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化学センサを複合化したシステムの開発 一臭いと味のケモメトリックスヘの応用一

氏名 青山 義弘
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第132号
学位授与の日付 平成11年3月25日
学位論文の題目 化学センサを複合化したシステムの開発 一臭いと味のケモメトリックスヘの応用一

論文審査委員
 主査 教授 山田 明文
 副査 教授 神林 紀嘉
 副査 教授 松下 和正
 副査 教授 小林 舛治
 副査 長岡工業高等専門学校 教授 中沢 章

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第1章 緒論 p.1
1.1 はじめに p.1
1.2 生体に学ぶ計測 p.2
1.3 化学計測とケモメトリックス p.4
1.4 化学現象のセンシング p.7
参考文献 p.9

第2章 複合半導体ガスセンサシステムによる悪臭混合試料の識別とそのデータ処理法 p.10
2.1 はじめに p.10
2.2 実僕 p.11
2.2.1 悪臭の原臭と測定 p.11
2.2.2 悪臭言欄のための複合半導体ガスセンサシステム p.13
2.2.3 パターン認識法による特徴抽出とデータ処理 p.14
2.3 結果と考察 p.15
2.3.1 ガス試料のセンサ応塔の直線性 p.15
2.3.2 悪臭物質の識別 p.16
2.3.3 悪臭物質の混合ガス試料の識別 p.19
参考文献 p.23

第3章 悪臭計測のための大気環境モニタリングシステムの開発 p.24
3.1 はじめに p.24
3.2 実験 p.25
3.2.1 環境モニタリングシステム p.25
3.2.2 モニタリンクプログラムとデータ処理 p.28
3.2.3 クリーンな空気の調製 p.29
3.2.4 悪臭ガスサンブルの調製 p.32
3.2.5 データの計測 p.35
3.3 結果と考察 p.36
3.3.1 TGSセンサの初期応答 p.36
3.3.2 クリーンな空気に対するセンサ応塔の再現性 p.36
3.3.3 悪臭度の定義 p.38
3.3.4 試料の悪臭度 p.40
3.3.5 臭気ガスの識別 p.40
3.4 結論 p.44
参考文献 p.45

第4章 大気環境モニタリングシステム!こよる湿度への対応とガス希釈法の可能性 p.46
4.1 はじめに p.46
4.2 実験 p.47
4.2.1 環境モニタリングシステム p.47
4.2.2 モニタリングプログラムとデータ処理 p.48
4.2.3 クリーンな空気の湿度調整 p.48
4.3 結果と考察 p.51
4.3.1 TGSセンサの湿度応答 p.51
4.3.2 クリーンな空気による臭気ガスの希釈効果 p.52
4.3.3 有機溶媒を取り扱う施設での悪臭測定 p.56
4.4 結論 p.57
参考文献 p.58

第5章 ポータブル臭気濃度計測システムの開発 p.59
5.1 はじめに p.59
5.2 実験 p.60
5.2.1 臭気濃度測定装置 p.60
5.2.2 ポータブル臭気濃度測定装置 p.63
5.2.3 クリーンな空気と悪臭サンプルの調製 p.63
5.2.4 臭気強度の表示 p.63
5.2.5 ガス存在率(%)の定義 p.64
5.3 結果と考察 p.65
5.3.1 エタノールでの希釈法による応答 p.65
5.3.2 アンモニアでの希釈法による応答 p.65
5.3.3 酢酸での希釈法による応答 p.68
5.3.4 吉草酸での希釈法による応答 p.68
5.3.5 パネルの体調と臭気強度 p.71
5.3.6 注射器希釈法によるセンサ応答とガス濃度 p.72
5.4 結論 p.74
参考文献 p.75

第6章 味覚を識別するための複合イオン選択性電極システムの開発と基礎研究 p.76
6.1 はじめに p.76
6.2 実験 p.77
6.2.1 実験装置と操作 p.77
6.2.2 基本味と試料調整 p.79
6.2.3 データの計測 p.82
6.2.4 データの解析 p.82
6.3 結果と考察 p.84
6.3.1 旨味の識別 p.84
6.3.2 辛味の識別 p.88
6.3.3 酸味の識別 p.88
6.3.4 甘味に酸味の添加効果 p.88
6.3.5 苦味の識別 p.92
6.3.6 基本味の識別 p.92
6.4 結論 p.93
参考文献 p.94

第7章 味覚評価システムの自動化に伴う放置果実の味覚とリンゴブインの酒造工程における味覚評価への適用 p.95
7.1 はじめに p.95
7.2 実験 p.96
7.2.1 複合イオン選択性電極のマルチチャンネル計測システム p.96
7.2.1 サンプルの調整法 p.100
7.2.2.1 果実ジュースの調整 p.100
7.2.2.2 リンゴワインのサンプル調整 p.100
7.2.3 データ計測と解析 p.102
7.3 結果と考察 p.103
7.3.1 パネルによる果実汁の味覚識別の経時変化 p.103
7.3.2 みかんの旨味識別 p.103
7.3.3 バナナの旨味識別 p.104
7.3.4 りんごの旨味識別 p.104
7.3.5 パネルによるリンゴワインの味覚評価の経時変化 p.109
7.3.6 アッベの屈折計による糖度変化 p.109
7.3.7 本システムによる経時変化 p.112
7.3.8 パターン認識によるデータ解析 p.112
7.4 結論 p.114
参考文献 p.115

