. 単結晶鋳造Ni基超合金の接合体製作への異種間拡散接合手法への応用 p.111
 5.5.1. 単結晶鋳造Ni基超合金の同種間拡散接合体の製作とその問題点 p.111
 5.5.2. 単結晶鋳造Ni基超合金の接合体製作への異種間拡散接合の応用と機械的性質 p.121
5.6. 結言 p.126

第6章 結論 p.127

参考文献 p.130
謝辞

 航空機用あるいは産業用ガスタービンの燃焼ガス温度は高効率化の目的から高温化の一途をたどっている。これまで、ガスタービンの動・静翼材としてν'相と呼ばれる整合析出物による析出強化を図った結晶制御鋳造Ni基超合金が使用されてきたが、これら材料を1000℃近傍の高温域で使用するとν'相が粗大化し、それにより強度が低下するため、構造材として使用できなくなる(本研究では、結晶制御鋳造Ni基超合金が使用できなくなる温度域を「超高温」と呼ぶことにする)。この問題を解決するため、酸化物セラミックス粒子を分散させて高温強度の向上を図った酸化物分散強化Ni基超合金(以下、Ni基ODS合金と略す)が開発された。これらNi基ODS合金は、中・低温度域におけるクリープ強度が結晶制御鋳造Ni基超合金に比べ低いものの、超高温における優れたクリープ特性と、高い腐食・酸化抵抗を有していることから、超高温用材料として期待されている材料である。通常、これらNi基ODS合金はメカニカルアロイング処理の後、成形加工と熱処理を兼ねた加工熱処理-いわゆるサーモメカニカル処理-を組合わせて製造されるが、このサーモメカニカル処理条件に依存してその微視組織が大きく変化し、それにともない引張強度やクリープ強度も大きく変化するという難点が指摘されている。しかし、情報そのものが少ない上に、疲労強度の観点からの最適組織制御に関する知見は極めて少ない。一方、Ni基ODS合金においては、ニアネットシェイプの製品の製作は困難とされている。このため、これら合金を実機に使用する際には接合技術が必須となるが、通常の溶融接合手法を適用すると極端な強度低下を起こすなどの問題点も指摘されている。したがって、これら合金の接合手法の開発も克服すべき重要課題となっている。
 そこで本研究では、次世代ガスタービンの開発に資するため、Ni基ODS合金MA758を対象として一連の研究を行った。すなわち、まず、MA758合金の疲労き裂発生・伝ぱ挙動に注目しながら、同合金のサーモメカニカル処理に依存した微視組織変化を応用しつつ、その疲労強度の向上について検討した。つぎに、接合圧力、接合温度、接合素材方位、接合素材微視組織等を変数としたMA758合金同種間拡散接合体を製作し、これらの超高温疲労強度、界面欠陥率、微視組織連続性、硬さ分布等の調査を通じて、同種間拡散接合手法の最適化を試みた。さらに、これまでにない新しい機能を有する構造材料の開発を目指し、ここまでに得られた知見を応用しながら、MA758合金と結晶制御鋳造Ni基超合金との異種間拡散接合体の製作と接合条件の最適化を試みるとともに、それらの将来性、利点、解決すべき問題についても検討した。
 本論文の構成は以下に示すとおりである。
 第1章「緒論」では、ガスタービン用材料の歴史やNi基ODS合金の強度特性、および、接合技術に関する研究動向を概説し、それらが抱えている諸問題を提起して本論文の意義と目的を正した。
 第2章「組織制御援用によるNi基ODS合金の疲労強度の向上」では、サーモメカニカル処理条件を変化させることにより微視組織の異なる数種類のMA758合金を準備し、これら合金の室温から超高温域までの疲労強度特性や疲労き裂の発生・伝ぱ特性を系統的に調査し、微視組織との関連性を示した。また、これらの知見から、疲労強度の向上に向けた組織制御の方向についても明らかにした。
 第3章「Ni基ODS合金の同種間拡散接合体の製作と接合条件の最適化」では、MA758合金を対象として、接合圧力、接合温度、素材微視組織、接合面の仕上げ状態、接合素材方位、接合後熱処理、接合素材形状などの接合パラメータを変数とした種々の同種間拡散接合体を製作し、それらの界面欠陥率、組織連続性、超高温における引張強度特性などに及ぼす各種接合因子の影響を明らかにした。得られた知見を基に、MA758合金の最適拡散接合手法を提示した。
 第4章「Ni基ODS合金同種間拡散接合体の超高温における疲労強度と微小き裂進展」では、第3章で良好と選定されたいくつかの接合条件で製作したMA758合金同種間拡散接合体を対象として、それらの超高温における疲労強度や疲労微小き裂伝ぱ特性を母材のそれらと比較しながら調査した。そして、本研究で提示した手法により、疲労破壊の観点からも極めて良好なMA758合金同種間接合体の製作が可能であることを実証した。
 第5章「Ni基ODS合金と結晶制御鋳造Ni基超合金の異種間拡散接合」では、前章までに得られた同種間拡散接合手法の異種間接合手法への拡張を行った。すなわち、まず、単結晶Ni基超合金の同種間拡散接合にあたっては、接合素材の結晶方位、接合温度などに特別な配慮を払わなければ優れた強度特性を有する接合体の製作が困難であること、仮に可能となったとしても、接合素材の方位差がある程度以上になると本質的に破断延性に乏しい接合体しか得られないことを示すとともに、MA758合金をインサート材として用いる新接合手法を提示した。この手法と本研究で選定した接合条件を採用することにより、上述の難点が改善された接合体が得られることを示した。さらに、MA758合金と多結晶鋳造Ni基超合金との異種間拡散接合体の製作と接合条件の最適化も試み、これら異種間拡散接合体は超高温において優れた疲労強度特性を有することも実験的に示した。
 第6章「結論」では、以上より得られた知見を総括して示し、本論文の結論とした。

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