第8章 総括 p.116
論文目録 p.118
謝辞 p.121

 本論文は、半導体ガスセンサやイオン選択性電極を複合したシステムを開発して客観視のむずかしい臭覚や味覚といった感覚評価に対するメカニカルセンシングの可能性についてケモメトリックス的な検討を行い研究目標とした。
 一般的な現象はそれらの事象を大きく別けると物理的な現象、化学的な現象に別けることができる。それらの現象を計測する際に、物理的に計測できるものはほとんどのものが計測可能であるが、化学的な現象のように、人間が生後学習して総合的に情報を得るといった計測技術は、ほとんど解明されていない。そこで、生体が脳を中心に感覚器官からの信号を計測し解析して学習記憶し、経験した情報に基づき、その現象をセンシングしているといった生体の計測に学び、化学現象をセンシングするための計測技術を研究する。そのために、現存する一般的に用いられている化学センサを用いて、化学現象をメカニカルセンシングするシステム開発の検討を行った。そこで、通常単独で用いられる化学センサを複数組み合わせて用いることにより、各化学現象に対して組み合わせたそれらの化学センサのセンシングパターンを認識することにより、総合的に化学現象の識別を行う方法を考案した。そして、化学現象としては、非常に密接な関係にある、臭いと味に着目し、化学センサを複合化したシステムを開発し、臭いと味のケモメトリックスに応用した。
 まず、生体に学ぶ計測から、化学計測となるメカニカルセンシング技術を開発し、得られたデータのケモメトリックス的解析を検討した。そして、複合半導体ガスセンサシステムを開発して、そのシステムによる悪臭ガスの混合試料の識別を検討した。そのとき、利用したデータ処理法(パターン認識法:主成分分析法、ポテンシャル関数法)について記述した。すなわち、パターン認識法による特徴抽出とデータ処理により、悪臭物質の混合ガス試料(単一ガス試料および二成分混合ガス試料)の識別を行い、良好な成果を得た。悪臭計測についてコンピュータ処理によるシステム化に目処をつけることができた。
 次に、大気中の悪臭計測のための携帯性を重視した大気環境モニタリングシステムの開発を検討した。基礎的な検討を行うために、クリーンな空気と悪臭ガスサンプルの調製に工夫を行い、定量的なガスサンプルを調製した。このシステムを用いて、悪臭データを計測し、クリーンな空気に対するセンサ応答の再現性を検討した。さらに、このシステムによる悪臭度の定義、試料の悪臭度、臭気ガスの識別を実施した。
 開発した大気環境モニタリングシステムにおける試料中の湿度への対応を検討し、TGSセンサの湿度応答が測定範囲でリニアな関係であることがわかった。そして、このシステムによる有機溶媒を取り扱う施設での悪臭測定を行い、悪臭評価を行った。また、一般的な臭気ガスの測定法としてガス希釈法があるので、このシステムを用いてクリーンな空気による臭気ガスの希釈効果を検討し、ガス希釈法への可能性を確認した。
 以上の大気環境モニタリングシステムは悪臭の質と量を計測することを目的に開発したが、今度は、クリーンな空気による臭気ガスの希釈法で定義されているASTM注射器法のシリンダ部にTGSセンサを1個取り付けて、ガス希釈による臭気濃度のみを測定するために、ポータブル臭気濃度計測システムの開発を検討した。
 臭気強度の表示は環境庁の告示に従い、臭気強度測定は官能試験で行った。システムを設計し基礎データを取得した。臭気ガスとして、エタノール、アンモニア、酢酸、およびn一吉草酸の各ガス試料における空気希釈法による応答を検討した。また、パネルの体調と臭気強度との関連についても検討した。
 次に、味覚のケモメトリックスを検討するために、イオン選択性電極を複数種複合したシステムを開発してその基礎研究を行った。味覚のサンプルとして、19種の化学調味料を用意した。化学調味料は、微妙に味の違いを人問であるパネルによって味の5段階評価を行った。味覚データの解析として、旨味、辛味、酸味の識別において明確な分別を行うことが出来た。さらに、微妙な味覚の違いを検討するために、甘味に酸味の添加したところ、その効果が味覚の違いに反映した。
 これまでは、複合したイオン選択性電極からの応答信号を視覚的に読み取りを行ってきたが、コンピュータによる味覚評価システムの自動化を実施した。その応用として、放置した果実汁の味覚変化を測定した。その際、パネルによる味覚識別の経時変化も測定した。このシステムを用いて、みかん、バナナ、およびりんごの各果汁溶液についてそれぞれの旨味の識別を検討した。その中で、りんごの果汁を放置した場合、数日後にワイン臭が観察され、HPLCでエタノールの生成を確認すると共にこのシステムによる味覚変化を測定した。また、アルコール発酵を積極的に行うために、糖分とイースト菌を加え、リンゴワインの酒造を行い、その発酵工程における糖度、各種イオン量の変化の過程を計測し、データ解析を行った。

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